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行政事件訴訟法 第41回

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第41回 】★      
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 2009/7/9


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】行政事件訴訟法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 A  平成17年度過去問・問題16

  平成16年の行政事件訴訟法改正では、行政訴訟における国民の救済
 範囲の拡大と国民にとっての利用しやすさの増進がはかられた。次の
 記述のうち、改正法でのなお実現されなかったものはどれか。


 1  従来、抗告訴訟における被告は行政庁とされていたが、改正後
   は、国家賠償法と同様に、国または公共団体を被告とすることに
   なった。 

 2  従来、無名抗告訴訟の一種として位置づけられたてきた義務付け
   訴訟や差止訴訟が、改正後は法定抗告訴訟とされたのにともない、
   仮の義務付けおよび仮の差止めの制度が設けられた。

 3  従来、きわめて厳格であった「回復の困難な損害を避けるため緊急
   の必要があるとき」という執行停止の要件が「重大な損害を避ける
   ため緊急の必要があるとき」とされ、改正前に比べ緩和された。

 4  従来、原告適格の要件としての「法律上の利益」が厳格に解釈され
   て いたが、当該法令と目的を共通にする関係法令も参酌すべきこと
  などとされ、その拡大がはかられた。
 
 5  従来、厳格に解釈されてきた取消訴訟における処分性について、
   具体的な効果など諸事情を総合的に考慮し判断すべきとの解釈規定
  が加えられ、その拡大がはかられた。

 

 B  平成18年度・問題18

  平成16年の行政事件訴訟法改正後の行政事件訴訟制度の記述として、
 正しいものはどれか。

 
1  従来、法令に基づく申請についてのみ認められていた不作為違法
   確認訴訟が、規制権限の不行使についても認められることになった。

 2  仮の義務付けまたは仮の差止めは、処分の執行停止と同様の機能を
   有するので、内閣総理大臣の異議の制度が準用されている。

 3 処分が、国または公共団体に所属しない行政庁によって行われた
   場合、 当該処分の取消しを求める訴えは、処分取消訴訟に替わり、
  民事訴訟によることとなった。

 4  法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分もなされない
  場合は、原告の判断により、不作為違法確認訴訟または義務付け
    訴訟のいずれかを選択して提起することができる。

 5  処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無を確認する判決
 (無効等の確認判決)は、第三者に対しても効力を有することが
  明文上認められた。
 

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■ 解説
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 ▼ 参考書籍は、第2コース第40回に掲載した。

 ▼ 今回、A・Bで取り上げたのは、Aでいう「救済範囲の拡大と利用
  しやすさの増進」のため、平成16年に改正(同17年4月1日から
   施行)された行政事件訴訟法である。これからもここに焦点を当てた
   出題は当然予想されるのであり、この際、当該改正の内容を把握して
   おくべきである。

 Aの17年度過去問

 1について

  これは、被告適格の問題である。
  改正された行政事件訴訟法11条1項によると、処分または裁決をした
 行政庁が国または公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、それぞれ、
 国またはその公共団体を被告として提起しなければならないことになって
 いるので、正しい。なお、この11条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟
 にも適用されることになっていることに注意せよ!!(同法38条1項)。
 内容を明確にするため、「入門」から次の文章を引用する。
 
 「民事訴訟法の原則からいえば、これはあたりまえのことですが、じつは
 今回の法改正の以前においては、『処分の取消しの訴えは、処分をした
 行政庁を、裁決の取消しの訴えは、裁決をした行政庁を被告として提起
 しなければならない」とされてたのでした(改正前11条)。・・
 『行政庁』は、『処分または裁決をおこなう権限を与えられている行政
 機関』のことだ、と考えておけばよいでしょう。こうして旧法のもとでは、
 たとえば、課税処分の取消訴訟だったら、『国』を相手として訴えを起こ
 すのではなく、その課税処分をした税務署長を相手としなければならない。
 運転免許取消処分の取消訴訟だったら、知事ではなくて、免許を取り消し
 た公安委員会を被告として訴えを起こさなければならない、という状態
 でした。これは大変まぎらわしいことですが、ここのところをまちがえ
 ると、それだけで訴えは門前払い(却下)になってしまったわけで、
 国民の権利救済制度という見地からは、大きな問題がありました。そこで、
 今回の法改正では、これを改めて、民事訴訟の原則に戻すことにした・・」
 本肢では、国家賠償法が挙がっているが、これは民事訴訟法の適用を受け
 るので、以上述べたことは、国家賠償法にも妥当する。
  なお、「入門」による次の指摘にも注意せよ。
  「国または公共団体が被告になる場合でも、訴訟において、実質的には
 行政庁が主体となって活動することとなっています(法11条4項〜6項を
 参照)。」
 

 2について

  法律上明文で定められていないが、従来から理論的に可能であると
 考えられてきた「無名抗告訴訟」が当該法改正によって、法律上正面
 から認められた(法3条6号の「義務付け訴訟」・法3条7号の「差
 し止め訴訟」)。これに伴い、37条の5により「仮の義務付け及び
 仮の差し止め」も認められることになった。注1・2

 正しい。

 注1・「義務付け訴訟」の概念については、第2コース第36回A・
        肢3の解説で述べたので、再説しない。また、「差し止め
        訴訟」については、同 肢2で述べた。
 注2・「仮の義務付け等」とは、仮の処置であって、緊急性など
       厳格な要件のもとに、裁判所は、本案の審理の前に行政庁に
    仮の義務付けを命じ得るとしたものである。

 3について
 
  法25条1項は、取消訴訟につき、執行不停止原則を定めているが、
 同法2項において、取消訴訟のほかに、特別に「執行停止の申立」を
 すれば、例外的に裁判所がこれを認めることがある。この執行停止の
 要件が当該改正により、本肢のとおり、緩和された。

 正しい。

 
 4について

  法9条1項に原告適格の規定があり、その要件としての「法律上の
 利益」については、最高裁判所の判例により緩められてきた。当該
 改正によって、法9条2項が、考慮事項として、最高裁の判例が示
 した内容をとりいれた。そこでは、「関係法令の参酌」も規定され
 た(入門)。注

 正しい。

 注・ここで規定されているのは、第三者が訴えを起こす場合である。
  処分の相手方自身が起こす場合には、取消しについて原則的に
    「法律上の利益」があるのは、処分が不利益なものである限り
  当然のことだからである(入門)。

 5について

  取消訴訟における処分性についての本肢の見解は、最高裁判所の
 判例の立場であるが、これは、4と異なって、当該法改正により
 解釈規定として加えられたという事実はない。

  したがって、平成16年の改正法で実現されていないので、これが
 正解である。

 
 Bの18年度過去問

 
 1について

  法3条5項によれば、不作為違法確認訴訟は、「法令に基づく申請」
 のみにしか認められていない。規制権限の不行使にまで拡大されたと
 いう事実はない。注

 正しくない。

 注 規制権限の不行使についての不作為違法確認訴訟の内容は、第2
   コース第36回A・肢1の解説参照。

 2について

  内閣総理大臣の異議といえば、私には、懐かしい。時は、昭和40年
 代後半。若かった私は、法務省勤務で、当該業務の一端に関わった。
  学生のデモで国会周辺が騒然となった時代。学生らは、東京都公安委
 員会に対し、デモの許可申請。不許可になる。そこで、彼らは、取消
 訴訟提起。同時に、不許可処分の執行停止の申立を行う。許可申請した
 デモの日時より遅い取消しでは無意味であるから、「回復の困難な損
 害を避けるため」(平成16年改正前の要件)処分の効力・執行の停止
 を申し立てる(法25条2項)。そこで、当該異議の登場。このデモの
 不許可を続行しなければ、国会周辺の治安は維持できない(法27条3項
 の「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」を理由にする)。この
 起案の作業が、法務省職員によって遂行されるのである。これは、デモ
 の開始前までに行われなくてはならないので、たいてい、徹夜作業だ
 った。この内閣総理大臣の異議があれば、執行停止をすることは
 できない(法27条4項)。
  それデモ、学生らは、デモを強行。そこで、治安当局は、当該異議
 を楯に、楯をもって無許可デモの取り締まり。騒然の度合の増大。
 その繰り返し。
  さて、本題。何らかの不許可処分のあった場合、仮の義務付けにより
 本案の審理なしで、許可を義務付けるのだから、不許可処分の執行停止
 と同様の機能を有する。また、本案の審理なしに、行政処分の差し止め
 が行われると、処分の執行停止の機能を有するというのは、もっと分か
 りやすい。そこで、当該異議の制度の登場となることは、前述したとおり。
 条文でいえば、法37条の5第4項による27条の準用である。
 平16年の改正により、仮の義務付けなどが認められたことにより、
 当該規定が設けられた。

 正しい。これが正解である。


 3について

  これは、被告適格に関するAの肢1と連動する。法11条1項では
 当該行政庁の所属する国または公共団体に被告適格があるが、本肢
 の場合には、11条2項により、当該行政庁を被告とする抗告訴訟
 を提起することになる。平成16年の改正により追加された条項で
 ある。

 したがって、本肢は正しくない。


 4について

 法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
 不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3第3項第
 1号)。これが16年改正法である。選択の問題ではない。詳しくは、第
 2コース第38回C肢2の解説参照。

 正しくない。


 5について

  本肢は、判決の第三者効の問題であって、訴訟法として、高度な
 テーマ。理論的には確認判決に第三者効はないといわれている。
  16年改正により、第三者効が明文化された事実はない。
   これについては、これ以上深入りする必要はない。

 正しくない。
 


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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