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行政事件訴訟法 第69回
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★ 【過去問の詳細な解説】 第69回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政事件訴訟法
【目次】 問題・解説
【ピックアップ】
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■ 問題 平成21年度問題18
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行政事件訴訟法の定める当事者訴訟に関する次の記述のうち、正
しいものはどれか。
1 当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分に関する訴訟
で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするも
のは、当事者訴訟である。
2 地方自治法の定める住民訴訟のうち、当該執行機関または職員
に対する怠る事実の違法確認請求は、当事者訴訟である。
3 国または公共団体の機関相互間における権限の存否に関する紛
争についての訴訟は、公法上の法律関係に関するものであるから、
当事者訴訟である。
4 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされな
いとき、行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟
は、当事者訴訟である。
5 公職選挙法に定める選挙無効訴訟は、国民の選挙権に関する訴
訟であるから、当事者訴訟である。
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■ 解説
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☆ 参照書籍
行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
/有斐閣
◆ 序説
本問は、行訴法4条の条文が頭にあれば、1が正しいもので
あると即答し得たであろう。
しかし、それだけでは、解説にならないので、将来の本試験を
見据えて、より詳しく見ておく必要がある。「当事者訴訟」は
近時注目をあびているようであり、今後とも形を換えて出題
される可能性がある。
◆ 総説
行政訴訟は、主観訴訟と客観訴訟に分かれる
○ 主観訴訟=権利保護の制度・つまり救済の制度。
抗告訴訟と当事者訴訟に分かれる。
「抗告訴訟」=取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認
・義務付け訴訟・差止訴訟
「当事者訴訟」=実質的当事者訴訟・形式的当事者訴訟
○ 客観訴訟=権利救済のためでなく、国・公共団体の違法行為を
是正し、その活動の適法性を確保することを目的と
する。
「民衆訴訟」・「機関訴訟」
(前掲書・読本 266頁の図表を参考にした)
◆ 各肢の検討
● 肢1について。
本肢は、行訴法4条前段の「形式的当事者訴訟」である。
これに対比されるのが同条後段の「実質的当事者訴訟」である。
いずれも、総説の「当事者訴訟」に含まれるる。
いずれにせよ、本肢が当事者訴訟であることに相違ないから、本肢
は正しい。
以下において、「形式的当事者訴訟}について説明する。
まず、条文の意味するところは、難解であるが、「本来は取消訴訟
であるべきところ、法律の規定により当事者訴訟とされているので
『形式的当事者訴訟」と呼ばれている。」(読本270頁)
「この訴訟の代表例は、土地収用の場合において土地所有者に支払
われる損失補償に関する争いである。損失補償は、都道府県に設
けらている収用委員会の裁決によって定められるが、、裁決は
行政処分であり・・従って土地所有者がその損失補償に不服がある
場合には、本来収用委員会を被告として取消訴訟を提起しなければ
ならないはずである。ところが、土地収用法133条2項は、損失
補償に関する訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり、土地
所有者と土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者との間
で行われるべきものとしている。」(読本270頁)
条文の定義は、上のような関係の訴訟を意味しているとされる
(このあたりまでの把握は、本試験の射程距離といえるのでは
ないか)。
これに対して、行訴法4後段の「実質的当事者訴訟」に関しては、
最大判H17・9・14を参照すべきである(これも本試験の射程
距離といえる)。
在外国民が「次回の衆議院の総選挙における小選挙区選出議員の
選挙および参議院の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、
在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票できる地位にあ
ること」の確認を求める訴えは「公法上の法律関係に関する訴え」
として確認の利益が肯定され適法である。
(入門211頁以下・読本337頁以下)
なお、この他、当該訴訟の例として、「公務員の身分の確認を求
める訴訟や公務員の俸給の支払を求める訴訟などがこれに該当する。」
とされる(読本 269頁)
☆ 関連事項
過去問 平成19年度・問題19をみよ!!
行政事件訴訟法4条の当事者訴訟に当たるものの組合せとして
正しいものとして、次の肢が挙げられている。
ア 土地収用法に基づいて、土地所有者が起業者を被告として
提起する損失補償に関する訴え
オ 日本国籍を有することの確認の訴え
アが、形式的当事者訴訟であり、オが、実質的当事者訴訟である。
● 肢2・肢5について
地方自治法242条の2に定める「住民訴訟」は、行訴法5条
が規定する民衆訴訟である(総説・○客観訴訟「民衆訴訟」参照)。
肢2のように、「住民訴訟」のうち、一部が「当事者訴訟」に
になることはない。
選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
これもまた、民衆訴訟である(総説参照)。
肢5は誤り。
次の指摘に注意。
「選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
住民訴訟は地方自治法(242条の2)で定められている。
行政事件訴訟法5条の規定は、それらの訴訟を行政訴訟に
組み込むという意味を持っている」(読本271頁)
↓
このように、法律・条文の仕組みを体系的にとらえる
ことが重要。
↓
過去問を素材として、「行政法」の体系的理解を!!
という実践例(その他講座では、このような指導は
しないというのが、私の実感)。
● 肢3について
本肢は、行訴法6条の機関訴訟である(総説・○客観訴訟
「機関訴訟」参照)。当事者訴訟ではない。
次の指摘に注意
「機関訴訟も、法律が定めている場合に限り、法律で認
められた者だけが提起することができる」(読本271
頁)
● 肢4について
本肢は、行訴法3条6項の規定する「抗告訴訟」のなかの
義務付け訴訟である(総説・参照)。
なお、次の条文は、常に念頭におくべきである。
行訴法3条1項
この法律において、「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力
の行使に関する不服の訴訟をいう。
行政事件訴訟法の中心的命題である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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