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行政法/行政処分その2過去問解説 第100回

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           ★  【過去問解説第100回 】  ★

          ワンポイント・レッスン その1

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法/行政処分 その2

        ★ 本試験では、瞬時にポイントを掴み、正解を
         導くことが要請されるので、今回は、そのポイ
         ントに絞り込み、コンパクトに解説するように
         試みた。

   【目 次】 過去問・解説
              

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 ■ 平成23年度・問題13
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   行政手続法の定める用語の定義についての次の記述のうち、正し
 いものはどれか(但し、各文章は法律の規定そのままではなく、一
 部表現を修正している)。

  1 処分・・・行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為で、
                審査請求・異議申立てその他不服申立てに対する
                裁決・決定を含むもの。

  2 不利益処分・・・行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あ
                      て人として、直接に、これに義務を課し、
                      又は申請を拒否する処分。

 3 届出・・・行政庁に対し一定の事項を通知する行為であって、
                当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこ
                ととされているもの。

 4 行政指導・・・行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内に
                    おいて一定の行政目的を実現するため特定又
                    は不特定の者に一定の作為又は不作為を求め
                    る指導、勧告、助言その他の行為であって処
                    分に該当しないもの。

 5 審査基準・・・申請により求められた許認可等をするかどうか
                  をその法令の定めに従って判断するために必要
                  とされる基準。

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 ■  解説 
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  ◆ ポイント

  
    ○ その1 

    行政手続法は、行政の事前手続を定めたものであるから、
   事後手続である不服申立てに対する裁決・決定は対象にな
   らない。したがって、行手法第2条第2号にいう処分には、
   当該裁決・決定は、含まれない。

    行政訴訟制度(当該行政上の不服申立・抗告訴訟)と行
   政の事前手続という体系的理解がポイント。

    肢1は、正しくない。

     ○ その2

       行政手続法上の具体的仕組みとして、処分には、申請に対
   する処分(第2条第3号・第2章)と不利益処分(第2条4
   号・第3章)があり、申請を拒否する処分は、不利益処分に
   該当しない。

    行手法上、処分には、申請に対する処分と不利益処分が
   あるということが、ポイント。
   
      肢2は、正しくない。

  
 ○ その3

    届出制と許可制の根本的違いは、許可制が、申請に対す
   る処分として、行政庁に許可・不許可(拒否処分)という
   「諾否の応答をすべき」義務を課しているものである
   (第2条第3号)に対して、届出制は、許可に代わる届出で
    だけで、法効果を生ずるするものである(第2条第7号)。
   

    届出制と許可制の違いを把握しているかどうかがポイント。

   
    したがって、 届出について、行政庁が諾否の応答をすべ
   きこととされているとする肢3は、正しくない。

 ○ その4


      行政活動としては、行政立法・行政処分・行政指導等がある
  が、行政立法は、一般的抽象的であるのに対して、行政処分は
  個別的かつ具体的であって、相手方が特定されるのが通常であ
  る。とりわけ、行政指導は、事実行為であるため、特定性が要
  件になる。

   以上の体系的知識により、行政指導から「不特定の者」が省
  かれることに気づくことがポイント。

   したがって、行手法第2条第6号では、「特定の者」のみ
  が対象になっているので、肢4は正しくない。

 
 ○ その5

   審査基準の定義は、行手法第2条第8号ロの文言どおりで
  あって、肢5は正しい。

     本肢が正しいので、本問は、5が正解である。

 


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 ◆ 参考事項

     上記のポイントに絞り、当該欄は読み飛ばしていただいても、
  差し支えない。
  
  ○ その1 

   行手法第3条1項15号では、不服申立てに対する裁決・決
  定も行政庁の処分としたうえで、これは行手法の適用除外であ
  るとしている。そうであれば、行手法第2条第2号には、裁決
  等も含み、同法第3条15号において、適用除外にしたともと
  れるので、肢1は、正しいことになるが、この点については、
  出題者の想定外のこととして、目を瞑るべきであろうか。

  
   ○ その2

     申請を拒否する処分は、名あて人にとって、不利益な処分で
  はあるが、不利益処分でないことは、第2条第4号ロが規定し
  ている。

   そして、不利益な処分である拒否処分と不利益処分について、
  理由の提示を義務づけているのが、行手法全体としての特徴で
  ある(第8条第1項・第14条第1項)。

 
  ○ その3

   例えば、個室付き浴場は、届出だけで開業できるのに対し、
  パチンコの営業には、許可が必要という違いを想定せよ。
  

  ○ その4

   関連するものとして、次の記述が注目される(後掲・読本
  95頁)。

   行政処分は、個別的かつ具体的であるのが通例である。し
  かし、個別性は行政処分の不可欠の要素ではなく、相手方が
  不特定で一般的な行政処分もある。これが一般処分である。

   以上の記述に照らして、行政指導の場合は、相手方の
  「特定」が要件になるのである。

   
 ◆ 総括

   もし、前述したポイントを把握していなければ、肢5も含
  めて全部が正しいように思えて、最後は、勘でいずれかを選
  択することになる。しかも、即座にポイントを把握すること
  は、試験場の現場感覚からすれば、必ずしも容易ではない。

   市販の解説書によると、後追い解説により、本問は易しい・
  正解すべきものとされているが、私からすれば、そのような
  コメントは、不要であって、受験生の不安心理を煽るもので
  しかないように思う。

   早い話が厳密に言って、肢1と肢5いずれも正解であるの
  ではという疑問だって、そんなに簡単なことではないと、私
  には思われるのですが・・。


 ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 
 
  なお、次回においても、引き続き「行政処分」に関する過去問
 の解説を行うことにします。


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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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