行政書士試験独学合格を助ける講座

行政不服審査に関する問題点 第66回

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    ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第66回 ★

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         PRODUCED by 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政不服審査に関する問題点

     
  【目次】   問題・解説


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■ 問題 平成21年度問題15
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   次の記述のうち、行政不服審査法に関する問題点として、次の
 解説文中の空欄 A に挿入すべきでないものはどれか。  


   1962(昭和37)年制定の現行行政不服審査法は、それ以前
 の訴願法と比べれば、権利救済制度として大きく改善されたが、
 現在では、 A  という問題点も指摘されている。また、
 1993 (平成5)年の行政手続法の制定や2004(平成16)
 年の行政事件訴訟法改正などとの関係で、見直しが必要だと考え
 られるようになった。このため、行政不服審査法の抜本的な改正が
 検討されることとなったのである。

 1 行政不服審査法によらない不服申立ての仕組みが多数あるため、
  一般国民にとってわかりづらく、利用しづらい制度になっている

 2 取消訴訟を提起するためには不服申立てに対する裁決または
   決定を経ることが原則とされているため、権利救済の途が狭め
   られている

 3 審理にかなり時間を要しているのが実態であるため、簡易迅速
   という特色が生かされていない

 4 行政権の自己審査であるため、審理手続の運用において公平さに
  欠けるところが多い

 5 不服申立て期間が短いため、権利救済の機会が狭められている
 
  (なぜか、本問では、各肢についてすべて、文末の 。 が省略
   されているが、特別の意味があるとは思われない)

 

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■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆   ズバリ、本問については、以下に記述する「自由選択主義」と
  いう1点を知っていれば、容易に正解に達する。順序として、
    正解の肢2から解説を行う。

 ◆   各肢の検討

   肢2について。

   かつて、本講座では、根本問題・用語解説と題して、該当部分の
 解説も行った(サイト38回参照)。

 ◇第38回
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/814527.html
 
 以下において、再説する。

 ○不服申立ての前置

 「訴願前置主義」  
  
   昭和37年に現在の行政事件訴訟法が制定される前の制度である。
  行政庁に対して、異義などができる場合には、それを行ってから
  でなければ処分の取消訴訟を起こすことはできない。

 「自由選択主義」
 
   行政上の不服申立てを先にするかいきなり訴訟を提起するか、両者
  を平行して行うかすべて私人の自由な選択に任せるべきである。
    行政事件訴訟法8条1項が規定する現在の制度。

   同法8条1項ただし書きは、例外を認めている。個別の法が例外を
  定めている場合がたいへん多くなっていて、「その結果、現実には
 不服申立ての前置という要件がふたたび取消訴訟の重要な訴訟要件
  となってしまっているということを否定できない状況」(入門220
 頁)である。

   以上のとおり、現行法では、末尾のような問題点があるにせよ、
 「自由選択主義」が原則であるから、本肢は、現行法に対する問題点
 にはなりえない。
  Aに挿入すべきものとしては、本肢が正解である。

 ○ 類似の過去問の肢

  行政事件訴訟法によれば、取消訴訟は、必ず審査請求を経てからで
 なければ提起することはできない。
 (平成12年問11肢4)
 
  正しくない。
  
  
   審査請求できる処分については、それについての裁決を経ること
 なく取消訴訟を提起することはできないとするのが行政事件訴訟法
  の原則であるが、審査請求から3か月を経過しても裁決がなされ
 ないときは、裁決を経ることなく取消訴訟を提起できる。
  (平成18年問17肢3)

  正しくない。

  前半が正しくないことで勝負はつくが、この際、後半についても、条文
 知識を整理しておきたい。
  
  個別の法が不服申立ての前置を認めている場合には、当該記述は妥当
 する(行訴法8条2項1号)。本肢の前半を修正すれば、「正しい」へ
  と即座に移行する。
  このように遊ぶことも、過去問を解く妙味と言えよう。
  みなさま、「余裕」デスヨ!!

 
 ◆  その他の肢について
 
 ○ 肢1・3・4・5等の問題点があるため、行政不服審査法改正案が
    上程されたが、衆議院解散で審議未了廃案となった。
   
   いずれ、この法案が成立すれば、我々は、この法律を勉強しなければ
   ならないことになる。

 肢1について

  行審法1条2項によると、「行政上の不服申立て」については、個別の
 法で定め得るので、行審法によらない不服申立ての仕組みが多数あること
 になる。

 ○ 類似の過去問

 「不服申立て」に関する法律の定めは、行政不服審査法にしか存在して
 いない。
 (平成14年問15肢1)

  正しくない。

   法は、不服申立制度全般について統一的、整合的に規律することを
 目的とするので、別に個別の法令で特別な不服申立制度を規定すること
 はできない。(平成20年問15 肢4)

  正しくない。


 肢3・4・5について。

   行審法に関し、以上の問題点があることに注目せよ!!

   なお、5について、行審法に不服申立て期間の定めがある。
   (面倒であれば、飛ばしてもらっても差し支えないかもしれない)

 14条1項・45条・53条→第1回目の不服申立は60日以内、
 2度目の申立て30日以内

 14条3項→この1年の期間は、異議申立ておよび再審査請求にも
 準用(48条・56条)

  前者の60日・30日の期間は天災その他「やむをえない理由」
 があるとき、後者の1年の期間は「正当な理由」があるときは、
 「この限りではない」(14条1項但書・3項但書・48条・
 56条)。

 (以上、読本259頁参照)
  
  
 ◆ 付 言

   問題文の中で、平成16年の行政事件訴訟法改正についてふれられ
 いるが、、当該テーマに基づいて出題された過去問として、平成17
 年度・問題16および平成18年度・問題18がある。
 
  これら問題については、サイト41回で解説がされているので、
  参照されたい。

 ◇第41回
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/854713.html


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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