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行政行為の効力 第31回
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★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第31回 】★
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2009/5/19
PRODUCED by 藤本 昌一
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【テーマ】行政行為の効力
【目 次】問題・解説
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■ 問題
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A
平成11年度過去問
問題34
行政行為の効力に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 行政行為は公定力は有するから、その成立に重大かつ明白な
瑕疵があるばあいでも正当な権限を有する行政庁又は裁判所
により取り消されるまでは一応有効であり、何人もその効力
を否定することはできない。
2 行政行為で命じた義務が履行されない場合は、行政行為の有
する執行力の効果として、行政庁は、法律上の根拠なくして
当然に当該義務の履行を強制することができる。
3 行政行為は不可争力を有するから、行政行為に取り消しうべき
瑕疵がある場合でも、行政事件訴訟法に定める出訴期間の経過後
は、行政庁は、当該行政行為を取り消すことはできない。
4 行政行為の不可変更力は、行政行為の効力として当然に認めら
れるものではなく、不服申立てに対する裁決又は決定など一定の
行政行為について例外的に認められるものである。
5 違法な行政行為により損害を受けた者は、当該行政行為の取消し
又は無効確認の判決を得なければ、当該行政行為の違法性を理由に
国家賠償を請求することはできない。
B
平成16年度過去問
問題9
行政行為の効力に関する次の文章の(ア)〜(エ)を埋める語の組合わ
せとして、最も適切なものはどれか。
行政行為の効力の一つである(ア)は、行政行為の効力を訴訟で争う
のは取消訴訟のみとする取消訴訟の(イ)を根拠とするというのが今日
の通説である。この効力が認められるのは、行政行為が取消しうべき
(ウ)を有している場合に限られ、無効である場合には、いかなる訴訟
でもその無効を前提として、自己の権利を主張できるほか、行政事件
訴訟法も(エ)を用意して、それを前提とした規定を置いている。
(ア) (イ) (ウ) (エ)
1 公定力 拘束力 違法性 無名抗告訴訟
2 不可争力 排他的管轄 瑕疵 無名抗告訴訟
3 不可争力 先占 違法性 客観訴訟
4 公定力 排他的管轄 瑕疵 争点訴訟
5 不可争力 拘束力 瑕疵 争点訴訟
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■ 解説
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▲ 参照した書籍 行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖
発行・ともに有斐閣
A 平成11年度過去問
以下、行政行為の諸効力を説明するが、その都度、各肢に関連する部分
に触れるとき、正誤の回答を示すことにする。
行政行為には、私人の法律行為とは違った、行政行為の公権力性を特徴
づける特別の効力がある。順次、列挙する。
(1)(自力)執行力
民事法においては、「自力救済の禁止」の原則があるので、訴えを起
こして裁判所の助力を得てはじめて、強制執行ができる。しかし、
行政庁は、裁判所に訴えを起こさずに、直接自分の力で強制執行できる
のである。これが、執行力である。
しかし、「法律による行政の原理」によれば、行政は法律の根拠が
なければ、このような公権力を行使することはできない。したがって、
法律がとくに明文で行政庁に強制執行を許している場合でないと、
このような行為ができないことになる。
以上の点から、「行政庁は、法律上の根拠なくして当然に当該義務
の履行を強制することができる」とする 2 は誤りである。
2は正しくない。
それでは、次の記述は正しいか。
相手方である私人が、その行政行為に対して不服申立てや抗告訴訟
を起こして争っているばあいでも、なお原則として自力執行する
ことは妨げられない。
答えは、正。自力執行の効力による。行政不服審査法34条1項・
行政事件訴訟法25条1項に規定あり(入門)
(2)不可争力(形式的確定力)
これは、法律上定められた不服申立期間・出訴期間が過ぎてしまう
ことによって、もはや行政行為の効果を私人が争うことができない
という原則である。したがって、「違法」または「不当」な行政行為
(これを「瑕疵ある行政行為」という)であっても、この「不可争力」
により、前記期間を過ぎると、私人は、その効力を争うことができなく
なるのである。
3 における、「不可争力」の説明自体は正しい。しかし、これは、
私人が効力を争うことできないことを意味するので、行政庁が行政行為
の瑕疵を認めて、「職権取消し」を行うことはできる。その行政庁の
行為が「不可争力」に反するするものではない。
3は正しくない。
(3)公定力
特定の機関が特定の手続によって取消す場合を除き、いっさいの者は、
一度なされた行政行為に拘束されるという効力をいう。
・・
したがって、「違法な行政行為も取消されるまでは原則として有効で
・・
ある」ことになる。原則論からいえば、 1 の「行政行為は公定力
を有するから、正当な権限を有する行政庁又は裁判所により取り消さ
れるまでは一応有効であり、何人もその効力を否定することはできない」
という例外部分を除いた記述は正しい。
しかし、違法な行政行為も有効であるというのは、「法律による行政の
原理」からすれば例外になるので、「公定力」の働く範囲を必要以上に
拡大させない必要がある。そこから、違法ないしは不当な行政行為である
瑕疵ある行政行為に関して、取り消しうべき行政行為(原則論に従うもの)
と瑕疵が重大明白である場合に分類する考え方が台頭してくる。
判例・有力な学説は、「『瑕疵ある行政行為は、原則として取り消しう
べき行政行為にとどまるが、その瑕疵が重大明白であるばあいには、
行政行為 は無効になる』という公式を立ててきました」(入門)。
無効であるという ことになれば、「取り消されるまでは一応有効であ」
るという原則論は通用しなくなるため、いつでも誰でもその効果を否定
できる。したがって、1 においては、「その成立に重大かつ明白な
瑕疵がある場合でも」というところが誤っている。
1は正しくない。
5 もまた、「公定力」を拡大させないという考え方に立った場合、
その肢は正しいのかどうかが問われている。「公定力」という観点
からすると、違法な行政行為も一応有効であることになる。そうすると、
当該行政行為の違法性を理由に国家賠償を行う場合にも、あらかじめ
当該行政行為の取消し等の判決を得て違法であることが確定していな
ければならないことになる。しかし、そこまで、「公定力」を拡大
すべきではない。当該国家賠償請求訴訟において、違法性を判断して
もらえばよいといことになる(同旨の判決もあるようである。最判
S36・4・21・・)。この見解に反する 5 は誤りである。
5は正しくない。
(4)不可変更力(確定力)
これは、行政行為を行った行政庁がみずから、一度行った行為を取消す
ことは(職権取消し)はできない、という効果のことである。これは、
ほかの効力とは異なり、行政行為の中の特定の種類のものにだけこの
効力がある。この効力は、裁判判決に一般に認められるものであって、
裁判に対する国民の信頼確保のために、一度くだした判決をみずから
これを取消すことを許さないとしたものである。
これと同じように、行政行為の中でも特に異議申立てに対する決定、
審査請求に対する」裁決など、その性質の上で裁判判決に似たような
目的を持つものには、このような効力が認められる、ということが、
判例・学説の上でみとめられている(入門)。
4は以上の趣旨に沿うものであり、正しい。
正解は、4である。
B 平成16年度過去問
(1) 導入部分
「入門」と「読本」を参照しながら、具体例をあげて説明する。
収用委員会の収用裁決によって、先祖代々の土地が国際空港建設
のため起業者(成田国際空港株式会社)にとられて しまったという
例を考える。
この場合、もとの土地の所有者がこの収用裁決という行政行為が
違法であるので、この土地を取り返したいと考えた場合、どうすれば
よいのかというのがここでテーマとなる。
土地の旧所有者を甲・現所有者である起業者を乙とする。
一つの方法《民事法(民法や民事訴訟法)の適用を原則とする》
甲は乙を被告として、裁判所に土地の返還を求める訴え(民事訴訟)
を提起する。そしてその際、甲から乙への権利変動は無効であると
いうことを主張し、その理由づけとして、収用裁決は違法である、
ということを主張すればよい。
二つ目の方法≪「違法な行為も取り消されるまでは原則として有効
である」という「公定力」を基本とする》
甲は、まず行政庁(収用委員会)が所属する都道府県を被告として、
収用裁決の取消訴訟をX裁判所に提起し、そこで収用裁決を取り消して
もらい、そのうえではじめて、べつに、乙(起業者)を被告とした
民事訴訟をY裁判所に対して提起する。
注 正確に言うと、取消訴訟の前に、行政上の不服申立ての手続が
あるが、その点は省略した。
学説・判例は、一致して、二つ目の方法を採用する。なぜかというと、
行政行為は民法上の法律行為とは違って、それ自体が取消訴訟(不服
申立て省略)によって取り消されていないかぎり、原則としてほかの
訴訟(民事訴訟)ではその訴訟の裁判所(Y)を拘束するのであって、
当該のY裁判所は、かりに審理の中でこの行政行為が違法であるという
判断に達したとしても、これを有効なものとして扱わなければなければ
ならない、とされてきたからである≪最判S30・12・26≫(入門)。
ここで、Aの平成11年度の(3)で定義した公定力を参照して
ほしい。
「特定の機関が特定の手続によって取り消すばあいを除き、いっさいの
者は、一度なされた行政行為に拘束されるという効力」
つまり、さきの例でいえば、X裁判所(特定の機関)が行政行為の
取消訴訟(抗告訴訟)という(特定の手続)によって取り消すばあいを
除き、民事訴訟を遂行するY裁判所においても、一度なされた行政行為
を有効なものとして扱わなければならない。
注 抗告訴訟とは、「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」
(行訴法3条1項)である。
(2) 本問の具体的検討
まず、「行政行為の効力を訴訟で争うのは取消訴訟のみとする」という
部分に注目したい。さきの導入部分において、土地の返還を求める
Y裁判所 における民事訴訟では、収用裁決という「行政行為の効力」
を争うことはできない、それは、別の手続である「取消訴訟」(X裁判所)
でしか争うこと はできない、と説明した。これは、この部分を言い換えた
だけであるから、ここでは、行政行為の効力の一つである「公定力」が
テーマになっていることが分かる。
(ア)に該当するのは、公定力である。
その根拠である(イ)については、他の民事訴訟での審理を許されず、
取消訴訟 のみで行政行為の効力を争うことができるというのであるから、
(イ)群の文言 のなかでは、断然、排他的管轄が該当する。
(イ)は、排他的管轄である。
(ウ)については、Aの(3)で説明した「公定力を拡大させない」ための
無効の行為を参照すれば、瑕疵が入る。
(ウ)に該当するのは、瑕疵である。
(エ)で問題になるのは、瑕疵が重大明白である場合、訴訟における、無効
の主張方法ということである。
一つには「行政処分によって土地所有権を奪われたという事件では、
民事訴訟で 土地所有権の返還を請求し、その先決問題として行政処分の
当然無効の認定を求めることもできる。」(読本)そのほかにも、行政事件
訴訟法は「無効等 確認の訴え」を法定し(3条4項)そして(エ)に該当する
行政処分の効力を争点と民事訴訟を用意している。これが、争点訴訟と呼ば
れるのである。45条に特則が設けられている。
(エ)は、争点訴訟である。
したがって、本問の正解は、4である。
(3)波及的問題。
まだあるのかい!!という声が聞こえてきそうであるが、行政法の勉強は
我慢比べという面もあるので、辛抱してほしい。また、本試験出題見込み
あり。
・・・・・
「公定力」が働く範囲を拡大させないためには、刑事訴訟の先決問題
として行政行為の適法性・違法性が問題になる場合には、当該刑事
訴訟において、その審理を行うべきである(入門参照)。
○か×か。○である。
・・・・
(1)(2)で述べたのは、民事訴訟の先決問題として行政行為の適法性
が問題になるケースであった。これに対し、刑事訴訟の場合というのは、
即座に想定し兼ねるから、これは少し高度な問題といえるかもしれない。
たとえば、刑法95条の公務執行妨害罪においては、違法な公務執行
(行政行為)に対する妨害行為は、公務執行妨害罪にならないのでは
ないかということが議論されている。ここまで言えば、皆さんは、
お分かりになるでしょう。そうです。この場合にも、行政行為の効力
を訴訟で争うのは取消訴訟のみとする公定力が働くのかどうかという
問題である。公定力が働かなければ、当該刑事裁判において、先決
問題として、公務(行政行為)の適法性・違法性を審理することが
できることになる。本当は、「・・審理できる」という問題にした
かったが、実務・学説の大勢がどうなっているのか調べる余裕が
ないので、前述のような問題になったしだいである。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
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