行政書士試験独学合格を助ける講座

行政法オリジナル問題 第64回

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               ★ オリジナル問題解答 《第64回》★

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                     PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法


  【目次】   解説


   メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】 第175号に
  おいて、以下の質問ふたつを行った。
 
   ☆  質問・その1 
   
   行政手続法においては、拒否処分と不利益処分すなわち広い意
  味での不利益処分について理由の提示を行政庁に義務づけている
  が(8条1項・14条1項)、この行政手続法の理由の提示の義
  務は、許認可処分にまでは及んでいない。このことが、第三者訴
  訟にいかなる影響を及ぼすか。
  
  ☆  質問・その2

  「第三者訴訟の場合には、義務付け訴訟は、侵害処分が行われる
   ことを求めるために用いられる」というのは、具体的にどのよう
  な意味か、根拠条文を示して答えよ。
   
 ★ なお、当該質問は、メルマガ175号「余禄」欄の対談の途中
  で出題されたものであるから、その出題の経緯を知るには、メル
  マガ175号を参照されたい。


     メルマガ第175号はこちら
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 ■  解説
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 ▲ 本問出題の趣意

    過去問においては、繰り返し、原告適格に関して出題されている。
 本問二題は、いずれも、第三者訴訟の原告適格に関連する行政法上
 重要な課題であって、今後の行政書士試験対策としても、理解を深
 めておきたい事柄が対象になっている。そのうち、質問・その1は、
 行政訴訟のなかで最も重要な取消訴訟に関するものであり、同・そ
 の2は、平成16年の行訴法改正により法定された、これまた重要
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 ▼ 総説        

 1 取消訴訟と義務付け訴訟

   取消訴訟とは、現に行われた行政処分を裁判所に取り消しても
  らう訴訟である(行訴法3条2項)。

   義務付け訴訟とは、行政処分をすべき旨を行政庁に対して命ず
  ることを求める訴訟である(行訴法3条6項)。

 
  2 第三者訴訟

    (1)取消訴訟
 
   例えば、風俗営業や廃棄物処理場の設置について、これを行政
  庁に申請した相手方が、拒否処分を受けたり、あるいは風俗営業
  を営む者に対して、行政庁から、営業停止命令が出されたりした
  場合には、相手方は、これら拒否処分や不利益処分について、そ
  の効力を争うために、取消訴訟を提起できる。

   また、風俗営業や廃棄物処理場の設置についての許可が行政庁
  によって行われた場合、それによって迷惑を受ける住民は、相手
   方ではないが、やはり、その効力を争うために、取消訴訟を提起
  できる。この処分の相手方ではない第三者が起こす訴訟を第三者
  訴訟という(後掲書 読本参照)。

  (2)義務付け訴訟

     例えば、国民が許認可の申請をしたが、行政庁が拒否処分を行
  った場合において、その国民が拒否処分の取消判決に満足せず、
  許認可を行政庁に義務付ける判決を求めるために義務付け訴訟を
  提起できる。

   また、公害を発生している工場に対して、国民が行政庁に規制
  権限の行使を義務づける判決を求める義務付け訴訟も考えられる。
  具体的には、国民が、公害を発生している工場に対して、施設改
  善命令または操業停止命令を発するよう行政庁を義務付ける訴訟
  を提起できるのである。前者が申請型義務付け訴訟と呼ばれのに
  対して、後者は非申請型(または直接型)義務付け訴訟と呼ばれ
  る(後掲書 読本参照)。当該後者の非申請型(または直接型)
  義務付け訴訟は、前者が処分の相手方が起こすのに対して、第三
  者が起こす訴訟であるから、第三者訴訟に該当する。

   ※ 行訴法第3条第6項によれば、第1号が、非申請型(また
    は直接型)義務付け訴訟についての規定であるのに対して、
    第2号は、申請型義務付け訴訟についての規定である。
     なお、第2号の申請型義務付け訴訟には、行政庁が拒否処
    分を行った場合のほか、国民の申請に対して行政庁が応答し
    い場合も含むことに留意せよ(行訴法第37条の3第1項・
    第3項等参照)。

 (3)原告適格

   取消訴訟・義務付け訴訟いずれについても、行政処分の相手方
  が訴訟提起をする場合には、「法律上の利益を有する者」とされ
  るため、行訴法第9条第1項の規定により原告適格が認められる
  のに対して、第三者訴訟の場合には、同法第9条第2項が適用さ
  れるため、原告適格が認められるには、裁判所によって、「法律
  上の利益」があると判断されなくてはならない(非申請型《また
  は直接型》義務付け訴訟については、行訴法第37条の2第4項
  により第9条第2項の取消訴訟の規定が準用される)。
  

 △ 各問の解答


  ☆  質問・その1 
    
   (1)行政手続法上、手続の仕組みとしては、a 申請に対する処分
   ・b 不利益処分 に分けられる。
   
   a 申請に対する処分とは、前記▼総説2(1)の前者の例に従
    えば、「風俗営業や廃棄物処理場の設置について、これを行政
    庁に申請した相手方が、拒否処分を受けた場合」がこれに該当
    する(行手法第2条第3号・第5条以下参照)。

   b 不利益処分とは、前記▼総説2(1)の後者の例に従えば、
    「風俗営業を営む者に対して、行政庁から、営業停止命令が出さ
        れた場合がこれに該当する(行手法第2条第4号・第12条以下
        参照)。

  (2)質問文に明らかなように、a拒否処分・b不利益処分を合わせ
   てbの狭義の不利益処分と区別して、広い意味での不利益処分と
   言う。このa・bの広い意味での不利益処分については、行手法
      は、いずれについても、理由の提示を行政庁に義務づけているが
     (8条1項・14条1項)、行政庁が許可等をする場合(許認可
      処分)には、この行手法の理由の提示の義務が行政庁に課せられ
      ていない。

 (3)第三者訴訟とは、▼ 総説2(1)後者の例に従えば、風俗
   営業や廃棄物処理場の設置についての許可が行政庁によって行
   われた場合、それによって迷惑を受ける住民は、その効力を争
   うために、取 消訴訟を提起する場合である。しかし、前述し
   たように、行政庁が許可をする場合には、行手法上、行政庁に
   理由の提示が義務づけられていないのである。そのことが、第
   三者訴訟にいかなる影響を及ぼすかという本題に、ここで到達
   した。

   (4)そもそも、拒否処分と不利益処分について理由の提示が行政庁
    に義務づけられている理由は何かを、ここで考察してみる。後掲
    書・読本によると、「行政決定の理由を相手方に知らせることに
    よって、行政上の不服申立てや訴訟を行う上で便宜を与えるとい
    う役割を持っている。」とされている。ということは、第三者訴
    訟では、そのような便宜が与えられていないことになる。さらに、
    読本から引用すると、「もっとも、理由の提示が要請されるのは、
    不利益処分だけではない。許認可処分であっても、原子炉の設置
    の許可や公共料金の値上げの認可のように第三利害関係人である
    住民の生活への影響が大きく、あるいは住民の関心が強いものに
    については、理由提示の必要性は強い。しかし、行政手続法の理
    由提示の義務はこのような許認可処分にまで及んでいない。これ
    は、第三者利害関係人のことをあまり考慮していないという同法
    の限界の一つの表れである。」
    以上の記述から言えることは、第三者訴訟における便宜のため
   には、許可処分等についても、理由提示の必要性は強いにもかか
   わらず、行手法上、理由提示の義務がこのような許認可処分にま
   で及んでいないことは、同法が第三者利害関係人のことをあまり
   考慮していないことを意味する。換言すれば、許認可処分の本体
   ないし背骨は、理由であるのに、これが提示されずに訴訟でその
   効力を争うことは、困難である。
    以上の当該記述が、「行政手続法の理由の提示の義務が、許認
   可処分にまでは及んでいないことによる第三者訴訟に及ぼす影響」
   に対する解答になる。
           
    
  ☆  質問・その2  

   (1) 行政処分の区分けとして、相手方に利益を与える授益的
      なものである授益処分に対して、侵害処分とは、相手方に
      不利益を課するものである。
       その処分の性質からして、申請に基づいて行われる処分
      のほとんどは、授益処分であるのに対して(行手法第2条
      第3号・第5条以下参照)、侵害処分は、その相手方の権
      利や利益を侵害するものであるから、申請によらず、職権
      によって行われる、行手法上では、不利益処分と呼ばれて
      いるものである(行手法第2条第4号・第12条以下)。
 
       (2)前記▼総説2(2)前者の例が、行政処分の相手方が授益
     処分を義務付けるための義務付け訴訟であるのに対し(行訴
     法第3条第6項第2号・その手続は、37条の3)、前記▼
      総説2(2)後者の例は、質問文にある「第三者訴訟の場合
          には、義務付け訴訟は、侵害処分が行われることを求めるた
          めに用いられる」ことを示す具体例である。

   (3)したがって、本問の解答としては、前記▼総説2(2)後
     者の例を引用して、以下のように要約をすればよいであろう。

      具体的には、公害を発生している工場に対して、国民が行
     政庁に規制権限の行使を義務づける判決を求める義務付け訴
     訟を意味する。

      また、根拠条文としては、行訴法第3条第6項第1号であ
     り、その要件については、第37条の2に規定がある。

      なお、不明の点があれば、前記▼総説2(2)を再読され
     れば、より理解が深まるであろう。
  
    
   
  ▽  付 言

    今回とりあげたテーマは、行政法の基幹にかかわる重要な事柄
   であるので、将来の本試験において、5肢択一式・多肢選択式・
   記述式のいずれの形式によっても、出題される蓋然性は高いと思
   料する。その想定される事態に対して、本文において記述したこ
   とに対する基本的理解があれば、その全てに対応することができ
   ることになるであろう。私としても、今回の主題に関して、今後、
   本講座において、前記形式に基づくオリジナル問題を開発した上
   で、提供をできればよいと願っている。


 ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著 

    ・有斐閣発行
 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
 
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