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行政法過去問解説 第113回

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            ★  【過去問・解説 第113回】  ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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 【テーマ】 行政法

        
 【目 次】 過去問・解説 
 
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 ■  平成25年度問題44 《記述式》
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   Aが建築基準法に基づく建築確認を得て自己の所有地に建物を
 建設し始めたところ、隣接地に居住するBは、当該建築確認の取
 消しを求めて取消訴訟を提起すると共に、執行停止を申し立てた。
 執行停止の申立てが却下されたことからAが建設を続けた結果、
 訴訟係属中に建物が完成し、検査済証が交付された。最高裁判所
 の判例によると、この場合、(1)建築確認の法的効果がどのよう
 なものであるため、(2)工事完了がBの訴えの訴訟要件にどのよ
 うな影響を与え、(3)どのような判決が下されることになるか。
 40字程度で記述しなさい。

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 ■ 解説
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 ◆ 本問のポイント

 
 ★ その1・過去問と判例からの考察

     1 ズバリ、過去問平成20年度問題17において、「訴えの
    利益に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、
       妥当なものはどれか」が問われ、その肢1は、「建築確認処
       分の取消しを求める利益は、建築物の建築工事の完了によっ
       ては失われない」というものであった。

     最高裁判例(最判昭59・10・26民集38−10−11
    69 )によれば、 「建築確認は、それを受けなければ建築工
       事ができないという法的効果をもつにすぎないから、当該工事
       の完了により訴えの利益は失われる」というものであった。

        したがって本肢は、「・・工事の完了により訴えの利益は失
       われる」という当該最高裁判所の判例に照らせば、妥当なもの
       でないことになる。

     2 「訴訟係属中に建物が完成し、検査済証が交付された」とい
        う本問の記述式問題について、前記1の記述に基づいて判断す
    ると、(1)の「建築確認の法的効果」も(2)の「工事完了
    が訴えの訴訟要件にどのような影響を与え」るかについても、
    正解が得られる。
    
     (1)については、前記1の記述の前段の「建築確認は、そ
    れを受けなければ建築工事ができないという法的効果をもつに
        すぎない」という文言が該当する。
     (2)については、前記記述の後段の「工事の完了により訴
    えの利益は失われる」という文言が該当する。

   3 本問の記述式問題(3)については、「訴えが訴訟要件を欠
    き不適法である場合に訴えを退ける判決が却下判決である」と
    いう行政事件訴訟法に対する基礎知識があれば、「却下の判決
    が下される」という文言が該当することがわかる。

   4 あとは、字数制限に従い、全体の文言を整理すれば、完璧な
    解答が完成することになる。   
 
 
   ★ その2・理論面からの考察

        前記過去問に触れたこともなく、判例も知らなかった場合ない
    しは以前にこれらに触れていても、試験当日に忘却の彼方にあっ
    た場合には、一般に教科書で述べられている事項が、頭の隅にあ
    れば、試験当日、理論的に考察して、正解を導くことができる。

     教科書では「提起された取消訴訟について、裁判所が裁判する
    実益がない場合は、訴えの利益が失われる」とされ、その一例と
    して、「事業の完了による訴えの利益の消滅」が掲げられ、さら
    にその具体例として「建築工事の完了後に建築確認を取り消す実
    益があるだろうか」が論じられている。このあたりの知識があれ
    ば、あとは、「却下判決」を書くことができれば、(1)の建築
    確認の法的効果の記載が不十分であっても、8割程度は叩き出せ
    るであろう。
    
     
  ◆ 行政書士試験研究センターによる本問の正解例との比較

     1 ポイント1を基に本問記述式の(1)(2)(3)の連結によ
    る解答を示すと、(1)建築確認は、それを受けなければ建築工
    事ができないという法的効果をもつにすぎないため、(2)工事
    の完了により訴えの利益は失われ、(3)却下の判決が下される
    ということになる。

      (1)(2)(3)をとると、「建築確認は、それを受けなけ
        れば建築工事ができないという法的効果をもつにすぎないため、
        工事の完了により訴えの利益は失われ、却下の判決が下される」
        ということになり、括弧内の数字は、70字になり、制限字数
        を超える。

     2 これに対して、行政書士試験研究センター(総務大臣の指定試
       験として、行政書士試験を実施している財団法人)の発表による
       正解例によれば、以下のとおり、文言が整理され字数は43字に
       収められている。

    適法に工事ができるという法的効果であるため、訴えの利益が
    失われ、却下の判決がなされる。

   3 注意深く、前記1・2を比較すると、2のセンターの解答例で
   は、1の(1)における「建築確認」という主語および(2)に
   おける「工事の完了により」という文言が省かれている。
    それは、問題文の中で、(1)建築確認・(2)工事完了とい
   う言葉が使われているので、重複を避けることによって、字数の
   減少を果たしたことになるのであろう。
  
    その観点からすると、問題文(1)では、「建築確認の法的効
   果がどのようなものであるため、」となっているのであるから、
   「建築確認の法的効果」という主語も省き、たとえば「適法に工事
      ができるための要件であるので」として、全体として、以下のよう
   に記述することもできるとも考えられますが、みなさまはどのよう
      に思われますか。 

                  
        適法に工事ができるための要件であるので、訴えの利益が
    失われ、却下の判決がなされる。
        (41字)


       ※ 「適法に工事ができるための要件であるので」というのは、
     問題文の「(1)建築確認の法的効果がどのようなものであ
     るため」に対応するには、「適法に工事ができるための要
     件であるため」となるべきであろうが、「ため」「ため」
     が繰り返されるのを避けて「ので」にした。採点に影響の
     ない細かい指摘ではあるが、日本語の体裁としては、完全
     に無視することはできないであろう。

      
  ◆ その他本問に関連する事項ー特に過去問(本問のポイント★ 
   その1で考察した過去問平成20年度問題17を省く)中心と
   して

     1 本問では、「訴えの利益」が主題になっているが、この「訴
    えの利益」が、行政事件訴訟法上いかなる意義を有するかとい
    いうことを過去問との比較で考察しておくことは、大切なこと
    である。
         まずここでいう「訴えの利益」というのは、正確には「訴え
       の客観的利益」といい、これは、前述したとおり、提起された
    取消訴訟について、裁判所が裁判をするに値する客観的な事情
       ないし実益のことをいう。

  2 この「訴えの客観的利益」とは、訴訟そのものが認められるた
   めの要件つまり訴訟要件であるが、そのほかの訴訟要件としては、
   争いの対象になる行政活動が行政処分に当たること(処分性)お
   よび原告が取消訴訟の原告となり得るだけの利益を有しているこ
   と(原告適格)がある。

    3 ここでは、処分性には触れないが、訴えの利益に関連して、原
   告適格を考察しておきたい。原告適格は、行訴法9条1項の「法
   律上の利益」を有する者であるが、訴えの利益もまた、この「法
   律上の利益」に含まれる。以上の点からすると、「『法律上の利
   益』の概念は二重の意味を持っていることになる。」(後掲書/
       読本))。以上の両者の条文上の根拠を確り頭に叩き込んでおく
   必要がある。

  4 それでは、関連する過去問を列記する。

   (1)平成13年度問37肢ア。ここでは、行政法の専門用語を
     枠内に記入することが求められている。

     ア 通説によれば、取消訴訟において、法律上保護された利
      益を持つ者に[ A ](漢字4字)が認められる。

     正解は、「原告適格」である。
    
     ※ 参考事項

      本肢の出題は、平成16年の行訴法改正により9条に2項
     が付け加えられた以前の行訴法9条1項に関する出題である。
     本肢に関連する記述を後掲書/読本から抜粋しておくので、参
     考にされたい。

            行政事件訴訟法9条1項の定める「法律上の利益」の解釈
     としては、主には「法律上保護された利益」説と「法的な保
     護に値する利益」説とが対立していた。「法律上保護された
      利益」説とは、法律の規定によって保護された利益をもって
     「法律上の利益」と解する説である。すなわち、「法律上の
     利益」の有無を法律の規定から、つまり「法律」の解釈によ
     って決定しようとする説である。「法的な保護に値する利益」
     説とは、法的な保護つまり裁判上の保護に値すると考えられ
     る利益をもって「法律上の利益」と解する説である。この説
     の特徴は、「法律上の利益」の範囲を「法律」によって判断
     するのではなく、利害の実態に着眼し「理論」によって決定
     しようとする点にある。ー中略ー行政事件訴訟法9条2項は
     「法律上保護された利益」説に立ちつつ、「法的な保護に値
     する利益」説も取り入れていると見ることができる。

      以上、「法律上の利益」を巡って、「法律上保護された利
     益」・「法的な保護に値する利益」と混線しているが、いず
     れにせよ、本肢出題当時は、「法律上保護された利益」説が
     通説であったことは、確実である。

     以下、過去問平成18年度問44《記述式》・平成22年度問
   42《多肢選択式》・平成24年度問17《五肢択一式》を取り
   上げる予定であったが、これらについては、過去問・解説 第1
   13回の続編として、次回の同114回に掲載することにする。 
    
    なお、本問である平成25年度問題44をもう少し、掘り下げ
   て 、第三者訴訟(後記オリジナル問題とも関連する)・本問の
   記述である「執行停止」のもつ意味についても、次回において考
   察してみたい。   


   ★  参考文献

   行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

     ・有斐閣発行


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 ■ 附言
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 ○ 本問に関連するオリジナル・応用問題について、引き続き、メ
  ルマガにおいて、出題し、次回のサイト欄で解説することにしま
  す。

 
 ○ 私は、平成25年12月9日付で【過去問/応用問題・解説 第
 110回 】を配信しました。

         ↓ ↓ ↓
  http://examination-support.livedoor.biz/archives/2116807.html

  
    そこで、私は、平成25年度 過去問 問題 45 《記述式 》
 を解説しました。当該解説欄において、正解例として、以下のとおり
 記しました。
   
  Cの追認がなく、Aが制限行為能力者でなかったときは、履行
  または損害賠償の請求をできる。   (43字)

  後日(平成26年1月27日)発表された行政書士試験研究センタ
 ーの発表では、当該問題に対して、以下のとおりの正解例が示されま
 した。

  Cの追認がなく、Aが制限行為能力者でなかったときは、履行
  又は損害賠償を請求できる。 (41字)

 
  これは、本講座が示した正解例とほとんどピッタリと符合してい
 ます。その違いは「または」が漢字で「又は」となっていることと
 「損害賠償の請求をできる」が「損害賠償を請求できる」となって
 いるのみでした。

  本講座に対する信頼を高めていただくための証左として、今回、
 敢えてご報告をいたしました。


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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
  ▽本文に記載されている内容の無断での転載は禁じます。
 
  ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。
       
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