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国家賠償法=営造物管理責任 第70回

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            ★ 過去問の詳細な解説  第70回  ★

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                             PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 国家賠償法=営造物管理責任

     
  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成21年度問題19
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   国家賠償法2条にいう公の営造物に関する次の記述のうち、妥当
 なものはどれか。

  1 公の営造物とは、国や公共団体が所有するすべての物的施設
    をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られる。

  2 公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、公の営造物が通常有
  すべき安全性を欠いていることをいうが、賠償責任が成立する
    のは、当該安全性の欠如について過失があった場合に限られる。

  3 河川・海浜の自然公園は公の営造物に当たらないが、これに
    付随する堤防や防波堤は人工公物であり公の営造物に当たるの
    で、賠償責任が成立するのは、堤防等に起因する損害の場合に
    限られる。

  4 公の営造物の管理者と費用負担者とが異なる場合、被害者に
    対して賠償責任を負うのは、費用負担者に限られる。

  5 公の営造物の設置または管理に起因する損害について賠償を
  請求することができるのは、その利用者に限られる。

   
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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・ 行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆ 各肢の検討

 
   ○ 1・3にについて。

     国家賠償法2条1項にいう、「公の営造物」とは、以下のような物
   を指す。

   一般的には、国・公共団体によって設置・管理され公の目的に供さ
  れている物、つまり講学上の公物(公共施設と言われる物を含む)を
    指す。
    (前掲書 読本 389頁)

   したがって、肢1の「公の用に供しているものに限られる}という
  のは正しい。
   
   肢1が正解である。

   その意味では、本問は、極めて基本的知識が問われていることになる。

  
   具体的に、次のような物が「営造物」として認められている。
  
    すなわち、道路・河川(これらは、同条1項で「営造物」の例と
      して挙げられている)、国公立学校の教育施設、旧国鉄時代の新幹線、
   国営空港、自衛隊機、公用車、警察官のピストルといったものである。
    動産であるか不動産であるか、人工公物であるか自然公物であるか
      を問わない。
   (読本 389頁)

    以上のとおり、「営造物」には、「自然公物」・「人工公物」も含む
      ので、肢3は妥当でない。

   ★ 過去問との対比

    国家賠償法第2条に規定する「公の営造物」には、動産は含まれない。
    (平成10年度問37 肢3)

     前述のとおり、動産も含まれるので、×

     国家賠償法2条に定める営造物は、道路・河川などの不動産を指し、
   公共団体が管理する動産の瑕疵については、それを管理する公務員の
      同法1条に基づく責任が問題となるほかは、同法2条の適用を受ける
   ことはない。
    (平成19年度問20 肢1)

    動産も含まれるので、同法2条の適用を受けるので、×


    関連事項

    「営造物」に関しては、「・・国・公共団体がこれらについて所有権
       や管理の権限を有しているかどうかも問わない」
     (読本 389頁)

     したがって、以下の過去問の肢は×

     営造物の管理責任は、公物として正規に管理されている行政財産に
       ついてのみ及び、事実上私人によって道路として利用されているに過
    ぎない公有地の管理責任については、国家賠償法2条の適用を受ける
    ことはない。
    (平成19年度問20 肢2)

     判例としては、道路中央線付近に故障した大型自動車が長時間に
    わたって放置された事例について、最高裁は、道路管理に瑕疵が
        あったとして、国賠法2条の適用を認めている(最判昭50年7月
    25日)。
    (前掲入門 268頁)

  ○ 肢2について

    最高裁判所1970(昭和45)8月20日判決=高知落石事件

   国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物
    が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および
    公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としない。

   以上判例によれば、「当該安全性の欠如について過失があった場合
  に限られる」というのは、妥当でない。

   設置・管理の瑕疵の判断の枠組みの中で、予見可能性・回避可能
    性が判断されるので、不可抗力の場合には、国・公共団体の賠償責任が
  課されない。(読本 394頁)ことに注意せよ。

  
 ○ 肢4について

     国賠法3条1項によれば、公の営造物の設置管理者と費用負担者とが
   異なる場合には、被害者はいずれに対しても賠償を請求することができ
   できることになっているので、妥当でない。


  ★ 過去問との対比

      営造物の管理責任は、その営造物を設置し、管理する責任を有する
    公共団体が負い、営造物の設置、管理の費用を負担するに過ぎない公
  共団体が負うことはない。
  ( 平成20年度問20・肢5)

    当然×でる。

     
  ○ 肢5について

  道路の設置・管理に瑕疵が認められれば、ケガをした道路の利用者で
  ある通行人には、賠償が認められる。

  「これに加え、道路それ自体には瑕疵はないが、そこを走る自動車に
  よる騒音や排気ガスで沿道住民に健康上の被害が発生した場合、
    ここでは、沿道住民は非利用者としての立場において損害を被って
  いるのであるが、この場合も、道路の設置・管理に瑕疵があると
  して賠償が認められている。
  
  このような非利用者としての立場との関係で認められる瑕疵は「機能
  的瑕疵」、「社会的営造物瑕疵」あるいは「供用関連瑕疵」と呼ばれて
  いる。
    国家賠償法2条1項にいう営造物の管理は、非利用者との関係をも
  含んでいるのである(同旨 最高裁判所大法廷1981(昭和56年)
  12月16日判決=大阪空港訴訟、最高裁判所1955(平成7)7月
   7日判決=国道43号線訴訟)。」
 (読本 392頁)

   「その利用者に限られる」ことはないので、本肢は妥当でない。

   この肢5の短い記述の中には、前述した論点が含まれているのである。

   本講座では、本試験における、将来の発展的問題に対処するために、
  掘り下げた考察を行うことをその特徴としているのである。


   以上により、本問の正解は、1である。

   

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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