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行政事件訴訟法/本案訴訟と仮の救済の関係 オリジナル問題 第71回
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★ オリジナル問題《第71回 》★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政事件訴訟法/本案訴訟と仮の救済の関係
【目次】 解答・解説
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■ 解答・解説
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▲ 総説
(ア)免職処分は行政処分であるから、当該処分が違法であると考えら
れる場合、取消訴訟の排他性の原則により、取消訴訟を提起する必
要があるし、仮の救済を得るためには、執行停止を求めなければな
らない(行訴法3条2項・25条参照)。
(イ) 免職処分が無効であると考えられる場合、取消訴訟の排他性は
働かず、本案訴訟としては、無効確認訴訟により免職処分の無効
の確認を裁判所に求める方法(行訴法3条4項)と、当事者訴訟
を提起し、公務員としての身分の確認を求める方法がある。Ψ
Ψ 公務員の身分は公法上の地位であるから、この公務員の身分
の確認訴訟は、当事者訴訟に当たる(行訴法4条後段)。
(ウ) 問題は、免職処分が無効であると考えられる場合における仮の
救済である。無効確認訴訟の場合は、執行停止制度を利用できる
(行訴法38条3項参照)。これに対し、当事者訴訟の場合は、
仮処分を申し立てること以外に方法はないが、しかし、行政事件
訴訟法44条により認められない可能性が多分にある。
(以上は、後掲書 読本を参照した)
▼ 各肢の検討
△ 1について
免職処分が違法であると考えられる場合、本案訴訟を取消訴訟と
するのは、妥当である。しかし、仮の救済を得るためには、執行停
止を求めなければならない(行訴法3条2項・25条参照)。
《▲総説(ア)参照》
本肢は、妥当でない。
▽ 2について
免職処分が違法であると考えられる場合には、取消訴訟の排他性の
原則により、取消訴訟を提起する必要がある。本案訴訟を当事者訴訟
とすることはできない。
《▲総説(ア)参照》
本肢は、妥当でない。
△ 3について
免職処分が無効であると考えられる場合、本案訴訟を無効確認訴訟
とする場合は、執行停止制度を利用できる(行訴法38条3項参照)
のであって、仮処分を申請することはできない。
《▲総説(イ)(ウ)参照》
本肢は、妥当でない
▽ 4について
免職処分が無効であると考えられる場合、本案訴訟を無効確認訴訟
とする場合は、執行停止制度を利用できる(肢3参照)。
本肢は、妥当でない。
△ 5について
本肢のポイントは、二つある。その一つは、免職処分が無効である
と考えられる場合、本案訴訟として、当事者訴訟を提起しできるとい
う点である。この点については、以下の論理構成ができる。すなわち、
(a) 免職処分が無効であると考えられる場合、取消訴訟の排他性
は働かない。(b)公務員の身分は公法上の地位であるから、この
公務員の身分の確認訴訟は、当事者訴訟に当たる(行訴法4条後段)。
二つ目のポイントは、本案訴訟として、当事者訴訟を提起できる以
上、本件では、公務員としての地位の保全を求める仮処分が認めらべ
きであるが、行政処分が関係する本件では、行訴法44条により当該
仮処分が認められない可能性がある。
以上の記述に従えば、本肢は、妥当である。
Ψ 参考事項
前述したところによると、「本案訴訟として、当事者訴訟を提起
できる以上、本件では、公務員としての地位の保全を求める仮処分
が認めらべきであるが、行政処分が関係する本件では、行訴法44
条により当該仮処分が認められない可能性がある」ということにな
るが、これに関連する部分を、後掲書読本から抜粋してみよう。
「 だが、これでは、行政処分が関係する事件で当事者訴訟を選択
すると、仮の救済がなくなってしまうという不合理がある。こ
の不合理を取り除き、仮の救済を可能にするため、行政事件訴
訟法44条について、行政処分が無効であれば、仮処分により
妨げられる公権力の行使はないのであるから、仮処分が許され
るという解釈が考えられる。しかし、実際の訴訟では、裁判所
は、行政処分が無効であるかどうかを審査せずに44条を適用
して仮処分申請を却下してしまう可能性もある。そうすると、
........................................................
仮の救済を求めるのであれば無効確認訴訟を選択できると行政
........................................................
事件訴訟法36条を解釈できるのが残された道ということにな
......
ろうか。」
なお、傍点は、私が付したが、この部分を敷衍すれば、36条
後段における、処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に
関する訴えすなわち当事者訴訟によっては、仮の救済という目的
を達することできないため、無効確認訴訟を提起し、仮の救済を
求めるため執行停止を利用するのが残された道であるというのだ
ろう。
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以上の記述によれば、肢5が妥当であるので、5が正解である。
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★ 参考図書
行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著
・有斐閣発行
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【発行者】 司法書士 藤本 昌一
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