行政書士試験独学合格を助ける講座
行政法オリジナル問題 第3回
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★ オリジナル問題解答 《第3回 》 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政法
【目次】 解説
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■ 行政法・オリジナル問題 解説
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問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
第89号に掲載してある。
◆第89号はこちら↓
http://archive.mag2.com/0000279296/20110207150232000.html
★ 参考書籍
行政法入門 藤田 宙靖著・ 行政法読本 芝池 義一 /有斐閣
◆ 問題 1
▼ 各肢の検討
○ アについて。
最高裁判所は、行政手続法の行政指導の定義に依拠しながら、「一般
に、行政機関は、その任務ないし所掌事務の範囲内において、一定の
行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為又は不作為を求める
指導、勧告、助言等をすることができ」る、と判示している(前掲
読本57頁)。
したがって、アは正しい。
注
1 上にいう判決とは、1955(平成7)年2月22日のロッキード
事件丸紅ルート大法廷判決のことである。
2 定義は、行手法2条6号。行政指導の一般原則の規定は32条1項 。
3 行政機関の任務と所掌事務は、各省の設置法などで規定されている。
環境省設置法は、「環境省は、地球環境保全・・・・・その他の
環境の保全を図ることを任務とする。」というように環境省の
「任務」を一般的に定め、その具体的内容を「所掌事務」として25項目
にわたり列挙している。
ちなみに、最多の所掌事務を誇るのは128項目の国土交通省。次いで
110項目の厚生労働省。(読本57頁以下)
○ イについて。
アで述べたとおり、「行政機関の任務または所掌事務の範囲」
において、行政指導が行われるのであり、行政指導については、
法律ないし条例の授権を要しない。
また、行政手続条例において、 行政指導について、条例の授権
を要すると定めることは許されない。
したがって、本肢は妥当でない。
注
地方公共団体の行う行政指導には、行手法の規定が適用されないので、
行政手続条例が定められ、その規定に従うことになる。(法3条3項・
46条)しかし、その規定において、行政指導に条例の授権を要すると
定めることは許されないのである。
○ ウについて。
ア・イで述べたところで明らかなように、、行政指導は、各省設置法に
基づく任務ないし所掌事務の範囲で事実上行われる(行手法2条6号・
32条1項)。
一般に、法的拘束力を有しないとされている。本肢は妥当である。
○ エについて
行政指導の一般原則として、行政指導における不利益取扱いの禁止が
行手法に規定されている(32条2項)。
問題は、本肢の後段部分である。これは、農業従事者に対する減反の
行政指導が念頭にあるものと思われる。行政指導に従った者は補助金
をもらうことができるが、その指導に従わなかった者は、補助金を
もらえないことが、後者に対する「不利益取扱い」になるのではないか
という問題である。これについては、行政実務上では、「行政手続法が
禁止しているのは、『行政指導に従わない者に対する不利益措置』であり
『行政指導に従った者に対する優遇措置』は別である」という説明が
なされているようである。(読本160頁)。
当該行政指導は、不利益取扱いに含まれないとすべきである
から、本肢は妥当でない。
○ オについて
ここでは、行手法33条の規定に関する説明を提示する。
「 建築確認の申請でよく問題になるが、適法な申請であっても、
当該マンヨンの建築に際し、近隣の苦情のため、適法な申請で
あっても、その建築確認を受理せず、留保したままで、行政指導
を続けるということがある。
この場合において、「『申請者が当該行政指導に従う意思が
ない旨を表明した』場合には、行政指導を続けることによって
『申請者の 権利の行使を妨げて』はならない、つまり申請者が自己
の欲する申請をすることを妨げてはならない」ということになる。
(読本161頁)
つまり、建築確認を受理しなければならないことになる。
なお、このような事案に対して、最高裁判所は、建築確認の
留保が違法になるための要件の一つとして、「行政指導に対する
建築主の不協力が社会社会通念上正義の観念に反するものと
いえるような特別の事情が存在しない」ことを挙げている
(最判昭和60年7月16日)
つまり、近隣住民が当該マンションの建築により受忍の
限度を超える苦痛を蒙る場合には、適法な建築確認を留保して、
住民の立場に立って、行政指導を継続することが適法になる
のであろう。このような行政指導(ほかにも地方公共団体が環境
保全のなどのために事業者に対する行政指導がある)は、地方公共
団体によって行われるために、「地方公共団体の行政手続条例では、
行政指導を尊重すべきことを定めたり、行政指導を広げる規定が
おかれることがある。」(読本161頁)
行手法46条にも注意せよ!
この規定は行手法と同一内容の行政手続条例の制定を求めて
いるのではない。むしろ法の趣旨にのっとりその地方公共団体
の独自性を生かした方向での条例の制定が望まれる。
以上により本肢は妥当である。
以上妥当でないのは、イ・エであるから、正解は3である。
▼ 付 言
最高裁判所の判例もあり、重要論点を含むのは、とりわけ
オの肢ないしその解説であると、私は思う。
◆ 問題 2
☆ 参照サイト 行政法・審査基準 第27回
第27回はコチラです↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/640603.html
▲ 総 説
審査基準とは
「申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定め
に従って判断するために必要とされる基準」である(行手法2条8
号ロ)。
処分基準とは
「不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかに
についてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」
である(行手法2条8号ハ)。
裁量基準
これらは、「法律で裁量権が認められ、または政令・省令などにも
十分に具体的な規定がない場合に、行政庁に行政裁量の基準つまり裁
量基準を作らせ、それを手がかりに審査をするという方法である。」
( 前掲読本76頁等参照 )
▲ 各肢の検討
◎ 肢アについて
審査基準は、行政立法の一つである。
その行政立法には、2種類がある。その一つが「法規命令」であって、
これは、法的拘束力を有する。
もう一つは、「行政規則」であって、法的拘束力を有しない。
審査基準は、「行政規則」に該当する
したがって、本肢の「処分が違法となることはない」という記述は
正しい。
この場合には、憲法14条の平等原則違反に反し、違法となることが
あるので、本肢の後段の記述も正しい。
本肢は、全体として、正しい。
☆ 参考事項
(1)平成19年度過去問 問題12・肢ウに注目!
審査基準に違反して申請を拒否する処分をしても、その理由
だけで処分が違法となることはないが、他の申請者と異なる
取扱をすることになるため、比例原則違反として、違法となる
ことがある。
×
比例原則違反ではない。平等原則違反である。
(2)処分を行う際の裁量基準(処分基準)の「平等原則」をズバリ
問うたものとして、平成19年度過去問・問題42がある。
☆ サイト23回参照
第23回はコチラです↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/592220.html
◎ 肢イについて
本問は、題意が掴みにくい。
平成21年度問題11・肢エにおいて、以下の肢が出題された。
「 審査基準には、法律に基づき処分の要件を定める政省令は含まれ
ない。」
○ である。
行手法2条8号イ・ロが手がかりになる。
まず、イの法律に基づく命令が、「法律に基づき処分の要件を定める
政省令」に該当する。
次に、ロには、審査基準が掲げてある。
イとロが並列して列記されている以上、イには、ロは含まれないことに
なり正しい。それにしても、なんとも紛らわしい記述である。
端的に言えば、政省令は、「法規命令」であり、審査基準は、「行政
規則」であるから、両者は厳然と区別される。
本肢に戻ろう。ハには、処分基準が掲げらているので、審査基準も処分
基準も、政省令には含まれないので、本肢は誤りである。
◎ 肢ウについて
行手法5条1項と同法12条1項の対比から、審査基準が法的義務と
されるのに対して、処分基準の設定が努力義務であって、逆である。
本肢は誤りである。
☆ 参考事項
(1) それぞれの公表義務についても、同様に、審査基準が法的義務
であり(5条2項)、処分基準が努力義務である(12条1項)。
(2) 行手法5条1項の「・・・とする」文言は、通例は義務づけを
回避するために用いられるものであるが、処分基準の「・・・・
努めなければならない」という文言と比較すると、審査基準の
設定を行政庁に原則として義務づけるものと解釈するのが自然
である。」(読本220頁参照)
(3) 処分基準の公表が努力義務にとどまるのは、「処分基準を公表
すると、場合によっては、違反すれすれの行為が行われたり、処分
を巧妙に免れる脱法行為が行われたりすることがあることに配慮し
たためである。」(読本225頁)。
◎ 肢エについて
肢ア・エで述べたとおり、両者とも、行政規則に該当するので、
正しい。
◎ 肢オについて
行手法法2条8号ロ・ハによれば、審査基準も処分基準も、 同法39
条1項のいう「命令等」に該当する。
したがって、両者を設定するには、行政庁は、原則として、意見公募
手続 を実施しなければならないが、同法39条4項各号に該当するときは、
これを実施しなくてもよいとされる。
以上によれば、本肢は、明らかに誤りである。
本問は、アとエが正しいので、正解は1である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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