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行政不服審査法 第40回
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★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第40回 】★
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2009/7/9
PRODUCED by 藤本 昌一
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【テーマ】続・行政不服審査法
【目 次】問題・解説
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■ 問題
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G 不服申立て要件として、異議申立てと審査請求のいずれを行う
べきかなど。
○ 不作為についての不服申立ての場合
1 行政不服審査法によると、行政庁の不作為については、申請者は、
異議申立てまたは審査請求のいずれかをすることができる。
2 行政庁の不作為についての不服申立ては、不作為庁が主任の大臣等
である場合を除くと、不作為庁への異議申立てと直近上級行政庁へ
の審査請求のいずれかをすることができる。
3 不作為に対する不服申立が認められるのは、行政庁が法令に基づく
申請に対し、相当の期間内に何らかの処分をすべきにもかかわらず、
これをしない場合である。
4 行政不服審査法にいう「処分」には、「不作為」も含まれる。
5 法における「不作為」には、申請が法令に定められた形式上の
要件に適合しないとの理由で、実質的審査を経ずに拒否処分が
なされた場合も含まれる。
○ 処分に対する不服申立ての場合
1 行政不服審査法によると、行政庁の処分についての異議申立ては、
「処分庁に上級行政庁があるとき」にすることができる。
2 処分について、審査請求が認められている場合には、異議申立て
はできないのが原則である。
3 審査請求と異議申立ての両方が認められている処分については、
そのいずれかを自由に選択できるのが原則である。
4 審査請求は、処分庁または不作為庁に対してする。
5 取消訴訟は他の民事訴訟と同じく3審制であるが、行政不服申立て
の場合、異議申し立てに対する決定に不服があるものは、第三者機関
に審査請求ができる2審制が原則として取られている。
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■ 解説
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▼ 参考書籍
行政法入門・藤田 宙靖 行政法読本・芝池 義一
ともに有斐閣 発行
▼ 前回、行政上の申立てにつき、AからFまで過去問の抜粋をしたので、
今回は、Gを掲げる。○×で解答してください。出典を明らかにしないの
も同様である。
▼ 不服申立て要件となっているのは、×の場合は、その要件を欠くため
に原則として却下されるからである。
▼ 各肢の検討
○ 不作為について
1について
7条本文のとおり。○
2について
7条の条文どおり。○
3について
2条2項のとおり。○
4について
2条によると、不服申立ての種類として、「処分」と「不作為」という
二つの概念に分けているから、「処分」に「不作為」は含まれない。×
5について
これは平成20年度過去問であるが、題意を明確に把握することが大切
である。行政不服審査法第2条第2項によると、行政庁が法令に基づく
申請に対し、「なんらかの処分」をしないことが不作為に該当することに
なる。本肢のように形式上の要件に適合しないことを理由に拒否する
ことも、申請に対する拒否処分にに該当する(行政手続法第2章・同7条)
したがって、すでに行政庁の処分があったことになり、行政不服審査法
7条に基づく不作為についての不服申立ては許されないことになる。
○ 処分に対する場合
1について
法6条本文1号。×
2・3について
この2と3の関係は複雑である。ここで、全体的な説明を行う。
ア 不作為についての不服申立ての場合には、原則として、異議申立て
でも審査請求でも選択できる(7条)
イ 審査請求をするのが原則で、異議申立ては、審査請求ができない場合
にだけ 、してもよい(5条・6条1号、2号参照)。
ウ 法律上、どちらでもできる場合には、原則として、まず異議申立てを
してからでなければ、審査請求はできない(6条3号・20条)。
アは別として、2と3に対応するイとウの関係が複雑である。以下、
各肢について検討する(これは、私独自の思考により考察したもの
であり、皆さんもそれぞれに考察してください。実際、途中で頭髪
をかきむしりたくなる・・・)。
2について考えると、6条1号によると、処分庁に上級行政庁がない
ときは、異議の申立てが原則である。しかし、処分庁に上級行政庁が
ないとき(異議申立てが原則の場合でも)、5条2号・同2項によれば、
法律に審査請求できる規定があれば、この法律の定める行政庁に審査
請求ができる。この場合には原則として、審査請求が優先し、異議申
立てはできない(6条ただし書き)。
つまり、法の建前としては、処分庁に上級行政庁がないときは、処分
庁に異議申し立て(3条2項)、処分庁に上級行政庁があるときは、上級
行政庁に審査請求をする(法5条1号)のが大原則。しかし、処分庁に
上級行政庁がないときでも、個別法において、審査請求が認められている
場合には、異議申立てはできない。2は○。
3について考えると、処分庁に上級行政庁がある場合には、審査請求が
原則。しかし、個別法で異議申立てができることになっていると、不服
審査法では審査請求・個別法では異議申立てができる。このように、法律
上は、どちらでもできることになっている場合には、原則として、まず
処分庁に異議申立てをしてからでなければ、審査請求はできないことに
なっている(6条3号・20条)。したがって、この場合には、自由選択では
なく、異議申立てが前置になるので、×。
2と3を比較すると、2の場合、審査請求と異議申立てのいずれしか行う
ことができないという問題であるのに対して、3の場合には、審査請求が
異議を前置とするという問題であることに注意。また、実際には、3の
ケースが多いようである(入門)。
4 審査請求は、処分庁または不作為庁以外の行政庁に対して行い、異議
申立ては、処分庁または不作為庁に行う(法3条2項)。これには例外
はない。×
5 前段の3審制は正しい。後段は、処分庁以外の行政庁を第三者機関
というのであれば、この点は正しいが、行政不服審査法は、「異議
申立て」と「審査請求」を異なった種類の不服申立てとしている。
前者 の決定に不服のあるものに後者の申立てをするという2審制
を同法は採用していない。×
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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