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民法・組合過去問解説 第119回

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             ★  【過去問・解説 第119回】  ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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 【テーマ】 民法・組合

       ※ 前回本サイト 第118回において、「組合」を
        とりあげたので、関連問題として、以下の過去問解
        説を行う。
        
 【目 次】 過去問・解説
              
        
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 ■ 平成25年問題 問題33 
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   A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営
 むことを約して組合を設立した場合に関する次の記述のうち、民法
 の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。 

 1 Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の
  過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成
 を得た上で行わなければならない。 
 2 組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合
  の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、A
   とBだけの合意では決することはできない。 
 3 組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得な
   い事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。 
 4 やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約
   がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退する
   ことはできない。 
 5 組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登
   記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求を
   することができる。 



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 ■ 解説
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 ○ 各肢の検討

  ● 肢1・2について。

   各組合員が業務執行の権利義務を有するのを原則とする。
   
  (1)業務執行権
    各組合員が業務執行権を保有する場合には組合員の過半数
   をもって組合の業務執行を決する(670条1項)。
    しかし、組合の常務、すなわち、その組合の目的遂行のた
   めに普通にすべき業務で特別に重要でないものは、各組合員
   が単独にしうる(670条3項)。
  (2)一部の組合員への委任
    組合契約をもって一部の組合員を業務執行員と定めたとき
   は、その業務執行員の過半数をもって業務執行を決する
   (670条2項)。

   ◎ 肢1は、(1)の各組合員が業務執行権を保有する場合
    に該当するが、組合の常務について各組合員が単独にしう
    るのであって、組合員の過半数の賛成を要しない。

        したがって、肢1は正しくない。
  
   ◎ 肢2は、(2)の一部の組合員への委任の場合であるが、
    この場合は、その業務執行員の過半数をもって業務執行を
    決するのであって、全員の合意で決しなくてよい。

        したがって、肢2は正しくない。

   ※ 関連事項

   ア (2)の一部の組合員への委任は総組合員の同意を要する。

   イ 組合の常務について、(1)の場合には、その完了前に他
    の組合員が異議を述べたときは単独で行うことができない。
    (2)の場合には、他の業務執行者が異議を述べたときは単
    独で行うことができない(670条3項)。

  ● 肢3・4について。

   脱退 民法は脱退を認め、これによって組合の同一性を失わな
      いものとしている。

   脱退の二態様 脱退する者の意思に基づく脱退(任意脱退)と
          そうでないもの(非任意脱退)とがある。

   (1)任意脱退 他の組合員全部に対する告知である。

      原則・(ア)もし組合の存続を定めないとき、(イ)または
         ある組合員の終身の間存続すべきものと定められた
         ときは、各組合員は、いつでも脱退できる。

     ただし・脱退が組合にとって不利な場合には、やむを得ない
         事由がなければ脱退できない。

     例外・(ウ)組合の存続期間が定められているときは、やむ
         を得ない事由があるときだけ脱退できる。

     以上は、678条1項・2項適用による論理的帰結である。
  
   (2)非任意脱退 679条・680条

    
        肢3・4では、以上のうち、(1)の任意脱退がとりげられて
   いる。
   
    ◎   肢3は、原則の(ア)の場合であるから、脱退できる。
      ただし書きによっても、Aは、やむを得ない事由があれば、
      組合に不利な時期に脱退することができる。
        
      したがって、肢3は正しくない。
  
    ◎ 肢4については、前記(ア)・(イ)・ただし・(ウ)
     によっても、やむを得ない事由があれば、脱退できるのであ
     るから、本肢は正しくない。
      なお、本肢は、最判平成11・2・23民集53−2−
     193に依拠しているものと思われる。当該判決の要旨は、
      以下のとおりである。
   
           やむを得ない事由がある場合には、組合の存続期間の定め
         の有無にかかわらず常に脱退ができるという678条の定め
     は強行規定であり、これに反する組合契約の約定はその限度
         で効力を有しない。
      
    ※ 関連事項

     非任意脱退である除名について(680条)
     
       除名は最も重大な事由であるから、要件が厳重である。す
     なわち、正当の事由がある場合にだけ、しかも除名しようと
     する一人を除き他の全員の同意を要する。そして、除名はこ
     れを除名される者に通知しなければこれをもってその者に対
     抗できない。   
 
  ● 肢5について

    組合の積極財産は総組合員の共有である(668条)。したが
      って、本肢における組合財産に属する特定の不動産は、総組合員
      の共有であるから、249条以下の共有の規定を受けるので、2
      52条ただし書きが適用される。本肢において、組合員の一人で
      ある共有者Aが、組合財産である当該不動産に不法な保存登記を
      した第三者に対して、抹消登記を請求するのは、252条ただし
      書きの保存行為に該当するので、Aは単独でこれを請求できる。
    なお、判例(最判昭33−7−22民集12−12−1805)
      がある。その要旨は、以下のとおりである。
  
    組合財産が理論上合有であるとしても、本法の規定はこれを共
      有とするたてまえであるから、組合財産については、667条以
      下に特別の規定のない限り、249条以下の共有の規定が適用さ
      れる。

    組合員の一人が持分権に基づき、組合財産につき登記名義を有
      する者に対して登記抹消を求めるのは、(252条ただし書きに
      いう)保存行為である。

    したがって、本肢は正しい。
    
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    以上の検討結果、5が正しいので、正解は肢5である。
   
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 ○ 総括

   本問では、「民法の規定および判例に照らし」となっているが、
    かりに判例を知らなくても、条文のみで、本問を正解に導くこと
    ができる。民法に関しては、普段から条文に馴染んでおくことが
    肝要である。まずは、条文である。


 ★ 参考書籍 
  
  民法 2  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房  


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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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