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行政行為の効力 第62回

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       ★過去問の詳細な解説《第2コース》第62回★
      
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               PRODUCED by 藤本 昌一
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 【テーマ】 行政行為の効力
         
   本問は、サイト31回において、採用した。

  行政法の基本にふれる好個の素材だ!!

  もう一度、整理しなおし、サイト31回では説明が不十分だった
 「争点訴訟」について、より詳しい説明を加えた。
      
 【目次】   問題・解説


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■ 問題 平成16年度問題9
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  行政行為の効力に関する次の文章の(ア)〜(エ)を埋める語の
 組合せとして、最も適切なものはどれか。


  行政行為の効力の一つである(ア)は、行政行為の効力を訴訟で
 争うのは取消訴訟のみとする取消訴訟の(イ)を根拠とするという
 のが今日の通説である。この効力が認められるのは、行政行為が
 取消しうべき(ウ)を有している場合に限られ、無効である場合には、
 いかなる訴訟 でもその無効を前提として、自己の権利を主張できる
 ほか、行政事件訴訟法も(エ)を用意して、それを前提とした規定を
 置いている。


   (ア)  (イ)   (ウ)  (エ)

 1 公定力  拘束力   違法性  無名抗告訴訟

 2 不可争力 排他的管轄 瑕疵      無名抗告訴訟

 3 不可争力 先占    違法性  客観訴訟

 4 公定力  排他的管轄 瑕疵   争点訴訟

 5 不可争力 拘束力   瑕疵   争点訴訟   

  

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■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣
  

 
 1 サイト31号の要約

  収用委員会の収用裁決によって、土地が起業者にとられてしまった
 という例示において、もとの土地の所有者がこの収用裁決という行政
 行為が違法であるので、この土地を取り返したいと考えた場合、どう
 すればよいのかということを考察した。

 ◆サイト31号の詳細はコチラ↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/706967.html 

 
 もとの土地所有者を甲とし、起業者を乙とする
 
 
 (1)一つの方法《民事法(民法や民事訴訟法)の適用を原則とする》

    甲は乙を被告として、裁判所に土地の返還を求める訴え(民事訴訟)
  を提起する。そしてその際、甲から乙への権利変動は無効であると
  いうことを主張し、その理由づけとして、収用裁決は違法である、
  ということを主張すればよい。

 
(原告)  土地の返還請求   (被告)  主張・甲から乙への権利変動
                                            は無効。

 甲-------------------------→乙   
                    理由・収用裁決は違法

 

 (2)二つ目の方法≪「違法な行為も取り消されるまでは原則として
     有効である」という「公定力」を基本とする》

    甲は、まず行政庁(収用委員会)が所属する都道府県を被告として、
  収用裁決の取消訴訟をX裁判所に提起し、そこで収用裁決を取り消
  してもらい、そのうえではじめて、べつに、乙(起業者)を被告
  とした 民事訴訟をY裁判所に対して提起する。

 
   X裁判所

  (原告) 収用裁決の取消訴訟      (被告)
     (抗告訴訟)
 
  甲---------------------------→収用委員会が所属する都道府県
        

        ↓  判決・収用裁決取消

  Y裁判所
    
     土地の返還請求
    甲--------------------------→乙
     民事訴訟      (起業者)


 (3)学説・判例は、一致して、二つ目の方法を採用する。
      
     なぜかというと、行政行為は民法上の法律行為とは違って、
  それ自体が 取消訴訟によって取り消されていないかぎり、
  原則としてほかの訴訟(民事訴訟)ではその訴訟の裁判所(Y)
  を拘束するので あって、当該のY裁判所は、かりに審理の中で
  この行政行為が違法であるという判断に達したとしても、
   これを有効なものとして扱わなければなければならない、
   とされてきたからである≪最判S30・12・26≫(入門)。

 (4)公定力

   「特定の機関が特定の手続によって取り消すばあいを除き、いっさい
 の者は、一度なされた行政行為に拘束されるという効力」という原則
  をいう。

   例示によれば、X裁判所(特定の機関)が行政行為の取消訴訟
 (抗告訴訟)という(特定の手続)によって取り消すばあいを 除き、
 民事訴訟を遂行するY裁判所においても、一度なされた行政行為
 を有効なものとして扱わなければならない、ということになる。

 
 2 本問の具体的検討


 (1)本問でいう、「行政行為の効力を訴訟で争うのは取消訴訟のみ
      とする」のは、1(4)によれば、公定力の帰結であるから、
  (ア)には、公定力が入る。

   この考え方が「今日の通説である」というのも、1 (3)により、
     明確である。
                      ・・・・・
   その根拠とされる(イ)には、取消訴訟の(排他的管轄)が妥当
  することは、(イ)に羅列する他の文言との比較において、明瞭
  である。

     (ウ)に瑕疵がはいることは、以前に私の出題した下記のオリジナル
     問題・解説からしても、明らかである。
           ↓

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   《問題》 

   行政行為の効力に関する次の文章の(ア)〜(エ)を埋める語の
 組合わせとして、最も適切なものはどれか。

 (ア)を有している行政行為がいかなる基準で(イ)になるかに
 ついては、 わが国の判例そして有力な学説は、従来この基準を
(ア)の(ウ)というところにおいて、(ア)を有している行政行為は、
 原則として(エ)行政 行為にどまるが、その(ア)が(ウ)を有す
 る場合には(イ)となるという公式を樹立した。
 
     (ア)  (イ)    (ウ)       (エ)   
 
 1      違法性  違法    重大性     取り消しうべき

 2   瑕疵   取り消し  明白性     違法である

 3   瑕疵      無効    重大明白性    取り消しうべき 

 4   違法性  違法    重大明白性    無効である

 5   瑕疵   無効     重大性     取り消しうべき


 《解説》

   本問は、「行政法入門」からの抜粋である。

   瑕疵ある行政行為が「取り消しうべき行政行為」となるのか
 それとも「無効の行政行為」となるのかという基準に関する
  問題である。

 ( )内を埋めると、

 (瑕疵=ア)を有している行政行為がいかなる 基準で(無効=イ)
 になるかについては、わが国の判例そして有力な学説は、従来この
 基準を(瑕疵=ア)の(重大明白性=ウ)というところにおいて、
(瑕疵=ア)を有している行政行為は、原則として(取り消しうべき
 =エ)行政行為にとどまるが、その(瑕疵=ア)が(重大明白性=ウ)
 を有する場合には(イ=無効)になるという公式を樹立した。

 正解は3である。

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 (2)争点訴訟について

 (エ)には、争点訴訟が入るが、行政事件訴訟法45条の規定するこの
 争点訴訟は、訴訟法全体の把握がされてないと、理解困難である。
 
   以下に要点を述べるので、それなりの把握をしておいてほしい(今後
 本試験の高度化に伴い、正面から、争点訴訟を問う問題が将来、出題
 される可能性あり)。

  条文としては、行訴法3条4項の「無効等確認の訴え」、同36条
 の「無効確認の訴えの原告適格」、そして、さきにあげた同法45条
 が規定する「争点訴訟」があげられる。

 行政処分が無効である場合には、取り消し得べき処分と異なって、
「いかなる訴訟でもその無効を前提として、自己の権利を主張できる」
 ことになる。その点からして、次のように言える。

   ・・・行政処分が無効だというならば、そもそもこの処分には公定力
 もないことになるわけですから、私人としては、なにもわざわざ抗告
  訴訟というかたちで処分それ自体が無効であることの確認を求める、
  (筆者注 行訴法3条4項の「無効等確認の訴え」)というような
  まわりくどいことをしなくても、行政処分が無効であるということを
 前提とした上で、現在の法律関係に関する訴えをいきなり起こせば
 すむのではないか、といった疑問がわいてきます。(入門)

   ここで、さきにあげた収用裁決が無効であった場合、収用裁決の
 「無効確認の訴え」を提起するまでもなく、現在の法律関係に関する
  訴えすなわち土地の返還請求という民事訴訟を提起すればよいこと
 になる。

  以上の帰結が、行訴法36条・同45条によって導かれる。

   特に、36条の解釈は難しいが、
 
 収用裁決の例でいえば、収用裁決それ自体の無効確認を起こすという
  のはよけいなまわり道だから、それはできないことにして、もっぱら
 直接「土地を返せ」といった民事訴訟で争うことしかできないのだと
  いうことなのだ、というふうに理解しておけばよい。
  
  そして、こういった場合の民事訴訟のことを特に「争点訴訟」と
  呼び、同法45条に規定を設けている。
 (以上入門参照)

    以上のようにとらえると、本問の(エ)に争点訴訟がはいるのが、
 腑におちることになる。

  したがって、本問の正解は4である。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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