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行政事件訴訟法・抗告訴訟 第36回
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★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第36回 】★
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2009/6/17
PRODUCED by 藤本 昌一
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【テーマ】行政事件訴訟法・抗告訴訟
【目 次】問題・解説
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■ 問題
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A 平成19年度過去問 ・問題17
行政事件訴訟法の訴訟類型の選択に関する次の記述のうち、正しい
ものはどれか。
1 Xの家の隣地にある建築物が建築基準法に違反した危険なもので
あるにもかかわらず、建築基準法上の規制権限の発動がなされない
場合、Xは、当該規制権限の不行使につき、不作為違法確認訴訟
を提起することができる。
2 Xらの近隣に地方公共団体がごみ焼却場の建設工事を行っている
場合、建設工事は処分であるから、Xらは、その取消訴訟と併合し
て、 差止め訴訟を提起し、当該地方公共団体に対して建設工事の
中止を求めることができる。
3 Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合
において、Xが入園承諾の義務付訴訟を提起する場合には、同時に
拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなければ
ならない。
4 Xが行った営業許可申請に対してなされた不許可処分について、同
処分に対する取消訴訟の出訴期間が過ぎた後においてなお救済を求
めようとする場合には、Xは、公法上の当事者訴訟として、当該
処分の無効の確認訴訟を提起することができる。
5 X所有の土地について違法な農地買収処分がなされ、それによって
損害が生じた場合、Xが国家賠償請求訴訟を提起して勝訴するため
には、あらかじめ、当該買収処分の取消訴訟または無効確認訴訟を
提起して請求認容判決を得なければならない。
B 平成13年度過去問・問題11
行政事件訴訟法が定める「抗告訴訟」ではないものは、次のうちどれか。
1 処分の取消しの訴
2 無効等確認の訴
3 不作為の違法確認の訴え
4 当事者訴訟
5 裁決の取消しの訴え
C 関連問題(例により、過去問の出典を明らかにしない)
○×で解答してください。
● 行政事件訴訟法によれば、「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟
当事者訴訟、民衆訴訟、および越権訴訟をいう。ー(1)
● 行政事件訴訟法によれば、行政庁の不作為を争うことはできない。
ー(2)
● 行政事件法によれば、取消訴訟は、処分または裁決があったことを
知った日から6か月以内に提起しなければならない。ー(3)
以下は、行政事件訴訟法における処分無効確認に関する記述である。
● 処分が無効であることは、無効確認訴訟によってのみ主張でき、
民事訴訟などにおいて、これを主張することはできない。ー(4)
● 無効な処分の違法性は重大かつ明白であるから、無効確認訴訟が提起
されると、原則として、処分の執行は停止される。ー(5)
● 無効確認訴訟については、出訴期間の制限の規定はないが、取消訴訟
の出訴期間の規定が準用される。ー(6)
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■ 解説
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△ 参考書籍 行政法入門 藤田宙靖著 行政読本 芝池義一著
ともに有斐閣発行
△ 過去問の検討
A・平成19年度過去問
a 全体のポイント
1 本問では、行政事件訴訟法が定める訴訟類型(訴訟を起こすこと
ができる訴えについて、一定の「型」)がポイントになっている。
2 ここで採用されている訴訟類型は、抗告訴訟(3条1項・行政庁の
公権力の行使に関する不服の訴訟)である。
3 抗告訴訟には、取消訴訟(3条2項・3項・「処分の取消しの訴え」
と「裁決の取消しの訴え」がある)・無効等確認の訴え(3条4号)
・不作為の違法確認の訴え(3条5号)・義務付けの訴え(3条
6号)・差止めの訴え(3条7号」がる。
4 全体を通じて、処分の取消しの訴えが問題とされている。肢1では、
不作為の違法確認の訴えが問題にされている。同じく2では、差止め
の訴え・3では、義務付けの訴え・4では、無効確認の訴えが
それぞれ問題にされている。5では、民事訴訟が問題になっている
(7条参照)。
b 各肢の検討
1について。
3条5項による不作為の違法確認の訴えとは、建築確認の申請をした
のにいつまでも返事がない、あるいはなんらかの営業許可の申請をした
のだけれど、いつまでたっても行政庁からの返事がない、というような
場合に、裁判所に、なんらの返事もしないのは違法である、といことを
確認してもらうのがこの訴え、ということになる(入門)。
本肢のように、近隣の者が、規制権限の不行使(たとえば、取り壊しを
命ずる処分の不行使)を理由にして当該訴えを提起することはできない。
正しくない。
2について。
たとえば、建築基準法違反であるとして、行政庁から取り壊しの行政
指導を受けている場合、取壊しの命令が出されるのが目にみえている
とすれば、当該建物の建築が違法でないと考える私人である相手方は、
前もって、取壊し命令の差止めることができるというのが、3条7号の
「差止めの訴え」 である。したがって、本肢とは内容を異にする。
また、処分が行われる前に差止めをしようとするのであるから、
取消訴訟の併合は想定できない。
取消訴訟 の併合が問題になるのは、肢3の「義務付け訴訟」である。
もうひとつ、建設工事は「処分」ではなく、事実行為である。
明らかに正しくない。
3について。
不作為の違法確認では、違法だということの「確認」を求めるだけで
あるから、有効であるとはいえないため、裁判所が行政庁に何らかの
行為をすべきことを命ずる判決することが要請される。これが3条6号
の義務付け訴訟である。
この義務付け訴訟の場合(3条6項2号=申請型不作為≪入門≫)には、
不作為の違法確認訴訟も併合して行わなければならない
(37条の3第3項1号)。
つまり、建築確認申請に対し、行政庁の不作為のあった場合、これに
応答するよう求める訴えがこれに該当する。
これに対し、本肢のように、申請に対して、すでに拒否処分がなされた
場合(入園の拒否)において、義務付け(入園の承諾)訴訟を提起する
場合には、同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して
提起しな ければならない(37条の3第3項2号)。注(1)(2)
したがって、本肢が正しい。
注
(1) 義務付け訴訟は、不作為違法確認訴訟・取消訴訟・無効確認訴訟の
補充的な制度である(入門)。だから、当該訴訟には、以上いづれかの
抗告訴訟を併合する必要があるといえる。
(2)義務付け訴訟にはもうひとつある。これが、3条6項1号に該当する
「直接型不作為」(入門)である。これは、隣地の建物が違法建築で
ある場合に、行政庁に対し、改善命令を訴求するものであるから、肢1
に相当する事案である。つまり、肢1のような申請型不作為でないもの
には、不作為違法確認訴訟の提起はできないが、義務付け訴訟はできる
のである。
4について。
前段は正しい。無効確認訴訟であるから、取消訴訟の出訴期間が過ぎて
いても当該訴えは、提起できる。しかし、当該無効確認訴訟は、前述した
とおり、「抗告訴訟」であるから、これを「当事者訴訟」としているのは、
正しくない。
5について。
国家賠償請求は民事訴訟として行われるが、「行政行為の違法を理由
として国家賠償請求を行う場合には、あらかじめこの行政行為の取消し
がなされていなければならないということはない」というのは、判例
(最判昭36・4・21・・・)学説上、確立している(入門)。
過去において、「公定力が働く範囲を拡大させないために・・・」
として、検討した問題である(第1・20号 第2・31回)。再説
しない。なお、同旨の肢として、次のもの(平成11年度 過去問34
肢5)がある。
違法な行政行為により損害を受けた者は、当該行政行為の取消し又
は無効確認の判決を得なければ、当該行為の違法性を理由に国家賠償
を請求することはできない。
したがって、平成11年度の肢5・19年度の肢5(本肢)ともに
正しくない。かりに将来の本試験で出題されたら、かりそめにも、
○とされることのないように。
本問の正解は、3である。
B・ 平成13年度過去問
前記Aaの全体のポイントで明らかにしたように、抗告訴訟は、
1・2・3・5である。当事者訴訟は、法4条に定めがあり、3条
の抗告訴訟ではない。
4が正解である。
C・関連問題
(1)について
法2条によれば、「越権訴訟」というものはなく、「機関訴訟」
である。機関を勝手に越権というのは、「越権行為」だ。 ×
(2)について
法3条5項には、「不作為の違法確認の訴え」の定めがある。×
(3)について
14条1項のとおり。なお、正当な理由があるときは、期間経過後も
提起できることに注意。2項の除斥期間の定めにも注意。 ○
(4)について
これについても、過去において検討した(第2 31回 B
解説(エ))。土地収用裁決が無効である場合、無効な行政行為には、
公定力がないので、無効確認訴訟(抗告訴訟)で争うよりも、民事訴訟
で当該土地の返還を訴求し、その先決問題として、行政処分の無効を
争う方が合理的である。法36条も民事訴訟に優先権を与えている。
この条文の解釈は難しいが、以下のように解すべきである。
さきの土地の収用裁決が無効であるという場合、処分それ自体の無効
確認訴訟を起こすのはよけいなまわり道だから、もっぱら直接、土地
の返還を求める民事訴訟で争うことしかできないことを定めている。
(入門)
また法45条で、争点訴訟という民事訴訟が採用されている。
以上は、訴訟法全体に対する把握がされてないと、理解困難であるが、
本試験の射程範囲に属するので、じっくり取り組んでみてください。
民事訴訟で争うことができるので、×。
(5)について
25条1項は、38条3項において、無効確認訴訟にも準用されて
いるので、原則として(例外は2項以下)処分の執行は停止されない。
○
(6)について
無効確認訴訟の特質は、取消訴訟の出訴期間経過後も提起できること
にあるので、14条の出訴期間の規定は、無効確認訴訟に準用されて
いない(38条)。×
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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