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株式会社の資金調達方法 第52回

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第52回 】★      
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 2009/8/18


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】株式会社の資金調達方法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成20年度過去問・問題39

   甲株式会社(以下、甲会社という)の資金調達に関する次の文章
 の空欄(ア)〜(キ)に当てはまる語句の組合わせとして、正しい
 ものはどれか。なお、以下の文章中の発言・指摘・提案の内容は、
 正しいものとする。


   東京証券取引所に上場する甲会社は、遺伝子研究のために必要な
 資金調達の方法を検討している。甲会社取締役会において、財務
 担当の業務執行取締役は、資金調達の方法として株式の発行、
 (ア)の発行、銀行借入れの方法が考えられるが、銀行借入れの
 方法は、交渉の結果、金利の負担が大きく、新規の事業を圧迫
 することになるので、今回の検討から外したいと述べた。次に
 株式の発行の場合には、甲会社の経営や既存株主に対する影響
 を避けるために、(イ)とすることが望ましいのであるが、会社
 法は(ウ)について(イ)の発行限度額を定めているため、十分
 な量の資金を調達できないことが見込まれると指摘した。社外
 取締役から、発行コストを省くという観点では、(エ)を処分する
 方法が考えられるという意見が出された。

   これに対して、財務担当の業務執行役は、株式の発行価格が、
 原則として資本金に計上されるのに対して、(エ)の場合は、
 その価格はその他(オ)に計上されるという違いがあると説明
 した。こうした審議に中で、甲会社代表取締役は、(ア)の発行
 であれば、経営に対する関与が生じないこと、(ア)を(カ)付
 とし、(キ)額を(カ)の行使価格に充当させるものとして発行
 すれば、(キ)に応じるため資金を甲会社が準備する必要ななく、
 現段階では、有利な資金調達ができるだろうと提案した。

 
1 ア 社債 イ 議決権のない株式 ウ 公開会社 エ 金庫株式
   オ 資本準備金 カ 新株予約金 キ 払戻し

 2 ア 債券 イ 議決権のない株式 ウ 上場会社 エ 金庫株式
     オ 資本剰余金  カ 取得請求権 キ 払戻し

 3 ア 社債 イ 議決権のない株式 ウ 公開会社 エ 自己株式
   オ 資本剰余金 カ 新株予約権 キ 償還

 4 ア 債券 イ 配当請求権のない株式 ウ上場会社 エ 募集株式
     オ 資本準備金 カ 買取請求権 キ 払戻し

 5 ア 社債 イ 配当請求権のない株式 ウ 公開会社 エ 自己株式
   オ 利益準備金 カ 取得請求権 キ 償還
 
 

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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 ア について

   株式会社における外部からの資金調達手段としては、(1)株式の
 発行 (2)「社債の発行」 (3)銀行借入れ その他企業間信用が
 考えられる。したがって、アは、「社債」である。ここで正解は、1・
 3・5に絞られる。

 イについて

   議決権制限種類株式とは、株主総会の全部または一部の事項について
 議決権を行使することができない株式をいう(108条1項3号)。(神田
 会社法)
   とくに総会のすべての事項について議決を有しない株式(完全無議決
 権株式)≪神田会社法≫を発行すれば、旧経営陣ないし既存株主の支配
 関係の維持に役立つ。したがって、株式発行の場合は、甲会社の経営や
 既存株主に対する影響を避けるために、「議決権のない株式」とする
 ことが望ましい。イは、「議決権のない株式」である。
   ここで、5が除かれ、1と3に絞られる。

 ウについて

   会社法は、「公開会社」では、議決権制限株式の総数は発行済株式総数
 の2分の1を超えてはならないとしている(115条)ので、ウは「公開会社」
 である。ここでは、1・3いずれを選択しても、「公開会社」になり、決め
 手にはならない。

 エについて

   199条1項によると、「その処分する『自己株式』を引き受ける者
  の募集」は、新株発行と同じ手続による。新株を発行すると、株券の
 発行を要するが、「自己株式」の処分の場合は不要である。したがって、
  発行のコストを省くという観点では、「自己株式」を処分する方法が
  が考えられることになり、エは「自己株式」である。
    なお、1のエに 当たる「金庫株」も一応考慮の対象になる。金庫株とは、
 会社が自己株式を期間制限なくその金庫に入れておくことから命名された
(神田 参照)ものであり、この金庫株は、弊害があったため、禁止されて
 いたのを平成13年6月改正により、「金庫株の解禁」が行われたのである。
  したがって、ここでは、「金庫株式」でも意味が通じないことはないが、
 法律用語としては、「自己株式」の処分が正しい。さらに、後に続く記述
 では、「自己株式」の価格の計上が問題になっているので、「自己株式」
 が確定的になるのである。

  ここで3に確定するのであるが、このあたりまで順調に来れば、時間の
 節約のため、3として後は見ないで、最後に時間あれば、後半部分を確認
 するのも一策である。

 オについて

   新株発行では資本金の額が増加する(445条1項〜3項)が、自己株式の
 処分益は分配可能額に含まれる(その他資本剰余金」。(神田会社法)
  しかし、このあたりは相当の高度な知識を要する。
  したがって、株式の発行価格が資本金に計上されるのに対して、自己株式
 の場合は、その価格はその他「資本剰余金」(オ)に計上されるということ
 になる。

 カ・キについて

   こうした審議の中で、・・・・・という最後の記述を全体としてみて
 みよう。このあたりで、皆さんは不安に襲われるのではないか。会社法
 にそんなに時間かけられないよ。助けてくれ!! しかし、本試験では
 会社法から確実に4問は出題されている。苦手意識を持って投げてしまえば、
 失う代償は大きい。少しの辛抱だ。じっくりと、一定の時間をかけて論点
 の理解に挑むという意欲が大切だ。だれでも会社法にはてこずっている。

  私も現に、「しんぼう」がパソコンで漢字では出てこず、辞書を引き、
「てこづる」 か「てこずる」かでまた辞書を開いている。

  本題に入る。
 
  社債とは、会社の債務であり、社債権者は会社に対する債権者であって、
 会社の経営に対する関与が生じない。次に、新株予約権付社債(2条22号)
 について、新株予約権を行使されると、会社は、新株予約権者に対して、
 新株を発行する義務を生じる(236条以下)。
  新株予約権の行使は、あらかじめ定めた一定の期間(行使期間)内に
 あらかじめ定めた一定の金額(行使価格)の払込みをすることによって
 行う(神田会社法)。
  社債については、会社は、発行時に定めた条件で元本の返済(償還)
 と利息の支払いをしなければならない(2条23号・676条特に4号の償還
 に注目)。
  そこで、新株予約権付社債の発行にあたり、償還額を新株予約権の
 行使価格に充当させるものとすれば、償還に応じるための資金を会社
 が準備する必要がない。

  以上の理解があれば、カが「新株予約権」であり、キが「償還」
 であることは明らかである。

   以上正解は、3である。

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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