行政書士試験独学合格を助ける講座
行政法オリジナル問題 第6回
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★ オリジナル問題解答 《第6回 》 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政法
【目次】 解説
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■ 行政法・オリジナル問題 解説
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問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
第92号に掲載してある。
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☆ 参照書籍
行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
/有斐閣
◆ 論 点
1 行政審判とは
これは、公正取引委員会とか中央労働委員会といった、いわゆる
「行政委員会」またはそれに似たような行政機関が、ふつう「準司
法手続・・」とよばれる、特殊の手続によっておこなう審査手続の
ことをいいます。
行政審判というのは、行政機関がおこなう審理手続であるけれど
も、じつは、裁判所が裁判をおこなうばあいと似たような、組織上
または手続上の保障をして・・、審査の中立・公正さを守り、権利
救済制度として十分に機能させようというものなのです。
(前掲書 入門243頁)
次に、平成17年問37の旧記述式問題の一部を抜粋する。
みごとに、行政審判の定義が記述されている。
独占禁止法による公正取引委員会の審判・裁決、特許法による
特許庁の審判・裁決、土地収用法による収用委員会の審理・裁決、
労働組合法による労働委員会の諮問・命令の手続など、独立性・
中立性の高い行政委員会が、準司法的手続に従って、争訟の裁定
などの特定の処分をする手続を総称して A と呼ぶ。
もちろん、A=行政審判 である。
本問に照らせば、アに「特許庁」、イには「労働委員会」の記述
がある。
2 その分類(前掲 入門による・243頁以下)
(1) これからある処分をおこなうための手続=行政の事前
手続としておこなわれるもの=「処分先行型」
これは、行政手続法に対応するものであり、「行政審判」
は、行手法1条2項により、他の個別法によって定められ
る。
(2) もうすでにおこなわれている行政処分をあとから審査す
る不服申立手続=「後行型」
これは、行審法1条2項の規定する「個別的な法律に
よって定められた特別の不服申立制度」である。
◆ 各肢の検討
○ 肢アについて
これは、特許の査定を受けた者とこれを無効とする者の私人間紛争
の裁定に当たることは容易に察しがつく(特許法123条参照)。
妥当である。
○ 肢イについて
労働委員会が、使用者の労働者に対する行為が、不当労働行為に
あたるかどうかを審査する(労働組合法27条・7条)のは、
論点2・(1)に該当する。すなわち、論点2・(2)の不服申立
手続型ではない。
本肢は、妥当でない。
○ 肢ウについて
当該審査手続は、論点2(1)に該当する。
本肢は妥当である。
○ 肢エについて
以下の、実質的証拠の法則の記述を参照されたい。
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前記平成17年問題37における旧記述式問題の後半部分の抜粋。
この手続(筆者注 行政審判)に基づく決定(裁決)に関しては、
それについての訴訟の局面でも、「委員会の認定した事実は一定の場合
に裁判所を拘束するという B の法則」や審級の省略など、通常
の行政処分取消訴訟に対する特例が法定されていることがある。
≪解説≫
B=実質的証拠 である。
たとえば、独占禁止法77条では、公正取引委員会の審判(行政審判)
の結果なされた審判に対して、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟を提起
し得るものとしているのは、通常の処分や裁決と異ならない。
ただし、同法80条1項では、この訴訟については、「公正取引委員会
の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所
を拘束する」と定めている。
その意味は、公正取引委員会の審判が準司法的な性格を有していること
から、これをいわば、裁判審級の上での事実審(第一審)と見立てて、一
部、裁判所に代わる役割を与えようということである。
( 前掲 入門 244頁参照)
以上記述したところが、要するに、「実質的証拠法則」と呼ばれるもの
である。
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本肢の言うように、「 いかなる場合でも」裁判所を拘束するのではなく、
これを立証する実質的な証拠があるときという限定が付される。
したがって、本肢は妥当でない。
○ オについて
そのとおり。
たとえば、、公正取引委員会の審決に対する取消訴訟では、地方裁
判所に起こすのでなくて、もっぱら東京高等裁判所が扱うものとさ
れている。
なお、肢エでみた実質的証拠法則を採用している他の行政審判に
おいても、同様の例がある。
実質的証拠法則は、審判を裁判審級の上での事実審(第一審)と
見立ててるのであるから、このように審級の省略が認められのであ
ろう。
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以上のとおり、妥当でないのは、イ・エであるから、3が正解である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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