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行政不服審査法 第39回
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★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第39回 】★
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2009/7/1
PRODUCED by 藤本 昌一
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【テーマ】行政上の不服申立てー行政不服審査法を中心として
【目 次】問題・解説
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■ 問題 ・解説
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▽ 参考書籍
行政法入門・藤田 宙靖 行政法読本・芝池 義一
ともに有斐閣 発行
▽ 過去問の検討
各テーマごとに、過去問の肢を抜粋した。○×で解答してください。
なお例により、その出典を一々明らかにする手間を省いた。
A 「行政訴訟」と「行政上の不服申立て」
1 処分につき不服申立てをすることができる場合においても、処分
取消しの訴えを直ちに提起してもかまわない。
2 憲法は、行政機関が裁判を行うことを禁止しているから、裁判手続
に類似した行政上の不服申立てを整備することによって地方裁判所
における審級を省略することは許されない。
3 申請拒否処分に対する審査請求については、平成16年の法改正に
より、執行停止制度に加えて、「仮の義務付け」と「仮の差止め」の
制度が明文化された。
《解説》
1について
現行法は、原則として、自由選択主義を採用する(行政事件訴訟法
8条1項本文)。ただ、同条ただし書きにおいて、例外としての、
不服申立ての前置を認めていることに注意せよ。 ○
2について
本肢は、平成20年度の出題であり、難化傾向に歩調を合わせたもの
であって、題意が掴み難いうえに細かい専門知識を要する。即答できな
ければ、保留にして、他の肢で勝負するのが賢明か。
ここでは、そうはいっておられないから、順次説明する。
憲法は、「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない」と規定
しているのであって(76条2項後段)裁判手続に類似した行政上の不服
申立てを整備することは大いに推奨される。(これは、行政不服審査法の
勉学の目的でもある)ここまでわたりをつければ、スパっと審級の省略
も許されると推定して、×とすれば正解です。次のBの問題の1 を見て
ください。これも×です。したがって、独占禁止法とか、特許法に基づき、
行政庁が不服審査の審判を行うことができる。そして、これに関する抗告
訴訟は、高等裁判所に行うことになっている。つまり地裁・高裁・最高裁
という三審制の地裁の省略である。もちろん、この措置は、終審が司法
機関になっているので、憲法違反ではない。細かい条文省略。×
3について
これは、行政事件訴訟法の説明であって、「行政上の不服申し立て」
には、「仮の義務付け」などはない。また、執行停止制度は、従来から
存在していて、平成16年の行政事件訴訟法改正により、要件が緩和さ
れた。二重の誤り。これは、上等の肢とはいえないと思う。×
B 「行政不服審査法」の地位
1 「不服申立て」に関する法律の定めは、行政不服審査法にしか存在
していない。
2 行政上の不服申立ての道を開くことは、憲法上の要請ではないので、
この制度を廃止しても、憲法違反とはならない。
3 法は、不服制度全般について統一的、整合的に規律することを目的
とするので、別に個別の法令で特別な不服申立制度を規定することは
できない。
《解説》
1および3について
行政不服審査法第1条第2項によると、「行政上の不服申立て」について
は、個別の法で定め得る。1も3も誤り。1・3とも×
2について
これも難化傾向に基づく平成20年度出題の肢である。これについての
文献を漁れば出所があるかもしれない。趣味としては、そうしてもよい
かもしれないが、暇のない受験対策には不適当である。できるだけ自分
の頭で考えるようにした方がよい。憲法が直接に保障するのは、裁判を
受ける権利である(32条)。これに気がつけば、○に直結する。
ソレデヨイノダ。憲法は、ほかに法定手続を保障している(31条)が、
これが 行政手続に及ぶか争いがある。かりに及ぶとしても、行政上の
不服制度を設けることまで要請していないであろう。結局、当該制度を
廃止するのは、望ましくはないが、憲法違反とまではいえないという
ことになるのだろう。 ○
C 法第1条〜2条
1 行政不服審査法は、「行政庁の違法な処分その他公権力の行使に当
たる行為」に限り不服申立てのみちを開いている。
2 法において「処分」には、「人の収容、物の留置その他その内容が
継続的性質を有するもの」などの事実行為が含まれるが、これは取消
訴訟の対象にはならないが不服申立ての対象となる行為を特に明文で
指示したものである。
3 取消訴訟においては処分の適法性のみを争うことができるが、行政
不服申立てにおいては処分の適法性のみならず、処分の不当性をも
争うことができる。
4 処分の全部または一部の取消しの申立てのほか、処分の不存在確認
の申立、不作為についての申立てを行うことができる。
≪解説≫
1および3について
行政不服審査法第1条第1項によると、「不当な処分」も不服申立ての
対象としている。したがって、1は× 3は○。
「・・裁判所というのは、もっぱら、紛争を法的に解決することをその
任務とする機関ですから、裁判所が審理できるのは、とうぜんに法問題
( 行政処分の違法性)にかぎられ、自由裁量行為のばあいに行政庁がおこ
なった裁量が不当ではなかったかどうか、といったような判断はできない
わけですが、行政上の不服申立てのばあいだったらそういった制限はない、
ということになります」(入門)
2について
他の過去問の肢には、次のような類似問題がある。
行政不服審査法にいう「処分」には「公権力の行使に当たる事実上の
行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するする
もの」が含まれる。
これは、法2条1項の条文のとおりで、「処分」に含まれる事実行為の
定義であって、○である。これに対し、本肢は、平成20年度の発展問題
である。しかし、最近では、最高裁は、行政事件訴訟法の対象となる
「処分」(法3条2項)について、行政指導などのように、私人の権利義務
に対して直接に法的な効果効果を持たないが、事実上非常に大きな影響を
与える事実行為も「処分」と認めるべきとする傾向にある(入門)。
したがって、事実行為が、取消訴訟の対象にならないとする点で×。
3について
法3条において、行政庁の処分又は不作為について行うものである。
不作為のほか、処分については、処分のあったことが前提になって
いるので、「処分の不存在確認の申立て」は許されない。×
D 不服申立ての種類
1 行政不服審査法が定める「不服申立て」には、異議申立て、再異義
申立て、審査請求および再審査請求の4つの種類がある。
2 行政不服審査法によると、行政庁の処分についての異議申立ては、
「処分庁に上級行政庁があるとき」にすることができる。
3 審査請求は、処分庁を経由してすることもできる。
4 再審査請求は、法律に「再審査請求をすることができる」旨の定め
がなくても、審査請求が認められていれば、当該審査請求の裁決に
不服がある場合、当然にすることができる。
5 審査請求の裁決に不服がある者は、法律または条例に再審査請求を
することができる旨の定めがあるときは、再審査請求をすることが
できる。
6 審査請求手続は、決定により終了するのが原則であるが、審査請求
を認容する決定についても理由を付さなければならない。
≪解説≫
1について
法3条1項によれば、「再異議申立て」はない。本肢に掲げる三つの
種類しかない。 ×
2について
法3条2項によれば、「異議申立て」は、問題となっている処分をした
(またはしなかった)行政庁それ自体(処分庁または不作為庁)へ申立て
をするものである。これと裏腹になるが、「処分庁に上級行政庁がある
とき]は審査請求をすることになる。 ×
3について
法17条1項のとおり、審査請求人の選択により可能である。○
4について
再審査請求とは、一度審査請求を終えた後にさらに行う例外的な不服
申立てである(法3条1項)。この申立ては、当該審査請求の裁決に
不服がある場合、当然にすることができるのではない。
行政不服審査法自体が定めている特定の場合・法律または条例によって
特に定められている場合にだけ、その法律、条例が特に定める行政庁へ
申立てができる(法8条)。したがって、法律に「再審査をすることが
できる旨」の定めがある場合に当該申立てができるので、本肢は×。
5について
4で記述したとおり。○
6について
審査請求および再審査請求に対する裁断行為は「裁決」である(40条・
55条)。× 裁決に理由を付すこと(41条1項)・異議申立てには、
「決定」が下されることに注意(47条)。
E 不服申立て要件
1 審査請求が法定の期間経過後にされたものであるときは、審査庁は、
裁決を行う必要がない。
2 審査請求人の地位は、一身専属的な法的地位であるので、審査請求
人が死亡した場合には、相続人等に承継されることはなく、当該
審査請求は、却下裁決をもって終結する。
≪解説≫
不服申立て要件をみたしていなければ、本案の審理をしてもらうことが
できず、いわゆる門前払い(却下)をされてしまうことになる。
1について
法14条1項の審査請求期間を経過すれば、審査請求は、不適法である
から、不服申立て要件をみたしていないことになり、裁決で却下する。
(40条1項)裁決を行う必要がないのではない。 ×
2について
本肢のとおりであれば、不服申立て要件をみたさないことになり、却下
裁決がなされる。しかし、37条1項によれば、相続人が権利を承継する
ので、却下裁決をもって終結することはない。×
F 不服申立て要件ー不服申立て事項
1 行政不服審査法は、列記主義を採用している。
2 行政不服審査法は、不服申立ての対象となる「行政庁の処分」に
つき、いわゆる一般概括主義をとっており、不服申立てをすること
ができない処分を、同法は列挙していない。
3 法は、地方公共団体の機関が条例に基づいてする処分を適用除外
としているため、そのような処分については別途条例で不服申立
制度を設けなければならない。
4 不服申立てをすることができない処分については、法が列挙して
いるほか、他の法律において特定の処分につき不服申立てをする
ことができない旨を規定することができる。
≪解説≫
ここでも、不服申立て事項に該当しない処分に対し、不服申立てを
すれば、不服申立て要件を満たさず、却下されるという視点に立つ
必要がある。
1について
不服審査法の前身の訴願法の時代に採用されたもの。その列記主義
というのは、法律で定められた一定の処分に対してしか、不服申立て
が許されないものである。(入門) ×
2について
不服審査法は、対象となる処分について、列記主義をやめて、一般
概括主義をとっている(4条1項)。この点は正しい。しかし、行政
不服審査法は、4条1項1号から11号まで、同法に基づく不服
申立てはできないとする。また、それ以外にも、個別法律で、不服
申立てを許さないこととしている場合がある(4条1項ただし書き)。
例外を認めているので、後段が×。
3について
これもすこし戸惑うとみれば、平成20年度過去問である。4条
1項1号〜11号において、当該処分が適用除外になっていない
から、条例に基づく処分についても、行政不服審査法に基づいて
不服申立てを行うべきなのであろう。×
4について
2で説明した「個別法律で、不服申立てを許さないこと」に
該当する。 ○
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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