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行政事件訴訟法=裁決取消訴訟と原処分主義 過去問解説 第123回


         
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            ★  【過去問・解説 第123回】  ★

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                 PRODUCED BY 藤本 昌一
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 【テーマ】 行政事件訴訟法=裁決取消訴訟と原処分主義


 【目 次】 過去問・解説

  
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■ 平成27年度 記述式問題44
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   Xは、Y県内で開発行為を行うことを計画し、Y県知事に都市計画法
 に基づく開発許可を申請した。しかし、知事は、この開発行為によりが
 け崩れの危険があるなど、同法所定の許可要件を充たさないとして、申
 請を拒否する処分をした。これを不服としたXは、Y県開発審査会に審
 査請求をしたが、同審査会も拒否処分を妥当として審査請求を棄却する
 裁決をした。このため、Xは、申請拒否処分と棄却裁決の両方につき取
 消訴訟を提起した。このうち、裁決取消訴訟の被告はどこか。また、こ
 うした裁決取消訴訟においては、一般に、どのような主張が許され、こ
 うした原則を何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。 
  

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 ■ 解説
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 1 総じて、本問では、「原処分主義」が主題になっているが、
  その点については、最新のメルマガ225号において、対談形
  式によって、説明が行われている。

   なお、メルマガ225号については、こちらをクリック願いま
 す。
            ↓ ↓  
 

   
  ここで、 その一部を抜粋すると、以下のとおりである。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ● 論点 1 原処分主義

     原処分に不服があれば原処分について取消訴訟を提起しなければな
  らず、裁決・決定そのものに不服があれば、裁決・決定の取消訴訟を
  提起しなければならない。⇒取消しの理由の制限を定めた行訴法10
  条2項の論理的帰結
   
  当該標準書に付加すれば、裁決の取消しの訴えは裁決の手続きの違
  法について訴える場であるので、原処分が違法であるかどうかは別個
 に原処分について取消訴訟を提起しなければならないというのが、
 『裁決主義』である。

 Ж メルマガ225号においても明らかにしたが、現行行審法において
  は、不服申立ての種類の一元化が実現しているので、前記記述中、
 『決定』の文言は不要である。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  
  当該メルマガを読まれたみなさまは、当然その記述に重大な誤りが
 あることに気づかれたと思いますが、上記文章のうち、最後尾部分で
  述べた『裁決主義』であるとあるのは、言うまでもなく、『原処分主
  義』であります。私の不注意によりまして、このような単純ミスを犯
  しましたことをお詫びいたしますとともに、謹んで訂正をいたします。

 
 2 本問の解説

 (1) 本問の最大のポイントは、「申請拒否処分と棄却裁決の両方につ
   き取消訴訟を提起した」ということである。その点をしっかりと把
    握すれば、行訴法10条2項が規定する「処分の取消しの訴えとそ
   の処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しとを提起するこ
   とができる場合には・・」に直結することになる。
 (2) 当該条文の解釈については、前述したことを再度述べると、「裁
   決の取消しの訴えは裁決の手続きの違法について訴える場であるの
   で、原処分が違法であるかどうかは別個に原処分について取消訴訟
   を提起しなければならないというのが、 『原処分主義』《訂正済》
   である」
  (3) 本問においては、「申請拒否処分と棄却裁決の両方につき取消訴
   訟を提起した」場合において、棄却裁決につき取消訴訟を提起した
   時いわゆる「裁決取消訴訟」に焦点が当てられている。
 (4)ここで、解答すべき事項をみると一つには「裁決取消の被告であ
   る」。これは、11条1項柱書・同項2号の規定するところであ
   って、それによれば、裁決の取消しの訴えについては、当該裁決
   をした行政庁の所属する・・公共団体になる。本問では、Y県開
   発審査会に審査請求をしたのであるから、行政庁であるY県開発
   審査会が所属する地方公共団体であるY県が被告となる。
 (5)また、その余の解答すべき事項である「こうした裁決取消訴訟に
   おいては、一般に、どのような主張が許され、こうした原則を何と
     呼ぶか。」については、前記(2)で述べた10条2項の解釈に関
   する記述を要約して述べればよいのである。要点は二つである。
     
    その1 裁決の取消しの訴えは裁決の手続きの違法について訴え
    る場である。

    その2 原処分が違法であるかどうかは別個に原処分について取
    消訴訟を提起しなければならないというのが、『原処分主義』で
    ある」
 
 (6) 以上の記述から、不要部分を取り去り、本問の解答例を示すと
    以下のとおりである。

    ============================== 

     被告はY県である。裁決の手続の違法のみを主張できる。原処
     分主義という。(35字)
    
    ============================== 

   Ж 本問では、『原処分主義』が主題になっているため、原処分が違
   法であるかどうかは別個に原処分について取消訴訟を提起しなけれ
   ばならないという記述を省くことに対して疑義を生じる向きがある
   かもしれないが、字数の関係から、そこまで記述することは無理で
   ある。しかも、本問では、正面から、裁決取消訴訟の主張が聞かれ
    ているので、上記解答例のとおりでよいであろう。ただし、『原処
   分主義』の正しい理解のためには、省かれた隠れた記述をしっかり
   と把握しておくことが肝要であると私は思う。

   Ж  行政書士試験研究センターの解答例によると、以下のとおりにな
      っている。

     〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

    被 告 は Y 県 で あ り 、 裁 決 固 有 の 瑕 疵 の み が 主
   張 で き 、 こ の 原 則 を 原 処 分 主 義 と い う 。(38字)  

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 

    確かに、以上の解答例は、完璧であるが、「 裁決固有の瑕疵」
   という文言が思いつかなかった場合には、例えば、本講座の採用
     した「裁決の手続の違法」という言葉であっても、不正解にはな
   らないであろう。
 
       ちなみに、メルマガ225号の対談中、美知さんの発言におい
   ては、その一部を要約して抜粋するならば、原処分主義のもとで
   も、「裁決に対しては、裁決固有の瑕疵を主張できる」というこ
   とを明確に述べています。実は、本問では、普段見逃しがちにな
   るこの部分を主題にしているのである。

 2 その他関連する事項

   
  以下については、次号124号において、述べる。


★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著 

    ・有斐閣発行


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 【発行者】 司法書士藤本昌一

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