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株式会社における剰余金の配当 第51回

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第51回 】★      
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 2009/8/18


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】株式会社における剰余金の配当
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成20年度過去問・問題38

   株式会社における剰余金の配当に関する次のア〜オの記述のうち、
 誤っているものの組合せはどれか。

 ア  剰余金の配当により株主に交付される金銭等の帳簿価格の
    総額は、剰余金の配当が効力を生ずる日における分配可能額
    を超えてはならない。

 イ   剰余金の配当においては、株主総会の決議により、当該会社
  の株式、新株予約権または社債を配当財産とすることができる。

 ウ 取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り、
  取締役会決議により剰余金の配当(中間配当)をすることができる
   旨を定款で定めることができる。

 エ 純資産の額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当をする
  ことができない。

 オ 会社が自己株式を有する場合には、株主とともに当該会社も剰余金
  の配当を受けることができるが、配当財産の額は利益準備金に計上
   しなければならない。

 1 ア・ウ

 2 ア・エ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・オ

 
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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣

 本問では、順序不同で解説を行う。
  
 (1)原則として、剰余金の配当は、株主総会決議により行われる
(453条・454条参照)。剰余金の配当とは、株主に対する配当である。
 自己株式とは、「株式会社が有する自己の株式」(113条4項参照)
 であるが、法は、自己株式には配当できないことにしている
(453条括弧書き)。

   したがって、自己株式への配当を前提にしているオは誤りである。

   会社は、株主総会の決議によって、現物配当(配当財産を金銭以外の
 財産とすること)も認められる(神田会社法・454条4項)。
  したがって、会社は、株主総会の決議によって、配当する財産の種類
 を定める必要がある(454条1項1号前段)。その際、当該株式会社の
 株式等は、配当財産から除かれる(454条1項1号括弧書き)。自己株式
 が除かれる財産に該当することは明らかであるが、その他のものが、
 社債・新株予約権を意味することは、107条2項2項ホ括弧書きに
 よって明らかになる。

   したがって、当該会社の株式、新株予約権または社債を配当財産と
 するこたとができるとするイは、明らかに誤りである。

   あっさりとしたもので、ここで、イ・オが誤りで4が正解であることが
 確定する。括弧の3連続で決まりといったところか。
  なお、「新株予約権」「社債」については、第52回において説明する。

 あとの残りの肢が正しいことを追認する作業になるが、以降、順次説明
 する。

 (2)以上述べたとおり、剰余金配当は原則として、株主総会の権限で
 あるが、会計監査人設置会社かつ監査役設置会社および委員会設置会社
 では、一定の要件に該当し、定款で特例を設ければ、取締役会の権限と
 することが認められる。459条に定めがあるが、ここでは詳しく説明
 しない。

 (3)(2)の特例を設けていない会社であっても、取締役会設置会社
 は、一事業年度の途中で1回に限り取締役会の決議によって剰余金の
 配当(金銭配当に限る)をすることができる旨を定款で定めることが
 できる(神田会社法・454条5項)。

    これが、肢ウに記された中間配当である。本肢は正しい。

 (4)最後に剰余金配当の要件を示す(神田会社法)

   まず、第1に、会社の純資産額が300万円を下回る場合には、配当
 できない(458条)。

  これは、肢エ記載のとおりであり、この肢は正しい。
 
   第2に、配当(について)は、会社法は「分配可能額」を算出し、その
 限度内でのみ株主への配当およびその他の剰余金分配を認める(461条)。

  肢アは、当該461条本文をそのまま引用しているので、この肢も
  正しい。

   第3に、配当をする場合には、法務省令で定めるところにより、配当
 により減少する剰余金の額の10分の1を資本準備金または利益準備金と
 して積み立てなければならない(445条4項)。

  以上、やはりイ・オが誤りで、正解は4である。

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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