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憲法問題(統治機構)第4回

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 4 回 】★      
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 2009/1/12            PRODUCE by  藤本 昌一
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【テーマ】 憲法問題(統治機構)

【目 次】 1 内閣と独立行政委員会(問題)

      2 解説


 
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■ 憲法問題(内閣と独立行政委員会)
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(平成19年度過去問)

問題 4 

国家公務員法102条1項が、その禁止対象とする「政治的行為」の
範囲の確定を、独立行政委員会である人事院にゆだねていることの
是非をめぐっては、次のようにさまざまな意見があり得る。それら
のうち、内閣が行う高度に政治的な統治の作用と、一般の国家公務員
による行政の作用とは質的に異なるという見地に基づく意見は、どれか。

1 憲法が「行政権はすべて内閣に属する」と規定しているにも
かかわらず、公務員の人事管理を内閣のコントロールが及ばない
独立行政委員会にゆだねるのは、違憲である。

2 公務員の政治的中立性を担保するためには、「政治的行為」の確定
それ自体を政治問題にしないことが重要で、これを議会でなく人事院
にゆだねるのは適切な立法政策である。

3 人事院の定める「政治的行為」の範囲は、同時に国家公務員法に
よる処罰の範囲を定める構成要件にもなるため、憲法の予定する立法
の委任の範囲を超えており、違憲である。

4 国家公務員で人事官の弾劾訴追が国会の権限とされていることから、
国会のコントロールが及んでおり、人事院規則は法律の忠実な具体化
であるといえる。

5 行政各部の政治的中立性と内閣の議会に対する政治的責任の問題は
別であり、内閣の所轄する人事院に対して国会による民主的統制が
及ばなくても、合憲である。

 

 

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■ 解説
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この問題は、難問に属すると思います。
これは、単なる暗記ものではなく、「考えさせる」問題であって、
これにスパット正解がだせることになれば、ハイレベルだということ
になると思います。

正解は、5ですが、なぜ5なのか、その理由を順序立てて説明します。

(1)まず、国家公務員法102条1項の条文を抜粋します。

職員は、・・・・外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。


この条文はとくに知る必要はありません。問題文において、
「国家公務員102条1項が、その禁止対象とする『政治的行為』
の範囲の確定を、独立行政委員会である人事院にゆだねている」
ときちんと説明されているからです。

(2)本問で、論点になっているのは、「独立委員会の合憲性」であって、
この論点自体は、憲法の教科書に必ず載っているポピユラ−な問題です。

人事院、公正取引委員会、国家公安委員会などが、ここでいう
「独立委員会」ですが、ここでは、「人事院」がとりあげられています。

(3)憲法65条では、「行政権は、内閣に属する」となっていますが、
これは、行政権を実際に行使する行政各部は、内閣の監督を受けること
を意味します。
 
独立委員会である人事院も行政各部の一つですから、本来は、内閣の監督
を受けるわけることになるはずですが、人事院もまた独立行政委員会として、
内閣から独立しています。
この、人事院が内閣から独立しているということが、憲法65条に反しないか
かどうかが、論点の一つとして問題になるわけです。
 
(4)最初に、まず、問題文と肢5の「文言」を抜粋してみましょう。
   
その一つ「内閣が行う高度に政治的な統治の作用」 
その二つ「一般の国家公務員による行政の作用」 
                    以上問題文
その三つ「行政各部の政治的中立性」
その四つ「内閣の議会に対する政治責任」
その五つ「内閣の所轄する人事院に対して国会による民主的統制」
                    以上肢 5


(5) 五つの文言をキイワ―ドとして、問題を解決してみましょう。

          

図1

一般の国家公務員による行政の作用

          |   ↑内閣の監督

行政各部の行政作用    憲法65条
              

          |   ↓内閣から独立


           内閣が行う高度に政治的な統治の作用
                                      ||イコ−ル
             行政各部の政治的中立性

 

図2       

議院内閣制の本質的要素

   
   国民に対して責任・議会に対して責任
国民←―――――――議会←―――――――政府(内閣)
                                 ↓所轄
            ――――――――→   人事院
            国会のコントロ−ル

憲法66条3項・内閣は、行政権について、国会に対し連帯して責任を負ふ。

 以上から、
 内閣の議会に対する政治責任の問題
       ||イコ−ル
 内閣の所轄する人事院に対して国会による民主的統制

 人事院に焦点を合わせて、核心にふれてゆきますと、つぎのとおりになります。


(1) まず、図1を見てください。

人事院の行う「国家公務員の禁止対象とされる『政治的行為』の
範囲の確定」という行政作用は、「一般の国家公務員による行政の作用」
とは質的に異なる「内閣が行う高度に政治的な作用」であって、
これを実際に行う「行政各部」に相当する人事院「の政治的中立性」が
保持されなくてはならないことになります。
 これは、具体的に言うと、国会(主には、これを組織する「政党」)からの
支配の排除つまり政治的中立性の保持ということです。
平たくいえば、全国の国家公務員の票田をあてにして、自分の政党に有利な
選挙運動(政治的行為)を許してもらおうとする政党からの干渉を排除して、
人事院は、独自の判断で禁止される政治的行為を確定しなくてはならないと
いうことです。人事院がときの政権政党である自民党に一方的に有利な
処置をとると、なると、選挙制度そのものを歪めてしまうことにもなり
かねないからです。

(2) 次に、図2をみてください。
  
憲法65条の規定によって、行政各部に相当する人事院は、内閣の監督を受けることになっていますが、その主眼は、国会のコントロ−ルを受けることに
あります。これは、最終的には国民に対して責任を負うという議院内閣制の
本質的要素から導かれる基本的原理ですから、無視するわけにはゆきません。

現在の人事院は、国会が人事権・予算権について間接的に関与するにすぎないのであり、もっと国会のコントロ−ルを及ぼす必要があるのであって、
そうしないと、違憲の問題を生じるという意見が学者からだされているのです。

(3)これに対して、前記(1)の行政各部の政治的中立性という要請を
重視すれば、人事院の行政作用については、内閣の議会に対する政治責任
は関係のないことになり、内閣の所轄する人事院に対して国会による
民主的統制が及ばなくても合憲であるという結論になります。
これは、肢5の文章とほとんどそのままですから、

肢5が正解です。
   
この見解は、いまさら繰り返すまでもないことですが、問題文の
「内閣が行う高度に政治的な統治の作用たる(人事院行政をはじめ
とする独立行政委員会の行政)と(国会のコントロ−ルの及ぶ)
一般の行政作用とは質的に異なるという見地に基づく意見という
ことになります。

 難しく考えると混乱しますが、まあ、軽く考えると、
「政治的中立性」と「国会による民主的統制」という相反する
理念の戦いであり、せめぎあいであって、最後には、前者が勝つ
ということだけなんですけれど・・・・。

(この項については、芦部306頁以下、312頁、316頁参照)

   
それでは、その他の肢についても、さっと見ておきましょう。

 
肢1 これは、憲法65条に忠実な解釈であり、内閣が行う高度に
政治的な統治の作用たる独立行政委員会の行政作用は、
一般の行政作用と質的に異ならないから、内閣のコントロ−ルを
及ぼすべきだという意見であり、設問の意見と根本的に異なる。

肢2 これは、政党の干渉を排除し、政治的中立性を保つには、
「政治的行為」の確定を国会の議決による法律によるよりも
人事院規則で定めるのが適切だという意見だから、肢5と通じる。
しかし、肢2は、立法を問題にしているが、設問の意見は、あくまで、
行政の作用を問題にしている。論点がずれる。

肢3も肢2と同様、設問が人事院の行政作用を問題にしているのに、
ここでは、立法の問題として処理していて、論点がずれるということ
になります。

なお、ここでは、具体的に何を言っているのか(学者の論争としては、
ポプユラーな題)を説明しますと、以下のとおりです。


                                        。。。。
特に「国家公務員による処罰の範囲を定める構成要件」ということが
分かり難いところですが、たとえば、刑法の殺人罪を例にとりますと、
処罰の範囲を定める犯罪の内容である「人を殺す」ということが
構成要件です。
人事院の定める「政治的行為」の中味もまた、禁止事項であって、
違反すれば処罰されることになりますので、
「処罰の範囲を定める構成要件」ということになります。
そして、憲法第73条6項但し書きによりますと、法律の委任がなければ、
人を罰することができないのに、法律の委任なしに、人事院が、
人事院規則で勝手に国家公務員を処罰することは、違憲である。
そういうことが肢3の内容です。

 肢4 ここでは、人事院の官僚(人事官)の職務上の
不正追及(弾劾訴追)が、国会の権限であって、人事院に対し国会の
コントロ−ルが及んでいるから合憲という論法を採用しています。
しかし、今まで見てきたように、設問の意見から導かれる結論は、
肢5のとおり、人事院に対して、国会のコントロ−ルが及ばなくても
合憲であるということですから、結論自体が真っ向から反します。


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