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行政行為の効力 第 61回

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       ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第61回 ★
      
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                     PRODUCED by 藤本 昌一
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 【テーマ】 行政行為の効力
         

 【目次】   問題・解説

 

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■ 問題 平成11年度問題34
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 平成11年度過去問 

 問題34

 行政行為の効力に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
 

 1 行政行為は公定力は有するから、その成立に重大かつ明白な
   瑕疵があるばあいでも正当な権限を有する行政庁又は裁判所
   により取り消されるまでは一応有効であり、何人もその効力
   を否定することはできない。

 2 行政行為で命じた義務が履行されない場合は、行政行為の有
   する執行力の効果として、行政庁は、法律上の根拠なくして
   当然に当該義務の履行を強制することができる。

 3 行政行為は不可争力を有するから、行政行為に取り消しうべき
   瑕疵がある場合でも、行政事件訴訟法に定める出訴期間の経過後
   は、行政庁は、当該行政行為を取り消すことはできない。

 4 行政行為の不可変更力は、行政行為の効力として当然に認めら
   れるものではなく、不服申立てに対する裁決又は決定など一定の
   行政行為について例外的に認められるものである。

 5 違法な行政行為により損害を受けた者は、当該行政行為の取消し
   又は無効確認の判決を得なければ、当該行政行為の違法性を理由に
  国家賠償を請求することはできない。


 
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■ 解説
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 ▲ 参照書籍 行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖
   発行/有斐閣 

 
 ● 序論

   行政行為には、私人の法律行為とは違った、行政行為の公権力性を
 特徴づける特別の効力がある。
  
   ここでは、その特別の効力を把握しておく必要がある!!

 ● 本論(各肢の検討)

 
  肢1について

 
  まず、公定力の説明を要する。以下のとおりである。

  特定の機関が特定の手続によって取消す場合を除き、いっさいの者
 は、 一度なされた行政行為に拘束されるという効力をいう。
                                    ・・
  したがって、「違法な行政行為も取消されるまでは原則として有効
 である」ことになる。原則論からいえば、本肢の「行政行為は公定力
 を有するから、正当な権限を有する行政庁又は裁判所により取り消さ
 れるまでは一応有効であり、何人もその効力を否定することはでき
 ない」という例外部分を除いた記述は正しい。
 
   しかし、違法な行政行為も有効であるというのは、「法律による
 行政の原理」からすれば例外になるので、「公定力」の働く範囲を
 必要以上に拡大させない必要がある。そこから、違法ないしは不当
 な行政行為である 瑕疵ある行政行為に関して、取り消しうべき行政
 行為(原則論に従うもの)と瑕疵が重大明白である場合に分類する
 考え方が台頭してくる。
 
   判例・有力な学説は、「『瑕疵ある行政行為は、原則として取り
 消しう べき行政行為にとどまるが、その瑕疵が重大明白である
  ばあいには、行政行為 は無効になる』という公式を立ててきました」
 (入門)。
 

  無効であるという ことになれば、「取り消されるまでは一応有効
 であ」るという原則論は通用しなくなるため、いつでも誰でもその
 効果を否定できる。したがって、本肢においては、「その成立に重大
  かつ明白な瑕疵がある場合でも」というところが誤っている。

  本肢は正しくない。


 肢2について


  本肢においては、(自力)執行力がテーマになっている。

  民事法においては、「自力救済の禁止」の原則があるので、訴えを
 起こして裁判所の助力を得てはじめて、強制執行ができる。

 しかし、行政庁は、裁判所に訴えを起こさずに、直接自分の力で強制
 執行できるのである。これが、執行力である。

  しかし、「法律による行政の原理」によれば、行政は法律の根拠が
 なければ、このような公権力を行使することはできない。したがって、
 法律がとくに明文で行政庁に強制執行を許している場合でないと、
 このような行為ができないことになる。
  以上の点から、「行政庁は、法律上の根拠なくして当然に当該義務
 の履行を強制することができる」とする本肢は、正しくない。

 それでは、次の記述は正しいか

   相手方である私人が、その行政行為に対して不服申立てや抗告訴訟
  を起こして争っているばあいでも、なお原則として自力執行する
  ことは妨げられない。

  答えは、正。自力執行の効力による。行政不服審査法34条1項・
  行政事件訴訟法25条1項に規定あり(入門)


 肢3について

 
  本肢では、不可争力(形式的確定力)がテーマである。

  これは、法律上定められた不服申立期間・出訴期間が過ぎてしまう
 ことによって、もはや行政行為の効果を私人が争うことができない
 という原則である。

  したがって、「違法」または「不当」な行政行為 (これを「瑕疵
 ある行政行為」という)であっても、この「不可争力」により、
  前記期間を過ぎると、私人は、その効力を争うことができなく
  なるのである。
 
   本肢における、「不可争力」の説明自体は正しい。しかし、これは、
 私人が効力を争うことできないことを意味するので、行政庁が行政行為
 の瑕疵を認めて、「職権取消し」を行うことはできる。その行政庁の
 行為が「不可争力」に反するするものではない。

 本肢も正しくない。


 肢4について。  


  本肢では、不可変更力(確定力)が問題になっている。

  これは、行政行為を行った行政庁がみずから、一度行った行為を
 取消すことは(職権取消し)はできない、という効果のことである。

 これは、ほかの効力とは異なり、行政行為の中の特定の種類のもの
 にだけこの 効力がある。

  この効力は、裁判判決に一般に認められるものであって、裁判に
 対する国民の信頼確保のために、一度くだした判決をみずから
 これを取消すことを許さないとしたものである。
 
  これと同じように、行政行為の中でも特に異議申立てに対する決定、
 審査請求に対する裁決など、その性質の上で裁判判決に似たような
 目的を持つものには、このような効力が認められる、ということが、
 判例・学説の上でみとめられている(入門)。

 本肢は、以上の趣旨に沿うものであり、正しい。

 4が正解である。


  肢5について


   本肢は、肢1でテーマなった「公定力」を拡大させないという考え方
  に立った場合、その肢は正しいのかどうかが問われている。

  「公定力」という観点 からすると、違法な行政行為も一応有効で
   あることになる。そうすると、当該行政行為の違法性を理由に国家
   賠償を行う場合にも、あらかじめ当該行政行為の取消し等の判決を
   得て違法であることが確定していなければならないことになる。

    しかし、そこまで、「公定力」を拡大すべきではない。当該国家
 賠償請求訴訟において、違法性を判断してもらえばよいといことに
  なる(同旨の判決もあるようである。最判S36・4・21・・)。
 
    この見解に反する本肢は、誤りである。


   以上により、正解は4である。


 
 ● 付言

  本問は、行政行為の効力に関する基本的な理解を問う良質の問題で
  ある。各肢と同様な問題は、過去問で繰り返し出題されている。

  ただし、平成19年度以降はこの種の問題は出題されていないが、
 いつ復活してもおかしくないと私は思う。
  
   
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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