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憲法過去問解説 第116回

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           ★  【過去問・解説 第116回】  ★

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                   PRODUCED BY 藤本 昌一
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 【テーマ】 憲法
  
 【目 次】 過去問・解説
              
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 ■  平成25年度問題6
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 次のア〜オのうち、議院の権能として正しいものはいくつあるか。 

 ア 会期の決定
 イ 議員の資格争訟
 ウ 裁判官の弾劾
 エ 議院規則の制定
 オ 国政に関する調査 

  1 一つ 
  2 二つ 
  3  三つ 
  4  四つ 
  5  五つ 


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 ■ 解説
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  ◆ 議院の機能

  (一)議院の自律権
     
    各議院が内閣・裁判所など他の国家機関や他の議院から監督
   や干渉を受けることなく、その内部組織および運営等に関し自
    主的に決定できる機能を言う。

      (1)内部組織に関する自律権

     a 会期前に逮捕された議員の釈放要求権(50条)
     b 議員の資格争訟の裁判権(55条)
     c 役員選任権(58条1項)

    (2)運営に関する自律権

     a 議院規則制定権(58条2項前段)
     b 議員懲罰権(58条2項後段)
  
  (二)国政調査権(62条)
  
     (後掲書 参照)


 ◆ 各肢の検討

    1 ◆ 議院の機能 を参照すれば、イの「議員の資格争訟」・エの
    「議院規則制定]・オの「国政に関する調査」が議院の機能と
         して正しいものに該当する。
  
  2 アの「会期の決定」については、以下のとおり国会法に規定が
   ある。

    常会の会期は、原則として150日間であるが(10条)、臨
   時会及び特別会の会期並びに会期の延長は、両議院一致の議決で
   定めることになっている(11条、12条)。なお、当該議決に
    おいては、議決の不一致又は参議院が議決しないときは、衆議院
      の議決が優先される(13条)。 なお、会期の延長は、常会につ
   いては1回、に限り、臨時会と特別会については2回に限る。

    本問で問われているのは、「他の議院から監督や干渉を受けるこ
   と」のない各議院の機能であるから、、両議院一致の議決を要する
   「会期の決定」は、議院の機能ではない。ただし、個人的には、両
   議院で可決を要する法律の議決(59条)が国会の機能とされてい
   る点からすれば、「会期の決定」もまた、国会法に基づく国会の機
   能といえると解する。


   ※ 国会が憲法上の機能を行使するのは、一定の限られた期間で
    ある。この期間を会期という。会期として、日本国憲法は、常
    会(毎年1回定期に召集される会)、臨時会(臨時の必要に応
    じて召集される会)、特別会(衆議院が解散され総選挙が行わ
    れたのちに、召集される会)の3つを区別している(52条・
    53条・54条1項)。なお、国会の実質的な召集権は内閣に
    ある(7条2号)。
   
    (後掲書 参照)

 
  3 ウの「裁判官の弾劾」とは、憲法78条の「公の弾劾」を指し、
   「訴追すなわち罷免の要求に基づき公権力が公務員を罷免する制
    度」(後掲書)をいうが、具体的には、両議院の議員で組織さ
    れた訴追委員会から罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため
    に、同じく両議院の議員によって構成される弾劾裁判所がその
    裁判を行う(詳しくは、国会法125条ー129条・裁判官弾
    劾法に規定がある)。憲法は、国会に弾劾裁判所の設置権を認
    めている(64条)。

     本肢は、「裁判官の弾劾」とのみ記すが、その機能について、
    行使面から言えば、弾劾裁判所となり、設置面から言えば、国
    会となる。いずれにしても、議院の機能ではない。

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    以上の記述に従えば、肢イ・エ・オが議院の機能になるので、
   3が正解である。
 
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 ◆ 類似する過去問

     平成14年度問題4

  日本国憲法によって認められる「議院の権能」として、誤ってい
 るものはどれか。 

 1 国政調査権の行使 
 2 議院規則の制定 
 3 議員に対する懲罰 
 4 議員の資格争訟の裁判 
 5 弾劾裁判所の設置 

  《解説》

  前記の平成25年度問題6と比較すれば、アの『会期の決定』が
 除かれて、3の『議員に対する懲罰』 が加えられている。他の肢
 については、両者は、全て重なる。
   
  『議員に対する懲罰』は、58条2項後段により、「議院の権能」
 であり、5の『弾劾裁判所の設置』は、64条1項により「国会の
 機能」である。 

  以上、1〜4はすべて「議院の機能」であり、5のみが「国会の
 機能」であるので、5が正解となる。
   
  なお、25年問6では、『裁判官の弾劾』とあり、曖昧であった
 のが、本問では、『弾劾裁判所の設置』であって、「国会の機能」
 であることが明確になっている。
    

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 ■ 関連する過去問
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  ◆ 今回とりあげた憲法・平成25年度問題6は条文問題である。
  そこで、これからは、順次、過去に遡りながら、過去問・条文
  問題を検討することにする。

 ●  平成24年度問題4

   次の記述のうち、憲法の規定に照らし、正しいものはどれか。 

   1 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、
   訴追されない。 
   2 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期
  中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、開会後直ちにこれ
    を釈放しなければならない。 
   3 両議院の議員は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この
   報酬は、在任中、これを減額することができない。 
   4 国務大臣は、議院で行った演説、討論又は表決について、院
   外で責任を問われない。 
   5 国務大臣は、裁判により、心身の故障のために職務を執るこ
   とができないと決定された場合を除いては、問責決議によらな
     ければ罷免されない。 

    《解説》

   サイト欄第137号において、いまとなっては懐かしい美里さ
  んとの対談で、平成24年度・憲法問題全般について検討してい
  る。その際、本問もとりあげている。

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      サイト137号はこちら。
     ↓ ↓
 

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   その中から、本問に関する検討内容を以下に掲げておく。これを
  もって、当該問題の解説に代えることにする。

 
 先生「この問題は、肢1が、75条の文言どおりで、正しいのであって、
       やさしいというのが、常識的みかただ。しかし、近年の憲法の問題
       は、条文の暗記を問う問題は影をひそめていたので、虚をつかれた
       ということにならないだろうか」

 美里「わたしも、先生のご指摘どおり、直前の条文の精読をしていません
       でしたので、試験当日、さっと、条文がうかぶ状態になく、1か2
       かで迷い、2を選択したため、不正解でした」

 先生「これからは、憲法に関しては、条文もすくないので、とくに、直前
       の精読も、予定にいれておくべきだ」

 美里「はい。こころしておきます」

 先生「それでは、この問題について、要点を述べる」

 美里「はい」

 先生「この問題は、国会の一員である議員と内閣構成員である国務大臣を
       ごちゃごちゃにしているのが特徴だ」

 美里「そうですね。肢4など、その典型ですね」

 先生「まず、国会議員には、その重要な機能に照らし、憲法上、特権が認め
       られている。そのひとつが、50条の不逮捕特権だ。本問の肢2だ」
 
 美里「(フフ・・)わたしが×だったやつ!・・」

 先生「自虐的になるな!無条件釈放ではなくて、『議院の要求』だ。条文
       の精読の際に、こういったところに焦点をあて、本試験できかれるか
       もしれない と予測するのも大切だ」

 美里「クイズ感覚ですね」

 先生「(無視)次に50条を読むときは、『法律の定める場合』を埋めて読
       むことも大事だ。国会法33条・34条によれば、不当逮捕のおそれ
       がないため院外における現行犯と議院の許諾のある場合は、国会の会
    期中でも逮捕されることになる。これらに関して、2点を指摘してお
                         ※注1
       きたいが、それは、要覧としてまとめておいたので、あとで参照して
       おいてほしい」

 美里「はい。わかりました」

 先生「つぎに、議員の特権として、51条では、発言の免責特権がみとめら
    れているが、肢4では、国務大臣にすりかえられているから、本肢は
       明らかに正しくない。この免責特権については、いくつかの論点があ
                   ※注2
       るが、これも要覧でで示しておく」

 美里「はい。わかりました」

 先生「さらに、49条では、国会議員の歳費について定められているが、7
    9条6項・80条2項と項対比すればわかるが、議員の場合は、裁判
    官のように、減額禁止規定がないから、肢3は正しくない」
 
 美里「はあ〜い」

 先生「そんなことは、先刻、承知だということだな。顔に描いてある」

 美里「そのとおりです」

 先生「それでは、残りの国務大臣に関する肢の説明については、君にまか
       そう」

 美里「そうすると、4の国務大臣・・・は終わったし、1と5ですね。・・
       エツ!先生は意地悪です!わたしの誤った1を説明させるのですか」

 先生「きみのひとり相撲だ。1は、75条の文言どおりで、正しい!もう、
    おわっている。5の説明だけでよい」

 美里「はい。68条によれば、1項で国務大臣を任命した内閣総理大臣が、
       2項で任意に国務大臣を罷免できるのですから、裁判とか議院の問
       責決議によって罷免されることはありません」

 先生「パーフェクトな解答だ!本肢は、裁判官に適用される78条の規定
       をまぜているが、この際、この裁判官の身分保障の規定も頭にいれ
       ておこう」

 美里「問責決議までもちだされていますね」

 先生「『この問責決議は、衆議院の不信任決議と異 なり、 あくまで政治
        的な意味をもつにとどまる』。よく考えてみると、国務臣の責任
    追及といっても、窮極の責任追及は、罷免となるのだろうが、そ
    の罷免権限は、憲法上、内閣総理大臣が有するのだからつまると
    ころ、議院の国務大臣に対する責任追及は『あくまでも政治的な
    意味をもつにとどまる』ことになるのだろう」

 美里「よく、総理大臣の任命責任とかいわれますが・・・」

 先生「たしかに、その間の事情を示しているとおもう。そこで、もう一度、
       肢1にかえると、官憲の国務大臣の訴追にあっても、任命権者であ
       る内閣総理大臣の同意を要することになる。おちのついた、このあ
    たりで、本問を打ち切ろう」
 
 美里「はい」


  
 ※ 要覧 1

 (1)逮捕についての議院の許諾に際して「逮捕は許諾はするがそれを一
     定の期間に制限する期限付許諾が認められる」だろうか。「不逮捕特
     権保障の目的を、不当な逮捕から議員の人権が侵害される危険を防ぐ
     こと」ととらえたばあいは、ふたとおりの考えかたがみちびかれます。
    そのひとつは、「逮捕許諾の請求に対して議院はそれを全面的に拒
      むことができる以上、期限または条件をつけることも必ずしも違法
      ではない」というものです。これが多数説のようです。
    これに対して、その目的からいって、期限付許諾は認められず、
      全面的に拒むことしかできないという有力説もあります(芦部説も
      この立場のようです)。
    つぎに、「特権保障の目的を審議権の確保に重点を置いて考える
      立場は、期限付逮捕許諾は許される、という解釈と結びつく可能性
      が大きい」とされています。

        本試験で出題されるかどうか、わかりませんが、しっておいて、
      損はないとおもいます。

 (2)これは、一般的に論じられていませんが、院内における現行犯の
       ばあ いは、どうなるのでしょか。このばあいには、議院の許諾の
       あるばあい、逮捕されることになるのでしょう。


  ※ 要覧 2

 (1) 免責特権の保障は、厳密な意味の「演説、討論又は表決」に限定さ
       れません。議員の国会における意見の表明とみられる行為や、職務行
       為に付随する行為にもおよびますが、暴力行為は、それに含まれませ
       ん。私は、ここで、さきにあげた院内における現行犯を連想します。

 (2 「責任」とは、民事・刑事の責任のほか、弁護士等の懲戒責任を含み
       ますが、政党が党員たる議員の発言・表決について、除名等の責任を
       問うことはさしつかえありません。

 (3) 「議員が職務と無関係に違法または不当な目的をもって事実を摘示
       し、あるいは、あえて虚偽の事実を摘示して、国民の名誉を棄損した
       と認められる特別の事情ある場合には、国家賠償法1条1項に基づい
       て、国の賠償を求めるできる場合もあると、解され」ています(最判
       平成9・9・9民集51巻8号3850頁)。

 (4) 議員の職務行為に関しておこなわれた犯罪(暴力行為)について、
    その訴追に議院の告発を要するでしようか。議院の自律権を尊重す
    れば、積極に解することになりますが、それは新しい特権を議院に
    認めることになり、妥当でないというのが、芦部説です。     

   《本問については、後掲 参考文献を参照した》


 ●  平成21年度問題7

   衆議院と参議院の議決に一致がみられない状況において、クローズ
 アップされてくるのが両院協議会の存在である。日本国憲法の定めに
 よると、両院協議会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合は、
  次のうちどれか。 

  1 衆議院が先議した予算について参議院が異なった議決を行った場合 
 2 内閣総理大臣の指名について衆参両院が異なった議決を行った場合 
 3 衆議院で可決された法律案を参議院が否決した場合 
 4 衆議院が承認した条約を参議院が承認しない場合 
 5 参議院が承認した条約を衆議院が承認しない場合 


 《解説》

   法律案、予算および条約、内閣総理の指名などについて両議院の意
 見が対立した場合に、妥協案の成立をはかるため、両院協議会が設け
 られる(後掲書)。

  このうち、両議院の意見が対立した場合

  (1)予算については、60条2項および国会法85条1項により
     両院協議会を必ず開かなくはならない。
  (2)内閣総理の指名については、67条2項および国会法86条
    2項により両院協議会を必ず開かなくはならない。
  (3)条約の国会承認については、イ 衆議院が承認した条約を参
    議院が承認しない場合 、ロ 参議院が承認した条約を衆議院が
    承認しない場合 いずれの場合も、両院協議会を必ず開かなくは
    ならない(61条・60条2項・国会法85条)。

   したがって、本問においては、肢1の予算(1)・肢2の内閣総
  理大臣の指名(2)・肢4・5の条約の国会承認いずれについても
  両院協議会を必ず開かなくはならない場合に該当するので、両院協
  議会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合に該当しない。

   残るのは、肢3の法律案の議決である。59条3項によれば、衆
   議院で可決された法律案を参議院が否決した場合、衆議院が、両議
  院の協議会を開くことを求めることができるのであって、両院協議
  会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合に該当する(国会
  法84条1項)。
   なお、参議院が両院協議会を求めることができる場合もあるが、
  この場合、衆議院はこの両院協議会の請求を拒むことができること
  になっている(国会法84条2項)。

   以上の記述に照らせば、肢3が正解である。

  ※ 参考事項

   a 本問解説では、全体の仕組みを理解するために、国会法に言
    及したが、「日本国憲法の定めによると、両院協議会を必ずし
    も開かなくてもよいとされている場合」という設問に答えるた
    めには、憲法59条3項の条文を正確に知っていれば、本問の
    正解が3であると即答できる。

   b 関連事項として、法律案、予算および条約、内閣総理の指名
    について、条文を示して、「衆議院の優越」に言及しておきた
    い。

     法律案⇒衆議院の再可決によって、法律となる(59条2項)。
         参議院が60日以内に議決しないときは、衆議院は、
         参議院が否決したものとみなし、59条2項によっ
         て再可決できる(59条3項)。
     
     予算および条約⇒必要的開催である両院協議会における意見
             の不一致又は参議院が30日以内に議決し
             ないときは、衆議院の議決で足りる(60
             条2項・61条)


     内閣総理の指名⇒必要的開催である両院協議会における意見
             の不一致又は参議院が10日以内に議決し
             ないときは、衆議院の議決で足りる(67
             条2項)


     なお、衆議院の予算先議(60条1項)にも留意されたい。


 ●  平成20年度問題5

   国家機関の権限についての次のア〜エの記述のうち、妥当なもの
  をすべて挙げた組合せはどれか。 
   
   ア 内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがある。
   イ 最高裁判所は、実質的にみて、行政権を行使することがある。
   ウ 衆議院は、実質的にみて、司法権を行使することがある。
   エ 国会は、実質的にみて、司法権を行使することがある。 

   1 ア・ウ 
  2  ア・イ・エ 
   3 ア・ウ・エ 
  4  イ・ウ・エ 
   5 ア・イ・ウ・エ 

 
 《解説》

   ● アについて。

   「立法」には、、形式的意味の立法と実質的意味の立法という二つ
  の意味がある。

     形式的意味の立法とは、規範の中身が何であるかを問わず「法律」
    と いう形式だけを問題にする。
      実質的意味の立法は、規範の形式が法律であると命令であるとを
    問わず中身を問題にする。

     憲法41条が規定するのは、実質的意味の立法であるため、不特定
   多数のの人に対して、不特定多数の事件に適用される法規範は、国会
   が定立することになる(後掲書)。

   しかし、憲法のもとでは、内閣の発する政令によって、法律を執行
    するためのもの(執行命令)ないし法律の具体的は委任に基づくもの
  (委任命令)を定立することができる(73条6号)。

    したがって、「内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがあ
   る」というのは妥当である。

   論理的にえば、以上記述したとおりであるが、本肢をみて、パッと
  73条6号の「政令」が反射的に頭に浮かべば、それが、正解に直結
  するのであろう。

   ● イについて。  
 
  最高裁判所は下記の司法行政事務を行う。
   
  下級裁判所の裁判官指名権(憲法80条第1項)・最高裁判所の職員
 並びに下級裁判所および 裁判所職員を監督する司法行政監督権(裁判
 所法80条1号・裁判官会議の議によって行う。同12条)。

  なお、これらは、明治憲法では司法省(現在の法務省)の所管に属し
 ていた行政事務であって、裁判作用とあわせて行政事務を行使する点で、
 最高裁判所の地位と機能は、戦前の大審院と大きく異なる(後掲書)。

   したがって、肢イが妥当であることは、明らかである。

  ※ 最高裁判所規則の制定権(77条1項)は、最高裁判所が、実質
   的にみて、立法権を行使する場合であることにも注意せよ。

  

 ● ウについて。

   議院の機能の一つである内部組織に関する自律権として、議員の資格
  争訟の裁判権(55条)がある。これが、実質的にみて、司法権の行使
  であることは疑いない。肢ウは、妥当である。
   
   ※  当該裁判権は、議員の資格の有無についての判断をもっぱら議院の
     自律的審査に委ねる趣旨のものであるから、その結論を通常裁判所で
   争うことはできない(後掲書)ことにも注意せよ。

 
 ● エについて。

    これは、弾劾裁判(64条)を問題にしていることは、疑いない。しか
   し、次の指摘には、注意を要する。

     国会の権限に属するのは、弾劾裁判所を設けることだけであって、弾劾
   裁判を行うのは弾劾裁判所の権限であり、弾劾裁判所は、国会の機関では
   ないことは注意を要する(清宮四郎著・憲法1・有斐閣発行)。

     ここに注目すると、実質的にみて、司法権を行使するのは、国会ではな
   くて、国会の設置した弾劾裁判所ということになる。
     しかし、国会において、両議院で組織された訴追委員会が、裁判官の罷
    免を訴追することになっている(国会法126条)。これも司法権の行使
    だとみれば、この肢は妥当ということになるのだろうか。あるいは、弾劾
  裁判所の設置自体も実質的にみて、司法権の行使になるのだろうか。いず
  れにしても、疑問の残る肢である。

    しかし、全体としては、ア・イ・ウが妥当な肢であることは、動かせな
  いので、1〜5の選択肢によれば、5を選択せざるを得ず、出題者として
  は、エが妥当であるとの判断に立脚していることになる。
  
 ================================== 

   以上のとおり、本問は5が正解である。
 
 ==================================

  
 ◆ 今回は、過去問/憲法・条文問題について、平成20年度まで遡ったが、
  それ以前となると、数多くの条文問題が出現している。ただし、条文問題
  は、本来、本試験日より遠くない時期に集中的に行うべきものである。し
  たがって、この続編は、本試験日に合わせて、適切な時期に掲載すること
  にする。

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  ★  参考文献

  憲法 第四版 芦部 信喜 高橋 和之 補訂 岩波書店 

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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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