行政書士試験独学合格を助ける講座
民法オリジナル問題 第22回
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★ オリジナル問題解答 《第22回》 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 民法
【目次】 解説
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■ オリジナル問題 解説
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問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
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★ 参考図書
民法 1・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房
◆ 図示
A
↓ 抵当権《登記》
甲土地(所有者B)→ C(第三取得者)
《登記》
◆ 論点
(1)前者の場合について。
ズバリ本問前者では、396条の適用の問題になる。すなわち、
前者のCは、債務者・抵当権設定者以外の抵当不動産の第三取得者
に該当するため、この者との関係では、抵当権はその担保する債権
から独立して時効消滅に係る。
その時効期間は、20年である(167条2項)。
※ 参考事項
ア 前記本文の記述は、396条の解釈によって、自然に導
くことができるが、同趣旨の判例があることに注意(大判
昭15・11・26民集19ー2100)。
イ 396条について、もう少し分析してみると、以下のと
おりである。
担保物権はその担保する債権が時効消滅しない間は独立
に消滅時効にかからないのが原則である。抵当権は債務者
および抵当権設定者に対する関係においてはその原則に従
うが、前記本文に明らかなように、その他の者である第三
取得者・後順位権者などの他の債権者に対する関係におい
ては、債権が消滅時効にかからない間においても、独立に
消滅時効にかかるものとされるのである。
ウ 本問の事例では、「被担保債権について時効中断を生じ
た場合」に限定している それは、以下のような趣旨を含
むものであることに注意すべきである。
債権は一般に10年で消滅時効にかかるから(167条
1項)、本事例のように抵当権が20年で時効消滅するの
は、債権について時効中断の行われた場合に生ずることに
なる(147条以下・特に157条参照)。
(2)後者の場合について
ズバリ本問後者では、397条の適用の問題になる。すなわち、
後者のCも、債務者または抵当権設定者以外の者に該当するため、
Cが抵当不動産について取得時効に必要な条件を具備する占有を
したときは、抵当権はこれによって消滅する(397条)。
本事例では、Cは無効であることに善意無過失であった場合に
該当するので、その時効期間は、10年である(162条2項)。
※ 参考事項
ア 397条について、もう少し分析してみると、以下のとお
りである。
取得時効は原始取得として完全な所有権を取得させるものだ
から抵当不動産について取得時効が完成した場合には、抵当権
を消滅させることにしたのである。また、債務者または抵当権
設定者を例外としたのは、「みずから債務を負担し、またはみ
ずから抵当権の負担を受けた者について取得時効による抵当権
の消滅を認めるのは不穏当だからである」(前掲書)。
イ 162条2項の適用については、「善意・無過失」である
ことが要件になっているが、そこで言う「善意」とは、占
有者が自分の所有に属すると信ずることであり、「 無過失」
とはこのように信じることについて過失のないことを意味す
る。
本事例では、売買に無効原因があるため、所有権は移転し
ていないが、Cがそのことを知らなかったというのであるか
ら、以後、甲土地を占有するCは当該土地が自分の所有に属
すると信じていたのであり、そのように信じることに過失が
なかったとされているので、本事例では、その点について、
162条2項適用の要件を満たしていることになる。
◆ 解答例
前に掲げた(1)(2)の本文を要約すると、本問の回答例が
導かれることになる。以下、その過程を示しながら、最後に解答
例を示すことにする。
問題文は、「それぞれの場合において、CはAに対して、どの
ような根拠に基づき、いかなる請求をすればよいか」ということ
であるから、その質問内容に添って忠実に答えなくてはならない。
まず、前者の場合については、CはA対して、Aが20年抵当
権を行使しないことを根拠にして、抵当権の消滅を主張すればよ
い(厳密には145条の時効の援用である)。
次に、後者の場合については、Cが平穏に、かつ、公然と甲土
地を占有したことを根拠にして、所有権の時効取得を主張する
(前記と同様に145条の時効の援用をする)ことにより、抵当権
の消滅を主張することになる。
以上について、文言を省略して、解答例を示すと、以下のとお
りである。
Aが20年抵当権の不行使ため、抵当権の消滅時効。Cが10年甲
占有のため、所有権の取得時効。(45字)
◆ 付言
本問については、1、20年間抵当権を行使しないこと
2、抵当権の消滅時効 3、10年間甲土地を占有 4、
所有権の取得時効 という4つのポイントが記載されてい
れば、満点ないしはそれに近い点数を稼ぎだすことができ
るであろう。
なお、過去問としては、第三者が、抵当不動産の所有権
を時効 によって取得した場合には、当該抵当権は確定的に
消滅する(397条)という肢が、妥当なものとして呈示
されている(平成21年度問題29肢エ)。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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