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行政不服審査法 第43回
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★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第43回】★
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2009/7/16
PRODUCED by 藤本 昌一
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【テーマ】続・行政不服審査法
【目 次】問題・解説
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■ 問題
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E 平成19年度過去問・問題15
次の文章の空欄 ア〜キ のうち空欄 A と同じ言葉が入るものは
いくつあるか。
行政不服審査法に基づき審査請求がなされたとき、処分の効力、処分の
執行、手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置を行うか行わない
かに関して、行政不服審査法34条1項は、行政事件訴訟法と同様、
A 原則を選択している。私人の権利利益救済の観点からは、 ア
原則が望ましく、公益を重視する観点からは イ 原則が望ましい
といえる。
行政不服審査法の下においては、行政庁の上級庁である審査庁は職権
により ウ をすることができる。これに対して、処分庁の上級行
政庁以外の審査庁は、審査請求人の申立てにより エ とする
ことができるのみであり、裁判所と同様、職権により オ とする
ことはできない。これは、処分庁の上級行政庁である審査庁は、処分庁
に対して一般的指揮監督権を有するから、職権に基づく カ も
一般的指揮権 の発動として正当化されるという認識による。
なお、国税通則法105条1項のように、個別法において キ
原則に修正が加えられている場合もある。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ
(参考) 国税通則法105条1項(省略・各自で条文を参照されたい)
F 平成18年度過去問・問題15
行政不服審査法による審査請求における執行停止に関する記述として、
妥当なものはどれか。
1 従来、執行停止の要件としては、「重大な損害」が必要とされていた
が、 平成16年の法改正により、「回復困難な損害」で足りることと
された。
2 審査庁は、「本案について理由がないとみえるとき」には、執行停止
をしないことができる。
3 申請拒否処分に対する審査請求については、平成16年の法改正に
より、執行停止制度に加えて、「仮の義務付け」と「仮の差止め」の
制度が明文化された。
4 執行停止の決定がなされた場合において、それに内閣総理大臣が
異議を述べたときは、審査庁は、執行停止を取消さなければならない
こととされている。
5 処分庁の上級庁である審査庁は、審査請求人の申立てによること
なく職権により執行停止することは許されない。
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■ 解説
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△ 参考書籍は、第2コース第42回に掲げた。
△ 今回は、行政不服審査法の続編として、EFとして、審査請求に
おける執行停止を採用した。第2コース第41回B肢2において、
行政事件訴訟法における執行停止を掲げたので、参照されたい。
私は、当該解説欄において、「許可申請したデモの日時より
遅い取消しでは無意味である」と述べたが、実は、訴えの利益が失
われて却下されるのである。
次の過去問の肢をみてほしい。
特定の日に予定された公園使用の不許可処分の取消訴訟の係属中に
その特定の日が経過した場合であっても、訴えの利益は失われない。
×で、理由は、訴えの利益はないため、却下される。私は、「無意味」
と述べたが、だから却下されるのだ!言い訳にもならぬが・・・。
Eの平成19年度過去問
本問は、執行停止に関する原則が理解されていれば、容易に正解に達し
得る。細かい条文の知識は必要ないかもしれない。
本問に則して、原則を追ってみる。
1 行政不服審査法は、行政事件訴訟法と同様 Aの執行不停止 原則を
選択している。条文としては、行政不服審査法34条1項・行政事件訴訟法
25条1項。その根拠は行政処分の公定力にある。
2 当該執行不停止が、公益重視の観点に立ち、執行停止原則は、逆に
私人の権利利益救済の観点に立つことはいうまでもない。したがって、
アが執行停止 原則であり、 イが執行不停止 原則である。
3 行政不服審査法上、処分庁の上級庁である審査庁は、職権により執行
停止をすることができる。法34条2項。 ウは執行停止。
4 処分庁の上級庁以外の審査庁は、職権で執行停止ができない。法34条
3項により申立てのみ。エは執行停止
5 裁判所による執行停止も、申立があった場合にかぎられる(行政事件
訴訟法25条2項)。オも執行停止。
6 3の根拠は、上級庁の処分庁に対する一般的指揮監督権である。カも
執行停止。
7 参考として掲げられた個別法は、本文において、執行不停止原則を規定
しながら、ただし書きで、その原則に修正が加えられ、限定的に執行停止
がなされることを規定している。 キは 執行不停止 原則である。
したがって、「執行不停止」は、イ・キの二つであり、正解は2である。
執行停止全体が見渡すことのできる良い問題だ!
Fの平成18年度過去問
1について
平成16年の行政事件訴訟法の改正に伴い行政不服審査法においても、
執行停止をより行いやすくしようとの目的で、「回復困難な損害」を
「重大な損害」で足りるよう要件を緩和した。「回復困難な損害」と
「重大な損害」の順序が逆である(行政不服審査法34条4項5項・行政事件
訴訟法2項3項)。×
2について
法34条4項により正しい。執行停止は本案の審理を待たないで行わ
れるが、「本案について理由がないとみえるとき」まで、これを許す
べきではないからである。行政事件も同様である(法25条4項)。○
これが正解である。
3について
これは、難しい問題であり、題意が把握し難い。例えば、申請拒否
処分として、生活保護却下処分をとりあげる。裁決によって、当該
処分が取消されると、処分庁は、裁決の趣旨に従って、生活保護決定
をしなければならない(法43条1項・2項)。
それでは、この裁決の前に審査庁が執行停止を行ったら、どうなるか。
処分庁は、生活保護決定を義務付けらるのではないというのが、実際の
取扱であるから、拒否処分についての執行停止の決定はやっても意味は
なく、結局、執行停止の申立の利益がないということになる。
もし、裁決の前に、義務付け(生活保護決定)をさせるためには、仮
の義務付けを認める必要がある。(以上「読本」参照)
以上の前提知識があって初めて、本肢の趣旨が把握できると思う。
本肢が言いたいのは、平成16年の改正により、不服審査法上、執行
停止制度によって、義務付けが可能になった。これに加えて、「仮の
差止め」は付け足しとしても、「仮の義務付け」が明文化されたという
のである。これは、全部でたらめである。前段が誤りであると同時に
後段の「仮の義務付け」等は、行政事件訴訟法に該当することである
(法37条の5)。この問題は、「仮の・・」が行政事件訴訟法に特有の
制度であることが分かっていれば、すぐに誤りであることに気づくが、
本肢を通じて、全体の理解に到達するために、詳しく説明した。
×
4について
内閣総理大臣の異議という制度は、行政不服審査法にはない。これが
認められるのは、行政事件訴訟法における執行停止(法27条)と仮の
義務付け及び仮の差止め(法37条の5第4項による27条の準用)の場合
である。後者については、第2第41回・B肢2解説参照。
5について
法34条2項により×。前掲Aにおいての主題であった。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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