行政書士試験独学合格を助ける講座
会社法オリジナル問題 第63回
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★ オリジナル問題解答 《第63回》★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 会社法
【目次】 解説
問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
第171号掲載してある。
☆ メルマガ第171号はこちら
↓
http://archive.mag2.com/0000279296/index.html
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■ 解説
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★ 参照書籍
会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
▲ 本問出題の趣意
前回のサイト・会社法/過去問解説 第112回の理解を深めるた
めに今回応用問題として、オリジナル問題を出題した。
↓ ↓ ↓
過去問解説 第112回はこちら
▼ 総説 (※注 1)
(1) 本問においては、「通常の新株発行」がテーマになっているが、
その意義について考察しておきたい。
まず、「新株発行」とは、会社成立後の株式の発行を意味する
のであって、「設立時株式」の発行とは異なる(25条1項1号
参照)。
また「通常の新株発行」である以上、株式分割・株式無償割当
て・新株予約権の行使、吸収合併・吸収分割・株式交換等の場合
における新株発行のような特殊な新株発行とも異なる。
(2)通常の新株発行は、実務上、株主割当て・公募・第三者割当て
の三つに分類される。以下において、それぞれの用語を説明する。
a 公募とは新株を不特定多数の者に発行する場合
b 第三者割当てとは特定の者(通常は一人)に発行する場合(株
主以外の者の者への発行という意味で「第三者」割当てと呼ばれ
てきたようであるが、実際には割当てを受ける者は株主である場
合が多い)。
c 株主割当てとは株主に割当てを受ける権利を与えて、既存株主
に平等に割当てる方法である。
(3)条文上の構造
a 募集事項の決定に関しては、会社法は、199条〜202条の
間に、「株主割当て」・「公募」・「第三者割当て」が詰め込ま
れている
b 非公開会社においては、原則である「株主割当て」を規定した
202条を切り離して独自に考察するべきである。
c「株主割当て」については、202条5項によれば、199条
1項・5項が適用されるだけであって、そのほかはすべて自前
の202条で処理される。
これに対して、公募・第三者割当てに関しては、199条〜
201条が全面的に適用される。
d 201条1項によれば、「公募」・「第三者割当て」につい
ては、公開会社(※注 2)においては、募集事項の決定は、
取締役会の決議による。
e 200条1項によれば、「公募」・「第三者割当て」につ
いて、公開会社でない会社においては、株主総会の決議によ
って、募集事項の決定を取締役会(取締役会設置会社でない
会社にあっては取締役)に委任することができる(201条
1項後段参照)
f 「株主割当て」については、公開会社についても、202条が
適用され、同条3項3号によれば、募集事項等については、取
締役会の決議による。
△ 各肢の検討
前記▲ 総説 において記述したところを参照すれば、各肢の検討結
果は以下のとおりになる。
○ 肢1について。
この場合は、株主割当てに該当するため、202条が適用され、
同条3項3号によれば、公開会社では、募集事項等については、取
締役会の決議による(▲ 総説 (2)c・(3)f)
本肢は、正しくない。
なお、株主割り当ての場合、公開会社でない場合には、募集事項
等については、202条3項1号・3号・4号の規定により、取締
役の決定(取締役会設置会社でない場合)・取締役会の決議(取締
役会設置会社の場合)・株主総会の決議(1号・2号による定款の
定めがない場合・なお当該株主総会の決議は特別決議≪309条2
項5号参照≫による (▲ 総説 (2)c・(3)b)。
○ 肢2について。
この場合は、第三者割当てに該当するため、200条の募集事項
の決定の委任の規定が適用されるが、本問は、公開会社であるため、
201条1項後段により、200条は適用されない(▲ 総説
(2)b・(3)d・e)
よって、本肢は正しくない。
この場合には、結論として、以下のようになる。
公開会社においては、募集事項の決定は、取締役会の決議による。
公開会社でない会社においては、株主総会の決議によって、募集
事項の決定を取締役会(取締役会設置会社でない会社にあっては
取締役)に委任することができる。
(▲ 総説 (2)b・(3)d・e)
○ 肢3について。
本肢については、さきに引用した過去問解説 第112回を参照
してほしい。
すなわち、平成25年度 過去問 問題 4 肢3によれば、
「募集株式一株と引換えに払い込む金額については、募集事項の
決定時に、確定した額を決定しなければならない」
とあったが、本肢が正しくない理由として、以下のように述べ
た。
たとえば、公開会社において公募で株式発行する場合、199
条1項2号の募集株式一株と引換えに払い込む金額について、既
存の株主の利益を害しないため、公正でなければならず、株式の
時価を基準としなければならない。このように、市場価格のある
株式を公正な価格で発行する場合は取締役会決議では「公正な価
格による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を
定めることができる」(201条2項)。
以上のとおり、公開会社では、発行価格について、募集事項の
決定時に、確定した額を決定しなくてもよい場合もあるので、本
肢は正しくない。
以上の記述に照らせば、公開会社である本問において、 「公
募で市場価格のある株式を公正な価格で発行する場合、取締役
会は募集事項の決定時に 募集株式の払込金額について、確定
した額を決定しなくてもよい」とする本肢が正しいことは明瞭
である。
よって、本肢は正しい。
なお、▲ 総説 (3)d により、「公募」については、
公開会社においては、201条1項が適用されるが、当然同
条2項も適用される。
○ 肢4について。
公開会社における第三者割当てについては、201条1項が
適用されるが、その規定によれば、199条3項の規定する
「有利発行」の場合は除外されるので、本肢では、株主総会の
特別決議によることになる(199条2項・309条2項5号)。
よって、本肢は正しくない。
○ 肢5について。
肢1で検討したように、この場合は、株主割当てに該当するため、
202条が適用され、同条3項3号によれば、公開会社では、募集
事項等については、取締役会の決議によることになる。
よって、本肢は正しくない。
肢1の解説では、株主割り当ての場合、公開会社でない場合につ
いては、202条3項1号・2号・4号が適用されるとしたが、同
条3項2号・4号の適用を認める本肢は、公開会社でない会社に関
する記述であって、公開会社である本問には妥当しない。
※ 注 1
過去問解説 第112回の解説と重複する面もあるが、その点は
顧慮しないで当該解説を進めた。
※ 注 2
公開会社の定義は2条5号。すべての種類の株式について譲渡制
限がない会社はもちろん、一部の種類の株式いついてだけ譲渡制限
のある会社も公開会社となる。
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以上の記述によれば、肢3が正しいので、本問では、3が正解
である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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