行政書士試験独学合格を助ける講座
民法 第90回
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★ 過去問の詳細な解説 第90回 ★
=90回達成記念号=
皆様に励まされて、ここまで到達いたしました。
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 民法
ー過去問に関して、登記にまつわる諸問題・その1ー
平成10年度以降の登記のからむ肢を順次とりあげ、解説を行い
ます。本試験準備の有力な武器になることを祈念します。
みなさま各人が工夫を凝らした勉学を進めるための一助となる当
サイトもまた、独自性が求められることは当然であると思料されま
す。
【目次】 問題・解説
【ピックアップ】
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■ 問題集(過去問の出典は省略)・○×を付すること
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1 権利能力なき社団Aが不動産を買い受けた場合において、Aは、法人
に準じて扱われるので、登記実務上、A名義の登記が認められる。( )
2 AがBに対しAの所有する不動産を売却した後に、同不動産を重ねて
Cにも売却した場合において、B、Cのうち、同不動産の引渡しまたは
登記の移転を先に受けた方がその所有権を取得する。( )
3 AがB所有の土地をCに売却した場合、
所有権者Bが自らA名義で登記をして虚偽の外形を積極的に作出し、
そのまま放置していた場合には、Bは、Aを所有者だと信頼して買っ
たCに対抗できない。( )
4 A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、Aが甲地をCに
譲渡した場合、Bは登記なくしてCに対抗できる。( )
5 A所有の甲地がBに譲渡され、さらにAB間の譲渡の事実を知って
いるCに譲渡されてCに所有権移転登記がされた場合、Bは登記な
くしてCに対抗することができる。( )
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■ 解説集(判例に関しては、三省堂発行の平成22年度 模範六法
から引用≪模 、、条1、2、3・・・で表す≫)
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1 最判昭47・6・2・・権利能力なき社団の資産たる不動産について
は、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個
人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者と
する登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個
人名義の登記をすることは、許されないものと解すべきである(摸33
条5)。 ×
なお、前記判例は、次のように判示していることにも注意せよ!
権利能力なき社団の資産たる不動産につき、登記簿上所有名義人
となった代表者がその地位を失い、これに代わる新代表者が選任さ
れたときは、新代表者は、旧代表者に対して、当該不動産につき自
己の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求めることができ
る(同じく摸33条5)。
2 民法177条によれば、不動産に関する物権の変動の対抗要件は、
登記である。引渡しは、対抗要件にならない。 ×
3 民法94条の虚偽表示に該当するには、相手方と通謀することを要
するが、不動産の真実の所有者がBであるにもかかわらずBの意思に
基づいてA名義の登記がなされている場合、この不実の登記につきA
の承諾がなくても本条が類推適用されるというのが、判例(最判昭
45・7・24 同旨最判昭50・4・25)である。
したがって、同条2項の適用により、Bは、Aを所有者だと信頼し
た善意の第三者Cに対抗できない(摸94条23)。 ○
なお、前記判例は、以下のように判示していることに注意。
Aから当該不動産を悪意で譲り受けた丙は保護されないが、丙から
さらに当該不動産を譲り受けた丁は当該不実の登記につき善意である
限り本条2項の第三者として保護される。
これは、権利外観法理の現れとして、登記に限らず、権利の外形を
信頼した第三者の保護一般について問題となること注目すべきである。
4 CがBの時効完成前に譲渡を受けた場合には、BとCは当事者の関
係 に立ち、CがBの時効完成後に譲渡を受けた場合には、両者は、
対抗関係に立つというのが、判例の考え方である(最判昭41・11・
22 最判昭42・7・21 摸177条 12・14)。
本肢では、BとCは後者における、対抗関係に立つので、民法177
条により、Bは登記がなければCに甲地の所有権を対抗できない。
×
末尾において、本肢に関連する○×問題を掲げておく。
5 判例は古くから、177条の第三者は悪意者でもよいとしている
から、登記がなくては対抗できない者に悪意の第三者を含むとして
いる。したがって、Bは登記なくしてCに対抗できない。×
なお、背信的悪意者については、末尾エ 参照。
◎ 末尾
ア A所有の甲地につきBの取得時効完成前において、CがAから甲地を
譲受けて移転登記を経由した場合、Bは時効完成後において、登記なく
してCに対抗できない。( )
イ A所有の甲土地につきBの取得時効が完成し、その間にAの側に何ら
変動がなければ、Bは登記なくしてAに対抗できる。( )
ウ A所有の甲地につきBの取得時効完成前において、CがAから甲地を
譲受けて所有権を取得し、Bの時効完成後に移転登記を経由した場合、
Bは登記なくしてCに対抗できない。( )
エ A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、CがAから甲地を
譲受けて移転登記を経由した場合、Cが背信的悪意者にあたる場合は、
Bは登記なくしてCに対抗できる。( )
《解答》
★ アについて
前記判例理論によれば、B・Cは当事者の関係に立つので、Bは
登記なくして、Cに対抗できる。 ×
★ イについて。
土地の占有者Bの側に、たとえば162条の1項の要件が備わり、その
間、所有者Aの側に何らの変動がなければ、Aは第三者ではないから、B
は登記がなくてもAに対して所有権の取得を主張し、移転登記の請求がで
きる。
A・Bは当事者の関係に立つので、当然だともいえる。
○
★ ウについて。
アの肢では、時効完成前に所有権を取得し、移転登記も経由した場合
であるが、この肢では、時効完成後に移転登記を経由した場合である
どのように考えるべきであろうか。
この場合には、CがBの時効完成前に所有権を取得した時点において、
BとCは当事者の関係に立つのであり、時効完成後にCが登記をした
からといって、BとCが対抗関係に立つと考えるべきではない。
不動産の時効取得者は、時効完成後に登記を経由した当該譲受人に登記
なくして、所有権を対抗しうるとする判例がある(最判昭和42・7・21
摸177条 13)
したがって、BはCに対し、登記なくして所有権を対抗できるのであり、
×
★ エについて。
所有権の移転を受けたと同視される時効取得者と所有権の移転を受けて
登記を備えた者が対抗する場合であるから、177条の適用により「背信的
悪意者」論がもちだされて、当然と言えるのかもしれない。
Cが 背信的悪意者であれば、Bは登記なくしてCに対抗できる。
これについても判例があり、判例は、背信的悪意者を以下のように
捉えている。
(最判平成18・1・17摸177条 35 162条 38)
BとCを登場させる。
Cが、当該不動産の譲渡を受けた時に、Bが多年にわたり当該不動産
を占有している事実を認識しており、Bの登記の欠缺を主張すること
が信義に反するものと認められる事情が存在するときは、Cは背信的
悪意者にあたる。
したがって、本肢は、Bは登記なくしてCに対抗できる場合に
あたる。
○
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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