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民法・総則(虚偽表示等)第7回

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第7回 】★      
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 2009/1/27

             
             PRODUCE by  藤本 昌一
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【テーマ】 民法・総則

【目 次】 1 虚偽表示等(問題)

      
      2 解説


 
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■ 民法総則・問題(虚偽表示等)
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 (平成20年度過去問)

問題 27


Aが自己の所有する甲土地をBと通謀してBに売却(仮装売買)した
場合に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に
照らし、妥当でないものの組合わせはどれか。


ア Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCは、
A・B間の無効を主張して、B・C間の売買を解消することができる。

イ Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCに対して、
AはA・B間の売買の無効を対抗することはできないが、Bはこれを
対抗することができる。

ウ Aの一般債権者Dは、A・B間の売買の無効を主張して、Bに対
して、甲土地のAへの返還を請求できる。

エ Bが甲土地につきAに無断でEのために抵当権を設定した場合に、
Aは、善意のEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することがで
きない。

オ Bの一般債権者FがA・B間の仮装売買について善意のときは、
Aは、Fに対して、Fの甲土地に対する差押えの前であっても、
A・B間の売買の無効を対抗することができない。


1 ア・イ  2 ア・ウ  3 ア・オ 4 イ・エ 5 イ・オ
 


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■ 解説
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◎ 状況把握

 
 甲土地
      通謀虚偽表示
 所有者A−ーーーーB ア・善意の第3者C
              イ・善意の第3者C
              ウ・Aの一般債権者D
              エ・善意の第3者E
              オ・Bの一般債権者F(差押え前)

  注・イ 善意とは、一般の用法と異なり、「通謀虚偽表示」
  であるという事実を「知らない」ということ。ロ 通謀虚偽
  表示とは、AがBと通謀して、真実でない外形を作出すること。
  (ズバリ民法94条1項)


◎ ポイント

1 まず、「判例に照らし」という言葉に惑わされないこと。
確かに、細かく調べると、判例は存在します。しかし、無数
にある判例を全部覚えることは至難のわざ。勉強の泥沼化。

2 これは、きちんと、法理論を身につけることによって、
正解に導くことができます。判例と言いますが、この法理論
の適用の結果が最高裁判所によって示されたのが判例と心得る
べし。

3 この問題については、法解釈ないし法理論としての3つの
ポイントに絞られます。

(1)民法94条2項の解釈(基本)


A・B間の通謀虚偽表示は、善意の第3者に対抗できない。


(2)民法94条2項の保護を受けるための第3者の要件。


虚偽表示を信頼して新たな行為をしたこと。(一粒社・民法1)


(3)無効の特質

はじめから何らかの法律上の効力を認められない無効な行為は、
だれでもその効力を否定できる。これが、詐欺とか強迫における
取り消しとの違いですね。取り消しうる行為は取消権者に限って
その効力を否定できるのですね。(民法96条・詐欺とか強迫を
受けたものに限る)

◎ 以上の状況把握とポイントの獲得さえできれば、本問は容易
に正解に導くことができます。


アについて。

Cは、民法94条2項に基づいて、善意の第3者として、保護を
受けることができます【ポイント(1)】。なお、転売を受けた
Cが、ポイント(2)に該当することはいうまでもありません。

しかし、Bは、A・B間の無効を主張することもできます。
そうすれば、B・C間も無効になり、CはB・C間の売買を
解消することができます。A・B間の無効は、だれでも主張
できるのですから、Cに限ってこの主張が許されないという
ことはありません【ポイント(3)】
したがって、これは正しいです。

実は、私も少し迷いましたが、以上の論理構成をすれば、
当然のことですね。みなさんが、今後、市販の解説書を見られると、
学者の説として引用されているかもしれませんが、あまり
引き込まれないことです。

 

イについて。

これは、ポイント(1)(2)からの当然の帰結により誤りです。
A・B間の無効を善意の第3者であるCに対抗できないという
ことは、AもそしてBもいずれも、A・B間の売買の無効を
Cに対抗しえないことを意味します。
Bが対抗し得るというのが、誤りです。


ウについて。

これは、ポイント(3)により、無効はだれからでも主張できるのです
から、Aの債権者Dも無効を主張ができ、土地の返還を請求できます。
この肢は、正しいです。


エについて。

これは、転売を受けた場合ではありませんが、抵当権の設定を受けて
抵当権者になった善意の第3者Eも、「虚偽表示を信じて新たな行為
をした者」【ポイント(2)】に該当します。
したがって、これは正しい肢です。

判例(大判昭和4・12・17)があるようですが、こんな細かい判例まで
覚える必要はありません。


オについて。

この場合は、ポイント(2)を基準に考察すればよいと思います。
Bの一般債権者Fは、前から一般債権者という立場ですから、
「虚偽表示を信頼して新たな行為をしたこと」には該当しませんが、
裁判所に競売の申立をし差押えをした場合にはじめて、
民法94条2項の善意の第3者に該当することになるのです。
したがって、Aは、Fの差押えの前であれば、無効を対抗する
ことができます。
したがって、これは、誤りです。

これも判例(大判昭和18・12・22)があるようですが、
これを知る必要はありません。

以上 イ・オが誤りで、5が正解です。

なお、この解説で掲げた判例は、模範六法にも載っていませんし、
その検索までしないと気がすまないとなると、勉強の泥沼化に
向かっているということになりますので、注意してください。


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