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行政事件訴訟法 第68回

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        ★ 過去問の詳細な解説・第68回 ★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政事件訴訟法

     
  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成21年度問題17
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   行政事件訴訟法に定められた仮の救済制度に関する次の記述の
 うち、正しいものはどれか。

   1 行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為については、
   行政事件訴訟法の定める執行停止、仮の義務付けおよび仮の差
   止めのほか、民事保全法に規定する仮処分を行うことができる。
   
   2 仮の義務付けおよび仮の差止めは、それぞれ義務付け訴訟ないし
   差止め訴訟を提起しなければ申し立てることができないが、執行
     停止については、取消訴訟または無効等確認訴訟を提起しなくても、
     単独でこれを申し立てることができる

   3 申請に対する拒否処分に対して執行停止を申し立て、それが認め
     られた場合、当該申請が認められたのと同じ状態をもたらすことに
     なるので、その限りにおいて当該処分についての仮の義務付けが認
     められたのと変わりがない。

  4 執行停止は、本案について理由がないとみえるときはすることが
     できないのに対して、仮の義務付けおよび仮の差止は、本案について
   理由があるとみえるときでなければすることができない。

   5 処分の執行停止は、当該処分の相手方のほか、一定の第三者も申し
     立てることができるが、処分の仮の義務付けおよび仮の差止めは、
     当該処分の相手方に限り申し立てることができる。
 
  

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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 
 ◆ 各肢の検討


  ● 肢1について。

  行訴法44条によれば、「行政庁の処分その他の公権力の行使に
 当たる行為」ついては、仮処分が許されないとしている。

  したがって、本肢は誤りである。

   なお、次の指摘は大切である。

   「・・この仮処分制限の代償として、抗告訴訟について執行停止
   、仮の義務付け、仮の差止めという仮の救済制度が設けられて
  いる」(前掲 読本354頁)
 
   ここにおいて、本問のテーマの導入部分が提示されたことになる。

 
 ● 肢2について。

 (1)仮の義務付けの積極的要件として、義務付け訴訟の提起を
    要する(行訴法37条の5第1項)。

     この点において、本肢は正しい。

 (2)仮の差止めいついても、同様に差止め訴訟の提起を要する
    (行訴法37条の5第2項)。

     この点も、本肢は正しい。
  
 (3)執行停止の形式的要件として、「処分の取消しの訴えの提起
   があること、すなわち本案訴訟である取り消し訴訟が適法に裁
   判所に提起されていることが必要である」(行訴法25条2項)
    
  (前掲 読本 348頁)

   なお、当該規定は、無効等確認訴訟にも準用されていること
  にも注意すべきである(行訴法38条3項)。
 
     (3)に反する本肢は、全体として、正しくない。


   ○ 関連事項

   義務付け訴訟に関連して、平成19年度過去問・問題17肢3(正しい)
 とその解説を掲げておく(サイト36回)。

   
    Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合
  において、Xが入園承諾の義務付訴訟を提起する場合には、同時に
    拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなければ
    ならない。

  《解説》 

  不作為の違法確認では、違法だということの「確認」を求めるだけで
  あるから、有効であるとはいえないため、裁判所が行政庁に何らかの
  行為をすべきことを命ずる判決することが要請される。これが3条6号
  の義務付け訴訟である。
  この義務付け訴訟の場合(3条6項2号=申請型不作為≪入門≫)には、
 不作為の違法確認訴訟も併合して行わなければならない
(37条の3第3項1号)。
  つまり、建築確認申請に対し、行政庁の不作為のあった場合、これに
 応答するよう求める訴えがこれに該当する。
 
   これに対し、本肢のように、申請に対して、すでに拒否処分がなされた
 場合(入園の拒否)において、義務付け(入園の承諾)訴訟を提起する
 場合には、同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して
 提起しな ければならない(37条の3第3項2号)。注(1)(2)

 したがって、本肢が正しい。

  注
(1) 義務付け訴訟は、不作為違法確認訴訟・取消訴訟・無効確認訴訟の
    補充的な制度である(入門)。だから、当該訴訟には、以上いづれかの
    抗告訴訟を併合する必要があるといえる。

 (2)義務付け訴訟にはもうひとつある。これが、3条6項1号に該当する
    「直接型不作為」(入門)である。これは、隣地の建物が違法建築で
    ある場合に、行政庁に対し、改善命令を訴求するものであるから、肢1
    に相当する事案である。つまり、肢1のような申請型不作為でないもの
    には、不作為違法確認訴訟の提起はできないが、義務付け訴訟はできる
    のである。

   参考 肢1とその解説
 
  Xの家の隣地にある建築物が建築基準法に違反した危険なもので
   あるにもかかわらず、建築基準法上の規制権限の発動がなされない
  場合、Xは、当該規制権限の不行使につき、不作為違法確認訴訟
   を提起することができる。

  ≪解説≫
  
   3条5項による不作為の違法確認の訴えとは、建築確認の申請をした
 のにいつまでも返事がない、あるいはなんらかの営業許可の申請をした
 のだけれど、いつまでたっても行政庁からの返事がない、というような
 場合に、裁判所に、なんらの返事もしないのは違法である、といことを
 確認してもらうのがこの訴え、ということになる(入門)。
 本肢のように、近隣の者が、規制権限の不行使(たとえば、取り壊しを
 命ずる処分の不行使)を理由にして当該訴えを提起することはできない。

  正しくない。

 

 
  ● 肢3について。

   本肢は題意が掴みにくいが、生活保護の申請の拒否処分を例に説明
 する。

  当該拒否処分に対して、取消判決があれば、判決の拘束力に基づいて
 行政庁は、判決の趣旨に従って、生活保護の給付決定をしなければな
 らない。(行訴法33条2項)。
  しかし、執行停止の決定には行訴法33条2項の準用がないので、
 裁判所が執行停止の決定をしても、行政庁は何らの措置をとることも
 義務づけられない。
  もし、取消判決前に行政庁を義務づけようとすると、肢2で述べた
 「仮の義務付け」を申し立てることになる。
  すなわち、当該拒否処分については、取消訴訟と義務付け訴訟を
 併合提起し、仮の救済である「仮の義務付け」を用いることになる
  のである。
 (以上 前掲 読本 351頁 参照)


   上記記述は、「執行停止が認められた場合、当該処分についての
 仮の義務付けが認められたのと変わりがない」という本肢の趣旨に
 明らかに反する。
 

 誤りである。

   ちなみに、本講座では、第43回F 平成18年度過去問・問題15
 肢 3 の解説において、上記テーマについて説明しているので、
 本講座を丁寧に受講されていれば、平成21年度本試験・本肢の
  題意を把握できたと思う。
  
 
  
 ● 肢4について。

   執行停止については、25条4項に規定がある。仮の義務付け
  および仮の差止めについては、37条の5第1項・2項に規定が
  ある。

   本肢が正しくて、正解である。

  ただし、次の2点に注意せよ。

   (1) 本案について理由がない=行政処分に、取消事由に当たる
       違法性がない。

 (2) 「本案について理由がないとみえる」は、執行停止にあって
   は、消極要件であり、仮の義務付けおよび仮の差止にあっては
   積極要件である。(前掲書 読本348頁 353頁)
    
        つまり、本肢は、ここに焦点を当てている。
      あるいは、「仮の義務付け」等にあっては、厳格な要件が
   設けられているということがが頭の隅にあれば、この肢が
      正しいという見当がついたかもしれない。

 ● 肢5について


   行訴法25条2項によれば、執行停止を申立てるには、本案訴訟
 である取消訴訟が適法に裁判所に提起されていることが必要である。
  
   取消訴訟の原告適格について、行訴法9条2項は、処分の相手方以外
 の第三者利害関係人にもその適格を認める

 ○  たとえば、マンションの建設についての建築確認に対し、第三者で
  ある近隣の住民が取消訴訟を起こす場合である。この場合、その者
  が執行停止を求めることができる。

 × 行訴法3条6項1号に該当する「直接型不作為」に基づく「義務付け
  の訴え」の提起があった場合において、[仮の義務付け]ができる。
  さきのマンション建設についていえば、第三者が、改善命令を訴求し、
 「仮の義務付け」ができることになる(37条5第1項)。    
     

 × 行訴法3条7号の「差止めの訴え」の提起があった場合において、
  「仮の差止め」ができる。第三者が違法建築の差止めの訴えを提起
  し、「仮の差止め」ができる(37条の5第2項)。

  以上○の記述は、本肢に合致するが、×の記述は、本肢に反する。
 全体として、誤りである。

  この肢を正確に理解しようとすれば、本案訴訟を考察の対象とする
 と同時に条文も錯綜していて、大変である。しかし、一度時間をかけ
 てその仕組みを把握しておく必要がある。これらは、行政法の中枢
 部分であり、これからの本試験で繰り返し問われる可能性がある。


  ◆ 付 言

   本問は、新型の問題であり、過去問とは重なり難い。しかし、前述
 したように、一部重なる。
  そのほかにも、下記のサイトでも、一部重なりがある。

     第36回・第41回・第43回

 ◇第36回はコチラ↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/792006.html
 ◇第41回はコチラ↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/854713.html
 ◇第43回はコチラ↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/870899.html


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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