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  ★ 特集/行政事件訴訟法・過去問「10年」を通じて、本試験

   を展望する。=その2

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 序説
    
    前回は、訴訟類型のひとつとして、「不作為の違法確認の訴え」
 をとりあげたが、今回は前回からの流れに沿って、「義務付けの訴
 え」に移行することにする。もちろん、「抗告訴訟の中では、
 「取消訴訟」(3条2項の『処分の取消しの訴え』及び3条3項の
 『裁決の取消の訴え』の総称・9条1項参照)がその重要度では第一
 であるが、これについては、最後に一括してとりあげることにする。

 各肢の検討

  前回の(1)「不作為の違法確認の訴え」に引き続いて(2)
「義務付けの訴え」について、過去問各肢をアトランダムにとりあげ、
 その記述が正しいかどうか検討することにする。

  (2) 「義務付けの訴え」

================================

 a  Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合
   において、Xが入園承諾の義務付け訴訟を提起する場合には、同時
   に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなけれ
   ばならない。 
  b  申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、それと併合
   して提起すべきこととされている処分取消訴訟などに係る請求に
  「理由がある」と認められたときにのみ、義務付けの請求も認容され
   ることとされている。
  c  申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分
   をすべき旨を行政庁に命ずることを求めるにつき「法律上の利益を
   有する者」であれば、当該処分の相手方以外でも提起することがで
   きることとされている。
 d   申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分
   がされないことによる損害を避けるため「他に適当な方法がないと
   き」に限り提起できることとされている。
 e  申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分が
  されないことにより「重大な損害を生ずるおそれ」がある場合に限り
  提起できることとされている。 
 f  申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、「償うことの
  できない損害を避けるため緊急の必要がある」ことなどの要件を満た
  せば、裁判所は、申立てにより、仮の義務付けを命ずることができる
  こととされている。 

================================

  ◎ a〜fについての【解答】

  ここで、前回の復習として、申請型と非申請型の義務付け訴訟に関
 する条文の適用関係の概略を示しておこう。

  ● 申請型義務付け訴訟
 
  (1)不作為型
    3条6項2号⇒37条の3第1項1号⇒37条の3第3項1号
    ・「不作為の違法確認の訴え」を併合提起
  (2)拒否処分型
    3条6項2号⇒37条の3第1項2号⇒37条の3第3項2号
    ・「取消訴訟又は無効確認の訴え」を併合提起
 
  ● 非申請型義務付け訴訟
    3条6項1号⇒37条の2第1号・訴えの要件に強い制限があ
    が、申請型のように併合提起の必要はない。

   各肢の検討

    a について。
     
     前記●申請型義務付け訴訟(2)拒否処分型3条6項2号⇒
    37条の3第1項2号⇒37条の3第3項2号・「取消訴訟又
    は無効確認の訴え」を併合提起 参照。
     したがって、本肢の場合には、「同時に拒否処分の取消訴訟
    または無効確認訴訟も併合して提起しなければならない」ので、
    本肢は正しい。 
    
    b について。

          37条2が規定する非申請型義務付け訴訟の訴訟要件におい
    ては、処分取消訴訟などの併合提起を要しないので、これに反
    する記述のある本肢は正しくない。
     また、申請型義務付け訴訟において、併合提起された処分取
    消訴訟などに係る請求に「理由がある」と認められることは、
    義務付けの請求が認容されるための一要件に過ぎない。その他
    の要件については、37条の3第5項に規定がある。当該要件
    については、非申請型義務付け訴訟についても、ほぼ同様の規
    定がある(37条の2第5項)。
     以上、本肢は正しくない。
 
     
    c について。

     申請型義務付け訴訟では、「法令に基づく申請又は審査請求
    をした者に限り、提起することができる」(37条の3第2項)
    ことになっているので、「当該処分の相手方以外でも提起する
    ことができるという本肢の記述は、正しくない。
     ただし、非申請型義務付け訴訟では、「法律上の利益を有す
    る者に限り、提起することができる」(37条の2第3項)こ
    とになっているので、この点に関しては、本肢は正しい。

    Ж 37条4項及び9条2項にも注目!平成24年度問題17
     において、9条2項全文が、空欄に入る語句の組合せ問題と
     して出題された。

    d・e について。

     申請型義務付け訴訟では、前述したとおり、取消訴訟などを
    併合提起することが義務づけられているが、訴えの要件に強い
    制限のある要件の定めはない(37条の3)。また、非申請型
    の義務付け訴訟の要件は37条の2第1項に定めがあるが、当
    該定めは、本肢の記述と微妙に異なっている。

     本肢d・eはいずれも正しくない。
    
    f について。

     本肢の記述は、仮の義務付けの申立ての要件(37条の5第
    1項)に照らし、正しい。

    Ж 仮の差止めの申立て要件は、仮の義務付けの申立ての要件と
     同じである(37条の5第1・2項)。
      また、義務付けの訴えと差止めの訴えの要件も見比べておく
     べきである(37条の2・37条の4)
    
=================================

 g  国の行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は、当該行
 政庁である。
 h  行訴法は、行政庁が処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟とし
 て「義務付けの訴え」を設けているが、行審法は、このような義務付
 けを求める不服申立てを明示的には定めていない。 

==================================

  ◎ g・hについての【解答】

   各肢の検討  


  g について。

   被告適格に関する11条は、38条によって、義務付け訴訟にも
  準用されているので、義務付け訴訟の被告は、国である(11条1
  項1号)。

   本肢は、正しくない。

   11条については、2項・3項も含め、他の条文もよく見ておくべ
  きである。

  h について。

      行訴法が、「義務付けの訴え」を設けていることは、繰り返すまで
  もなく、正しい。また、「行審法は、このような義務付けを求める不
  服申立てを明示的には定めていない」という本肢の記述もまた正しい。

  Ж なお、後掲書から、以下の記述を抜粋しておきたい。

   (1)行政不服審査制度においては、許認可などの申請に対する行
     政庁の不作為についても不服申立てが認められている(行審法
      7条)。従って、厳密には、行政不服審査制度は、抗告訴訟の
     うちの取消訴訟および不作為違法確認に対応するものである。
     もっとも、不作為違法確認訴訟も不作為に対する不服申立ても
     あまり用いられていない(読本)
   (2)・・処分の取消しを求める異議申立てや審査請求、処分の無
     効の確認を求める異議申立てや審査請求、といったものがあり
     うることになります。・・不作為の違法確認のばあいには、裁
     判所の司法機関としての性格から、行政庁の不作為に対しては、
     はなはだ消極的なコントロールしかできなかったわけですが、
     不作為についての審査請求のばあいには、裁決をおこなう行政
     機関(審査庁)は、(訴訟のばあいのように)ただ不作為が違
     法であることを確認するにとどまるのではなく、さらに積極的
     に、不作為庁に対して「すみやかに申請に対するなんらかの行
     為を命ずる」ことができる、とされています(行政不服審査法
     51条3項)(入門)

      しかし、私は、(2)の記述に対し、二つの疑問を抱く。一
     つには、不作為庁に対して「すみやかに申請に対するなんらか
     の行為を命ずる」ということは、行審法が義務付けを求める不
     服申立てを明示的には定めていることになるのではないか。と
     いうことになれば、肢hは、基本的に正しくないのではないか。
            もう一つは、「裁判所の司法機関としての性格から、行政庁
     の不作為に対しては、はなはだ消極的なコントロールしかでき
     なかった」という記述についてであるが、行訴法は、行政庁の
     不作為に対して、不作為違法確認の訴えを併合提起することに
     よって義務付け訴訟の提起を裁判所に行うことを認め、さらに
     は強い制限付きではあるが、仮の義務付けの申立てを認めてい
     ることからすれば、裁判所は、行政庁に対して、はなはだ消極
     的なコントロールしかできな」いとはいえないのはないか。
      これは、私個人の私見として、聞き流していただいて、みな
     さまは深入りされる必要はないと思料する。
     
       ★  参考文献

         行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著 

        ・有斐閣発行


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 【発行者】 司法書士 藤本 昌一
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
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  ★ 特集/行政事件訴訟法・過去問「10年」を通じて、本試験
   を展望する。

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 1 私の意図は、過去問10年を範囲にして、アトランダムに各肢を
  つなげ、直近の本試験に役立てようとするもである。

    それでは、さっそく、はじめよう。

  a以下の各肢について、体系的な説明を行うことにしよう。
 
 2 まずは、訴訟類型からだ。

 (1)「不作為の違法確認の訴え」
     
      a 不作為の違法確認訴訟は、処分の相手方以外の者でも、不作
    為の違法の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であれ
    ば、提起することができる。
   b 不作為の違法確認訴訟は、行政庁において一定の処分を行わ
    ないことが行政庁の義務に違反することの確認を求める公法上
    の当事者訴訟である。 
   c 不作為の違法確認の訴えは、行政庁が、法令に基づく申請に
    対して、相当の期間内に申請を認める処分又は審査請求を認容
    する採決をすべきであるにかかわらず、これをしないことにつ
    いての違法の確認を求める訴訟をいう。
   d 不作為の違法確認の訴えは、公法上の当事者訴訟の一類型で
    あるから、法令以外の行政内部の要綱等に基づく申請により、
    行政機関が申請者に対して何らかの利益を付与するか否かを決
    定することとしているものについても、その対象となりうる。

================================
  
  ● a〜dについての【解答】

       行訴法3条1項柱書・5項によれば、「不作為の違法確認の訴え」
   は、「抗告訴訟」に該当し、「不作為の違法確認の訴え」とは、
    「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又
     は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違
     法の確認を求める訴訟をいう」ことになる。

   以上の条文が、きっちりと頭に入っていれば、a〜eの肢が正しい
  か否かは即答できる。
  
   aは、正しくない。当該訴えは、「法令に基づく申請に対し」とな
  っているので、処分の相手方以外の者が、当該訴えは提起できない。
  ただし、以下の二点に注意。第一に、37条に(不作為の違法確認の
  訴えの原告適格)として、ばっちりの規定がある。第二に、9条1項
  ・2項をみれば、本肢は、取消訴訟の原告適格に該当する(3条2項
  ・3項参照)。

   bは、一見して、正しくないことが分かる。当該訴訟は、「抗告訴
  訟」であって、「公法上の当事者訴訟」ではない。ここでいう「公法
   上の当事者訴訟」とは、4条後段の「公法上の法律関係に関する確認
  の訴え」を意味するのだろう。学者は、これを実質的当事者訴訟と言
  う。ちなみに、学者は、4条前段を形式的当事者訴訟と言う。
   また、本肢では、当該訴訟を指して、「一定の処分を行わないこと
  が行政庁の義務に違反することの確認」というが、条文上は、よりシ
  ンプルに「相当の期間内に何らかの処分・・をすべきであるにかかわ
  らず、これをしないことについての違法の確認」となっている。した
  がって、本肢の当該記述も正しくない。

   cも正しくない。bで述べたとおり、条文には、「申請を認める処
  分」などの限定を求める文言はない。

   dも正しくない。第一に、当該訴は、抗告訴訟に該当するため、公
  法上の当事者訴訟の一類型ではではない。第二に、当該訴えの対象は、
  条文上、「法令に基づく申請」であるから、本肢記述である「法令以
  外の行政内部の要綱等に基づく申請」は、その対象にならない。

 § 過去問の多肢選択式問題(平成23年問43)において、「不作為
  の違法確認の訴え」に関して、条文上「相当の期間内」となっている
  ところを空欄にして、下欄の選択肢として、2 速やか 6 相当の
  期間内 17 標準処理期間内 20 合理的期間内 が挙がってい
  たが、この種の問題に対して、答えを誤らないためには、特に、この
  時期に、重要条文を繰り返して読んでおくことが、唯一の有効な対策
  であろう。
 
 ================================
    
  e 平成16年の行政事件訴訟法の改正によって義務付け訴訟が法定
   されたのと同時に、不作為の違法確認訴訟の対象も、申請を前提と
   しない規制権限の不行使にまで拡大された。 
  f(平成16年の行政事件訴訟法の改正によって)法令に基づく申請
   についてのみ認められていた不作為違法確認訴訟が、規制権限の不
   行使についても認められることになった。 
  g Xの家の隣地にある建築物が建築基準法に違反した危険なもので
   あるにもかかわらず、建築基準法上の規制権限の発動がなされない
   場合、Xは、当該規制権限の不行使につき、不作為違法確認訴訟を
   提起することができる。 
    
  ================================
           
   ▲ e〜gについての【解答】

      e・fによれば、  平成16年の行政事件訴訟法の改正によって
   不作為の違法確認訴訟の対象が、申請を前提としない規制権限の不
   行使にまで拡大されたとなっているが、以前として、行訴法3条5
   項では、不作為の違法確認訴訟の対象は、申請に対する不応答のみ
   である。したがって、e・fとも正しくない。そして、申請を前提
   としない規制権限の不行使が具体的に何を意味するかは、gの事例
     によって明らかであるが、当然、この場合には、不作為違法確認訴
     訟を提起することができないので、gも正しくない。 

  ================================
            
   h 不作為の違法確認の訴えについては、取消訴訟について規定さ
      れているような出訴期間の定めは、無効等確認の訴えや処分の差
      止めの訴えと同様、規定されていない。
    i  不作為の違法確認訴訟自体には出訴期間の定めはないが、その訴
     訟係属中に、行政庁が何らかの処分を行った場合、当該訴訟は訴え
     の利益がなくなり却下される。 

 =================================

 ▼ h〜iについての【解答】

    まず、不作為の違法確認の訴えでは、不作為状態が継続している限
  り、いつでもこれを提起することができる。また、無効等確認の訴え
 (3条4項)、処分の差止めの訴え(3条7項)もまた出訴期間の定
 めはない(38条において、14条は、取消訴訟以外の抗告訴訟につ
 いて準用されてもいない)。したがって、hは正しい。
  また、不作為の違法確認の訴えは、その訴訟係属中に、行政庁が
 「何らかの処分」(3条5項参照)をすれば訴えの利益がなく却下さ
  れる。したがって、iも正しい。


==================================

 j 不作為の違法確認訴訟を提起するときは、対象となる処分の義務付
  け訴訟も併合して提起しなければならない。
 k 不作為の違法確認の訴えが提起できる場合においては、申請を認め
  る処分を求める申請型義務付け訴訟を単独で提起することもでき、そ
   の際には、不作為の違法確認の訴えを併合提起する必要はない。
  l  法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分もなされない
    場合は、原告の判断により、不作為違法確認訴訟または義務付け訴訟
    のいずれかを選択して提起することができる。
  m  不作為の違法確認の訴えの提起があった場合において、当該申請に
    対して何らかの処分がなされないことによって生ずる重大な損害を避
    けるため緊急の必要があるときは、仮の義務付けの規定の準用により、
    仮の義務付けを申し立てることができる。

==================================   

 jについて。
   
  まず、3条5項の不作為の違法確認訴訟の提起は、単独で行うことが
 できるのであって、対象となる処分の義務付け訴訟を併合して提起する
 必要はない。したがって、jは正しくない。

  kについて。      ↓

  ただし、不作為の違法確認の訴えが提起できる場合においては、申請
 を認める処分を求める申請型義務付け訴訟を提起する際には、不作為の
 違法確認の訴えを併合提起する必要がある。条文を列記して、説明する。
 37条の3第1項が規定する義務付けの訴えの要件に関して、37条の
 3第1項柱書の言う3条6項2号に掲げる場合には、不作為型と拒否処
 分型がある。そのうち、37条の3第1項第1号は、不作為型に関する
 規定であって、この不作為型の義務付け訴訟を提起するときは、37条
 の3第3項1号が規定するように、当該処分に係る不作為の違法確認の
 訴えを併合して提起しなければならない。したがって、kは正しくない。

 lについて。

  前述したjによれば、この場合、単独で違法確認訴訟の提起ができる。
 kでは、この場合、義務付け訴訟に不作為の違法確認の訴えを併合提起
 しなくてはならない。したがって、lにおいては、併合提起を要する場
 合もあるので、「不作為違法確認訴訟または義務付け訴訟のいずれかを
 選択して提起することができる」としている点が正しくない。

 
  Ж 前述したのは、不作為型申請型義務付け訴訟を提起する場合であっ
  たが、ここで、これと対比すべきであるのは、一つには、拒否処分型
    申請型義務付け訴訟であり、さらには、これらの申請型義務付け訴訟
    に対する非申請型義務付け訴訟である。
   以下において、これらの義務付け訴訟に関して、条文の適用関係を
  明らかにしておきたい。

  (1)拒否処分型申請型義務付け訴訟

    再説すると、37条の3第1項が規定する義務付けの訴えの要件
   に関して、37条の3第1項柱書の言う3条6項2号に掲げる場合
   には、不作為型と拒否処分型がある。そのうち、不作為型について
   は前述したとおりであるが、拒否処分型に関する規定は、37条の
    3第1項第2号であり、この申請型の義務付け訴訟を提起するとき
   は、37条の3第3項2号が規定するように、当該処分に係る取消
   訴訟または無効等確認の訴えを併合して提起しなければならないの
   である。

  (2)非申請型義務付け訴訟

    37条の2第1項がいう3条6項1号に掲げる場合とは、非申請
   型に関する規定であって、この非申請型の義務付け訴訟を提起する
   ときは、37条の2第1項、3項が規定するように厳格な訴訟要件
   が必要とされるのである。
        具体的には、申請を前提としない規制権限の不行使について言及
   した前記e〜gの場合が、ここで述べた場合に該当するが、そもそ
      も不作為の違法確認訴訟の対象は申請を前提としない規制権限の不
   行使に及ばないのであるから、非申請型義務付け訴訟では、申請型
   義務付け訴訟のように、義務付け訴訟に不作為の違法確認の訴えを
   併合提起するということは、想定されない。しかし、非申請型義務
    付け訴訟では、前述したとおり、厳格な訴訟要件が必要とされるて
   いるのである。
  
  mについて。

    37条の5によれば、仮の義務付けは、義務付けの訴えの提起が
   あった場合にのみ申立てにより行われる決定である。いわば、仮の
   義務付けは、義務付けの訴えと一体である。そのような行訴法の構
   造からすれば、不作為の違法確認の訴えの提起があった場合におい
   て、仮の義務付けを申し立てることができるということは、あり得
   ない。また、この際、次の点にも注意をしておきたい。すなわち、
   仮の義務付けの要件は、「償うことのできない損害を避けるため」
   であり、本肢の記述にある「重大な損害を避けるため」ではない。
    したがって、mは正しくない。

          =次回に続く=


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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            ★ オリジナル問題《第72回》★

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                          PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  民法/「相続させる」旨の遺言と代襲相続ー遺贈と
        の対比を通じて  


  【目次】   解答・解説


    問題は、メルマガ217号に掲載してあります。

      こちらをクリック
            ↓ ↓  
 http://archives.mag2.com/0000279296/20150924133000000.html


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 ■  解答・解説
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 ○ 序説
 
   本件テーマは、従来から学説・判例の対立があったところ、最高裁所
 が平成23年2月22日判決において、その判断を示した。重要度の高
 い当該判決に関しては、本試験においても、出題の可能性は極めて高い。
 そこで、今回、本件論点に焦点を絞り、私がオリジナル問題を作成した
 ので、以下のとおり、解答・解説をおこなう。

 ◎ 各肢の検討

 △  肢1・2について。

  これらの肢は、いずれも遺贈に関するものであって、「相続させる」
 旨の遺言と代襲相続という本件論点とは直接に関係しないが、遺贈との
 対比を通じてという副題に添うものである。

  まず、遺贈とは、遺言による財産の無償贈与である。この場合、受遺
 者は、遺言が効力を生じた時、つまり遺言者が死亡した時に生存してい
 なければならない(同時存在の原則)。遺言者の死亡以前に受遺者が死
 亡した場合には(32条の2の同死の場合を含む)、受遺者たる地位の
 承継(一種の代襲受遺)は認められないから、結局、遺贈はその効力を
 生じない(994条1項)。

    以上の記述によれば、遺言者Aの死亡以前に受遺者Cが死亡した場合
  には、結局、遺贈はその効力を生じないので、Cの子Dの承継は認めら
  れない(994条1項)。換言すれば、Dには、一種の代襲受遺は認め
  られないのである。
      ↓
 
 Ψ したがって、肢1は正しくない。

    遺贈がその効力を生じないとされる場合であっても、遺言中に特に受遺
 者の相続人に承継を認める旨を表示してあれば、それに従う(995条た
 だし書)。
      ↓
 
 Ψ 肢2は、当該補充遺贈に該当するので、受遺者Cの相続人Dの承継
  が認められる。したがって、これに反する記述の肢2は正しくない。

  
 ▽  肢3・4・5について。

    これらの肢では、前述した遺贈と異なり、「相続させる」旨の遺言に
 が主題となっている。この「相続させる」旨の遺言については、遺贈の
 ように民法に明文上の規定はない。しかし、判例では承認されていて、
 遺産分割の方法(民法908条))を指定した遺言であり、遺言者が
 (被相続人)の死亡によって、直ちに相続の承継の効果が生じると考え
 られている(最判平成3年4月19日民集45−4−477参照)。

  そこで問題になるのは、遺言以外の法定相続の場合には、被相続人よ
 り先に、相続人となるべき子供が死亡したときは、その子(被相続人の
 孫)が相続人になるといういわゆる代襲相続が認められている(887
 条2項)のに対して、「相続させる」旨の遺言の場合でも、代襲相続が
 認められるかどうか、ということである。この点については、学説・判
 例の対立があったが、冒頭に掲げた平成23年2月22日最高裁判決は、
 「相続させる」旨の遺言の場合においても、遺贈の場合に、いわゆる代
  襲受遺が認められないのと同様に、特段の事情のない限り、遺言の効力
  は失われて、代襲相続は認められない旨判示した。
    それでは、ここで、平成23年2月22日最高裁判決(民集65−2
 −699)の判決要旨を以下に掲げておく。

 「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとさ
 れた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続さ
 せる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当
 時の事情および遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が当該推定
 相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたと
 みるべき特段の事情のない限り、(遺言の当該条項は)その効力を生じ
 ない。
 
    以上の記述によれば、遺言者Aの死亡以前に推定相続人Cが死亡した
 場合には、結局、遺言はその効力を生じないので、Cの子Dの承継は認
 められない。換言すれば、Dには887条2項の代襲相続は認められな
 いのである。結局のところ、法定相続に適用される887条2項は、
 「相続させる」旨の遺言には適用されないことになるのであろう。
      ↓
  
  Ψ したがって、肢3は正しくない。
 
  前述した判決要旨によれば、「遺言者が当該推定相続人の代襲者・・
  に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情」があ
 れば、遺言の効力は生じるのであって、肢4の記述である「遺言中にA
 が死亡する以前にCが死亡したときはCの子であるDに相続させる旨表
 示がしているとき」が、判決の言う「特段の事情」であることは明らか
 であるので、「Aが死亡する以前にCが死亡したときにはDがAの遺産
 の全部を相続する」という肢4の記述は正しい。
   
      ↓

  Ψ 肢4は正しい。 

  肢5の記述は、「相続させる」旨の遺言はがその効力を生じないとき
 に該当するので、Aの死亡によって相続が開始し、Aの法定相続人であ
 るBは、Aの代襲相続人であるDと同等の相続分に相当する持分を主張
 できる(887条1項・2項 900条4号 901条1項参照 なお、
 本問では、Aの配偶者の存在は、不明であるが、配偶者がいれば、B・
 Dの相続分が異なることに注意。890条・900条1号)。
       
           ↓
 
  Ψ  これに反する肢5の記述は、正しくない。

  
  § 肢3・4・5を比較すると、3と5が、判例の言う「特段の事情」
   がなく、原則どおり、相続させる旨の遺言が効力を生じない場合で
   あるのに対して、4は、判例の言う「特段の事情」がある場合に相
   当する。
  

=================================

   以上のとおり、正解は肢4である。

=================================

 ●  遺贈と「相続させる」旨の遺言との関係ー付言

  ここでは、本問の事例にしたがい、A・B・C・Dの相続関係を前提
 に説明する。

(1)  995条によれば、遺贈が効力を生じないときは、受遺者が受
   けるべきであったものは、相続人に帰属することになるので、C
   が受けるべきであったものは、Aの相続人であるBとD(あるい
   はAの配偶者)に帰属することになる。「相続させる」旨の遺言
   が、効力を生じないときについては、このような明文の規定はな
   いが、遺贈と同様の結果になることは、肢5の解説において明ら
   かである。
(2) 遺贈の場合、遺言者の相続人も受遺者になることができるのは、
   肢1・2によっても、明らかであるが、相続人以外の第三者もま
   た受遺者になることができるのは当然である。したがって、肢2
   において、Aが自分が死亡する以前にCが死亡したときには、相
   続人以外の第三者に遺贈するという補充遺贈をすることも可能で
   あろう。しかし、「相続させる」旨の遺言が、効力を生じないと
   きに第三者に相続させるということはあり得ない。相続人にしか
   相続させることができないのは、自明であろう。肢4を例にとる
   と、代襲相続人であるDではなく、Bに相続させる旨の遺言を行
   うこともできるであろう。さきに掲げた判例が「遺言者が当該推
           〜〜〜〜〜
      定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有し
   ていたとみるべき特段の事情」と述べているのは、その間の事情
   を示している。


 ★ 参考書籍 
  
   民法 3 ・ 我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房

  
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
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          ★ オリジナル問題《第71回 》★

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  【テーマ】  行政事件訴訟法/本案訴訟と仮の救済の関係  


  【目次】   解答・解説

              
   問題は、メルマガ215号に掲載してあります。

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 http://archive.mag2.com/0000279296/20150902130000000.html

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 ■  解答・解説
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  ▲  総説

 (ア)免職処分は行政処分であるから、当該処分が違法であると考えら
   れる場合、取消訴訟の排他性の原則により、取消訴訟を提起する必
   要があるし、仮の救済を得るためには、執行停止を求めなければな
   らない(行訴法3条2項・25条参照)。
  (イ) 免職処分が無効であると考えられる場合、取消訴訟の排他性は
    働かず、本案訴訟としては、無効確認訴訟により免職処分の無効
     の確認を裁判所に求める方法(行訴法3条4項)と、当事者訴訟
    を提起し、公務員としての身分の確認を求める方法がある。Ψ

   Ψ 公務員の身分は公法上の地位であるから、この公務員の身分
    の確認訴訟は、当事者訴訟に当たる(行訴法4条後段)。
  
    (ウ) 問題は、免職処分が無効であると考えられる場合における仮の
     救済である。無効確認訴訟の場合は、執行停止制度を利用できる
    (行訴法38条3項参照)。これに対し、当事者訴訟の場合は、
     仮処分を申し立てること以外に方法はないが、しかし、行政事件
     訴訟法44条により認められない可能性が多分にある。
   
    (以上は、後掲書 読本を参照した) 

  ▼ 各肢の検討

     △ 1について

    免職処分が違法であると考えられる場合、本案訴訟を取消訴訟と
   するのは、妥当である。しかし、仮の救済を得るためには、執行停
   止を求めなければならない(行訴法3条2項・25条参照)。
   《▲総説(ア)参照》
    
    本肢は、妥当でない。

   ▽ 2について

    免職処分が違法であると考えられる場合には、取消訴訟の排他性の
   原則により、取消訴訟を提起する必要がある。本案訴訟を当事者訴訟
   とすることはできない。
   《▲総説(ア)参照》
    
    本肢は、妥当でない。
  
   △ 3について

    免職処分が無効であると考えられる場合、本案訴訟を無効確認訴訟
   とする場合は、執行停止制度を利用できる(行訴法38条3項参照)
   のであって、仮処分を申請することはできない。
   《▲総説(イ)(ウ)参照》
    
    本肢は、妥当でない
   
   ▽ 4について
       
      免職処分が無効であると考えられる場合、本案訴訟を無効確認訴訟
   とする場合は、執行停止制度を利用できる(肢3参照)。

    本肢は、妥当でない。
   
   △ 5について

    本肢のポイントは、二つある。その一つは、免職処分が無効である
   と考えられる場合、本案訴訟として、当事者訴訟を提起しできるとい
   う点である。この点については、以下の論理構成ができる。すなわち、
   (a) 免職処分が無効であると考えられる場合、取消訴訟の排他性
    は働かない。(b)公務員の身分は公法上の地位であるから、この
    公務員の身分の確認訴訟は、当事者訴訟に当たる(行訴法4条後段)。
         二つ目のポイントは、本案訴訟として、当事者訴訟を提起できる以
    上、本件では、公務員としての地位の保全を求める仮処分が認めらべ
       きであるが、行政処分が関係する本件では、行訴法44条により当該
       仮処分が認められない可能性がある。

         以上の記述に従えば、本肢は、妥当である。

    Ψ 参考事項
     前述したところによると、「本案訴訟として、当事者訴訟を提起
    できる以上、本件では、公務員としての地位の保全を求める仮処分
    が認めらべきであるが、行政処分が関係する本件では、行訴法44
    条により当該仮処分が認められない可能性がある」ということにな
    るが、これに関連する部分を、後掲書読本から抜粋してみよう。
    
         「 だが、これでは、行政処分が関係する事件で当事者訴訟を選択
      すると、仮の救済がなくなってしまうという不合理がある。こ
      の不合理を取り除き、仮の救済を可能にするため、行政事件訴
      訟法44条について、行政処分が無効であれば、仮処分により
      妨げられる公権力の行使はないのであるから、仮処分が許され
      るという解釈が考えられる。しかし、実際の訴訟では、裁判所
      は、行政処分が無効であるかどうかを審査せずに44条を適用
      して仮処分申請を却下してしまう可能性もある。そうすると、
      ........................................................
      仮の救済を求めるのであれば無効確認訴訟を選択できると行政
            ........................................................
            事件訴訟法36条を解釈できるのが残された道ということにな
            ......
            ろうか。」 

          なお、傍点は、私が付したが、この部分を敷衍すれば、36条
    後段における、処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に
    関する訴えすなわち当事者訴訟によっては、仮の救済という目的
    を達することできないため、無効確認訴訟を提起し、仮の救済を
    求めるため執行停止を利用するのが残された道であるというのだ
    ろう。
       
   ================================

     以上の記述によれば、肢5が妥当であるので、5が正解である。   
    
   ================================

    ★ 参考図書 
 
        行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著 

       ・有斐閣発行
 
 
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 【発行者】 司法書士 藤本 昌一
 
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            ★ オリジナル問題《第70回 》★

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  【テーマ】 行政事件における仮処分の制限 


  【目次】   解答・解説


    問題は、メルマガ212号に掲載してあります。

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 ■  解答・解説
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 ▲ 前記メルマガ212号における ● 要点 において、本件オリジ
  ナル問題に対する「解答・解説」に相応する記述をおこなっているが、
  以下においては、再説を承知のうえで、以下とおり記すことにする。  
 
 △ 各肢の検討 

 ◎ 肢1について

   行訴法4条後段の実質的当事者訴訟と民事訴訟の関係は、本肢の
  記述のとおりである。
   詳述すると、以下のとおりである。
   
   民事訴訟法は、本来、一般市民間における対等当事者としての法律
  関係に関する訴訟であるが、行政主体と一般市民との間における対等
   当事者としての法律関係に関しても適用されるのであって、そのうち、
    公法上の法律関係に関する訴訟が実質的当事者訴訟であり、私法上の
    法律関係に関する訴訟が民事訴訟である。

   このような関係ある「実質的当事者訴訟と民事訴訟とは兄弟のよう
  な関係にある。行政事件訴訟法上の実質的当事者訴訟の取扱いも、民
  事訴訟とほとんど変わらない。」(後掲書・読本)

  Ψ 本肢は、過去問平成23年問題18・肢1から引用したものである。

  ◎ 肢2について

     本肢は正しい。判例(最大判・平20・6・4民集62−6ー136
  7)は、本肢の場合について、公法上の法律関係に関する確認の訴えで
  あるとして、4条後段の実質的当事者訴訟に該当するとした。
  
    Ψ 本肢もまた、過去問平成23年問題18・肢3からの引用である。

  Ψ 当該判例(国籍法違憲訴訟上告審)において、「日本国民である父
   と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子は、国
   籍法に基づく届出により日本国籍を取得している」旨認められたので
   あるが、過去問平成24年問題6では、当該判決文を素材として、憲
   法の問題としての出題がなされていることに注意せよ。
  
 ◎ 肢3・4について
  
  (1) 仮処分が適用されるのは、民事訴訟法または実質的当事者訴訟
    (行訴法4条後段)である。
  
   Ψ 前記 ◎ 肢1 の解説で述べた、「実質的当事者訴訟と民事訴
    訟とは兄弟のような関係にある。行政事件訴訟法上の実質的当事者
    訴訟の取扱いも、民事訴訟とほとんど変わらない。」という観点か
    ら、民事訴訟に適用される仮処分が実質的当事者訴訟にも適用され
     るという根本を把握しておくことは、肝要だろう。

  (2)行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(行訴法3条1項
    参照)については、行政事件訴訟法の定める執行停止、仮の義務付
    けおよび仮の差止を行うことができるのに対して、民事訴訟または
    実質的当事者訴訟においては仮処分を行うことができるのである。

  (3)本肢の二つは、仮処分のできる実質的当事者訴訟に焦点が当てら
    れているが、その場合、仮処分をすることができるかどうかの判断
     基準は、原告の請求における、行政庁の処分等との関係に求められ
    のであって、この基準に従った肢3も肢4も正しい。
  
 ◎ 肢5について

   本肢前段における、実質的当事者訴訟では、仮処分が適用されること
  があるという記述は、前記◎ 肢3・4の解説に照らして、正しいが、
  後段における、抗告訴訟においても、仮処分が適用されることがあると
  いう記述は誤っている。仮処分の代償として、抗告訴訟について執行停
  止(行訴法25条2項以下)、仮の義務付け、仮の差止め(同法37条
  の5)という仮の救済制度が設けられているのであって、抗告訴訟に仮
  処分が適用されることはない。本肢は誤りである。
 
 ====================================================================

   本問では、肢5が誤っているので、正解は5である。
 
 ====================================================================

   ★ 参考図書 
 
     行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著 

    ・有斐閣発行

 
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          ★ オリジナル問題《第69回》 ★

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  【テーマ】 会社法/自己株式等


  【目次】   解答・解説

 
    問題は、メルマガ210号に掲載してあります。

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 ■  解答・解説
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 1 解答

     問1(3) ・ 問2 (5) ・ 問3 (5)

     問4 (2) ・ 問5  (4)  ・ 問6(1)
 
   
  2 解説

  問題1〜3については、前回68回当サイトにおいて、解説をした。
  
   問題4〜6については、今回は、以下にその要点を示すことにする。

 =======================================================
     
  今回の解説全般については、メルマガ209号を参照のこと。
                   
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 =======================================================             


  ▼ 問題 4    

    (1)  本問のポイント

     以下の知識を明確にすることが肝要である。
 
    その1・ 株式会社はその保有する自己株式について、剰余金の
    配当を受けることができないが、その保有する親会社株式につい
    て、剰余金の配当を受けることができる。
      その2・ 株式会社は、自己株式についても、子会社として、そ
        の有する親会社株式についても議決権を有しない。

     以上の知識に基づき、ア・イとウ・エを対比することにより、
        ア・ウが妥当でないことが分かる。肢2が正解である。
        
   (2)  各肢の検討
     
     ◎ アについて。
      自己株式については、株主の権利は、凍結状態にあるので、株
     式会社は、その保有する自己株式について、剰余金の配当を受け
     ることはできない。453条の括弧書きが示すとおりである。
           本肢は妥当でない。
     
      ◎  イについて。
      子会社が有する親会社株式については、自己株式のように、配
     当を受ける権利を制限する規定がないので、子会社は、その有す
     る親会社株式について、配当をを受けることができる。しかし、
     子会社はいつまでも親会社株式を保有できるのではなく、135
     条3項により一時的に保有できるだけであるが、この間において
     親会社の株式の配当を受ける権利が発生すれば、子会社はこれを
     受けることができる。
      本肢は妥当である。

     ◎  ウについて。
      308条1項括弧書きによれば、子会社は、一時的に保有する
     親会社株式について、原則として議決権を有しない。
      本肢は妥当でない。
       
     ◎  エについて。
      自己株式の株主の権利は、凍結状態にあるので、株式会社は、
         自己株式について、議決権を有しない。308条2項に規定が
     ある。
      本肢は妥当である。
  
     ◎  オについて。
       178条1項の規定によれば、自己株式を消却することでき
      るとなっている。消却できる自己株式の取得原因は、155条
      各号のいずれでもよいので、同条11号に該当する本肢の場合
      であっても、消却できる。
        本肢は妥当である。

             Ψ 消却とは、特定の株式を消滅させることであって、他の者
               に有償取得させる処分とは異なる概念であることに注意せよ。
       Ψ  自己株式の消却の決定は、取締役会設置会社にあっては、
        取締役会決議によることにも注意せよ(178条2項)。

           
 △ 問題 5

   各肢の検討 

   ◎1について。
 
    ▼ 4 肢オ において、説明したとおり、155条11号のほか
     各号で定める場合を除き、自己株式を取得できないが、自己株式
     の質受は取得にあたらないので、株式会社は質権の目的として
     自己の株式を受けることができる。
      したがって、本肢は、後半が妥当でない。     
   
   ◎2について。
    新株発行では資本金の額が増加するが(445条1項)、自己株式
   の処分では資本金の額は増加しない。
     したがって、本肢は、妥当でない。
 
   Ψ 会社がその保有する自己株式を処分する場合は、新株発行と同じ
    規整に服するが(199条)が、同じ規整に服しても、新株発行で
    は資本金の額が増加するが、自己株式の処分では資本金の額は増加
    しないということに注意すべきである。
 
   ◎3について。
    135条3項によれば、子会社は、親会社株式の処分を義務づけら
   れているが、この場合、子会社は、親会社株式をその親会社に有償で
   取得させることはできるかどうかということが本肢で問われている。
    この場合は、親会社にとっては、自己株式の取得になるが、163
   条の適用になり、取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議で取
   得できることになる。
    したがって、本肢は、妥当でない。

   ◎4について。
     135条1項によれば、子会社は、親会社株式の取得が禁止され
    ているのみであるから、子会社が親会社株式を質受けすることは許
    される。
      したがって、本肢は妥当であるので、本肢が正解である。
    
   ◎5について。
     自己株式の有償取得が行われると、株主に対する出資の払戻とな
    って、実質的には、資本金の額の減少に等しくなるが、実際の資本
    金の額の減少の手続については、447条以下の株主総会の決議に
    よることになる。
        したがって、本肢は妥当でない。

  ▲ 問題 6 

   各肢の検討 

   ◎1について。
        前記△ 問題 5  ◎3に関連する。
     子会社から自己株式を取得する場合は、特定株主からの取得のた
    めの株主総会の特別決議(309条2項2号)の例外として、取締
    役会設置会社にあっては、取締役会の決議で取得できることになる
   (163条)。したがって、本肢は、誤りであるので、本肢が正解で
    ある。
    
    Ψ 非取締役会設置会社では株主総会決議が必要なことに注意。

   ◎2について。
      自己株式の取得については、156条1項の株主総会決議に基づ
     き(なお、155条3号)、一般的に自己株式を取得できる。これ
     に対して、子会社による親会社の株式取得においては、このような
       一般的に親会社株式を取得できる株主総会決議に基づくものは、認
     められていない(135条2項)。
      したがって、本肢は、正しい。
    
   ◎3について。
          本肢は、メルマガ210号 ・▲ 問題 2 肢イ と同趣旨の肢
    であるので、その解説については、前回68回サイト欄の記載をその
    まま以下のとおり引用する。

     委員会設置会は、459条1項柱書の要件に該当するので、同条1
    項1号の規定する156第1項各号に関する事項を取締役会で定める
    ことができる旨を定款で定めることができる。なお、459条 1項
    1号によれば、「160条第1項による決定をする場合以外」となっ
    ているが、その趣旨は、特定の株主からの取得は株主総会の特別決議
    を要するので、これを除くというものである。本肢では、「すべての
    株主に申込機会を与えて行うとき」として いるのは、その点を顧慮
    したものである。その点も含めて、本肢は、 以上の説明に沿うもの
    である。本肢は、正しい。
  
   ◎4について。
          本肢は、前記肢3と関連する。
     本肢もまた、委員会設置会社の場合であるから、459条が適用さ
    れるのであり、同条1項1号に該当するため、株主総会の承認に代え
    て取締役会で自己株式の取得を決定することができる旨の定款の定め
    を置くことができる。すなわち、市場取引等により自己株式を取得す
    る場合もまた、肢3の場合と同様、160条1項が規定する特定の株
    主からの取得に該当しないので、株主総会の特別決議を要しないので
    ある。本肢も正しい。

   ◎5について。
     本肢は、その記述に不備な点がある。市場取引等により自己株式を
    取得する場合に限定する必要がある。そのように訂正することを前提
    にすると、165条2項が適用されるので、本肢の記述は、正しいこ
    とになる。したがって、本肢は、正しい。

    Ψ 市場取引等による株式の取得について整理すると、第1に、株主
     総会の普通決議(165条1項・156条1項・309条1項・3
     09条2項2号の特別決議に該当しない)、第2に、459条1項
     が適用される場合には、取締役会決議、第3に、第2の459条1
     項の特例が適用されない場合でも、本肢における165条2項の適
     用により、取締役会決議。上場会社における自己株式の取得は、こ
     の第3の手続によって、行われる場合が多い。
    Ψ ここで、他の自己株式取得の手続についても整理しておくと、
    (a)すべての株主に申込機会を与えて行う取得については、第1に
     株主総会の普通決議(156条1項・309条1項・309条2項
     2号の特別決議に該当しない)、第2に、459条1項の特例によ
     る取締役会決議。(b)特定の株主からの取得については、株主総
     会の特別決議(309条2項2項)(c)子会社からの取得につい
     ては、(b)の例外として、取締役会決議(163条)《本問◎1
     で言及した》
 
  ★  参考文献

    会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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           ★ オリジナル問題《第68回 》★

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  【テーマ】 会社法/自己株式等


  【目次】   解答・解説

    
    問題は、メルマガ210号に掲載してあります。

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            ↓ ↓


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 ■  解答・解説
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 1 解答

     問1(3) ・ 問2 (5) ・ 問3 (5)

     問4 (2) ・ 問5  (4)  ・ 問6(1)
 
   
  2 解説

 ◎  自己株式等に関する本問6題は、メルマガ202号から209号
  (除く・208号)余禄欄を基にして出題されているので、みなさま
   も、適宜、該当箇所を参照するように願いたい。
  各号でとりあげた論点とクリック先は、以下のとおりである。
 
 202号 自己株式の定義/その沿革/金庫株の解禁   
   ↓

 
 203号  相続により譲渡制限株式を取得した者に対する当該株式に
     ついて、当該会社の売渡し請求/自己株式の取得/売渡し請
     求の手続・株主総会の特別決議等
         合併後消滅する会社から当該株式会社の株式を承継する場 
     合における、当該株式会社による自己株式の取得/合併後消
          滅する会社から親会社株式を子会社が承継する場合における、
      子会社による親会社株式の取得/相当の時期にその有する自
     己株式または親会社株式の処分の義務
   ↓


 204号 子会社による親会社株式の取得に対する制限/親会社・子
     会社の定義/子会社による親会社株式取得と資本充実の関
     係
   ↓


 205号  株主総会決議等に基づく自己株式の取得・条文上、「株主
     との合意に基づく取得・その取得手続に関する4つの方法=
     その細分化したものをオリジナル問題として出題
   ↓


 206号 自己株式の取得と財源規制
   ↓  

  
 207号  自己株式の保有/子会社による親会社株式の処分
   ↓

  
  209号  残余の自己株式に関する論点=それぞれについて、オリジ
     ナル問題として出題
   ↓



 ●  各問題の検討にあたっては、以下にその要点を示すことにする。

 
 △ 問題 1

  妥当でない肢は、肢イと肢エであり、正解は3であるが、以下の
 とおり、いずれも条文問題である。
  
    肢イについては、135条3項によれば、「遅滞なく」ではなく、
 「相当の時期に」子会社は、その有する親会社株式を処分しなければ
 ならないとなっているので、本肢は妥当でない。
   肢エについては、155条柱書・同条11号によれば、合併後消
  滅する会社から当該株式会社の株式を承継する場合、当該株式会社
   は、自己株式を取得することができるとしているので、本肢は、こ
  の点については、妥当であるが、相当の時期にその有する自己株式
   を処分しなければならないという点については、会社法上、そのよ
  うな規定はない。したがって、本肢もまた、妥当でない。なお、
  「金庫株の解禁 」というフレーズが念頭を掠めれば、本肢は×との
   解答に直結する!

  その他の肢については、以下のとおりである。
  
  肢アについて。
   309条2項2号・160条1項・156条1項を参照すれば、
  本肢の場合において、株主総会の特別決議を要することは明らか
  である。ただし、以下の2点に注意せよ。すべての株主に申込機
  会を与えて行う自己株式の取得については、株主総会決議は普通
  決議でよい(156条1項柱書・同条1項1号・309条1項)。
  次に、特定の株主からの取得であっても、子会社からの取得につ
  いては、前記株主総会の特別決議の例外として、取締役会設置会
  社にあっては、取締役会決議だけで取得できる(163条)。
   以上、本肢は妥当である。
  
  肢ウについて。
     134条柱書・同条4号・174条〜177条。なお、155条
  柱書・同条6号参照。詳細は、メルマガ203号を参照。
   以上、本肢は妥当である。      
  
  肢オについて。
   本肢の論点は、合併後消滅する会社から当該株式会社の株式を
  承継する場合における自己株式の取得に関して、財源規制が及ぶ
  かということである。
     155条柱書・同条11号では、合併後消滅する会社からの株式
  の承継が規定されているが、これは、461条柱書の規定する財源
  規制が及ぶ各号のなかには、含まれていない。したがって、本肢の
  当該会社は、自己株式を取得できる。詳細は、メルマガ206号を
  参照。以上、本肢は妥当である。
  
 ▲ 問題 2

    誤っている肢は、肢エと肢オであり、正解は5である。以下各肢
 について検討する。

  肢アについて。
     前記 △ 問題1肢ア解説において、「すべての株主に申込機会
  を与えて行う自己株式の取得については、株主総会決議は普通決議
   でよい(156条1項柱書・同条1項1号・309条1項)」旨述
  べた。本肢は正しい。
 
   肢イについて
     委員会設置会は、459条1項柱書の要件に該当するので、同条
  1項1号の規定する156第1項各号に関する事項を取締役会で定
  めることができる旨を定款で定めることができる。なお、459条
  1項1号によれば、「160条第1項による決定をする場合以外」
  となっているが、その趣旨は、特定の株主からの取得は株主総会の
   特別決議を要するので、これを除くというものである。
     本肢では、「すべての株主に申込機会を与えて行うとき」として
  いるのは、その点を顧慮したものである。その点も含めて、本肢は、
  以上の説明に沿うものである。本肢は、正しい。。詳細は、メルマ
  ガ205号を参照。

   肢ウについて

   309条2項2号・160条1項・156条1項を参照すれば、
  本肢の場合において、株主総会の特別決議を要することは明らか
  である。ただし、特定の株主からの取得であっても、子会社から
  の取得については、前記株主総会の特別決議の例外として、取締
  役会設置会社にあっては、取締役会決議だけで取得できる(16
  3条)。
   以上の説明に従えば、本肢は妥当である

  肢エについて  

   156条2項の括弧書の中の文言によれば、当該株式会社の株式
  等を除くとなっているので、引換えに交付する財産のなかには、当
  該株式会社の株式等は含まれない。以上の記述に反する本肢は妥当
  でない。
  Ψ 151条1項柱書によれば、株主が受けることができる金銭等
   とは、(金銭その他の財産をいう。以下同じ。)となっているの
   で、本来は、156条2項にいう株式を取得するのと引換えに交
   付する金銭等のなかには、当該株式会社の株式等は含まれるが、
   あえてその括弧書によって、自己株式を排除したものと思われる。  
    以上に関しては、メルマガ205号参照。
 
  肢オについて

   会社がその有する自己株式を処分しなければならないという点につ
  いては、会社法上、そのような規定はない。したがって、これに反す
  る本肢は、いうまでもなく、誤りである。


 ▽ 問題 3 

   本問は、各肢に対して、461条1項柱書の財源規制が及ぶかとい
 うことが論点になる。
  この点については、メルマガ206号を参照されたい。

  以下、当該メルマガ206号の記述に沿って、各肢を検討すると、
 
 肢1の「子会社から自己株式を取得するに際して」は、「及ぶ」ので、
   「当該会社は、自己株式の取得はできない」とする本肢は、正しい。
 肢2の「会社が、市場取引等により自己株式を取得するに際して」は、
  「及ぶ」ので、「当該会社は、自己株式の取得はできない」とする
   本肢は、正しい。
  肢3の「すべての株主に申込機会を与えてこれを行うに際して」は、
   「及ばない」ので、「当該会社は、自己株式を取得できる」とす
   る本肢は、正しい。
  肢4の「特定株主からの取得しようとするとき」は、「及ばない」ので、
   「当該会社は、自己株式を取得できる」とする本肢は、正しい。
 肢5の「会社が相続による譲渡制限株式の取得者に対し、当該株式を当
   該会に売り渡すこことを請求する場合において」は、「及ぶ」ので、
   「当該会社は、自己株式の取得できる」とする本肢は、誤りである。

  ================================
   
  以上の記述によれば、肢5が誤りであって、肢5が正解である。

 =================================

   ◎ 伝達

   ▼ 問題 4 以下の解説は、追って、次回に行うことにしたい。


  ★  参考文献

    会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】 http://examination-support.livedoor.biz/
        
 【E-mail】 fujimoto_office1977@yahoo.co.jp 
 
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            ★ オリジナル問題《第67回》★
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                       PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 会社法/株式の消却・併合


  【目次】   解答・解説

    
    問題は、メルマガ197号に掲載してあります。

  こちらをクリック
         ↓
http://archive.mag2.com/0000279296/20150115175000000.html


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 ■  解答・解説
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 ▲  序説
   
  メルマガ196号余禄欄において、対談形式を通じて、株式の併合
 ・分割等に関する平成26年度会社法問題38を検討したが、当該オ
 リジナル問題は、これに関連するものとして、主宰者である私が作成
 したものである。具体的に言えば、前記の問題38では、対象になっ
 ていなかった「株式の消却」を中心にして、問題38で対象にされた
 株式の併合との対比も併せて、このオリジナルの問題文を作成したの
 である。思考するに、本問題において提示した論点は、重要であると
 同時に、「株式の消却」は、将来の本試験に出題される蓋然性は高い
 といえる。

  それでは、メルマガ196号における記述との重複を恐れず、今後、
 当該解答・解説を進めてゆくことにする。

==================================================================   
   
    メルマガ196号はこちらをクリック
          ↓


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 ※ 今一度、 メルマガ196号を通読されてから、本問題に臨まれる
  方がよいと思料します。

  
 ▼ 総説・要点

   株式の消却・併合のうち、とくに株式の消却については、平成17
  年改正前商法では、その規律に変遷があって、複雑であったが、会社
  法では、(2)〜(4)のとおり、整理されたので、この際その概念
  を把握しておくことが大切である。

 (1)発行済株式総数が減少する場合としては、「株式の消却と併合」
   があるのに対し、発行済株式総数が増加する場合しては、株式の
   「分割と無償割当て」がある。本問において、問われているのは、
    前者の「株式の消却と併合」である。
 (2)会社法のもとで株式消却の手続としては、取締役会決議(取締
   役会設置会社の場合)で消却する自己株式の数を定めるだけでよ
   い。
 (3)会社法では、会社以外の株式の株主の保有する株式については、
   いったん自己株式を取得してから消却するという方法を採用して
   いる。
 (4)会社法は、株式の消却があった場合に発行可能株式総数は当然
   に減少しないとの考えに立つ。
 
 △ 各肢の解説

  ○ 肢1について

   株式の消却とは、会社存続中に特定の株式を絶対的に消滅させる
  ことをいい、株式の併合とは、複数の株式を合わせて、それよりも
  少数の株式とすることをいう。したがって、株式の消却と併合いず
    れの場合であっても、発行済株式総数は減少するので、肢1の記述
  は妥当である。=前記要点(1)
   
   ● 肢2について

     株式の併合は、株主の利益に重大な影響を与えるので、そのつど、
  株主総会の特別決議によってなしうる(180条2項なお、同条1
  項・3項も参照)。したがって、本肢は妥当である。
 
   ◎ 肢3について

   会社法178条1項・2項の規定により、本肢は妥当である。
   =要点(2)
   
   ※  会社法は、保有する自己株式を消却する場合だけを株式消
    却と定義し、その手続においては、本肢のとおり、取締役会
     決議のみでよいとしたのである。しかし、要点(3)のとお
    一般的に自己株式を取得する場合には、156条に基づき、
    株主総会の決議を要することとして、株式の消却に関する規
    制は、すべて自己株式の規制に吸収されているのである(1
    55条1項3号)。

   ○ 肢4について

   肢3で述べたとおり、会社法では、会社以外株主の保有する株
    式については、いったん自己株式を取得してから消却するという
    ふうに概念が整理されたのであるから、株式消却を対象株式のす
    べての株主に平等に行う場合は、株式併合として行うことになる。
  したがって、本肢は妥当である=要点(3)

  ◎ 肢5について

   会社法のもとでは、自己株式が「出し入れ」自由となり、当該
  自己株式が、消却によって消滅しても、それにより発行済株式総
   数は変動しないため、発行可能株式総数も減少しない。したがっ
  て本肢は妥当でない=要点(4)

  ※ 後掲 神田会社法によると、「従来の登記実務は、消却によ
   って授権株式数(注・発行可能株式総数)は当然に減少すると
   取り扱ってきた」とあるが、この場合でも当然に減少するもの
   としているのであって、本肢のように、「あらかじめ株主総会
   の決議により発行可能株式総数を変更しなければならない」と
   までは言っていない。いずれにせよ、本肢は妥当でない。
   
  =============================================================

   本問において、妥当でないのは、5であるから、5が正解である。

 ============================================================== 


 ▲  付 言
  
   本問と大いに関連するものとして、「自己株式」がある。次の
 機会にまた、この分野から、オリジナル問題を出題し、分析、検
 討したいと思います。

  みなさま、共に考えていきましょう。
 
 

 ★  参考文献

    会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣



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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/

 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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★ オリジナル問題解答 《第66回》★

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               PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 民法 


【目次】   問題・解説
    
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 ■  問題  多数当事者の債権および債務
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 (1) 買主の代金債務の保証人は買主の有する同時履行の抗弁権(533
     条参照)を主張できるか。

      前回  ★ オリジナル問題解答 《第65回》★  において、説明 
    を完了した。


 (2) 連帯保証人が数人あって、保証人間に連帯の特約がない場合におい
     て、債権者が保証人の一人の債務を免除したときは、他の連帯保証人
     の債務にその効果は及ぶか。
 
※ 本問は、【行政書士試験独学合格を助ける講座】第177号 におい
て、「平成23年度問題31」の検討を行った際に、関連質問として
出題したものである。

  
☆ なお、メルマガ第177号はこちら
             ↓

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 ■  解答
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   ○ 問題(2)について

   (ア) 本問の図示

本問では、以下に示すとおり、AはBから1000万円借り受け、
Aの依頼によってC及びDがこの債務について連帯保証人となった
     場合を想定する。
 
(債権者)

↓1,000万円


A    C・D
(主たる債務者)(連帯保証人)

★ 図示したところによると、C・Dの複数の保証人が同一の主たる
債務を保証しているが、その保証関係は、特殊な保証であって、こ
れを共同保証という。
 

  (イ)まず、分別の利益について、検討する。

a 共同保証の場合には、各保証人が1個の契約で保証人なった場合
はもちろん、別々の契約で保証人となった場合にも、分別の利益が
あるので、各保証人は債務額を全保証人間にそれぞれ等しい割合で
その一部を保証する(456条)。これが原則である。

b しかし、連帯保証人が数人ある本問のような場合には、各保証人
は分別の利益を有しないので、各保証人は債権者に対して全額を弁
済する義務を負うのであるが、保証人同士では負担部分だけの義務
を負うにとどまるとみるべきできであるから、その関係は連帯債務
者相互間の関係に酷似する。そこで民法も、右の保証人が自己の負
単部分以上を弁済したときに、他の保証人に対して取得する求償関
については、連帯債務者相互間の求償関係の規定を準用することに
した(465条1項)。
連帯保証人がC・Dである本問に当てはめれば、当該債権の弁済
期到来後、CがBに1,000万円支払った場合、Cは、自己の負
担部分以上を他の保証人であるDに求償することができる。そして
各連帯保証人の負担部分については、別段の定のない限り、平等で
あるというのが古い判例であるから(大審院大正8年11月13日
民録25−2005)、Cは自己の負担部分を超える500万円に
ついて、Dに対して求償できることになる。

        ★ 分別の利益がない場合として、民法は、「主たる債務が不可分
であるため」又は「各保証人が全額を弁済すべき旨の特約がある
ため」である場合を掲げているが(465条)、この点について
は、以下の2点に留意すべきである。
その1・本問の例示のように、複数の連帯保証人があって、
「各保証人が全額を弁済すべき旨の特約が」ない場合にも、判例は、
以下のとおり、分別の利益を有しないとしている。

連帯保証人は、保証人間に連帯の特約がなくても、分別の利益を
有しない(大判大6・4・28民録23−812)。
その2・保証人間に連帯の特約がある場合が、465条にいう                            「各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため」である場合
           に該当し、これを「保証連帯」ともいう。

★ 本問において、共同保証人が主たる債務者対して求償すること
については、特別の問題はないが、本問では、「Aの依頼によっ
てC及びDがこの債務について連帯保証人となった」とあるから、
459条以下の適用を受けるのであって、462条は適用されな
い。

★ 分別の利益を有する保証人の一人が、自分の保証すべき数額以
上の弁済をしたときは、他の保証人に対して求償権を取得する。
しかしこれは、本来義務のないことをしたのだから、あたかも
委託を受けないで保証人となった者の弁済と類似の関係である。
したがって、民法は、これを462条によって規律することにし
た(465条2項)。

(ウ)以上の記述したところを前提に(2)の問題の主題を探ることに
する。

a 連帯保証人が数人あって、保証人間に連帯の特約がない場合にお
ける場合であるから、判例によれば、 連帯保証人は、保証人間に
連帯の特約がなくても、分別の利益を有しないため、さきの図示に
よれば、CがBに1,000万円支払った場合、Cは自己の負担部
分を超える500万円について、Dに対して求償できることになる。

b 以上の法律関係にある場合、債権者が保証人の一人の債務を免除
したとき、他の連帯保証人の債務にその効果は及ぶかどうかが、本
問の主題である。さきの図示によれば、Bが、Cの連帯保証債務を
免除したとき、437条を準用して、Cの負担部分である500万
円について、免除の効果がDに及ぶかどうかということである。こ
れを認めれば、Dは、1,000万円の支払義務を負うのではなく、
500万円についてのみ支払義務があるにすぎないことになる。

(エ)最後に、本問の正解を導くことにする。

a 判例(最判昭和43・11・15民集22巻12号2649頁)
は、同種事案に対して、以下のとおり判示する。

複数の連帯保証人が存する場合であっても、右の保証人が連帯して
保証債務を負担する旨特約した場合(いわゆる保証連帯の場合)また
は商法511条2項に該当する場合でなければ、各保証人間に連帯債
務ないしこれに準じる法律関係は生じないと解するのが相当であるか
ら、連帯保証人の1人に対し債務の免除がされても、それは他の連帯
保証人に効果を及ぼすものではないと解するのが相当である。

b 以上の判例によれば、複数の連帯保証人が存するため、分別の利
益がない場合において、図示によれば、BがCに対して連帯保証債
務を免除しても、その効果は、Dに及ばないので、Dは、1,00
0万円の支払義務を負うことになるのである。その理由として、判
例は、D・C間において465条にいう「全額を弁済すべき旨の特
約」すなわち連帯して保証債務を負担する旨特約した場合(いわゆ
る保証連帯の場合)に該当するのでなければ、連帯債務に関する43
7条が準用されないからであるとする。

c 本試験では、民法の規定の解釈については、判例に照らして判断
することになるので、(2)の問題の解答としては、「連帯保証人
が数人あって、保証人間に連帯の特約がない場合において、債権者
が保証人の一人の債務を免除したときは、他の連帯保証人の債務に
その効果は及ばない。」ということになる。

★ 判例によれば、保証連帯の場合と同時に商法511条2項に該当す
る場合についても言及されているが、この点の説明は省略する。
(オ)付言として、以下に既述したところを要点として、列記しておく。

連帯保証人が複数ある場合の共同保証において、
a 分別の利益がないとされるのは、連帯して保証債務を負担す
る旨特約した場合(いわゆる保証連帯の場合)に限定されない
(連帯保証人が複数あるだけである場合も465条の適用がある
《前記判例》)。この場合には、共同保証人間の求償権について
は、連帯債務の442条から444条までを準用する。

b 連帯債務の437条が準用されるのは、連帯して保証債務を
負担する旨特約した場合(いわゆる保証連帯の場合)に限定され
               る。
◆  参考文献

民法2  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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               ★ オリジナル問題解答 《第65回》★

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                        PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 民法

  【目次】   問題・解説
 
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 ■  問題  多数当事者の債権および債務
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 (1) 買主の代金債務の保証人は買主の有する同時履行の抗弁権(533
     条参照)を主張できるか。

 (2) 連帯保証人が数人あって、保証人間に連帯の特約がない場合におい
     て、債権者が保証人の一人の債務を免除したときは、他の連帯保証人
     の債務にその効果は及ぶか。 
 
 ※ 本問は、【行政書士試験独学合格を助ける講座】第177号 におい
  て、「平成23年度問題31」の検討を行った際に、関連質問として
  出題したものである。

  
  ☆ なお、メルマガ第177号はこちら
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 ■  解答
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 ○ 問題(1)について

   (ア)この設問に対して、ズバリ当てはまる条文はありません。また、
    この場合に該当する判例もありそうにありません。
  (イ)関連する条文としては、457条2項に保証人の相殺権があり
    ます。この規定について、教科書では、「連帯債務者相互の場合と
       同一 趣旨である(436条2項)」と述べられています。それで
       は、その趣旨とはどのようなものでしょうか。
     
         3,000万円の連帯債務者B・C・Dの連帯債務者のうち、D
       が反対債務を有するとしよう。
    
    図示しますと、以下のようになります。

            A

   3,000 万円 ↓ ↑(Dが2,000万円の反対債権を有する)

          
          B・C・D 連帯債務者(負担部分は平等とする)

    
    ★ その1 436条2項を適用した場合
     
     Cが弁済を請求されたときには、Dの負担部分1,000万円だ
    けはDの反対債権で相殺し、残額2,000万円だけを支払えばよ
    いことになります。

    ★ その2 Cが436条2項の援用をしない場合

     3,000万円を弁済したCは、Dに対し、Dの負担部分1,0
    00万円について、求償し(442条1項)、これに応じたDは、
    Aに対する相殺の機会を失することになり、反対債権2,000万
    円がそのまま残ります。


    ★ 両者の比較

     その1で記した、436条2項の適用の結果をみてみますと、
    C・D間の関係がおのずから決済されたことになりますので、当
    該規定は、その2で記述したような無用の迂回を回避をするため
    に設けられた便宜に基づく特則であるということになります。こ
    こにおいて、436条2項の趣旨が明らかになりました。
        
    
     それでは、Cが、3,000万円の主たる債務者Bの債務を保証
    した場合、Bが債権者Aに対して3,000万円の反対債権を有す
       るとしよう。        

    図示すると、以下のとおりです。      
          
            A

     3,000万円↑↓ 3,000 万円 

          
             B 保証人C 

    

      ★ その1 457条2項を適用した場合
     
     保証人CがAから3,000万円の請求されたとき(446条1
        項)、保証人の相殺権ををAに対抗すれば、その後、主たる債務者
        Bに対する求償もなくなるため、B・C間の関係がおのずから決済
        されたことになります。


   ★ その2 Cが457条2項の相殺権ををAに対抗しない場合

     3,000万円を弁済したCは、Bに対して求償することになり
        ます(459条以下)。これに応じたBは、Aに対する相殺の機会
        を失いますので、BのAに対する反対債権3,000万円が残りま
        す。
 
    
   ★ 両者を比較すれば、その1では、その2におけるような求償を回
        避し、B・C間の関係がおのずから決済されたことになります。こ
        こにおいて、457条2項の保証人の相殺権は、436条2項の連
        帯債務者相互の場合と同一 趣旨であることが判明しました。
       
  
   ※ 459条以下を見てみますと、保証人の求償の範囲は、委託を受
        けた場合と委託を受けない場合とで異なっていることが分かります。
     委託を受けた場合には、459条2項により、442条2項の連
        帯債務者の求償権の規定が準用されています。また、この場合には、
        事前の求償権もあります(460条)。これに対して、委託を受け
    ない場合には、462条により限度が設けられています。ここで、
    相殺と求償権の 関係について規定した462条2項について説明し
    ておきます。ここでは、委託を受けない者が、主たる債務者の意思
    に反して保証した場合が規定されていて、この場合には、主たる債
    務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有すること
    になります。
          以上を前提にして、相殺と求償権の関係について、前に示した図
    で説明しますと、3,000万円を弁済したCがBに求償したとこ
    ろ、Cの弁済によって、免責されたBがその免責以後求償の時まで
    にAに対して3000万円の反対債権を取得したときは、Bは、現
    に利益を受けている限度の求償権で足りますので、この3,000
    万円でAに対して相殺し得ることを対抗できます。その結果、Cは
    求償権を失い、BのAに対する3,000万円の反対債権を行使し
    うることになります。ここで、702条3項の規定を見てください。
    事務管理における管理者の費用償還請求においても、同趣旨の規定
    があることが分かります。

   (ウ) それでは、これから、保証人が主たる債務者の有する同時履行の
    抗弁権を行使しうるかという本題に入ります。いままでは、関連す
     る条文である457条2項の保証人の相殺権とこれと同一 趣旨で
    ある連帯債務者相互の場合の規定・436条2項の説明を詳しく行
     いましたが、これらの知識は、本試験対策としても、知っておいて
    損にはならないと思います。もう一度要約しますと、これらの規定
        は、当事者の関係がおのずから決済されたことになるような結果を
    をもたらす便宜に基づく特則であるということになります。
     これに対して、 買主の代金債務の保証人は買主の有する同時履行
    の抗弁権(533条参照)を主張できるかという場合、これを肯定
    するとすれば、主たる債務者である買主と保証人間の関係が決済さ
    れるという前述した観点に立つものではないことは確かです。頼り
    にするべき条文もなく、判例も見当たらないとすれば、前述した観
    点以外の他の理論によるしかありません。みなさまにすれば、何を
    勿体ぶったことを言っているのだ、保証債務の付従性から当然では
    ないかということになりそうです。そう言われると、確かに、その
    とおりです。

 (エ) しかし、保証債務の付従性といっても、その具体的内容は、さま
    ざまですが、本問では、保証人が主たる債務者の抗弁権を援用しう
    ることも付従性の一内容とされるということを明確に把握に把握す
    る必要があります。このことを我妻民法から引用すれば、「保証債
    務は、(主たる債務とは)別個の債務だとしても、主たる債務を履
    行することが目的なのたから、主たる債務の効力を制限する抗弁権
    は、保証人もまたこれを援用してその債務を制限することができる
    と解さなければ、保証債務の付従性に反することになる・・」。
     この観点からすれば、「保証人が主たる債務者の有する同時履行
    の抗弁権を行使しうることはいうまでもない」ことになります。
     したがって、本問においては、買主の代金債務の保証人は買主の
    有する同時履行の抗弁権(533条)を主張できることになります。

   ※  以上に関連する判例として、以下のものをあげておきます。
    
   (a)主たる債務が時効で消滅したときは、保証人は、自分に対す
      る関係で、これを援用して保証債務の消滅を主張することがで
      きる(大判大正4・12・11民録21−2051)。
       したがって、主たる債務者が時効の利益を放棄するときは、
      保証のない債務となります。参照条文 145条
   (b)無能力者の債務を保証した者は、保証人の資格においては、
     右債務の原因たる無能力者の行為につき取消権を有しない(大
     判昭20・5・21民集24−9)。
            現在では、「無能力者」とあるのは、「制限行為能力者」
     とされる(20条参照)。
         参照条文 120条・449条

   ※ なお、以下の議論は少し、混乱を生ずることなので、読まなく
    てもよいとも言えますが、一応、触れておきます。
     我妻説によりますと、457条2項に関し、「保証人は、主た
    債務者の有する反対債権を処分する権限をもつのではなく、相殺
    によって消滅する限度で、単に弁済を拒絶する抗弁権をもつと解
    するのが正当であると考える」となっています。これは、どうい
    うことかということを、457条2項に関する以下の図示を再度
    提示することによって、説明します。

              A

       3,000万円↑↓ 3,000 万円 

          
               B 保証人C 

     最初に注意すべきは、我妻説は、いままで述べてきた通説・判例
    に反する考え方だということです。457条2項に関して、前に述
    べたことを再説しますと、保証人CがAから3,000万円の請求
    されたとき、保証人の相殺権ををAに対抗すれば、その後、主たる
    債務者Bに対する求償もなくなるため、B・C間の関係がおのずか
    ら決済されたことになるというものでした。この通説・判例の立場
    は、保証人が、主たる債務者の有する反対債権を処分する権限をも
    つことを基礎にしています。だから、B・C間の関係が決済された
    効果がもたらされることになるのです。これに対して、我妻説は、
    保証人が反対債権を処分する権限をもつのではなく、相殺によって
    消滅する限度で、単に弁済を拒絶する抗弁権をもつというものです。
     そうすると、どうなるでしょう。Cによって、弁済を拒絶された
    Aは、仕方なく、Bに請求し、そこでA・B間において相殺が行わ
    れることになります。通説・判例の考え方によれば、保証人が反対
    債権を処分する権限をもつのですから、CがBに代わって相殺の効
    果を生じさせる機能を与えられたことになります。我妻説によりま
    すと、本条の立法趣旨からいって、弁済を拒絶する抗弁権で充分で
    あり、それ以上、他人の債権を処分する権限を与える必要がないと
    ということになるのでしょう。そうなると、通説・判例では、この
    457条2項の規定は、当事者関係の決済の便宜に基づく特則であ
    るということでしたが、我妻説によれば、弁済を拒絶する抗弁権を
    もつことであって、これは、保証人が主たる債務者の債権による相
    殺という抗弁権を行使することを意味するのですから、本条の趣旨
    としては、本問の同時履行の抗弁権の行使と同様に、付従性の一内
    容とされることになります。
     なお、この理論は、457条2項と趣旨を共通にする436条2
    項について、その趣旨を考察する場合にも、そのまま当てはまりま
    す。これについても、再度、図示を提示し、説明しておきます。

             A

   3,000 万円 ↓ ↑(Dが2,000万円の反対債権を有する)

          
          B・C・D 連帯債務者(負担部分は平等とする)

        この場合に436条2項を適用すると、通説・判例では、以下の
        ようになりました。
     
     Cが弁済を請求されたときには、Dの負担部分1,000万円だ
    けはDの反対債権で相殺し、残額2,000万円だけを支払えばよ
    いことになります。

     これは、請求されたCが、Dの反対債権を処分する権限をもつこ
    とを基礎にしていますが、我妻説によりますと、相殺によって消滅
    する限度で、単に弁済を拒絶する抗弁権をもつというものですから、
    Cは、1,000万円の限度で弁済を拒絶することになります。
     そうすると、弁済を拒絶されたAは、その後、Dに対して、請求
    し、A・D間において、相殺が行われることになります。

     しかし、我妻説は、436条2項・457条2項の文言に反する
    こと、通説・判例では、当事者の関係がおのずから決済されたもの
    になるのに、我妻説ではそのようにならないことを理由に、私は、
    我妻説に賛同できません。


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    以上、殊のほか、(1)の本問につきまして、時間を要しました
   ので、(2)の解説は、追って、次回といたします。

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◆ 参考書籍
 
  民法三 内田 貴 著・東京大学出版会
    
   民法1・ 2  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房

  新訂債権總論 我妻榮 著 岩波書店


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
 
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