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民法・物権変動と登記 第12回
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★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 12回 】★
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2009/2/16
PRODUCED by 藤本 昌一
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【テーマ】 民法・物権変動と登記
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■ 過去問を中心とした「物権変動と登記」 問題と解説(その3)
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◆ 今回も前回に引き続き「物権変動と登記」をテーマにして、
過去10年間の過去問を題材に、問題提出と解説を行います。
過去問の肢の出典を省くのも、いままで同様です。
以下、○か×かで答えてください。
[問題1]
A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、Aが甲地を
Cに譲渡した場合、Bは登記なくしてCに対抗できる。
[解説]
( )内の数字は、
甲地 時系列の順序を示す。
(1)
時効完成 162条・20年間ないし10年間
A----------B の占有継続により取得時効
完成=所有権取得。
(2)
譲 渡
----------C
ア 144条によると、時効の効力は、その起算日にさかのぼるため、
Bは占有開始時において、所有権を取得したことになります。
イ しかし、177条により、Bは取得時効にる不動産所有権を
第三者に対抗するには、登記をしなければならないことになります。
ウ 本問におけるCは、時効完成後、当該不動産につき旧所有者
から所有権を取得した者に該当しますが、この者も、177条の
第三者に該当します。
エ 以上の原理は、177条の典型的適用例である二重売買の場合
と同じことですね。
オ 判例もあります(最判昭和33・8・28・・H21模六 177条
14 1003頁)。
以上から、Bは登記なくしてCに対抗できないので、本問は、
×です。
なお、市販の解説書をみますと、「判例があります」で事足れり
としていますが、理屈とか原理が先行すると思います。判例
は、原理適用の結果なのです。判例がありますではなくて、
判例もありますという勉強をしよう。
[問題2]
Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却し、B
は、その後10年以上にわたり占有を継続して現在に
至っているが、Bが占有を開始してから5年が経過した
ときにAが甲土地をCに売却した場合に、Bは、Cに
対して登記をしなくては時効による所有権の取得を対抗
することはできない。
甲土地 ( )内は前記同様順序
売却 10年以上占有継続
(2)
A----------B 162条 取得時効完成
=所有権取得
(1)
5年 売却
A ----C
イ 本問では、いくつか気になることがあります。
ここで、時効を除外して考えますと、二重売買になり、
BはCに対して登記なくしては所有権を対抗できません。
しかし、本問では、 売買が無効となったため、Bは時効
を主張しているのでしょう。ここでは、10年の占有継続が
問題になっていますから、162条2項の適用が適用され、Bが
売買契約の瑕疵について、善意無過失であったと思われます。
ロ ここから、本題です。だから、皆さんは、イの余計な
考察は省略して、ズバリここから突入してください。
[問題1」が、時系列からして、Bの時効完成後にCに譲渡
されたのに対して、本問は、Bの時効期間進行の中途にCに
譲渡されています。この場合どのように考えるかについては、
難しい問題がありますので、この場合は、判例が頼りです。
判例を、上記事例をあてはめますと、
時効期間進行の中途にAからCへの譲渡があり、登記がなされ、
その後にBの時効期間が満了した場合にも、Cは時効による
権利変動の当事者であるから、Bは登記なくしてこれに対抗
できる。(最判昭和35・7・27ほか多数・・一粒社 民法 1)
要点が二つあります。
一つには、[問題1]では、BとCが177条の対抗関係に立つ
ため、Cに登記を要するのに対して、本問では両者が当事者
の関係に立つため、Cに登記を要しないことになります。
二つには、本問では、Cに登記が具備されても、BはCに
対抗できます。
したっがて、本問では、BはCに対し登記なくして、時効
による所有権取得を対抗できることになりますので、×です。
ハ 本問は、二重売買において、引き渡しを受けた未登記の
第一の買主が、占有を継続し、時効を主張することにより、
登記を具備した第2の買主(本来177条により、優先)
に対抗し得ることの不当性が問題になる事例ですが、深入り
する必要はありません。問題意識としては、大切ですが・・。
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