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親族・養子過去問解説 第108回

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              ★  【過去問解説第108回 】  ★

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                  PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 親族=養子

        
  【目 次】 過去問・解説
              

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 ■  平成20年度 問題35
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   養子縁組に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例
 に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

  ア 配偶者のある者が成年者を養子とする場合には、原則として配偶
   者の同意を得なければならないが、配偶者がその意思を表示するこ
   とができない場合には、その同意を得ないで縁組をすることができ
   る。
 
  イ 配偶者のある者が未成年者を養子とする場合には、原則として配
   偶者と共に縁組をしなければならないが、配偶者の嫡出である子を
   養子とする場合には、単独で縁組をすることができる。

  ウ 配偶者のある者が未成年者を養子とする場合には、原則として配
   偶者と共に縁組をしなければならないが、配偶者もまた未成年者で
   ある場合には、単独で縁組をすることができる。

  エ  真実の親子関係がない親から嫡出である子として出生の届出が
    されている場合には、その出生の届出は無効であるが、その子が
    成年に達した後はその出生の届出を養子縁組の届出とみなすこと
    ができる。

  オ 真実の親子関係がない戸籍上の親が15歳未満の子について代諾
  による養子縁組をした場合には、その代諾による縁組は一種の無権
   代理によるものであるから、その子は、15歳に達した後はその縁
   組を追認することができる。


 1 ア・イ

 2 ア・ウ

 3 イ・オ

 4 ウ・エ

 5 エ・オ


 

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■ 解説
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 ★ 参考書籍 
  
 
   民法 3 ・ 我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房 


 ▲ 序説

  直近に発刊しましたメルマガ159号・サイト60号におきまして
 は、特別養子をとりあげましたので、ここでは、特別養子縁組以外の
 縁組による養子を採用することにしました。

   一般に、親族・相続に関しては、手薄になりがちですが、今時分か
 ら、条文をよく読みこんでおくことが大切です。だんだんと本試験準
 備の時間も少なくなりますから、教科書を一から読むのを避け、条文
 中心主義に切り替えて、条文を読んでもわからないところを教科書で
 補う程度がよいでしょう。それでも、時間に不足をかんじるときは、
 わからないところがあっても、条文だけは読んでおくことが、大切で
 す。親族/相続に関しては時間がないから、なにもしない!よりはる
 かにましです。

  以上の点については、多かれ、少なかれ、他の科目にも妥当します。
  時間の切迫する中で、ともかく、過去問を横において、憲法・民法
 ・行政法関係/行審法・行訴法・地方自治法・個人保護法などの条文
 にひろく、うすくふれておくことは、本試験6割突破を目標にする立
 場にたつ場合は(無理して7〜8割をねらう必要もありません)、直
 前受験対策のひとつとして、効果的な方法であると思料します。

 
 ▼  本問の要点

   本問において、記憶に留まることを要する条文は、婚姻による成
  年擬制の753条・養親となる者の年齢に関する792条・配偶者
  のある者が未成年者を養子とする縁組の795条・配偶者のある者
  の縁組の796条です。

  これらの条文知識があれば、ウが妥当でないことが判明しますし、
 そうなりますと、ウの相棒は1のアか、4のエかにしぼられます。
  アが妥当であることは、795条の条文知識によって、すでに確
 定していますから、かりに判例知識がなくても、4が妥当でなく、
 4が正解であることがわかります。こういう思考過程をとることが
  できれば、エに関する判例が妥当でないことに確信がなくても正解
  に達します。私はこれを指して、「相棒捜しの活用」と呼びます。
  これを活用すれば、逆に条文知識に乏しくて、正確な判例知識があ
  る場合にも、正解に達することができる蓋然性は高くなるでしょう。

 △ 各肢の検討
 
   
 ○ 肢アについて

  796条の条文のとおりであるので、妥当です。

  本肢では、「原則として」と記載されていますので、例外がある
 ことが示唆されていますが、その例外として、ただし書として(1)
 配偶者とともに縁組をする場合と(2)配偶者がその意思を表示す
 ることができない場合が条文上規定されていますが、本肢では、
  (2)がとりあげられています。

 ○ 肢イについて

  本肢は夫婦共同縁組をを規定した795条に関するものですが、
 本肢でも「原則として」記載して、条文上例外があることが示唆
 されていますが、その1が 、「配偶者の嫡出である子を養子とす
 る場合」であり、その2が、「配偶者がその意思を表示すること
 ができない場合」に該当します。

  本肢では、その1にあたりますので、本肢は妥当です。


 ○ 肢ウについて

  肢イでみたように、配偶者のある者が未成年者を養子とする場
  合には、例外を除いて、夫婦共同縁組が原則ですが、本肢では、
 そこに焦点はなくて、配偶者が未成年である場合が問題にされて
 います。この場合には、753条の婚姻による成年擬制が適用さ
 れるため、その者は、792条により、養親となることができま
 すので、795条の夫婦共同縁組が適用されます。したがって、
 本肢は妥当ではありません。

  なお、本肢では、即座に成年擬制に気付きにくいとおもわれま
 すが、その場合でも、792条により配偶者が未成年であれば、
 その者はそもそも養親となることはできないのであって、夫婦共
 同縁組制度のもとでは、他の成人配偶者が単独では縁組をするこ
  とができないと考えたとしても、本肢が妥当でないという結論と
 たまたま、一致します。こういうラッキーに恵まれますと、過ち
 も過ちでなくなることもしっておいたほうがよいでしょう。


 ※ 参考事項

  ここで、795条と796条を総合的に考えると同時にそこから
 派生する問題についても言及しておきたいとおもいます。
 
 
 (1)795条では、養親が夫婦である場合には、未成年者を養
      子とするには、養子の養育のために、夫婦共同縁組とするこ
      とが妥当であるとされたのです(肢イ・ウ)。

  (2)この場合(1)を除くと一般的には夫婦共同縁組とはされ
   ていません。796条では、養親が成年者を養子とする場合
   でも(肢ア)、夫婦が養子となる場合でも、夫婦共同縁組と
   されず、単独で縁組ををすることができるとされています。
    ただし、これらの場合には、配偶者の同意がが必要だとい
   うのが、原則です。
 
 (3)この795条〜796条は、夫婦が養親となる場合に適用
     されますが、792条によれば、配偶者のない成年者は単独
   で養親となることができます。ただし、以上の通常の養子縁
   組と異なり、「実方の血族との親族関係が終了する縁組」で
   ある特別養子縁組にあっては(817条の2)、養親は既婚
   者でなけれればならず、養親の夫婦共同縁組が原則です(8
   17条の3)。
    なお、この特別養子縁組は、これ以外にも通常の養子縁組
   とは種々の点で異なっていますが、この機会にこの特別養子
     縁組に関する条文の通読をお勧めします。

 

  ○ 肢エについて

   本肢は、以下の判例に反しますので、妥当ではありません。

   他人の子を養子とする意図で嫡出の出生届を出しても、それ
   によって養子縁組が成立することはない(最判昭25・12・
  28民集4−13−701)

   当該判例は、799条・739条を根拠にしていて、養子
  縁組は、届出によってその効力を生ずるからです。

  ※ 参考事項

   781条1項に関連して、以下の判例があります。

   嫡出でない子つき、父がした嫡出子出生届または?非嫡出子
  出生届が受理されたときは、認知届としての効力を有する
  (最判昭53・2・14民集32−1−110)。
 

   ○ 肢オについて

       797条1項に関連して、本肢と同旨の判例(最判27・
   10・3民集6−9−753)がありますので、本肢は妥
    当です。

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   以上によりますと、妥当でないのは、ウ・エですから、肢
  4が正解となります。

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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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