行政書士試験独学合格を助ける講座

特集/行政事件訴訟法その2

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  ★ 特集/行政事件訴訟法・過去問「10年」を通じて、本試験

   を展望する。=その2

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 序説
    
    前回は、訴訟類型のひとつとして、「不作為の違法確認の訴え」
 をとりあげたが、今回は前回からの流れに沿って、「義務付けの訴
 え」に移行することにする。もちろん、「抗告訴訟の中では、
 「取消訴訟」(3条2項の『処分の取消しの訴え』及び3条3項の
 『裁決の取消の訴え』の総称・9条1項参照)がその重要度では第一
 であるが、これについては、最後に一括してとりあげることにする。

 各肢の検討

  前回の(1)「不作為の違法確認の訴え」に引き続いて(2)
「義務付けの訴え」について、過去問各肢をアトランダムにとりあげ、
 その記述が正しいかどうか検討することにする。

  (2) 「義務付けの訴え」

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 a  Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合
   において、Xが入園承諾の義務付け訴訟を提起する場合には、同時
   に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなけれ
   ばならない。 
  b  申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、それと併合
   して提起すべきこととされている処分取消訴訟などに係る請求に
  「理由がある」と認められたときにのみ、義務付けの請求も認容され
   ることとされている。
  c  申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分
   をすべき旨を行政庁に命ずることを求めるにつき「法律上の利益を
   有する者」であれば、当該処分の相手方以外でも提起することがで
   きることとされている。
 d   申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分
   がされないことによる損害を避けるため「他に適当な方法がないと
   き」に限り提起できることとされている。
 e  申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分が
  されないことにより「重大な損害を生ずるおそれ」がある場合に限り
  提起できることとされている。 
 f  申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、「償うことの
  できない損害を避けるため緊急の必要がある」ことなどの要件を満た
  せば、裁判所は、申立てにより、仮の義務付けを命ずることができる
  こととされている。 

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  ◎ a〜fについての【解答】

  ここで、前回の復習として、申請型と非申請型の義務付け訴訟に関
 する条文の適用関係の概略を示しておこう。

  ● 申請型義務付け訴訟
 
  (1)不作為型
    3条6項2号⇒37条の3第1項1号⇒37条の3第3項1号
    ・「不作為の違法確認の訴え」を併合提起
  (2)拒否処分型
    3条6項2号⇒37条の3第1項2号⇒37条の3第3項2号
    ・「取消訴訟又は無効確認の訴え」を併合提起
 
  ● 非申請型義務付け訴訟
    3条6項1号⇒37条の2第1号・訴えの要件に強い制限があ
    が、申請型のように併合提起の必要はない。

   各肢の検討

    a について。
     
     前記●申請型義務付け訴訟(2)拒否処分型3条6項2号⇒
    37条の3第1項2号⇒37条の3第3項2号・「取消訴訟又
    は無効確認の訴え」を併合提起 参照。
     したがって、本肢の場合には、「同時に拒否処分の取消訴訟
    または無効確認訴訟も併合して提起しなければならない」ので、
    本肢は正しい。 
    
    b について。

          37条2が規定する非申請型義務付け訴訟の訴訟要件におい
    ては、処分取消訴訟などの併合提起を要しないので、これに反
    する記述のある本肢は正しくない。
     また、申請型義務付け訴訟において、併合提起された処分取
    消訴訟などに係る請求に「理由がある」と認められることは、
    義務付けの請求が認容されるための一要件に過ぎない。その他
    の要件については、37条の3第5項に規定がある。当該要件
    については、非申請型義務付け訴訟についても、ほぼ同様の規
    定がある(37条の2第5項)。
     以上、本肢は正しくない。
 
     
    c について。

     申請型義務付け訴訟では、「法令に基づく申請又は審査請求
    をした者に限り、提起することができる」(37条の3第2項)
    ことになっているので、「当該処分の相手方以外でも提起する
    ことができるという本肢の記述は、正しくない。
     ただし、非申請型義務付け訴訟では、「法律上の利益を有す
    る者に限り、提起することができる」(37条の2第3項)こ
    とになっているので、この点に関しては、本肢は正しい。

    Ж 37条4項及び9条2項にも注目!平成24年度問題17
     において、9条2項全文が、空欄に入る語句の組合せ問題と
     して出題された。

    d・e について。

     申請型義務付け訴訟では、前述したとおり、取消訴訟などを
    併合提起することが義務づけられているが、訴えの要件に強い
    制限のある要件の定めはない(37条の3)。また、非申請型
    の義務付け訴訟の要件は37条の2第1項に定めがあるが、当
    該定めは、本肢の記述と微妙に異なっている。

     本肢d・eはいずれも正しくない。
    
    f について。

     本肢の記述は、仮の義務付けの申立ての要件(37条の5第
    1項)に照らし、正しい。

    Ж 仮の差止めの申立て要件は、仮の義務付けの申立ての要件と
     同じである(37条の5第1・2項)。
      また、義務付けの訴えと差止めの訴えの要件も見比べておく
     べきである(37条の2・37条の4)
    
=================================

 g  国の行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は、当該行
 政庁である。
 h  行訴法は、行政庁が処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟とし
 て「義務付けの訴え」を設けているが、行審法は、このような義務付
 けを求める不服申立てを明示的には定めていない。 

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  ◎ g・hについての【解答】

   各肢の検討  


  g について。

   被告適格に関する11条は、38条によって、義務付け訴訟にも
  準用されているので、義務付け訴訟の被告は、国である(11条1
  項1号)。

   本肢は、正しくない。

   11条については、2項・3項も含め、他の条文もよく見ておくべ
  きである。

  h について。

      行訴法が、「義務付けの訴え」を設けていることは、繰り返すまで
  もなく、正しい。また、「行審法は、このような義務付けを求める不
  服申立てを明示的には定めていない」という本肢の記述もまた正しい。

  Ж なお、後掲書から、以下の記述を抜粋しておきたい。

   (1)行政不服審査制度においては、許認可などの申請に対する行
     政庁の不作為についても不服申立てが認められている(行審法
      7条)。従って、厳密には、行政不服審査制度は、抗告訴訟の
     うちの取消訴訟および不作為違法確認に対応するものである。
     もっとも、不作為違法確認訴訟も不作為に対する不服申立ても
     あまり用いられていない(読本)
   (2)・・処分の取消しを求める異議申立てや審査請求、処分の無
     効の確認を求める異議申立てや審査請求、といったものがあり
     うることになります。・・不作為の違法確認のばあいには、裁
     判所の司法機関としての性格から、行政庁の不作為に対しては、
     はなはだ消極的なコントロールしかできなかったわけですが、
     不作為についての審査請求のばあいには、裁決をおこなう行政
     機関(審査庁)は、(訴訟のばあいのように)ただ不作為が違
     法であることを確認するにとどまるのではなく、さらに積極的
     に、不作為庁に対して「すみやかに申請に対するなんらかの行
     為を命ずる」ことができる、とされています(行政不服審査法
     51条3項)(入門)

      しかし、私は、(2)の記述に対し、二つの疑問を抱く。一
     つには、不作為庁に対して「すみやかに申請に対するなんらか
     の行為を命ずる」ということは、行審法が義務付けを求める不
     服申立てを明示的には定めていることになるのではないか。と
     いうことになれば、肢hは、基本的に正しくないのではないか。
            もう一つは、「裁判所の司法機関としての性格から、行政庁
     の不作為に対しては、はなはだ消極的なコントロールしかでき
     なかった」という記述についてであるが、行訴法は、行政庁の
     不作為に対して、不作為違法確認の訴えを併合提起することに
     よって義務付け訴訟の提起を裁判所に行うことを認め、さらに
     は強い制限付きではあるが、仮の義務付けの申立てを認めてい
     ることからすれば、裁判所は、行政庁に対して、はなはだ消極
     的なコントロールしかできな」いとはいえないのはないか。
      これは、私個人の私見として、聞き流していただいて、みな
     さまは深入りされる必要はないと思料する。
     
       ★  参考文献

         行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著 

        ・有斐閣発行


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 【発行者】 司法書士 藤本 昌一
 
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