行政書士試験独学合格を助ける講座

憲法=内閣と独立行政委員会 第89回

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         ★ 過去問の詳細な解説  第89回  ★

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                             PRODUCED BY 藤本 昌一
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   【テーマ】

      憲法=内閣と独立行政委員会

      すでに、サイト憲法問題(統治機構)第4回において、掲載済
     みですが、常にその解説が不適切であったことが気になっていま
     した。この機会にその点も改め、改めて解説を行うことにします。
      
       なお、本試験では、近時、憲法に関しては、「考えさせる問題」
     の出題が顕著ですが、この問題もその傾向に沿うものであって、
   今回は、じっくりと取り組んでほしいと思います。
  
  【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
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  この問題集は、長年の本試験研究の成果を踏まえ、私が渾身の力をふ
  りしぼり、以下の意図をもって作成したものですが、そのことが公にな
 り多くの購入者を今もなお、いただいていますことは、光栄であります。
 
  
 1、本試験と同じ形式を採用し、実際にも、来る本試験との重なりを期
    待しました。

 2、特に、【解説欄】に勢力を注ぎ、関連する事項に極力言及し、応用
    力が養成されるようにこころがけました。

 3、89回にもわたる当該「サイト」欄と連動させることにより、体系
    的理解を助けることを目的にしました。

  
  最後にわたしの目下の最大の望みは、1人でも多くの方が、本誌を活用
 され、直前に迫りつつある本試験で合格の栄誉に輝かれることであります。
  
  
 
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 ■ 平成19年度・問題4
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   国家公務員法102条1項が、その禁止対象とする「政治的行為」の
 範囲の確定を、独立行政委員会である人事院にゆだねていることの是非
 をめぐっては、次のようにさまざまな意見があり得る。それらのうち、
 内閣が行う高度に政治的な統治の作用と、一般の国家公務員による行政
 の作用とは質的に異なるという見地に基づく意見は、どれか。

 1 憲法が「行政権はすべて内閣に属する」と規定しているにもかかわ
   らず、公務員の人事管理を内閣のコントロールが及ばない独立行政委
   員会にゆだねるのは、違憲である。

 2 公務員の政治的中立性を担保するためには、「政治的行為」の確定
  それ自体を政治問題にしないことが重要で、これを議会でなく人事院
 にゆだねるのは適切な立法政策である。

 3 人事院の定める「政治的行為」の範囲は、同時に国家公務員法に
   よる処罰の範囲を定める構成要件にもなるため、憲法の予定する立
  法の委任の範囲を超えており、違憲である。

 4 国家公務員で人事官の弾劾訴追が国会の権限とされていることから、
   国会のコントロールが及んでおり、人事院規則は法律の忠実な具体化
  であるといえる。

 5 行政各部の政治的中立性と内閣の議会に対する政治的責任の問題は
   別であり、内閣の所轄する人事院に対して国会による民主的統制が
   及ばなくても、合憲である。

 

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■ 解説
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 ◆ 参考文献

  憲法  芦部 信喜 著  岩波書店 

 ◆ 総 説

  サイト4号における解説は、初期のものであったこともあり、
  肩に力が入りすぎていると同時に、適切でないところも散見さ
 れる。

 ☆サイト4回はこちら↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/70949.html

  また、本問自体、殊更に難問にする意図も見え隠れしていて、
 必ずしもし題意が明確とはいえないところもあるので、正解を
 導けなくても、他の基本に忠実な問題で、点数を稼げばよいと
 いえる。

  しかし、この問題文の中には、重要な論点が提示されている
  ので、ここで、本問を検討することは、本試験に向け、意味のあ
  ることと思う。

 
 ◆  論点の提示

   1 「行政権は、内閣に属する」(憲法65条)のである。
    そこで、行政権を行使する人事院は、内閣から多かれ少
   なかれ独立して活動している行政委員会に属するので、そ
      の合憲性が問題になる。

  2 人事院の行使する行政権に基づく任務をみた場合、その
      中立性を要求される人事行政と、内閣が行う高度に政治的
      な統治作用とに分かれる。

  3 前者は、本問でいう「一般の国家公務員による行政作用」
      に属するのに対して、後者は、本問でいう人事院に委ねられ
   た国家公務員に対する「その禁止対象とする『政治的行為』
   の範囲の確定」に属する。

 ◆ 各肢の検討


  ○ 1について。

   本肢は、人事院の行う人事行政のみに焦点を置いて、これが
  違憲であるするのであるから、二つの作用が質的に異なってい
  るという見地に基づいていない。

  ○ 2について。

   本肢は、「政治的行為の確定」という「高度の統治作用」
  のみに焦点を合わせて、合憲であるというのであるから、
  二つの作用が質的に異なるという見地に基づいていない。

  ○ 3について。

   本肢は、「政治的行為」の範囲の確定のみを問題とし、違憲
    とするので、同様に二つの作用が質的に異なるという見地に基
  づいていない。

  注 本肢の内容の説明

   ここでは、具体的に何を言っているのか(学者の論争としては、
  ポピユラーな題)を説明すると、以下のとおりである。

  特に「国家公務員による処罰の範囲を定める構成要件」という
 ことが分かり難いところであるが、たとえば、刑法の殺人罪を例
 にとると、処罰の範囲を定める犯罪の内容である「人を殺す」と
  いうことが構成要件である。。
  人事院の定める「政治的行為」の中味もまた、禁止事項であって、
 違反すれば処罰されることになるので、、「処罰の範囲を定める
 構成要件」ということになる。
  そして、憲法第73条6項但し書きによると、法律の委任がなけ
  れば、人を罰することができないのに、法律の委任なしに、人事院が、
 人事院規則で勝手に国家公務員を処罰することは、違憲である。
  以上が本肢の趣旨である。

  ○ 4について。

  本肢は、人事院規則で、人事院が「政治的行為」の範囲を確定
  することのみを問題にし、合憲説をとるものであるから、同様に
 二つの作用が質的に異なるという見地に基づいていない。

  ○ 5について。

   本肢では、国会による民主的統制がポイントになる。

   行政権が内閣に属するということは、内閣における、行政権
  の行使についての国会に対する連帯責任(66条3項)を通じ
  て、人事院に対して、国会による民主的統制が及んでいる必要
    がある。
   したがって、行政各部の政治的中立性の要請を根拠に内閣
   から独立した人事院が人事行政を行うことは違憲である疑いが
  ある。

     これに対して、「政治的行為の確定」という内閣が行う高度
 に政治的な統治の作用は、そもそも国会の民主的な統制になじま
 ないから、内閣から独立した人事院に委ねても合憲である。

  以上の見地は、内閣が行う高度に政治的な作用(「政治的行為」
 の確定)と、一般の公務員による行政作用(行政各部の政治的中立
 性の要請される人事行政)とは質的に異なるということに基づくも
 のである。

   しかし、本肢の記述はいかにも舌足らずであるとともに、不明確
 であり、本肢から前述した趣旨を読み取れというのは無理である。

 そのことが、殊更、本問を難問にしているように思えてならない。

  いずれにせよ、結論としては、1〜4と5との比較検討により、
 本肢を正解にせざるを得ない。


 ◆ 付 言

  本問に関しては、1ないし4の肢は、人事院ないし 行政独立
 委員会の合憲性に関する重要な見解であるので、本問の検討を通
 じて、むしろ、これらを正確に把握することの方が肝要であると
 思う。


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 ■ 平成21年度・問題7
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   衆議院と参議院の議決に一致がみられない状況において、クローズ
 アップされてくるのが両院協議会の存在である。日本国憲法の定めに
 よると、両院協議会を必ずしも開くかなくてもよいとされている場合
 は、次のうちどれか。

 1 衆議院が先議した予算について参議院が異なった議決を行った場合

 2 内閣総理大臣の指名について衆参両院が異なった議決を行った場合

 3 衆議院で可決された法律案を参議院が否決した場合

 4  衆議院が承認した条約を参議院が承認しない場合

 5 参議院が承認した条約を衆議院が承認しない場合
   
 
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■ 解説
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  ◆ 総説

  衆議院の議決が優先される事項

  1 予算の議決(60条2項)

  2 条約の承認(61条)

  3 内閣総理大臣の指名(67条2項)

  ◎ いずれも参議院が異なった議決をした場合は、両院協議会
   を開催。それでも意見が一致しない場合は、衆議院の議決が
   国会の議決に。

    1・2は30日間 3は10日間 参議院が議決しない
   ときも衆議院の議決が国会の議決に。


  4 法律案の議決(59条2項・同条4項)

  ◎ 衆議院が可決し、参議院がそれと異なった議決をするか、
   60日以内に議決しなかった場合、衆議院の3分の2以上
   の多数で再可決すると成立。

   ★ 参考事項

   衆議院だけが持つ権限

  1 予算を先に審議する(60条1項)

  2 内閣不信任案決議ができる(69条)

 
 ◆ 各肢の検討

  ● 総説1・2・3◎によれば、肢1・2・4・5においては、両院
   協議会を必ず開かなくてはならない。

   これは、憲法上開く必要があり、これを必要的両院協議会という
   (憲法1 清宮四郎 有斐閣)。

  ●  総説4◎によれば、肢3では、両院協議会を必ず開かなくても
   よい。

    しかし、法律案の議決にあたり、衆議院が開くことを要求した
      場合、または参議院が要求し、衆議院がそれに同意した場合も開
   かれる(憲法59条3項・国会法84条)。これを任意的両院協
      議会という(前掲書)。


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   以上によれば、両院協議会を必ずしも開かなくてもよいとされている
 場合(任意的両院協議会)は、肢3であるので、3が正解である。

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  ◆ 付 言

  さきに提示した過去問との比較でいえば、同じ点数なのであるから、
 本問で着実に加点するこが大切である。さきの過去問が当たれば、
  もっけの幸いといえるのかもしれない。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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