行政書士試験独学合格を助ける講座

会社法オリジナル問題 第30回

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             ★ オリジナル問題解答 《第30回》 ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第116号掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第116回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
   
 ★  参考文献

    会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣

 
 ● 各肢の検討

   
  ○ アについて

      会社法は定款で定めることを条件として、すべての株式または
  一部の種類の株式の譲渡について会社の承認を要するという形で
  株式の譲渡の制限を認めている(107条1項1号・108条1
  項4号・107条2項1号・108条2項4号)。

     しかし、相続その他の一般承継による株式の取得については、
  定款において、当該会社の承認を要する旨の定めをすることがで
  きない(なお、134条4項参照、株式会社は、そのような者の
  請求による株主名簿の記載を拒むことはできない)。

    ただし、株式会社は、当該株式会社の株式が譲渡制限株式である
    場合に限り、当該株式の取得者に対して当該株式を当該株式会社に
    売り渡すことができる旨を定款で定めることができる(174条)。

 
                             
   被相続人     当該株式会社の株式の相続        取得者(相続人)
    A-------------------------↓-------------------------B
                譲渡制限株式

                     売渡しの請求 ↑
 
                         当該株式会社

     以上の記述に照らせば、本肢は妥当である。
       


  ※ 参考事項

   

 1 平成23年度 本試験問題38 肢 1 (メルマガ116号に
    おいて解説)は、妥当でないものとして、以下のとおり記述する。 

   株式会社は、合併および会社分割などの一般承継による株式の取
   得について、定款において、当該会社の承認を要する旨の定めをす
   ることができる。

   ここで吸収合併を例にとれば(新設合併、吸収分割、新設分割も
    これに準じる)、合併の対価として、消滅会社の株主は持株数に応
    じて存続会社の株式が与えられ、存続会社の株式の取得をするが、
    これに対して当該会社である存続会社の定款において、承認を要す
    る旨の定めをすることができるかどうかは、およそ問題にならない
    と思う。
   
    ×       ○
   消滅会社    存続会社      

    ↓

   株主=存続会社の株式の取得者

   
   これは、合併等の組織再編の過程において処理される問題であっ
    て、定款において、当該会社(存続会社)の承認を要する旨の定め
    をすることが問われるものではないと思う。換言するなら、107
    条1項1号などの適用外の問題であると思う。

   これに対して、本肢における相続その他の一般承継については、
  107条1条1号にいう譲渡に相続が含まれないので、当該会社
   の承認を要する旨の定めをすることができないということでピッ
     タリくる!!

   したがって、さきに掲げた平成23年度の肢は、本来は、つぎの
    ように改められるべきであろう。
   
   株式会社は、相続などの一般承継による株式の取得について、定
    款において、当該会社の承認を要する旨の定めをすることができる。

 2 本肢の場合には、自己株式を取得することができる場合に該当す
    る(155条6号)が、自己株式の取得については、後述する。


  ○ イについて

  承認を受けないでなされた譲渡制限株式の譲渡は、当該株式会社に対
  する関係では効力を生じないが、譲渡の当事者間では有効であるという
 という点については、判例 (最判昭和48・6・15民集27−6−
 700)がある。

  判例(最判昭和63・3・15判時1273−124、最判平成9・
 9・9判時1618−138)《前掲 神田 会社法第14版)は、こ
  れを進めて、本肢のとおり、会社は必ず譲渡前の株主を株主として取
  り扱わなければならないとする。

  
    以上の記述によれば、本肢は判例に照らし、妥当である。

  
  なお、当該株式の譲受け人が、譲渡の当事者間では有効であるというこ
 とを生かしたければ、当該株式会社に対し、当該株式を取得したことにつ
 いて、承認請求をし、承認を受け、その者の請求により、当該株式会社の
 株主名簿に記載してもらい、株式の譲渡について、株式会社に対抗するこ
 とである(137条以下・134条2号・133条・130条1項)。


 ○ ウについて

    株式会社が特定の株主から自己株式を取得する場合には、株主総会
  の特別決議を要する(156条1項・309条2項2号)が、子会社
  から自己株式を取得する場合は、取締役会設置会社にあっては、取締
  役会の決議で足りる。ただし、非取締役会設置会社では、株主総会の
  決議を要するが、この場合は、普通決議で足りる(163条・156
  条1項・309条1項・なお、309条2項2号( )内参照)。         
                  
    
 以上の記述に照らせば、本肢は妥当である。

 

 ※ 参考事項

    1 自己株式とは「株式会社が有する自己の株式」と定義されて
     いる(113条4項)。会社が自社の株式(自己株式)を取得
     するとその結果その株式は自己株式となる。会社法は、株式会
     社が自己株式を取得できる場合を規定する(155条・本肢の
     場合は、同条3号である)《前掲 神田・会社法》

    2 自己株式は出資の払戻しとなり、また会計上自己株式の資産
     性を認め配当規制をしないと債権者を害する等の弊害があるこ
      とが指摘されている(その他の弊害が前掲書神田96頁に3個
     掲載されているが、ここでは省略する)。
    
        3  子会社の定義は、2条3号に規定がある。要するに、親会社
     によって、総株主の議決権の過半数を所有される株式会社を子
          会社という。なお、親会社の定義は、2条4号に規定がある。


 ○ エについて

       親会社をAとし、事業譲渡の譲渡会社をBとし、譲受会社である子
     会社をCとすると、CがBの有するAの株式を譲り受けると、子会社
     であるCが、親会社Aの株式を取得することになり、子会社による親
     会社株式取得の規制に服するようにもみえる(135条1項)。
       しかし、本肢の場合には、135条2項1号の規定する例外事由に
      該当することになるが、135条3項の適用を受けることになる。
   
   
     譲渡会社      事業譲渡        譲受会社
     B---------------------------------------C
                                            (子会社)
     ↓所有
     
    A会社株式
  (親会社)

       
    以上の記述によれば、本肢は、会社法の規定に照らし、妥当で
   ある。
  
  
   ※ 参考事項

   1 前述したように、子会社による親会社の株式取得は原則的に禁
    止されているが(135条1項)、「子会社株式は親会社の資産
    に含まれるから、子会社による親会社株式取得は資本充実(会社
    財産確保)の点から問題がある・・子会社に対する支配力・・
    株価操作や投機的行為・・などの弊害を生ずるおそれがある」
    (前掲リーガルマインド 会社法 65頁)

   2 他の会社の事業の全部の譲渡については、譲渡会社・譲受会社
        いずれにおいても、株主総会の特別決議が必要になる(467条
        1項1号・3号・309条2項11号)。


  ○ オについて

     吸収合併においては、合併後の存続会社が、合併により消滅する会
     社の権利義務を承継することになる(2条29号)。

    本肢において、存続会社をAとし、消滅会社をBとすると、BがAの
   株式を所有していたとすると、合併により、AはBの権利を承継するこ
   とにより自己株式を取得することになる。


                吸収合併
    消滅会社B--------------------------------存続会社A
    
    ↓所有                  ↓
  
   A株式---------------------------------→自己株式

  
  本肢の場合は、155条11号に該当するので、自己株式を取得する
 ことができるが、「相当の時期にその有する自己会社株式を処分しなけ
 ればならない 」という規制はない。
  このような規制があるのは、子会社による親会社株式の取得の場合で
 ある(135条2項)。

  したがって、本肢は、会社法の規定に照らして、妥当でない。

  なお、吸収分割の場合も、本肢に準じて考察できる。

 

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  妥当でないのは、オのみであるので、本問は、1が正解である。
 
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 ● 付 言


  本問では、過去問形式に従えば、「妥当でないものはどれか」と問
 われオ(通常は5)が正解ということになるであろう。しかし、本講
 座では、練習のために、正確な知識を試される本形式によった。今の
 段階では、答えが合った、違ったは問題でなく、すこしでも正確な知
 識を取得するように努めるべきだと思う。
  

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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