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行政強制 第58回

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       ★過去問の詳細な解説《第2コース》第58回★
      
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                            PRODUCED by 藤本 昌一
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 【テーマ】 行政強制
         

 【目次】   問題・解説


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■ 問題 平成21度問題10
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   行政強制に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 1 法律の委任による条例に基づき行政庁により命ぜられた行為に
  ついては、行政代執行法は適用されない。
 
 2 義務の不履行があった場合、直接に義務者の身体や財産に実力
   を加えることを即時強制という。

 3 執行罰は、制裁的要素を有するため、同一の義務違反に対して
  複数回にわたり処することはできない。

 4 強制徴収手続は、租税債務の不履行のみならず、法律の定がある
   場合には、その他の金銭債権の徴収についても実施される。

 5 行政上の即時強制については、行政代執行法にその手続に関する
  通則的な規定が置かれている。


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■ 解説
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 △ 参考書籍 

 行政法入門・藤田 宙靖著  行政法読本・芝池 義一/有斐閣
 

 (1)全体的考察

   サイト35号の記述にしたがえば、本問はほぼ解答できる。
 ◆第35号はコチラ↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/768156.html
  
  さらに本年6月9日に配信したオリジナル問題23号をこなして
 いれば、本年のこの本試験問題は、完璧に正解に達し得たと思わ
  れる。

  
  (2)各肢の検討

 
 肢1について

   本肢は、行政上の強制執行制度において、原則な執行方法
 である行政代執行について、地方公共団体との関係をテーマ
 にしたものである。

 行政代執行法第2条(  )内には、条例も掲げられている
 ので、条例または条例に基づき行政庁より命ぜられた行為
 についても代執行できる。
 したがって、本肢のように「法律の委任による条例」の場合
 も「法律の委任によらない条例」の場合であっても、行政
 代執行法の適用により、代執行できる。

 以上、本肢は誤りである。

 
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   以上のテーマは、重要であるので、前記オリジナル問題23号
 の[問題3]の問題・解説を掲げておく。

 この際、関連問題として、確り頭に叩き込む要あり。

         ↓

 [問題3]

  地方公共団体と行政上の強制制度に関する次の記述のうち、正しい
 ものはどれか。

 1 公害防止条例で有害物質の排出基準を定め、それに違反している
  工場に対する操業停止命令の制度を設けたうえで、それを強制する
  ための執行罰を条例で導入することは許される。

 2 自然環境保全条例で、自然環境保全地域に違法に設けられた
 工作物についての除去命令の定めがある場合、相手方がそれに
  従わなければ、行政代執行法に基づき代執行を行うことができる。

 3 過料は、非訟事件手続法の規定に基づき、裁判所によって
 科されるので、地方公共団体の長がこれを一方的に科すこと
  はできない。

 4 条例により過料を科すことはできても、行政刑罰を科すことは
 できない。

 5 国税には、滞納処分手続が定められているが、地方公共団体
 の場合において、地方税には、そのような手続の定めはない。

  
 
 [解説]
 
 本問は「読本」と「入門」に従った。これは、難問に属する。正誤
 にこだわらず、ここで正確な知識を得るように努めるのが肝要と思う。

 1 行政代執行法第1条の問題。同条は、地方公共団体の行政庁に
   あっても、個別の法律があればその法律で認められている強制執行
   を行うことを容認する。しかし、法律によらず、条例によって
   強制執行手段を創設することはできない(読本)。
  本肢は、前段は正しいが、執行罰を条例で導入することはできない
 ので、後段は誤り。

  誤り
                    
 2 行政代執行法第2条は、「法律(・・・条例を含む・・)により
  直接命ぜられ」た行為について、代執行を認めている。したがって、
  カッコ書において条例を明示しているので、条例に基づく義務に
  ついても代執行できる(読本)

   正しい

 3 行政刑罰を科する手続が、刑事訴訟法の定めるところであるのに
  対し、過料を科する手続が非訟事件手続法に定められている。
  このように機械的に覚えておけばよい。
    また、過料は、地方自治法により、行政行為によって一方的に科
    される こともあるということも知っておくとよい(パラパラと
    条文。15条2項・149条3号・231条の3 3項・255条の3 など)
   (入門)

   誤り

 4 地方自治法第14条3項によれば、行政刑罰、過料いずれも一定の
   範囲内において科すことができる。

  誤り

 5 地方公共団体の場合については、地方税法で、国税の徴収手続に
   ほぼのっとった滞納処分手続が採用されている(条文省略)。
  (入門)

   誤り

 したがって、正解は2である。

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 肢2について

 強制執行の原則が代執行であるのに対して、行政代執行法は、別に
 法律で定めることを許容している。これに該当するものとして、行政
 上の「直接強制」がある。

   これが、本肢でいう、 「義務の不履行があった場合、直接に義務者
 の身体や財産に実力を加えること」である。

  サイト35号の解説を引用しよう。

 「別に法律で定めるもの(代執行法1条の原則以外)としての、
  行政上の強制執行に該当するのが、行政上の直接強制である。
  
 これは、結核患者が入所を拒んだら、強制的に療養所に送りこむ
 ようなことである。ただし、法律にこれを許す規定がないので、
 以上のことはできないことに注意。現在の法律で直接強制が認めら
 れているのは、ごくわずかである。

   直接強制に類似したものとして、消化活動のための土地・家屋へ
 の立ち入り・処分、酔っ払いの保護などの即時強制がある。」

 「 即時強制の具体例として、 目前の障害を除くという緊急の必要
   からして、相手方である私人に義務を命じているひまのない場合
  にも、消化活動のための土地の使用等が許される。したがって、
  事前に私人に対し作為義務を課していることは必要でない」

   以上により、本肢は、行政強制のうち、義務の不履行があった
 場合の強制執行の一つである「直接強制」の説明であることが
  分かる。

 これに対して、行政強制である「即時強制」は、義務の不履行が
 あった場合に義務の履行を目的とする強制執行ではない。

  本肢は誤りである。
 

 肢3について

   執行罰は、行政上の強制執行の一つであり、「義務を履行しない
 義務者に対して心理的強制を加えるために、金銭的な罰を科する
  という方法である。」
 (読本)。
  本肢の説明は、法律違反の行為に対する制裁を目的として行わ
   れる処罰すなわち、行政罰に関するものである。
  
    したがって、本肢は誤りである。

  ここでは、以下の2点を指摘しておく。


  1 わが国では、戦前では、執行罰も一般的に認められていたが、
   戦後では砂防法という法律で残っているだけである。(読本)

  2 執行罰は、行政罰と異なり、行政上の強制執行であるのだから、
     「義務の不履行が継続する限り、過料を繰り返し科すことができ」
   る。(LEC・行政書士合格基本書)

 肢4について。

   前記オリジナル問題[問題3]肢5と解説を参照せよ。

  そこでは、国税と地方税の「滞納処分手続」について述べられている。

   本肢はこれに関連した問題である。

  以下の記述が念頭にあれば、本肢は正しいことが分かる。

  「・・金銭納付義務の不履行に対しては、強制的徴収の方法がある。
     これは、正式には『行政上の強制徴収」と言う。典型的な例は、
   税金を自主的に納付しない場合に行われるものである。一般的
   に言うと、金銭納付義務が履行されない場合に行われるもので
     ある。法律上は、『滞納処分』と呼ばれている。差押え、差押
     えられた物件の公売といったプロセスがとられる。」
  (読本)


 肢5について。

    肢2でみたように、即時強制は、行政上の強制執行の種類に該当
  しないので、強制執行の原則である「行政代執行法」に即時強制
  の手続に関する通則的な規定が置かれることはない。

  誤りである。

    以上により、正解は、4である。

 (3)総括

   行政上の強制執行の種類として、1 行政上の代執行 2 執行罰
 
 3 行政上の直接強制 4 行政上の強制徴収の4種類がある。

   本問では、以上4種類がすべて登場するとともに、一部において、
 行政上の即時強制・行政罰と対比するという構成になっている。
 

 ※(注)
   行政強制一般については、用語の混乱を生じがちであるが、
   後日、オリジナル問題を通じて、有料メルマガにおいて、
   その整理を果たしたい。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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