行政書士試験独学合格を助ける講座

民法オリジナル問題 第66回

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★ オリジナル問題解答 《第66回》★

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               PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 民法 


【目次】   問題・解説
    
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 ■  問題  多数当事者の債権および債務
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 (1) 買主の代金債務の保証人は買主の有する同時履行の抗弁権(533
     条参照)を主張できるか。

      前回  ★ オリジナル問題解答 《第65回》★  において、説明 
    を完了した。


 (2) 連帯保証人が数人あって、保証人間に連帯の特約がない場合におい
     て、債権者が保証人の一人の債務を免除したときは、他の連帯保証人
     の債務にその効果は及ぶか。
 
※ 本問は、【行政書士試験独学合格を助ける講座】第177号 におい
て、「平成23年度問題31」の検討を行った際に、関連質問として
出題したものである。

  
☆ なお、メルマガ第177号はこちら
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 ■  解答
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   ○ 問題(2)について

   (ア) 本問の図示

本問では、以下に示すとおり、AはBから1000万円借り受け、
Aの依頼によってC及びDがこの債務について連帯保証人となった
     場合を想定する。
 
(債権者)

↓1,000万円


A    C・D
(主たる債務者)(連帯保証人)

★ 図示したところによると、C・Dの複数の保証人が同一の主たる
債務を保証しているが、その保証関係は、特殊な保証であって、こ
れを共同保証という。
 

  (イ)まず、分別の利益について、検討する。

a 共同保証の場合には、各保証人が1個の契約で保証人なった場合
はもちろん、別々の契約で保証人となった場合にも、分別の利益が
あるので、各保証人は債務額を全保証人間にそれぞれ等しい割合で
その一部を保証する(456条)。これが原則である。

b しかし、連帯保証人が数人ある本問のような場合には、各保証人
は分別の利益を有しないので、各保証人は債権者に対して全額を弁
済する義務を負うのであるが、保証人同士では負担部分だけの義務
を負うにとどまるとみるべきできであるから、その関係は連帯債務
者相互間の関係に酷似する。そこで民法も、右の保証人が自己の負
単部分以上を弁済したときに、他の保証人に対して取得する求償関
については、連帯債務者相互間の求償関係の規定を準用することに
した(465条1項)。
連帯保証人がC・Dである本問に当てはめれば、当該債権の弁済
期到来後、CがBに1,000万円支払った場合、Cは、自己の負
担部分以上を他の保証人であるDに求償することができる。そして
各連帯保証人の負担部分については、別段の定のない限り、平等で
あるというのが古い判例であるから(大審院大正8年11月13日
民録25−2005)、Cは自己の負担部分を超える500万円に
ついて、Dに対して求償できることになる。

        ★ 分別の利益がない場合として、民法は、「主たる債務が不可分
であるため」又は「各保証人が全額を弁済すべき旨の特約がある
ため」である場合を掲げているが(465条)、この点について
は、以下の2点に留意すべきである。
その1・本問の例示のように、複数の連帯保証人があって、
「各保証人が全額を弁済すべき旨の特約が」ない場合にも、判例は、
以下のとおり、分別の利益を有しないとしている。

連帯保証人は、保証人間に連帯の特約がなくても、分別の利益を
有しない(大判大6・4・28民録23−812)。
その2・保証人間に連帯の特約がある場合が、465条にいう                            「各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため」である場合
           に該当し、これを「保証連帯」ともいう。

★ 本問において、共同保証人が主たる債務者対して求償すること
については、特別の問題はないが、本問では、「Aの依頼によっ
てC及びDがこの債務について連帯保証人となった」とあるから、
459条以下の適用を受けるのであって、462条は適用されな
い。

★ 分別の利益を有する保証人の一人が、自分の保証すべき数額以
上の弁済をしたときは、他の保証人に対して求償権を取得する。
しかしこれは、本来義務のないことをしたのだから、あたかも
委託を受けないで保証人となった者の弁済と類似の関係である。
したがって、民法は、これを462条によって規律することにし
た(465条2項)。

(ウ)以上の記述したところを前提に(2)の問題の主題を探ることに
する。

a 連帯保証人が数人あって、保証人間に連帯の特約がない場合にお
ける場合であるから、判例によれば、 連帯保証人は、保証人間に
連帯の特約がなくても、分別の利益を有しないため、さきの図示に
よれば、CがBに1,000万円支払った場合、Cは自己の負担部
分を超える500万円について、Dに対して求償できることになる。

b 以上の法律関係にある場合、債権者が保証人の一人の債務を免除
したとき、他の連帯保証人の債務にその効果は及ぶかどうかが、本
問の主題である。さきの図示によれば、Bが、Cの連帯保証債務を
免除したとき、437条を準用して、Cの負担部分である500万
円について、免除の効果がDに及ぶかどうかということである。こ
れを認めれば、Dは、1,000万円の支払義務を負うのではなく、
500万円についてのみ支払義務があるにすぎないことになる。

(エ)最後に、本問の正解を導くことにする。

a 判例(最判昭和43・11・15民集22巻12号2649頁)
は、同種事案に対して、以下のとおり判示する。

複数の連帯保証人が存する場合であっても、右の保証人が連帯して
保証債務を負担する旨特約した場合(いわゆる保証連帯の場合)また
は商法511条2項に該当する場合でなければ、各保証人間に連帯債
務ないしこれに準じる法律関係は生じないと解するのが相当であるか
ら、連帯保証人の1人に対し債務の免除がされても、それは他の連帯
保証人に効果を及ぼすものではないと解するのが相当である。

b 以上の判例によれば、複数の連帯保証人が存するため、分別の利
益がない場合において、図示によれば、BがCに対して連帯保証債
務を免除しても、その効果は、Dに及ばないので、Dは、1,00
0万円の支払義務を負うことになるのである。その理由として、判
例は、D・C間において465条にいう「全額を弁済すべき旨の特
約」すなわち連帯して保証債務を負担する旨特約した場合(いわゆ
る保証連帯の場合)に該当するのでなければ、連帯債務に関する43
7条が準用されないからであるとする。

c 本試験では、民法の規定の解釈については、判例に照らして判断
することになるので、(2)の問題の解答としては、「連帯保証人
が数人あって、保証人間に連帯の特約がない場合において、債権者
が保証人の一人の債務を免除したときは、他の連帯保証人の債務に
その効果は及ばない。」ということになる。

★ 判例によれば、保証連帯の場合と同時に商法511条2項に該当す
る場合についても言及されているが、この点の説明は省略する。
(オ)付言として、以下に既述したところを要点として、列記しておく。

連帯保証人が複数ある場合の共同保証において、
a 分別の利益がないとされるのは、連帯して保証債務を負担す
る旨特約した場合(いわゆる保証連帯の場合)に限定されない
(連帯保証人が複数あるだけである場合も465条の適用がある
《前記判例》)。この場合には、共同保証人間の求償権について
は、連帯債務の442条から444条までを準用する。

b 連帯債務の437条が準用されるのは、連帯して保証債務を
負担する旨特約した場合(いわゆる保証連帯の場合)に限定され
               る。
◆  参考文献

民法2  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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