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行政調査・行政計画 第56回

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  ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第56回 】★      
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                               PRODUCED by 藤本 昌一
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【テーマ】 「行政調査」「行政計画」・次回に続く。


【目次】  問題・解説

 

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 ■ 平成20年度・同21年度過去問
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 ○ 平成20年度問題26

   行政調査に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しい
 ものはどれか。

 1 保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続は、
   行政手続法の定めるところに従って行わなければならない。

 2 税務調査については、質問検査の範囲・程度・時期・場所等について
   法律に明らかに規定しておかなければならない。

 3 警察官職務執行法2条1項の職務質問に付随して行う所持品検査は、
  検査の必要性・緊急性があれば、強制にわたることがあったとしても
  許される。

 4 自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の
   任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなけれ
   ば、適法と解される。

 5 税務調査の質問・検査権限は、犯罪の証拠資料の収集などの捜査のため
   の手段として行使することも許される。

 

 ○ 平成21年度問題8

   行政計画に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

 1 土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害
   留保説によれば法律の根拠が必要である。

 2 広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することが
   できないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続の対象
   となっている。

 3 計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、
   裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。

 4 都市計画法上の土地利用制限は、当然に受忍すべきとはいえない特別の
   犠牲であるから、損失補償が一般的に認められている。

 5 多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については、
  行政事件訴訟法において、それを争うための特別の訴訟類型が法定
   されている。

 

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 ■ 解説
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 ● 参考図書

 行政法読本・芝池義一著 行政法入門・藤田宙靖著 / 有斐閣発行 
 
 
 ● 序論

  平成20年度までは、「行政調査」「行政計画」が正面から問われる
 ことはなかった。しかし、ここ2年続けて、この分野からの出題になった
 のが、近年の本試験の特徴である。
   みなさまが所持されている教科書でも、とくに後者については、記述の
 ないもの、前者についても簡単な記述に留まるものが大半であるように
 思われる。本試験では、このように隙間を突いてくることもある。
  留意すべきである。
 
   しかし、この分野に目を向けてみれば、実際には、重要論点が存在する
 のである。


 ● 本論

  両試験につき、本物の(正しくて、妥当な)肢を捜すという観点にたてば、
 基本的事項を把握さえしていれば、出題意図に沿って、正解をあてることは、
 それほど困難なことではない。

 まず、「行政調査」と「行政計画」の共通性が問題になる。これらは、
 権力的に行われることもあれば、非権力に行われることもある。また、法行為
 に当たるものもあれば、事実行為に当たるものもある(読本)。

 「行政計画」について、国民の土地利用を制限する用途地域の決定のように、
 権力的な法行為には、法律の根拠が必要であることが自然に導かれる。
  
  平成21年度問題8の正解は、肢1である。

 「行政調査」が権力的に行われる強制調査(相手方の抵抗を排して行うことが
 できる調査)は、原則的に裁判官の令状を要するという基本知識さえあれば、
 平成20年度 の問題についても、自然に解答が導かれる。

  平成20年度問題26について、
 
 肢3の強制にわたることは許されず、肢4の任意の自動車検問が許されること
 になり、肢3は誤りで、肢4が正しいことになり、肢4が正解である。
 逐一、判例を知っている必要はない。

 それでは、それぞれについて、各肢を検討しておく。

 ○ 平成20年度問題26

   全体的考察
  
   行政調査とは、行政による情報の収集活動を指す(読本)。以下の肢は全部
 この概念に相当することを明確にしよう。
 
  この行政調査は、行政処分などの個別行為を行うに当って行われる場合と
 行政処分を行うかどうかとは無関係に情報収集を行う場合があるが、以下の
 肢はいずれも、前者が問題になっている。

  各肢の検討

  肢1について。誤り。

   これは、ズバリ、行手法3条1項14号の適用除外の問題である。
 
 「・・資料提出や出頭を命じる調査は、行政処分の形式で行われるもの
  であり、(注)一種の不利益処分として行政手続法を適用することも
 可能であるが、行政手続法は、『情報の収集を直接の目的してされる
 処分・・』を適用除外している(行手法3条1項14号)。」
 (読本)

 注・ ここでいう「行政処分の形式で行われる」というのは、冒頭で述べた、
「行政調査」が権力的に法行為として行われ得ることに照応することに注意
 せよ。


 肢2について。誤り。

  これは、行政調査についての事前の手続として、事前の通知や理由の開示
 が必要かどうかが、論点になったものである。
 
 「最高裁判所は、所得税法上の質問検査に関し、実定法上特段の定めのない
 実施の細目については、税務職員の合理的な選択に委ねられているものとし、
 『実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体定な
 告知のごときも、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているもの
 ものではない』としている」(最高裁判所1973(昭和48)年7月10日決定=
 荒川民商事件)。(読本)

  本肢が、当該決定に基づいて出題されていることは疑いない。
 しかし、本決定は、実定法に定めがない場合でも、手続上、税務職員は、
 本肢に掲げてあるような細目を事前に通知しなくてはならないかどうか
 が争点になり、それは、税務職員の合理的な選択に任されているという
 判断が示されたのである。本肢が当決定に反するという出題意図であると
 すれば、設問の仕方がおかしいようにも思う。
  
  もし個別法において、行政庁職員に対して、調査の事前手続として、
 事前の通告等が義務づけられていれば、その者はその手続に従わなければ
 ならないことに注意せよ。立法例はある(読本参照)。

  いずれにせよ、誤り。

 肢3について。誤り。

   これは、最判昭和53・6・20からの出題である。以下に判旨を掲げて
 おく。

   職務質問に付随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得て、その限度に
 おいて行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたら
 ない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益
 と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当
 と認められる限度で許容される場合がある。

  この問題は、一般の「行政法」の教科書では、「刑事訴訟法の教科書など
 における説明に譲ることにしたい。」(読本)とされているところでもあり、
 一般の受験生に対し、当該判決の知識まで問うのは要求過多とも思われる。

 しかし、
 強制にわたる場合には、憲法第35条2項による裁判官の令状を要すると
 いうこと(前述したとおり)が、頭に入っていれば、本肢の「強制にわたる
 ことがあったとしても許される。」が誤りであることが分かる。

 肢4について。正しい。
 
  これは、最高裁判所昭和55年9月22日決定からの出題である。

   当該判決によると、自動車の一斉検問は、警察法2条1項が
「交通の取締」を警察の職務としていることを根拠にしているが、
 本肢のとおり、「任意」であって、強制力を伴わなければ、
「一般的に許容されるべき」としている。したがって、本肢は正しい。

 肢3と肢4の対照

  肢3は、警察官職務執行法2条1項を見れば分かるように、犯罪
 にかかわる職務質問に付随する所持品検査であるのに対して、肢4は、
 犯罪とは関係なく無差別に行われる検問であるあるから、かりに任意で
 あっても、この自動車検問自体が「法律の留保の原則」(注)に違反
 して違法ではないかという問題がある(読本参照)。

  注 「行政の行為のうち一定の範囲のものについては、行為の着手自体が
  行政の自由ではなく、その着手について法律の承認が必要であると
    考えられている。この一定の行為について法律の承認(つまり授権)
  が必要である、という原則を『法律の留保の原則』と呼ぶ。」(読本)。

   これについては、前述したとおり、最高裁判所は、警察法の規定する
「交通の取締」を根拠にしているが、学者はそれにはかなり無理がある
 として「『法律の留保の原則』の見地からは、一斉検問を正面から授権
 する規定を法律(道路交通法になろう)の中に設けることがあるべき
 解決策といえる。」(読本)としている。

  
   肢5について。誤り。

  
   これも普段考えたことのない問題であろう。一読しただけでは、題意も
 掴み難い。

  つまり、税務署が取得した課税調査情報を国税局が行う国税犯則取締り
  に用いることは許容されるか(読本)、という問題である。
  
  ここでいう課税調査情報というのは、肢5のいう税務調査の質問・検査
  権限の行使という「行政調査」によって得られた情報である。
  
  これについては、所得税法234条2項・法人税法156条の規定が参考
  になる。いずれにおいても、「(税務調査)による質問又は検査の権限は、
  犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と規定する。
  これは、「犯罪の証拠資料の収集などの捜査のための手段として行使
  することは許されない」ことを意味する。判例がこのような違法な行為
  を認める筈もない。
  
  判例とは、最決平16・1・20であるが、当該行政庁の行政調査が、
 「捜査のための手段として行使されたことにはならない」と判断された
   ということである。ここではそれ以上判例に深入りしない。

   平成21年度の「行政計画」は次号に続く。

 

 ● 付言

   肢3・4の事案について、 裁判所は、事後的に警察官の行政調査が、
「任意」だったか「強制」だったのかを判断することになるが、その
 個別行為における両者の境界の画定は困難であろうと推定される。

  もし、あなたがこの講座を学んだ後に、ご自分の運転する自動車が
 一斉検問の対象になったとすれば、さまざまな思いが去来するだろう。
  そのとき、「行政法」的観点からみて、はたして、その 警察官は、
  確りとした意識のもとに公務を遂行しているかどうか。質問してみる
 のも面白いかもしれない。ただし、公務執行妨害罪で強制的に連行
  されないようにご用心を!!!


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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