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行政法=行政不服審査法過去問解説 第104回

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         ★ 【過去問解説第104回 】  ★

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             PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法=行政不服審査法

        
  【目 次】 過去問・解説 

    
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 ■ 平成24年度・問題14
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   行政不服審査法に基づく不服申立てに関する次の記述のうち、法令
 または判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1 行政不服申立てにおいては、行政処分の取消しを求めることだ
  けではなく、公法上の法律関係の確認を求めることも許される。

 2 行政不服審査法は、不服申立ての対象となる行政処分について
  は、いわゆる一般概括主義を採用しており、不服申立てをするこ
  とができない処分を列挙してはいない。

 3 行政処分について審査請求の申立適格を有するのは、処分の相
  手方に限られ、それ以外の第三者は、他の法律に特別の定めがな
  い限り、申立適格を有しない。

  4 憲法による適正手続の保障の趣旨は、不服申立ての審理手続に
  も及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされて
  いる。

 5 審査請求の裁決は、書面でしなければならず、緊急を要する場
  合であっても、口頭ですることは認められていない。


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 ■  解説 
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 ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 
 
 ◆ 本問のポイント

    本講座メルマガ第155回・行政法オリジナル問題56回に
  おいて、肢イでは、以下のような記述になっている。
 
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   裁決は書面で行わなければならないが、決定にあっては、緊
   急を要する場合は、口頭ですることもできる。
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    行審法41条1項によれば、裁決は、書面で行い、理由を附さ
 なければならないことになっており、当該規定は、異議申立ての
 決定にも準用されている(47条・48条)。
    緊急を要する場合は、口頭ですることができるという例外規定
 はない。
  したがって、本肢は、妥当でないことになる。

  以上の確実な知識があれば、本問では、5が妥当でなく、5が
 正解であることが即答ができる。

  
  ※ 参考事項

  理由の提示と緊急性との関係では、この際、行政手続法の以下の
 条文知識を明確にしておくことが、行政不服審査法との混乱を避け
 る意味でも肝要であると思われる。

  申請に対する許認可を拒否する処分をする場合には、理由を書面
 で示さなければならないが(行手法8条)、不利益処分の場合には、
 原則は以上のとおりであるとしても、当該理由を示さないで処分す
 べき差し迫った必要がある場合は、この限りでないという例外規定
 が設けられている(同法14条1項・3項)。なお、この例外の場
 合においても、原則として、処分後相当の期間内に、理由を示さな
 けばならないこと注意せよ(同法14条2項)。

 
 ◆ 各肢の検討

    
  ○ 肢1について。

   本肢では、不服申立ての内容を主題にしているが、教科書では、
  一般に詳しく論じられていないので、この際、今後の本試験対策と
  しても要点を把握しておくべきである。

   第1に本肢では「行政不服申立てにおいては、行政処分の取消し
  を求めることだけではなく」とされているが、ならば、行政不服申
  立てでは、行政処分の取消し以外にどのような内容の不服を申立て
  ることができるのかが問題になる。

   第2に、かりに「行政不服申立てにおいては、公法上の法律関係
  の確認を求めることも許される」という本肢の記述が妥当でないと
  した場合、その根拠はなんであろうか。

   これらの点について考えるには、下記の記述が出発点になる
  (前掲書 読本 254頁参照)
   
   行政不服審査法第1条について、「この規定が示しているように、
  行政不服審査の制度の適用があるのは『行政庁の処分その他の公権
  力の行使に当たる行為』(行審法1条2項ではこれと同じ文言が使
  われている。)についてだけである。行政指導などについてはこの
  制度は適用されない。行政処分が適用対象である点は、行政訴訟の
  うちの抗告訴訟(とくに取消訴訟)とほぼ同じである《行訴法3条
  2項参照》(『ほぼ』というのは、取消訴訟においては、行政処分
  に加え、行政不服審査の裁決・決定もその対象になるからである
  《行訴法3条3項参照》)。
   

   それでは、第1の行政不服申立てでは、行政処分の取消し以外に
  どのような内容の不服を申立てることができるのかという点につい
  て検討しよう。

   抗告訴訟では、行訴法3条において、訴訟類型が定められている
  のに対し、行審法では、「異議申立て」「審査請求」という不服申
  立ての種類が定められているだけで(行審法2条参照)その内容に
  ついては、行訴法のように類型したものの定めがない。
   さきに掲げた行審法1条を中心に考えると、行政処分が適用対象
  になるのだから、処分の取消しを求める異議申立てや審査請求が認
  められのは当然であろう(同法40条・47条参照)。またこれに
  準じて、処分の無効の確認を求める異議申立てや審査請求もありう
  るであろう。また、行審法は、不作為について、不服申立てをでき
  ることになっているので(同法3条、7条、50条、51条参照・
  なお、50条・51条に焦点を当てたのが、平成24年度・問題1
  5肢3・4である)、不作為の違法確認を求める異議申立てや審査
  請求もできる。
   
     次に第2の行政不服申立てにおいては、公法上の法律関係の確認
  を求めることも許されるかという主題に移行しよう。

   ここでいう「公法上の法律関係の確認を求める」とは、行訴法に
  おいては「公法上の当事者訴訟としての確認訴訟」(同法4条後段
  の実質的当事者訴訟)に該当するが、当該訴訟では、行政処分には、
  適用されず、適用されるのは、公法上の法律関係である。
   他方、前述したとおり、行政不服審査の制度の適用があるのは
 『行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為』であるから、
  行審法では、「公法上の法律関係の確認」を求めることはできない。
   前述したところによると、行政処分ではない行政指導などについ
   ては行審法は適用されないことになるが、たとえば、行政指導につ
   いて争うには、「公法上の当事者訴訟としての確認訴訟」としての
  当該実質的訴訟によるべきだと解することもできる。

  以上の記述により、行審法では、「公法上の法律関係の確認」を
 求めることはできないということの論拠と結論は、明確であるので、
 本肢は妥当でない。

  
  ※  行審法では、行訴法における「義務付けの訴え」・「差止めの
   訴え」(3条6号・同7号)に相当する内容の不服申立ても認め
   られるのか一考の余地がある。

   以下のように考えられる。
    
   「義務付けの訴え」
     
    このなかには、許可の申請などに対して行政庁が処分をすべき
   であるにもかかわらずしない場合(法3条6項2号「申請型不作
   為」)とそれ以外の場合(同1号「直接型不作為」)に起こすも
   のあるが、行審法2条2項に照らすと、申請型不作為については、
   義務付けを求める異議申立てや審査請求を認める可能性はあると
   しても、直接型不作為には、これらは認められないであろう。
    たとえば、隣の土地の建物が違法建築で、きわめて危険なもの
   であるのに行政庁が不作為の場合、改善命令を出したり、取壊し
   命令を出すことを求める異議申立てや審査請求は認められないこ
   とになる。


   「差止めの訴え」

    この訴えは、処分まだなされていないにかかわらず、まえもっ
   て裁判所に判断してもらおうとする行訴法に特有の制度であるか
   ら、明文のない行審法では認められないと考えるべきであろう。

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    以上のとおり、長い記述になったが、ずばりの文献もなく、困
   難な作業だったが、行訴法と対比しながら、行審法の理解を深め
   るという意味において、将来の本試験対策としても有益であると
   思われたので、あえて、詳しい解説を試みたしだいである。

       ただし、第1の行政不服申立てでは、どのような内容の不服
   を申立てることができるのかという点については、前掲書読本
   では以下のとおりの簡潔な記載があるだけであった(実は、うん
   うんと云いながら前記解説文を書いた後、読本に当該記載を発見
   したのである)《読本255頁》

   行政不服審査制度においては、許認可などの申請に対する行政
  庁の不作為についても不服申立てが認められている(行審法7条)。
  従って、厳密には、行政不服審査制度は、抗告訴訟のうちの取消
  訴訟および不作為違法確認訴訟に対応するものである。

   もっとも、前掲書入門では、処分の無効の確認を求める異議申
  立や審査請求を認めているようである(入門236頁)。

   となると、私が前述したとろによれば、「申請型不作為について
  は、義務付けを求める異議申立てや審査請求を認める可能性はある」
  という記述の妥当性が検討課題になるのみである。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   

  
  ○ 肢2について。

    本肢では、不服申立事項が主題になっている。下記の記述を参
   照されたい。

    訴願法の時代には、どんな行政処分に対しても訴願ができたと
   いうわけではなくて、法律で定められた一定の処分に対してしか
   できなっかった(列記主義)のですが、行政不服審査法はこれを
   やめて、いわゆる概括主義をとりました(同法4条1項)。それ
   でも、例外的に、同法4条1項1号から11号までに掲げるもの
   については、その処分の性質上、行政不服審査法に基づく不服申
   立てはできないことにしていますし、それ以外にも、個別法律で、
   不服申立てを許さないことにしているばあいがあります。

    以上の記述に照らすと、本肢前段は妥当であるが、後段が妥当
   でない。

   ※ 参考事項

   (1)本肢の一般概括主義の例外と行政手続法3条の適用除外を
     混同しないようにすべきである。

    (a) 前者に関する過去問としては、以下の平成17年度問
       題14がある。
      
      ▲ 次のア〜オの記述で、行政不服審査法の不服申立ての対
       象とならないものが二つある。その組合せとして、正しい
       ものはどれか。

       ア 都市計画法に基づく開発許可処分
    
       イ 外国人の出入国に関する処分

       ウ 人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有
        する事実行為

       エ 建築基準法上の建築確認処分

       オ 国税犯則事件に関する法令に基づき、国税庁長官が行
        う処分


       1 ア・ウ
    
       2 ア・オ

       3 イ・エ

       4 イ・オ

       5 ウ・オ

    
      ≪正解は4である。》


      (b) 後者に関する過去問としては、以下の平成13年度問
        題12がある。
      
       ▲ 次のうち、行政手続法の適用がないものは、いくつあ
        るか。

        
        ア 外国人の出入国、難民の認定または帰化に関する処
         分

        イ 人の学識技能に関する試験または検定の結果につい
         ての処分

        ウ 審査請求、異議申立てに対する行政庁の裁決または
         決定

        エ 公務員に対してその職務または身分に関して行われ
         る不利益処分

        オ 法令に基づき相反する利害を有する者の間の利害の
         調整を目的とし、その双方を名あて人として行われる
         処分

        1  一つ

               2 二つ

        3  三つ
       
               4 四つ

        5  五つ

           
       ≪正解は5である。》


        
      ★ 以上については、本試験直前において、念のため、過去
       問を通じて条文に触れておくのも一考であろう。


   (2) また、過去問としては、平成19年度問題14肢2において、
      以下のとおりの本肢とほぼ同じ記述のある肢が出題されている。

            行政不服審査法は、不服申立ての対象となる「行政庁の処分」
          につき、いわゆる一般概括主義をとっており、不服申立てをす
     ることができない処分を、同法は列挙していない。

       もちろん、本肢は妥当でない!

  
  ○ 肢3について。

   本肢でとりあげられている不服申立資格については、以下の記述を
  参照されたい。

   不服申立ての資格については、行政不服審査法は、「行政庁の処分
   (・・)に不服があるもの」と定めるだけであるが(4条1項)、最高
  裁判所1978(昭和53)年3月14日判決=主婦連ジュース不当
    表示事件によると、それは「当該処分について不服申立をする法律上
    の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律
    上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」
  である。

   したがって、判例によると、申立適格を有するのは、処分の相手方
  に限られず、それ以外の第三者についても、「当該処分について不服
  申立をする法律上の利益がある者」も含まれることになるので、本肢
  は妥当でない。

  
  ※ 参考事項


    ▲ 行政事件訴訟法9条1項の定める「法律上の利益」の解釈と前記
   昭和53年判決との関係(前記読本291頁以下参照)

  (1)行訴法9条1項の定める「法律上の利益」の解釈としては、
    主には「法律上保護された利益」説と「法的な保護に値する利
    益」説とが対立していた。
     「法律上保護された利益」説とは、法律の規定にょって保護さ
    れた利益をもって「法律上の利益」と解する説である。すなわち、
    「法律上の利益」の有無を法律の規定から、つまり「法律」の解
    釈によって決定しようとする説である。
     「法的な保護に値する利益」とは、法的な保護つまり裁判上の
    保護に値すると考えられる利益をもって「法律上の利益」と解す
    る説である。この説の特徴は、「法律上の利益」の範囲を「法律」
    によって判断するのではなく、利害の実態に着眼し「理論」によ
    って決定しょうとする点にある。

  (2)最高裁判所が以上の諸説のうちの「法律上保護された利益」説
    をとることを明確にしたのは、前記昭和53年判決である。

  (3)この基準は、この判決では行政不服申立資格の基準として示さ
    れたものであったが、その後、下級裁判所のみならず最高裁判所
    自身によっても、行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」の
    解釈を示すものとして適用されてきている。この主婦ジュース不
    当表示事件判決の最高裁判決により、取消訴訟の原告適格につい
    て、「法律上保護された利益」説が確立したと言ってよいであろ
    う。

   ▲ 2004年の行政事件訴訟法改正による新規定と「法律上保護さ
    れた利益」説と「法的な保護に値する利益」説との関係(前記読本
       293頁参照)

   
    (1)主婦連ジュース不当表示事件の最高裁が提示した「法律上保護
    された利益」説は、訴訟実務の中では、とくに地方裁判所や高等
       裁判所にレベルにおいてであるが、原告適格を否定するために用
    いられ、猛威を振るってきたと言ってもよいほどである。この状
    況を打破するため、2004年の行政事件訴訟法改正では、同法
    9条に2項が付け加えられたのである。

  (2)従前の裁判例では、原告適格の有無を判断する場合、争われてい 
   る行政処分の根拠となる規定だけを見るという判断方法があった。
    行政事件訴訟法9条2項は、当該法令のみならず関係法令を、し
   かもその趣旨目的まで見る(「参酌する」)ことを要求しているの
   である。
    他方「法令」のみならず、「利益」を見る(「勘案する」)こと
   が要求されていることも新しい点である。この点では、行政事件訴
   訟法9条2項は、「法律上保護された利益」説に立ちつつ、「法的
   な保護に値する利益」説を取り入れていると見ることができる。

 
   ▲ 平成24年度問題17について。

   
   行政事件訴訟法9条2項は、平成16年改正において、取消訴訟の
  原告適格に関して新設されたものであるとして、当該条文の前段がそ
  のまま呈示され、空欄を埋める問題が出題された。


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  以上長い引用と記述になったが、本肢については、判例と条文と過去
 問を結ぶ背景知識として、必要不可欠であると考えたため、あえて当該
 解説を行ったものである。
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  なお、併せて、以上の記述をもって、平成24年度問題17の解説に
 換える。
 


 ○ 肢4について。

  
  行審法25条1項によれば、審理は書面によることになっているので、
 本肢は妥当でない(なお、48条・56条の準用規定にも注意せよ)。
  なお、同法同条同項では、ただし、審査請求人などの申立てがあつた
 ときは、審査庁は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければな
 らないとしていることにも注意せよ。


 ※ 参考事項

    過去問平成20年度問題14 肢5は、以下のとおり本肢とほぼ
   同一の文言である。
   
   憲法による法定手続の保障の趣旨は、行政上の不服申立ての手続に
  も及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされている。

   なお、同じ過去問肢1では、「行政上の不服申立ての道を開くこと
  は、憲法上の要請ではないので、この制度を廃止しても、憲法違反と
  はならない」となっており、これを妥当な肢とするのが、過去問の立
  場であるから、「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑
  事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続
  ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外
  にあると判断することは相当ではない」とする判例(最大判平4・7
  ・1民集46−5−437)が行審法の審理手続に及ぶかどうかは疑
  問である。つまり、この制度を廃止しても、憲法違反とはならない立
  場に立てば、当該判決の趣旨は、行審法の審理手続に及ばないとも考
  えられるからである。もし及ぶとしても、その審理手続は口頭弁論主
  義を原則とすべきとする要請には直結しないであろう。

 
 ○ 肢5について。

   ◆ 本問のポイント欄で述べたとおり、本肢は妥当である。

    なお、審査請求と書面については、本肢の裁決の方式(41条
     1項)のほか、肢4に関連する審理の方式(25条1項)・不服の
   申立ての方式(9条・なお16条)があり、いずれも異議申立て
   と共通である(48条)ことを銘記すべきである。



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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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