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株式会社の設立 第44回
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★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第44回 】★
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2009/7/21
PRODUCED by 藤本 昌一
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【テーマ】株式会社の設立
【目 次】問題・解説
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■ 問題
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平成19年度過去問・問題36
株式会社の設立に関するア〜オの記述のうち、正しいものの組合
せはどれか。
ア 会社の設立に際しては、発起設立または募集設立のいずれの
方法による場合も、創立総会を開催しなければならない。
イ 会社の設立に際して現物出資を行うことができるのは発起人
のみであるが、財産引受については、発起人以外の者もその
相手方となることができる。
ウ 設立時募集株式の引受人が払込をせず、当該引受人が失権した
場合には、発起人は、自らその株式を引き受けなければならない。
エ 設立時取締役は、その選任の日から会社の設立の登記がなされる
までの期間において、発起人に代わって設立中の会社のすべての
業務を行う権限を有する。
オ 会社の設立手続が行われたにもかかわらず会社が成立しなかった
ときは、発起人は、連帯して、会社の設立に関してした行為について
その責任を負い、会社の設立に関して支出した費用を負担する。
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■ 解説
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▽ 参考書籍
会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂 リーガルマインド 会社法
弥永真生著 著・有斐閣
アについて
募集設立の場合においてのみ、創立総会を開催しなければならない。
誤りである。
その根拠等
発起設立は、設立の企画者であり設立事務の執行者である発起人が
設立の際に発行する株式(設立時発行株式)のすべてを引き受け、会
社成立後の当初株主になる形態の設立方法(会社法25条1項1号)。
募集設立は、発起人は設立の際に発行する株式の一部だけを引き受
け、残りについては発起人以外の者に対して募集を行い、そのような
発起人以外の者が株式の引受けを行い、発起人とそのような者とが会
社成立後の当初株主になる設立方法(法25条1項2号)。
(神田会社法)
発起設立は、発起人の出資の履行(34条)後,発起人だけで設立時
取締役等の選任を行い(38条以下)選任された設立時取締役等が、
設立経過の調査を行う(46条・93条)。
募集設立にあっては、発起人の出資履行(34条)・設立時募集株式
の引受人による払込(63条)後、 創立総会(設立時株主≪設立時に
株主となる株式 引受人≫からなる議決機関)が招集され、そこで、
設立時取締役等の選任を行い(88条)、定められた設立経過等の調査
を行う(93条2項・96条)。
以上により、創立総会は、募集設立に特有なものであることが分かる。
簡単にいうと、発起人だけだとすっと行くが、募集となると、株主の
募集や創立総会という面倒な手続がつきまとうことになる。
総括
創立総会が開催されるのは、募集設立だけという結論を知っていれば
よいともいえるが、「その根拠等」によりその流れを把握しておくと、
知識がより強固になり、応用がきくと思う。
イについて
会社の設立に際しての現物出資者は、発起人に限る。財産引受について
は第三者も相手方になることができる。
正しい。
その根拠等
現物出資は、金銭以外の出資者である(28条1項)。財産引受は、
発起人が、 設立中の会社のために、株式引受人または第三者との間で
会社成立後に財産を譲り受けることを約することである(28条2号)。
(リーガル)
財産引受については、当該定義から、相手方である譲渡人は、第三者
でもよいということになる。
いずれも、目的物を過大に評価して会社の財産的基礎を危うくしては
ならないため、法28条の変態設立事項として、厳格な規制が設けられ
ている
(神田会社法)。
会社設立に際しては、現物出資者が発起人に限られるというのは、
次のとおり条文解釈によって導かれる(リーガル)。34条と63条
とを対照。34条1項では、発起人の現物出資に関する規定があるのに
63条の設立時募集株式の引受人には、現物出資を想定した規定はない。
212条1項2号・2項において、会社成立後の募集株式の引受人
の責任に関し、現物出資財産に不足を生じた場合について規定している
が、設立時募集株式の株式引受け人に関しては、これに相当する規定
がない。
もうひとつ重要な論点がある。財産引受けは、通常の売買契約で
あるから、会社成立後は、一般の業務執行になる。会社成立後の
募集株式の発行の際、現物出資に関する規制がある(207条等)
のに対して、募集株式の発行等の関連では、財産引受けにあたる
制度はない。(リーガル)
総括
本肢についても、結論だけ覚えておけばよいともいえるが、その
根拠を知っておくことに越したことはない。また、関連部分は、本
試験の射程距離であると思う。
ウについて
株式引受人が失権した場合、発起人は、その株式を引き受けなくても
よい。誤りである。
その根拠等
設立時募集株式の引受人が払込をしなかった場合は、当然に失権する
(63条3項)。当然失権することの意味は、条文にあるとおり、「設立時
募集株式の株主となる権利を失う」ことである。発起人の引受け責任は
ない。払込があった分だけで会社の設立をしてよい(神田会社法)。
この点には沿革がある。旧商法では、発起人等に引受け・払込み責任
が認められていたのを新法である会社法では、これを廃止したのである。
「 旧商法においては、設立に際して発行する株式総数が定款の絶対的
記載事項とされており、設立時に発行する株式全部の引受や払込がなさ
れていない場合は、定款違反として設立無効の原因となるため、その
ような場合に発起人らに引受・払込責任を負わせて設立の瑕疵を治癒し、
会社の設立が無効とならないように」していたたのである(非公開会社
のための新会社法・商事法務)。
しかし、現行法では、前述のとおり、当然失権とし、払込のあった分
だけで、設立手続の続行を認めたのである。
関連事項として、以下の3つを掲げる(神田会社法参照)。
(1) 発起人が払込をしなかった場合は、失権予告付で払込みを催告
し、払込がなければ引受人を失権させる(36条)。
(2) 発起人・設立時募集株式の引受人の失権があった場合、他の
出資者により出資された財産の価格が定款で定めた「設立に際して
出資される財産の価格またはその最低額」(27条4号)を満たして
いないときは、設立手続を続行できない。ないしは、設立無効事由
になる。
(3) 失権により発起人が1株も権利を取得しなくなるような場合には、
法25条2項に反するので、設立無効事由となる。
総括
本肢に関し、結論だけではなく、沿革も知っていれば、知識は強固になる。
また、関連事項は、本試験の射程距離にある。
エについて
発起人は、会社の設立の企画者であって、設立事務を執行し、会社の
成立を目指す(神田会社法)のであるから、設立時取締役が、設立中の
会社のすべての業務を行う権限を有するものではない。
誤りである。
設立時取締役(会社の設立に際して取締役となる者)の設立中の業務は、
以下のとおり、一定ものである。
法46条1項・93条1項の設立事項の調査である。募集設立にあって
は、 当該調査結果の創立総会への報告を行う(93条2項)。
なお、本肢は、設立中の会社に関する基本的理解を問うものであり、
誤ってはならない。
オについて
会社不成立の場合における、発起人の責任は、法56条に規定がある。
発起人がした設立に必要な行為はすべて発起人の連帯責任になる。設立
費用として支出したものは、・・すべて発起人の負担となる(神田会社法)。
本肢は正しい。
なお、会社の[不成立」について付言しておく。
会社の設立が途中で挫折し設立の登記まで至らなかった場合を、会社の
「不成立」という。設立無効の訴えによるまでもなく、誰でもいつでも会社
が存在しないことを主張できる(神田会社法)
以上、正しいものは、イとオであり、正解は4である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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