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            ★ オリジナル問題解答 《第55回 》★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法
    
  【目次】   解説
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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    問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第154号掲載してある。
 
 
 ☆ メルマガ第154回はこちら
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   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 

 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 
 ◆ 各肢の検討


  
   ○ 肢1について

   行政不服審査法34条2項以下。行政事件訴訟法25条2項以下。
 
    正しい。


   
   ○ 肢2について

   正しい。行審法34条4項。行訴法25条4項。ただし、厳密に
    言うと、前者では、義務的でなくなり、後者では することができ
    なくなる という違いがあるように思われる(○ 肢4について
   ※(b)参照)

     審査庁も裁判所も、執行停止にあたり、「本案について理由がない
  とみえるとき」に該当するかどうかを判断する

  
  
   ○ 肢3について

    行審法34条2項。正しい。行訴法25条2項によれば、「申立て
  によ」る。


 
  
   ○ 肢4について

    審査庁が処分庁の上級庁である場合には、3のとおり、執行停止の
     要件は緩和されているが、「審査庁が処分庁の上級庁でない場合につ
     いても、裁判所が執行停止する場合よりはその要件が緩和されている」
   (入門)
  
  (1) 審査庁の場合は、「必要があると認めるときは」が要件になって
    いる(行審法法34条3項)。
  
 (2)裁判所の場合は、「重大な損害」「緊急の必要」が要件になって
   いる(行訴法法25条2項)。
 
   したがって、要件は同じではなくて、緩和されているので、本肢は
  誤りである。
 
 
  ※(a) ただし、次の点に注意せよ。審査庁の場合にも、「重大な
            損害」等がが掲げられているが(行審法法34条4項)、こ
            れは、義務的であるための要件である。裁判所の場合が、執
            行停止発動の要件であるのとは、異なる。

            
                             執行停止可 ○   不可 ×
              
                           
               審査庁     裁判所
    
  「必要があると認める」   ○       ×

 
   「重大な損害等」      ○(義務的)  ○(発動の要件)

 
   以上を総括して、「入門」より、以下の文章を記しておく。
 
  「行政上の不服申立てのばあいには、争いを裁断するのは裁判所では
  なくて行政機関ですから、不服申立てに対する審査も、いわば、行政
   組織内部でのコントロールとしての性格を持つことになります。そう
   だとすると、取消訴訟のばあいには、司法権としての裁判所の立場上、
  そうかんたんに認められなかった例外としての執行停止も、かなり
   ゆるやかに認めてもよい、ということになるのでしょう。」 

 
  ※(b) ついでにいっておくと、

   審査庁においては、「本案について理由がないとめるときは」義務
   的でなくなるのに対して(行審法34条4項)、裁判所においては、
 「本案について理由がないとめるときは」執行停止をすることができな
 くなるのである(行訴法25条4項)。

   さらに、「仮の義務付け・仮の差止め」では、「本案について理由
  があるとみえるとき」が、積極的要件になっている(行訴法37条の
  5第1項)。

  
 
 ○ 肢5について

   正しい。
 
  内閣総理大臣の異議は、行政事件訴訟法25条の取消訴訟の場合
(無効等確認の訴を含む・38条3項による 準用)及び 仮の義務付け・
 仮の差止めの場合(37条の5第4項による準用)である(27条)こ
 とを明確に把握しておくこと。

  内閣総理大臣の異議という制度は、行政不服審査法にはない。


------------------------------------------------------------------

  本問では、肢4が誤りであるので、正解は、4である。 


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  ◆ 付 言
  
   本問の肢4の解説にみられるように、条文に忠実に条文を丁寧に読
  むいわば条文主義という観点もまた、本試験によって要請されている
  と私は思料します。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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             ★ オリジナル問題解答 《第54回 》★

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  【テーマ】 行政法
    
  【目次】   解説
   
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    問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第153号掲載してある。
 
 
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 

  本問は、サイト第68回が基本となっているので、これを参照願い
  たい。
 
 ☆サイト68回はコチラです↓
  http://examination-support.livedoor.biz/archives/1342578.html
  

  ◆ 各肢の検討


  ○ 肢アについて

   本肢は、正しい。このとおり、覚えておくとよい。
   本肢は、本問のテーマの導入部門である。

      参照条文 行訴法44条


  ○ 肢イについて

   参照条文 執行停止=25条4項 
   仮の義務付け・仮の差止め=37条の5第1項・2項

    本案に理由がないとは、行政処分に、取消事由に当たる違法性が
      がないことである。

    本案に理由があるときは、行政処分に、取消事由に当たる違法
   性があることである。
    
    執行停止は処分の執行を停止するのに対して、仮の義務付け等は、
   義務付けを行うのであるから、厳格な要件を要する。
    したがって、仮の義務付け等は、本案に違法性があるとみえると
     きでなければ、することはできない。
       これに対して、執行停止は、本案について違法性がないとみえる
    ときには、することができない。

    「本案について理由がないとみえる」は、執行停止にあっては、
     消極要件であり、仮の義務付けおよび仮の差止にあっては積極要
   件である。(前掲書 読本348頁 353頁)

       本肢の記述は逆になっているので、誤っている。

   ○ 肢ウについて

   本肢は題意が掴みにくいが、生活保護の申請の拒否処分を例に説明
    する。

    当該拒否処分に対して、取消判決があれば、判決の拘束力に基づい
   て行政庁は、判決の趣旨に従って、生活保護の給付決定をしなければ
   ならない。(行訴法33条2項)。
 
     しかし、執行停止の決定には行訴法33条2項の準用がないので、
   裁判所が執行停止の決定をしても、行政庁は何らの措置をとることも
   義務づけられない。
   もし、取消判決前に行政庁を義務づけようとすると、「仮の義務付け」
  を申し立てることになる。
  すなわち、当該拒否処分については、取消訴訟と義務付け訴訟を
 併合提起し、仮の救済である「仮の義務付け」を用いることになる
  のである≪肢オ参照≫。
 
  (以上 前掲 読本 351頁 参照)

  以上の記述は、本肢に相応するので、本肢は正しい。


 ○ 肢エについて

 (1)執行停止について

     行訴法25条2項によれば、執行停止を申立てるには、本案訴訟
 である取消訴訟が適法に裁判所に提起されていることが必要である。
  
     取消訴訟の原告適格について、行訴法9条2項は、処分の相手方
 以外の第三者利害関係人にもその適格を認める

     たとえば、マンションの建設についての建築確認に対し、第三者で
 ある近隣の住民が取消訴訟を起こす場合である。この場合、その者
  が執行停止を求めることができる。

   (2)仮の義務付けについて

   行訴法3条6項1号に該当する「直接型不作為」に基づく「義務付
    けの訴え」の提起があった場合において、「仮の義務付け」ができる。
   
   さきのマンション建設についていえば、第三者が、改善命令を訴求
   し、「仮の義務付け」ができることになる(37条5第1項)。   
    
 (3)仮の差止め

   行訴法3条7号の「差止めの訴え」の提起があった場合において、
  「仮の差止め」ができる。第三者が違法建築の差止めの訴えを提起
  し、「仮の差止め」ができる(37条の5第2項)。

   いずれも、当該処分の相手方のほか、一定の第三者も申し立てるこ
    と ができるので、本肢は正しい。

 ○ オについて


 (1)仮の義務付けの積極的要件として、義務付け訴訟の提起を
    要する(行訴法37条の5第1項)。

     この点において、本肢は正しい。

 (2)仮の差止めいついても、同様に差止め訴訟の提起を要する
    (行訴法37条の5第2項)。

     この点も、本肢は正しい。
  
 (3)執行停止の形式的要件として、「処分の取消しの訴えの提起
   があること、すなわち本案訴訟である取り消し訴訟が適法に裁
   判所に提起されていることが必要である」(行訴法25条2項)
    
      (前掲 読本 348頁)

   なお、当該規定は、無効等確認訴訟にも準用されていること
  にも注意すべきである(行訴法38条3項)。
 
    本肢は、(3)の なお以下に反するので、正しくない。


   ☆ 付 言

    これら、すべては、本案という義務付け訴訟・差止え訴訟・
      ないしは取消訴訟・無効確認訴訟を前提とする仮の救済制度で
      あることをはっきり認識する必要がある。

 
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   以上、本問は、イとオが正しくないので、正解は5である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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            ★ オリジナル問題解答 《第53回 》★

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 ◆  参考書籍 
  
 行政法入門 藤田 宙靖著・ 行政法読本 芝池 義一 /有斐閣


 
  【問題1】


 
 ◆ サイト30回に掲載の平成18年度過去問・問題11及び解説参照

 
    第30回はコチラです
              ↓
  http://examination-support.livedoor.biz/archives/683857.html


  ◆ 各肢の検討

  
  ○ アについて

   平成21年度問題11の肢4の以下の記述をみてほしい。

   聴聞において、当事者が利害関係者の参加を求めたにもかかわらず、
  行政庁がこれを不許可とした場合には、行政不服審査法に基づく不服
  申立てをすることができる。

   妥当でない。

   条文は、行手法17条1項・同法27条1項である。
   つまり、同法17条1項に違反する違法な処分(行審法1条の行政
   庁の違法処分に該当する)は、行手法27条1項により、行審法による
  不服申立てをすることはできない。

  同様に行手法18条1項の文書等の閲覧規定に反する行政庁の処分も
  また、行審法の不服申立ての対象にならない。

   以上、本肢は妥当である。

  ○ イについて

  聴聞を経てなされた不利益処分については、行政不服審査法に基づく
  異議申立てはできないが、弁明の機会付与の不利益処分にはこうした
  制限がないので、本肢は妥当である(27条2項・29条以下にはこ
 うした規定もなく、準用もされていない)。

   しかし、27条2項によれば「審査請求」はできることになっている
  ことに注意。
  「異議申立て」は処分庁に対する不服申立てであるから(不服審査法
  3条2項)、聴聞という丁寧な手続を経た処分が覆る可能性がほとんど
  ないことが立法趣旨である。

  以上、本肢は妥当である。


 ○ ウについて

   行手法29条と同法20条の比較。なお、同法20条3項の審理の
 非公開原則に注意。これについては、学者の批判がある。

   以上、本肢も妥当である。

 ○ エについて
              ・・・・・・・・・
  丁寧な手続である聴聞は、許認可を撤回したり 資格 または地位
  を 剥奪するといった相手方に重大な不利益を与える不利益処分に
 ついて行われる。これが「特定不利益処分」であり、行手法13条
1項1号に列挙されている。
   この不利益処分には、行政法学上の取消しと撤回の双方が含まれる
 (同旨・平成21年度問題11・肢2)。

    以上に反する本肢は妥当でない。


 ○ オについて

  行政庁が、相手方から、申請により求められた許認可等を拒否する
 処分は、申請に対する処分(行手法2条3号)であるから、不利益処
  分に該当しないので、聴聞ないしは弁明が実施されることはない

  以上に反する本肢は、妥当でない。


-----------------------------------------------------------------

   以上により、妥当でないのは、エとオであるから、4が正解である。

-----------------------------------------------------------------


 ◆  付 言

   エとオの対比を通じて、「特定不利益処分」の概念をはっきりと把握
 することが肝要だ!

  一度行政庁がした許認可を取り消したり、撤回するのが、「特定不利益
 処分」であり、申請者から求められた許認可を拒否するのは、それが、い
 かに申請者の重大な利益に関わることであっても、「不利益処分」ではな
 く、「申請に対する処分」である。

   以上は、行政手続法の根幹をなすものであり、過去問でも繰り返し問わ
 れている。混同しないように!


   また、アとイの混同も回避すべき。

   アは、聴聞の手続そのものに対する不服。イは、聴聞・弁明を経て
 なされた不利益処分に対する不服申立ての問題。
   

 
 【問題2】

 

 ◆   参照サイト  行政法・審査基準 第27回

  ☆第27回はコチラです↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/640603.html


  ◆ 総 説

     審査基準とは

      「申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定め
     に従って判断するために必要とされる基準」である(行手法2条8
     号ロ)。

    処分基準とは

   「不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかに
  についてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」
    である(行手法2条8号ハ)。

   裁量基準

     これらは、「法律で裁量権が認められ、または政令・省令などにも
   十分に具体的な規定がない場合に、行政庁に行政裁量の基準つまり裁
  量基準を作らせ、それを手がかりに審査をするという方法である。」

 ( 前掲読本76頁等参照 )

◆ 各肢の検討 

 ◎ 肢アについて 
  

  審査基準は、行政立法の一つである。
  
  その行政立法には、2種類がある。その一つが「法規命令」であって、
 これは、法的拘束力を有する。
  もう一つは、「行政規則」であって、法的拘束力を有しない。
 
  審査基準は、「行政規則」に該当する


   したがって、本肢の「処分が違法となることはない」という記述は
 正しい。

  この場合には、憲法14条の平等原則違反に反し、違法となることが
 あるので、本肢の後段の記述も正しい。

   本肢は、全体として、正しい。

   
  ☆ 参考事項

  (1)平成19年度過去問 問題12・肢ウに注目!

   審査基準に違反して申請を拒否する処分をしても、その理由
    だけで処分が違法となることはないが、他の申請者と異なる
    取扱をすることになるため、比例原則違反として、違法となる
    ことがある。

      誤りである。

   比例原則違反ではない。平等原則違反である。

     ※ 比例原則は、公務員に対する懲戒処分でよく問題になるが、
   「処分の原因となる行為の悪質さとそれに対する処分の強さと
     の間には、合理的な比例関係がなければならなという原則で
     ある」(読本71頁)。


   (2)処分を行う際の裁量基準(処分基準)の「平等原則」をズバリ
   問うたものとして、平成19年度過去問・問題42がある。

   サイト23回参照

  ☆第23回はコチラです
      ↓
   http://examination-support.livedoor.biz/archives/592220.html

   なお、サイト22回も参照

   ☆第22回はコチラです
      ↓
   http://examination-support.livedoor.biz/archives/592202.html


 ◎ 肢イについて

   
    本問は、題意が掴みにくい。
  
  平成21年度問題11・肢エにおいて、以下の肢が出題された。

   「 審査基準には、法律に基づき処分の要件を定める政省令は含まれ
  ない。」

    正しい。

   行手法2条8号イ・ロが手がかりになる。
    まず、イの法律に基づく命令が、「法律に基づき処分の要件を定める
  政省令」に該当する。
  次に、ロには、審査基準が掲げてある。

  イとロが並列して列記されている以上、イには、ロは含まれないことに
   なり正しい。それにしても、なんとも紛らわしい記述である。

  端的に言えば、政省令は、「法規命令」であり、審査基準は、「行政
  規則」であるから、両者は厳然と区別される。


  本肢に戻ろう。ハには、処分基準が掲げらているので、審査基準も処
 分基準も、政省令には含まれないので、本肢は誤りである。

 
 ◎ 肢ウについて

   行手法5条1項と同法12条1項の対比から、審査基準が法的義務と
  されるのに対して、処分基準の設定が努力義務であって、逆である。

   本肢は誤りである。

 
   ☆ 参考事項

  (1) それぞれの公表義務についても、同様に、審査基準が法的義務
     であり(5条2項)、処分基準が努力義務である(12条1項)。

  (2) 行手法5条1項の「・・・とする」文言は、通例は義務づけを
     回避するために用いられるものであるが、処分基準の「・・・・
     努めなければならない」という文言と比較すると、審査基準の
     設定を行政庁に原則として義務づけるものと解釈するのが自然
     である。」(読本220頁参照)

  (3) 処分基準の公表が努力義務にとどまるのは、「処分基準を公表
         すると、場合によっては、違反すれすれの行為が行われたり、処
     分を巧妙に免れる脱法行為が行われたりすることがあることに配
         慮し   たためである。」(読本225頁)。

 

  ◎ 肢エについて

       肢ア・エで述べたとおり、両者とも、行政規則に該当するので、正
     しい。

 
  ◎ 肢オについて

      行手法法2条8号ロ・ハによれば、審査基準も処分基準も、 同法3
    9 条1項のいう「命令等」に該当する。
    したがって、両者を設定するには、行政庁は、原則として、意見公募
   手続を実施しなければならないが、同法39条4項各号に該当するとき
   は、これを実施しなくてもよいとされる。

   以上によれば、本肢は、明らかに誤りである。


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    本問は、アとエが正しいので、正解は1である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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              ★ オリジナル問題解答 《第52回 》★

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  【目次】   解説
   
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問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】

 第149号に掲載してある。
 
  ☆ メルマガ第149回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm


   
 ◆  参考書籍 
  
 行政法入門 藤田 宙靖著・ 行政法読本 芝池 義一 /有斐閣

 ◆  総説
 
   (読本219頁図表をアレンジした)
 
                  1 意見陳述手続             

          2 基準設定

         3 理由提示

          4  文書閲覧
    
          
               (前記1 2 3 4に対応)
                                   ↓
               
               1    2    3    4

  ☆  申請に対する処分       

             なし   審査基準  あり    なし
            (ただし       (拒否処分
              公聴会)      について)
                      
 ☆ 不利益処分                   


 (1)「特定不利益処分」   聴聞   処分基準    あり     あり
         
   
                     

 (2)「その他の不利益     弁明   処分基準  あり     なし
     処分」


   
 注        

  a 行政処分は、「申請に対する処分」(第2章・2条2号、3号)と
 「不利益処分」(第3章・2条4号)に分かれる。

  b 意見陳述手続については、「申請に対する処分」につき、10条
   の公聴会の規定があるだけで、申請者の意見陳述手続はない。

  c 「不利益処分」における意見陳述手続については、(1)1の聴聞
   を経る場合と(2)1の弁明の機会の付与を経る場合に分かれる。
  
    このうち、丁寧な手続である聴聞は、許認可を撤回したり 資格
   または地位を剥奪するといった相手方に重大な不利益を与える
   不利益処分について行われる。これが(1)の「特定不利益処分」
   であり、13条1項1号に列挙されている。
    
    これに該当しない(2)の「その他の不利益処分」においては、
   略式手続である弁明の機会の付与の手続が採用される。
 (13条1項2号・29条以下)

   以上を総括すると、 行政手続法上、聴聞を経る処分が、(1)
   の「特定不利益処分」に該当し、弁明の機会の付与を経る処分が
 (2)の「その他の不利益処分」に該当することになる。


 ◆  各肢の検討


 ○ アについて

  5 条と12条参照。逆であり、妥当でない。

   なお、審査基準が法的義務であり、処分基準が努力義務であること
  に注意。処分基準の公表は、悪用されるおそれがあるあるため、努力
  義務にとどまる。

 
 ○ イについて

  申請に対する処分については、申請者の意見陳述手続の規定はなく、
 10条に公聴会の定めがあるだけである。 

    本肢は、妥当でない。


 ○ ウについて

  不利益処分のうち、特定不利益処分(13条1項1号)は聴聞の実施。
 その他の不利益処分には、29条以下の弁明の機会の付与が行われる。

  本肢は、妥当である。


 ○ エについて

  申請に対する処分のうち、理由の提示が義務づけられているのは、
 拒否処分だけである(8条)。

  本肢は、妥当でない。

 
 ○ オについて

   文書閲覧の制度が、申請に対する処分に適用がないのは、そのとおり。
  不利益処分については、聴聞を伴う特定不利益処分にのみ、当該制度
  が適用される(18条)その他の不利益処分には、これは、適用されない。

    本肢は妥当でない。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  以上のとおり、妥当でないのは、ア・イ・エ・オであって、四つである
 から、正解は4である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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             ★ オリジナル問題解答 《第51回 》★

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                     PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法

  【目次】   解説              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第148号に掲載してある。
 
 
  ☆ メルマガ第148回はこちら
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   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
 ◆ 参考書籍 
  
   行政法入門 藤田 宙靖著・ 行政法読本 芝池 義一 /有斐閣

 
 ◆  関連サイト

 過去問の詳細な解説 第28回はこちら 
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/662478.html
   
  当該サイトにおいて、本問の解答が示されている。以下では、一部
  の記述は当該サイトの解説と重複するが、各肢について検討を行い、
  その要点を述べた。


 ◆  各肢の検討


   ○ 肢アについて

    申請拒否処分は、申請者に不利益を及ぼすので、広い意味での不利
  益処分である。しかし、「申請に対する処分」と「不利益処分」は条
  文と構造を異にしているので、「申請に対する処分」である「申請拒
  否処分」に対し、「不利益処分」の規定が適用されることはない。

  ※ 注
  
   申請拒否処分については、行手法第2章の「申請に対する処分」が
 適用されるのであり、同法第3章の「不利益処分」の規定が適用され
 るのではない。

  2条4号ロの[不利益処分」除外規定は、注意的なものであろう。

    本肢は妥当でない。

  ※ 注

  申請に対する処分と不利益処分の違い。

  申請に対する処分とは、2条3号に規定があり、「国民の側からの
 申請があってはじめて行われる処分のことで、具体的には、認可・
 許可 や社会保障の給付決定を指している」(読本219頁))。
 
  不利益処分とは、行手法2条4号で定義がなされていて、「例えば、
 ホテル業などの営業の免許を撤回する処分、営業停止命令、工場の
 施設の改善命令などがこれに当たる」(読本225頁)。


 ○ 肢イについて

  理由の提示を必要とする行政処分の範囲

  行手法8条1項は、許認可等を拒否する処分、いわゆる拒否処分
 について、理由の提示を行政庁に義務づけている。

  同法14条1項は、不利益処分について理由の提示を義務づけて
 いる。

 
 ※ 注
 
  行政手続法の理由提示の義務は、許認可処分にまでは及んでいない。
 しかし、許認可処分であっても、理由の提示が要請される場合がある。
 「原子炉の設置の許可や公共料金の値上げの認可のように第三者利害
 関係人である住民の生活への影響が大きく、あるいは住民の関心が強い
 ものについては、理由提示の必要性は強い。・・・これは(理由提示
 の義務が許認可処分処分にまで及んでいないのは)、第三者利害関係人
 のことをあまり考慮していないという同法の限界の一つの表れである。
 (読本223頁))

  以上により、行政手続法の理由提示の義務は、許認可処分にまでは
 及んでいない。本肢は妥当でない。


 ○ 肢ウについて

    行政手続法に、理由の提示について、何も規定がないというのは、
  そのとおり。

   判例(最高裁昭和60・1・22判決民集39−1−1)は、根拠
 法条だけではなく、申請拒否処分すなわち、一般旅券発給拒否通知書
 に付記すべき理由としては、「当該規定の適用の基礎となった事実関
 係をも当然知りうるような場合を別として」処分原因事実をも提示す
 べきであるあるとしている(読本223頁)。

  妥当である。

 
  ○ 肢エについて

    肢イでも述べたとおり、 理由の提示を必要とする行政処分の範囲は、
  全体としては、広い意味での不利益処分であり、具体的には、申請拒
  否処分と不利益処分がこれに該当する。

 
   本肢は妥当である

 
  ○ 肢オについて

   行政手続法10条において、申請に対する処分について、公聴会の
 開催等の規定があるが、行政手続法は、許認可等を拒否する場合でも、
 相手方の意見を聴くことを予定していない(前掲読本 224頁)。

 
   妥当である。


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 妥当であるのは、ウとエとオであるから、本問の正解は、3である。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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             ★ オリジナル問題解答 《第50回 》★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法
    
  【目次】   解説
              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第147号に掲載してある。
 
 
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 ◆ 参考書籍 
  
   行政法入門 藤田 宙靖著・ 行政法読本 芝池 義一 /有斐閣

 
 ◆ 関連サイト

  過去問の詳細な解説 第24回・第25回  
  
    第24回の詳細はこちら
    
    第25回の詳細はこちら     

    当該サイトにおいて、本問の解答が示されている。以下では、一部の
  記述は当該サイトの解説と重複するが、各肢について検討を行い、その
  要点を述べた。
 

 ◆ 各肢の検討

  
   ○  アについて


     すべて、行手法3条1項各号によって、適用除外されている。

    順次、15号、2号、9号。

    したがって、本肢は妥当でない。


 ○  イ、ウ、エについて。

  
    行政手続法3条3項においては、地方公共団体の行政に関して、行手法
  の適用除外される範囲を以下のように明確にしている。


 (1) 行政処分・届出→(地方公共団体の機関が定める)条例・規則に
               基づくもの。

  (2)行政指導→すべてのもの。


  (3)命令等制定→すべてのもの


 注 条例は、地方議会が定める。規則には、地方公共団体の長つまり
  都道府権知事や市町村長が定めるものと教育委員会などの委員会が
    定めるものがある(憲法94条、地方自治法14条1項、15条
  1項、138条の4第2項)。その規則には規程も入る(地自法
  138条の4第2項 、行手法2条1号)
  上記の「命令等の制定」にある「命令」とは、条例は含まず、規程
    含む規則が該当する。


   以上を前提にして、それぞれを検討する。


   ☆ イについて

   地方公共団体の機関がする行政処分については、法律に基づくもの
  は適用除外ではない(1)。
   これに対して、行政指導は、すべてのものが適用除外。(2)

   本肢は妥当である。

 
  ☆ ウについて

    地方公共団体の機関の届出については、法律に基づくものについては、
     適用除外ではない。(1)
  


     本肢は妥当。


  ☆ エについて

   (3)により、地方公共団体の制定する命令は、すべてのものが適用除外
   であるから、法律の委任によって制定されるものであっても、行政手続法
     の意見公募手続(第6章)に関する規定は適用されない。


      本肢は妥当である。

 

 ○ オについて


   行手法1条2項により、個別法律により、一定範囲で適用除外とされて
   いる立法例多数ある(国税通則法74条の2、生活保護法29条の2等)。
    (読本 218頁)

   
    本肢は妥当でない。

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  本問において、妥当でないのは、アとオであるので、正解は2である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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             ★ オリジナル問題解答 《第49回 》 ★

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  【テーマ】 行政法
       
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第144号掲載してある。
 
 
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 ○ 参考書籍 
  
 行政法入門 藤田 宙靖著・ 行政法読本 芝池 義一 /有斐閣 
 発行


 ◆ 序説(要点)

   1 行政指導とは「行政機関が、相手型方の任意的な協力を得て行
   政目的を達成しようとする非権力的事実行為である」(前掲書・
     読本152頁)

   行政手続法2条6項にその定義規定がある。
 
  2 本講座では、前回まで、「行政調査」「行政計画」が主題だっ
   た。
  
  「これらは、権力的に行われることもあれば、非権力的に行われ
      ることもある。また、法行為に当たるものもあれば、事実行為
      に当たるものもある。」(前掲 読本25頁)

    これに対して、今回の主題である「行政指導」は、前述した
      ように非権力行為であり、事実行為であると言われていること
      に注意する必要がある。
  
  3 前回(144号)のオリジナル問題肢アでは、「行政計画」に
   関して「侵害留保説」「権力作用留保説」「公行政留保説」と法
   律の根拠が主題になった。

       本問では、「行政指導」に焦点を当て、同じ主題を論じたもの
   を出題した。

  
    以上からすれば、次の指摘は重要である。

   「これらの学説(筆者注・『侵害留保説』『権力作用留保説』
   『公行政留保説』)が激しく対立している論争点の一つが
    ・・・・
  実は行政指導についての法律の授権の要否の問題である。」
 
  《前掲読本157頁》
  
 (濁点は、筆者が付した)


 ◆   各肢の検討

   1 侵害留保説→「国民の権利や自由を権力的に侵害する行政
   についてのみ法律の授権を必要とするという説である」
   (前掲 読本)
   
   この説によれば、権力的行政のうち、侵害的行為(税金を
  課したり、営業停止命令を発する行為)には、法律の授権を
  を要することになるので、問題文(本文)にもあるとおり、
  「非権力的行為である行政指導については法律の授権は必要
  ではないことになる。」

   アには、7の「侵害留保説」が妥当する。

  2 権力作用留保説→行政活動のうち権力的なものについて、
   法律の授権を要するという説である。逆に言うと、非権力的
   な行政活動については、法律の授権は必要ではないというこ
   となる。(前掲 読本)

    したがって、イには、2の「権力作用留保説」が妥当する。

   ※ 侵害留保説と権力作用留保説の違い
    
    権力作用留保説は、権力作用を重視するのであるから、侵
   害的かつ権力的な行為でない、授益的かつ権力的な行為つい
   ても法律の授権を要するのである。
    換言すると、侵害留保説では、授益的かつ権力的な行為つ
   いては、法律の授権を要しないことになる。そこに両者の違
   いがある。
    ちなみに、非権力的公行政については、侵害的行為・授益
   的行為を問わず、両説とも、法律の授権を要しない。

  3 公行政留保説(完全全部留保説)→権力的行政のみならず、
      非権力的公行政についても法律の授権を要するとする説であ
   る。

    この説は、「行政指導」に法律の授権を要することを導く
   ものともいえる。
    
    したがって、ウには、14の「公行政留保説」が妥当する。

    4 非権力的公行政である「行政指導」にも行政処分と同様に
   「授益」的なものものもあって、これについては、法律の
    授権を要しないといえる。しかし、侵害的なものについては、
   一律に法律の授権を要しないといえないであろう

    したがってエには、17の「授益」が該当する。

  5 強い「規制」的な力を持った行政指導にあっては、以上
   1・2・3いずれの学説によっても、法律の授権を要する
   という結論を導くことが可能である。

        したがって、オには、20の「規制」が該当する。
           ↓↓
 
   ※  参考事項 


    (1) ここで、とりあげられているのは、行政指導の分類に
     よれば、「規制的行政指導」に該当するであろう。
   
    「規制的行政指導」は、「その目的または内容において、
    相手方に対する規制的な力を持った行政指導である。これ
    には、・・違法建築がある場合の行政指導のように、国民
    の違法行為是正のための指導や、減反のための行政指導の
    ように、独自の規制目的達成のための行政指導がある。」
    (前掲読本156頁)。

  (2)強い強制力を持った行政指導について、判例(最高裁
    2005《平成17》年7月15日判決・民集59−6
    −1661)が処分性を認めた例として、病院の開設の
    中止を求める 医療法に基づく勧告が、行訴法3条2項
    にいう「行政庁の処分その他公権力に当たる行為」に当
    たると解するのが相当であるとしたものがある。

     なお、当該判決については、ズバリ、過去問平成24
    年度問題18肢1で出題されているが、これについては、
    別途解説をする。

--------------------------------------------------------------

    以上の記述によれば、正解は、以下のとおりになる。

   ア=7・侵害留保説 イ=2・権力作用留保説 ウ=14・

   公行政留保説 エ=17・授益 オ=20・規制

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 【著者】司法書士 藤本 昌一
 
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           ★ オリジナル問題解答 《第48回 》★

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  【テーマ】 行政法
       
  【目次】   解説
              
   
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 ■ オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第144号掲載してある。
 
 
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  ▲ 総説 

  行政計画とは、行政機関が行政活動を計画的に行うために作成・
 決定(策定)する計画である。都市計画法に基づく都市計画がその
  代表例である(読本284頁)
 
  
  ▼ 各肢の検討

 
  ○ 肢アについて

   
   (1) 侵害留保説とは、国民の権利や自由を権力的に侵害する行政
        についてのみ法律の授権を必要とする説である

       この説によれば、本肢のような侵害的行為については、法律の
    授権を要する。

    (2)権力作用留保説とは、行政活動のうちの権力的なものについて、
       法律の授権を要するという説である。
 
      この説によれば、本肢のような権力的行政には、法律の授権を
      を要する。

  
    (3)公行政留保説(完全全部留保説)

    これは、権力的行政のみならず、非権力的公行政にについても
   法律の授権を要するとする説である。

     この説によれば、本肢のような権力的行政には、法律の授権を
      を要する。


       したがって、本肢のよな侵害的行為については、(1)(2)
  (3)いずれの説によっても、法律の授権を要するので、本肢
   は、妥当である。

 
  ※ 参考事項

  1 (1) 侵害留保説・ (2)権力作用留保説・ (3)公行政留
   保説(完全全部留保説)の主な違い

    a (1)は、国民の権利や自由を権力的に侵害する行政につ
     いてのみ法律の授権を必要とする説であるのであるから、授
     益的な行為については、法律の授権を要しない。
      これに対し、(2)は、権力作用に注目するのであるから、
     授益的かつ権力的な行為についても法律の授権が必要である。
      しかし、(1)も(2)も、非権力な行為については、法
     律の授権は必要でない。

    b  (1)(2)に対して、(3)は、権力的行政のみならず、
     非権力的公行政についても法律の授権を要する。
     この説は公行政全般につて、法律の監視を求めるもであろう。
    しかし、この説によっても、私行政については、法律の授権を
    要しない。

   2 過去問との対比

    正面から「行政計画」について、問うた過去問として、平成21
    年問題8 があるが、その肢1の記述は以下のとおりである。
 
    土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、
   侵害留保説によれば法律の根拠が必要である。

   ● 本肢は、侵害留保説に照らし、妥当である。

 
  ○ 肢イについて
  
  
    本肢は、最高裁判所大法廷(平成20)年9月10日判決に反する。
  
    従来、最高裁判所は「事業計画は『いわば当該土地区画整理事業の
  青写真たるにすぎない一般的・抽象的な計画にとどまる』」(読本2
 86頁)ことを理由に行政訴訟の対象にならないとしてきたが、前記
 判例がこの先例を変更したのである。この判決は、前記事業計画につ
 いて、宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告
 訴訟の対象になるとしたのである。

    本肢は妥当でない。

 
  ○ 肢ウについて
  
    「この行政計画の事前手続については行政手続法では定めておらず、
   個別の法で定められている。」(読本173頁)
  
  たとえば、都市計画法16条の「公聴会の開催等」、同条17条の
 「都市計画の案の縦覧等)。


   本肢は妥当である。。  


  ○ 肢エについて


  最高裁判所1982(昭和57)年4月22日判決は、用途地域
 に対しての訴訟の可能性を否定し、後続の処分、つまり、建築確認
 が用途地域指定との関係で拒否された段階で、建築確認に対して
 取消訴訟を起こし、その訴訟の中で用途地域の違法を主張すれば
 よいとした(読本287頁)。

  「実効的な権利救済を図るという観点」に立ったのは、肢イの
  判例である。
 
   本肢は妥当でない。

 
 ※ 過去問との対比

  平成24年−問題18 肢3

  行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当た
 る行為」(以下「行政処分」という。)に関する次の記述のうち、最高
 裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  都市計画法の規定に基づき都道府県知事が行う用途地域の指定は、
 行政処分に該当する。

  ● 当該用途地域の指定は、取消訴訟の対象にならないとしたのが、
   前記判例であるから、本肢は妥当でない。


 ○ 肢オについて

  行手法39条1項によれば、意見公募手続は、命令等を定める場合
 に問題になり、「行政計画」は、その対象にならない。

    ・・・
   命令等の概念については、2条8号をみよ。それらは、以下のもの
 であり、「行政計画」は入っていない

   法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む)・審査基準・
 処分基準・行政指導方針 

  本肢は妥当である。

 
 ※ 過去問との対比

  平成21年問題8 ・肢2

  広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待すること
 ができないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続
 の対象となっている。

   ● 前記に照らし、本肢は妥当でない。

 
...............................................................

  
    以上妥当でないのは、イとエであるから、正解は3である。

................................................................ 

  ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行


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 【著者】司法書士 藤本 昌一
 
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             ★ オリジナル問題解答 《第47回 》★

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  【テーマ】 民法・行政法
    
  【目次】   解説              
   
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
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  ● 民法

    最新のサイト欄・【過去問解説第98回 】において、
 遺贈の解説に相当のペースを割いたので、今回は遺贈
 に絞って、出題した。
 
            
  ▲ 総説
  
   遺贈とは、遺言者による財産の無償譲与である。

   遺贈には包括遺贈と特定遺贈とがある(964条)。前者は、
   積極・消極の財産を包括する相続財産の全部またはその分数的
     的部分な いし割合による遺贈であり(たとえば相続財産の2
     分の1、または4割がその例)、後者は、特定の具体的な財産
     的利益の遺贈である(後掲書)。

 
   ▼ 各肢の検討

   
  ○ ア・イについて 

  「包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する」ものとされる
  (990条)。したがって、遺言で定められた割合の相続分を有
     する相続人が一人ふえたと考えればよい(後掲書)。

   したがって、遺贈の承認・放棄についても、相続に関する91
    5条ないし940条の適用があり、遺贈の承認・放棄に関する9
    86条および987条の適用はない。

   包括受遺者は915条1項が適用されるので、アは妥当である。

   包括受遺者に適用されない986条は、特定遺贈において適用
   されるので、イも妥当である。

 
  ※ 肢アに関連する過去問  

   平成11年問題32肢ウにおいて、正しい肢として、次の記
  述がある。 

   包括受遺者は、自己のために相続の開始があったことを知っ
  たときから原則として3箇月以内に単純若しくは限定の承認又
  は放棄をしなければならない。


  ○ ウについて

   以下は、包括・特定を問わず、遺贈に共通することに注意!

   受遺者は、遺言が効力を生じた時、つまり遺言者が死亡した
  時に生存していなければならない(同時存在の原則)。
   
   遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合には、受遺者たる
  地位の承継(一種の代襲受遺)は認められないから、結局その
  効力は生じない(994条1項)。

   したがって、この場合、受遺者の相続人がその財産を承継す
  るとことはないので、ウは妥当でない。


   
   ☆ 参考事項

    遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合には、受遺者の
   相続人はその財産を承継しないが、遺言中に特に受遺者の相
   続人に承継を認める旨を表示してあれば(これを補充遺贈と
   いう)それに従うということに注意。

    なお、この補充遺贈のない場合には、受遺者が受けるべき
      であったものは、遺贈者の相続人に帰属するのである(99
   5条)。

     (以上は、後掲書 参照)


   ☆ 関連する判例=「相続させる」旨の遺言と代襲相続の可否
    (最判平成23年2月22日民集65巻第2号699頁)

      「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続さ
    せるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した
        場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書
    の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置
    かれていた状況などから、遺言者が、・・当該推定相続人の
    代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していた
    とみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることは
    ないと解するのが相当である。

     《解説》

          △ 当該判例の事例によれば、
     
      被相続人Aが長男B(推定相続人)に全財産を相続させる
     旨の遺言(いわゆる相続させる遺言)をしていた場合に父親
     であるAよりも先にBが死亡してしまったときどうなるかが
     テーマになる。

      《 当該判例の相続関係図 》
      
             (H18・9・23死亡)
               被相続人A

                     |

           (H18・6・21亡)
                ↓
               長男B   二男C
               
                |

               Dら複数の子

     ▽ 考察の順序

      
    (1) 本件「相続させる」公正証書遺言《公正証書の記載に
       おいて、特定の相続人に「相続させる」趣旨が明らかで
             あるもの・実務上、当該公正証書には「相続させる」旨
             が明記されている》とは、当該判決によれば「Aの遺産
             全部をBに単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定
             するもので、当該遺産がAの死亡の時に直ちに相続によ
             りBに承継される効力を有するものである」。

        遺産分割の方法の指定については、908条に規定
              があり、「相続させる遺言」がこの遺産分割の方法の
              指定に該当し、被相続人死亡の時に直ちに相続により
              当該相続人に承継される効力を有するものであるとい
              うことは、すでに最高裁判決で確定している(最判平
              3・4・19民集45−47ー477)。

    (2) 「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるも
              のとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した
              場合において、当該判決は、前記のとおりの特段事情
              がない限り、効力を生じないとした。

     (3)  当該最高裁判決が言い渡される以前においては、相
              続させる遺言と代襲相続の可否については、代襲肯定
              説と代襲否定説に立つ下級審判決が対立していた。
        それぞれの説の根拠は、以下のとおりである。
      
        代襲肯定説⇒「相続させる」旨の遺言は、代襲相続
              が認められない遺贈(前記のとおり994条1項が根
              拠規定となる)とは異なり、法定相続において、代襲
              相続が認められる(887条2項参照)のに準じて、
              代襲相続を肯定すべきである

        代襲否定説⇒「相続させる」旨の遺言では、被相続人
       の意思は、特定相続人が先に死亡した場合には、代襲
       相続人に相続させることにあるとは言えないので、この
       場合には、当然に遺言を失効させることが、被相続人の
       遺言意思に合致する。ただし、遺言意思をいう以上、特
       定相続人が先に死亡した場合には、その代襲相続人に代
       襲相続させることが遺言書中に記載があれば、その通り
       の効力を認めるべきである。
        したがって、この説によれば、さきに述べた遺贈にお
       ける補充遺贈と同様の結果になるであろう(995条た
       だし書き)。

     (4)当該最高裁判決は、原則的に代襲を否定しているので
       あるから代襲否定説に立脚していることになる。しかし、
       代襲否定説が、遺言書中に記載がある場合に例外を認め
       るのに対して、当該判決は、特段の事情の存在による例
       外を認めることになるから、代襲否定説よりも例外の範
       囲が広いので、代襲否定説とも異なる第3の説に立脚し
       ていることになるであろう。

     (5) 当該判決は、さきに掲げた《当該判例の相続関係図》
        によれば、特段の事情のない限り、AがBに対して
              「相続させる」旨の遺言は、効力を生ずることはないの
               であるから、Bの法定相続人であるDら複数の子が代
               襲相続をすることはなく、Aの法定相続人である二男
               Cが相続する結果になる。
       
   ○ エについて

    965条によれば、886条が準用されているため、遺贈
   の場合にも、胎児には例外的に権利能力が認められるので、
   遺贈者は胎児に遺贈することができる。 この場合も、包括
   ・特定いずれでも可である。

     本肢は、妥当である。
    
    なお、965条は、891条を準用しているので、包括・
   特定いずれの場合も、相続の欠格者は、受遺者になれない。


      ○ オについて

         本肢は、特定の不動産の遺贈であるから、特定遺贈になる
    ので、対抗要件として、所有権移転登記を要する。
   
    以下の判例がある。

   甲から乙への不動産の遺贈による所有権移転登記未了の間
  に、甲の共同相続人の1人の債権者が当該不動産の相続分の
  の差押えの申立てをし、その旨の登記がされた場合、当該債
  権者は、民法177条の第三者にあたる(受遺者は登記なし
  に遺贈を当該債権者に対抗できない。(最判昭39・3・6
  民集18−3−437)。)

   以上の判例に従えば、本肢は妥当である。

  ---------------------------------------------------------

     妥当でないのは、肢ウのみであるから、1が正解である。

 ------------------------------------------------------------

   ★ 参考書籍 
  
 
     民法 3・ 我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房
 

 

   ● 行政法


  ▲ 各肢の検討
  

  ○ 肢1について

     これは、最判昭和53・6・20(刑集32−4−670)
   からの出題である。以下に判旨を掲げておく。

      職務質問に付随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得て、
    その限度において行うのが原則であるが、捜索に至らない程度
    の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急
    性、これによって侵害される個人の法益と保護されるべき公共
    の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当と認めら
    れる限度で許容される場合がある。

      したがって、検査の必要性・緊急性のある場合には、所持人
    の承諾を得ないで所持品検査を行うことができるので、本肢は
    判例に反する。

       誤りである。

 

  ○ 肢2について

    これは、行政調査についての事前の手続として、事前の通知や
  理由の開示が必要かどうかが、論点になったものである。
 
   「最高裁判所は、所得税法上の質問検査に関し、実定法上特段の
  定めのない実施の細目については、税務職員の合理的な選択に委
 ねられているものとし、『実施の日時場所の事前通知、調査の理
 由および必要性の個別的、具体定な告知のごときも、質問検査を
 行ううえの法律上一律の要件とされているものものではない』と
 している」(最高裁判所1973(昭和48)年7月10日決定
 =荒川民商事件)。(読本191頁)なお、本決定は、刑集27
 巻7号1205頁に掲載されている。

    本肢は、判例に照らして正しい。


  ○ 肢3について

    最高裁判所1988(昭和63)年3月31日判決・判時127
  6号39頁は、許されると判示した。
  
   当該判決は、理由を述べていないが、学者によると、「裁判官
  の令状を得て正当な犯罪捜査で得た資料であるから、これを行政
  処分の基礎として利用することは認められる、といった理由づけ
  が考えられる。」としている(読本194頁)。

   本肢は、判例に照らして、誤っている。


  ○ 肢4について

     調査を行う公務員が本来の目的を外れ、相手方を罪に陥れる
  目的で情報の収集をしてはならない。

   このような調査権限の行使の規律は、多くの法律で規定され
   ている(銀行法25条4項・所得税法234条2項・法人税法
  156条)。(以上、読本 194頁)

  したがって、本肢のような調査は、調査権限の行使の規律
 を逸脱しているので、許されない。

     本肢は誤りである。


 ○ 肢5について

    これは、肢4と裏腹の関係にたつ。前記調査権限の行使の
  規律が調査結果である情報の利用の仕方にも及ぶかどうかと
   いう問題である。

   もし、及ぶとすると、本肢のいうように犯則事件の証拠として、
 利用することは許されなくなる。

    しかし、判例(最高裁判所2004(平成16)年1月20
  日決定)は及ばないとの立場を採用し、行政調査により収集さ
   れた証拠資料が犯則機関に引き渡されることを認め、犯則事件
   の証拠として利用することを許した。(読本195頁参照)
     なお、本決定は、刑集58巻1号26頁に掲載されている。
  

      したがって、本肢は、判例に反するので、誤りである。

 
--------------------------------------------------------------
  
    以上を通じて、正解は2である。

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   ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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            ★ オリジナル問題解答 《第46回 》★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法

    
  【目次】   解説
              
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 ■   オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第142号掲載してある。
 
 ☆ メルマガ第142回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 

 [問題1]


  ● 行政上の「強制執行」とは、、 「行政処分」 によって課され
  た義務を義務者が履行しない場合に課されるものである。

   したっがて、(ア)には、強制執行が入り、(イ)には、
  行政処分が入る。

   ちなみに、(ア)群にある「行政強制」とは、強制執行制度
  間接的強制制度 即時強制 全部を総称するものであることに
  注意!!

   また、(イ)群にある「行政立法」は、行政処分と同様、権力
    的行為であり、法行為でって同類である。
    しかし、行政立法は、「不特定多数のひとびとを対象とした
  一般的・抽象的なものであって、特定の私人を対象とした個別的・
  具体的なものものでは」ない(入門141頁)から、強制執行と
  結びつかないことに注意!!
  
   次に、即時強制については、以下の記述を参照されたい。

      直接強制に類似する実力行使として、「即時強制」がある。
  これは、法令や行政行為等によってひとまず私人に義務を課し、
  その自発的な履行を待つのでなく、いきなり行政主体の実力が
  行われるのを特徴とする。「義務の履行強制を目的とするもの
  でないことを特徴とする。」(入門183頁)

      したがって、(ウ)には、直接強制ではなく「即時強制」が入る。
   
   また、後述するように、「行政調査」と「即時強制」を分かつの
  は「強制」であるから、(エ)には「強制」が入る。

  
  -------------------------------------------------------------  

    以上によれば、4が正解である。

  -------------------------------------------------------------

 

 [問題2] 


 ●  要点
   
  行政法学で特に「行政調査」というばあいには、行政機関の行う調査
  のすべてをいうのではなく、そのなかでも以下のようなものを指すとさ
  れる。
  
  「行政機関が私人に対して質問や検査をしようとするばあいで、私人
   がこれに自発的に応じないばあいには、なんらかのかたちでの公権
   力の行使がおこなわれる可能性があるもの」

  これらの「行政調査」のうち、なんらかの調査の目的でおこなわれる
  行為であっても、直接に身体や財産に手をかけるようなケースは、「即
 時強制」の方に入る。

   (以上 入門185頁)

 
 ●  各肢の検討
  
 
 ○ アについて
 
   妥当である。

  「行政上の即時強制については(行政上の代執行とは異なり)一般法は
   存在せず、従ってまた、ここで説明すべき一般的仕組みも存在しない。
  
   行政機関が行政上の即時強制を行うについては、法律の授権が必要
 である。そして、行政機関としては、法律の授権が存在すれば、授権
  を行う法律の定めるところに従って即時強制を行えば足りる

 (読本 143頁)

 ○ イについて
 
  さきに述べた要点によれば、相手方の任意の協力を求めて行われる自動車
 検問は、「即時強制」に該当しないであろう。

  妥当でない。

 
  ○   ウについて

   妥当でない。

   実際上、即時強制に際して、司法機関の令状ないし許可状をとることが
 必要であることとされている例は個別法にある(出入国管理及び難民認定
 法31条・警察官職務執行法3条3項)。

  「ただ、こういうことを一般的に定めている法律はないので、そこで、
  こういうような規定がないばあいについても(憲法の規定からして≪※
  注1≫)裁判所がまったくかかわることなしのこなわれた即時強制・行
  政調査≪※注2≫は違法となるのではないか、という問題があるわけで
  す」(入門 187頁)

   ※ 注 1 憲法35条

  ※  注 2 [問題3] 肢ウ 参照

 

 ○ エについて 

  本肢のような継続的な性質を有する即時強制は、行政上の不服申立て
 の対象となる(行審法2条1項に明記)。取消訴訟も提起できるだろう
 (読本143頁)。

  妥当でない。

 ○ オについて

  義務の賦課なくいきなり強制が加えられるのが、即時強制の特徴である
 から、本肢は、即時強制に該当する。

  
  妥当である。

 ---------------------------------------------------------------------- 
   
     アとオが妥当であるので、2が正解である。

 -----------------------------------------------------------------------

  

 [問題3]


 ● 本問は、[問題2]とは異なった観点に立脚していることに注意せよ。

  [問題2]では、行政調査のうち強制行為については、「即時強制」に
  該当するとした。
  
    これに対して、本問では、「行政調査」全体について、強制行為
 (権力的)に該当するものとそうでない(非権力的)ものが存在する
   ことを認めたうえで、それぞれの規制を考察しようとするものである。
  
  むしろ、現在では、この手法が普通であろうと思われる。

 ● 各肢の検討

 
 ○ 肢アについて

  前記の観点に立てば、行政調査は、いずれの場合にも行われる。

  妥当でない。


 ○ 肢イについて

  これは、ズバリ、行手法3条1項14号の適用除外の問題である。

 「・・資料提出や出頭を命じる調査は、行政処分の形式で行われ
 るものであり、一種の不利益処分として行政手続法を適用するこ
 とも可能であるが、行政手続法は、『情報の収集を直接の目的し
 てされる処分・・』を適用除外している(行手法3条1項14号)。」
 (読本191頁)。

 妥当でない。


 ○ 肢ウについて

   ここでの論点は、以下のとおりである(読本190頁以下参照)


    行政手続においても、個別法において、憲法35条2項の令状
   主義が採用されている場合がある。

   「そこで問題になるのは、令状主義について法律に規定がない場
     合に、憲法35条2項の令状主義の適用があるかということで
     ある。」
    本来この規定は、刑事責任を追及する刑事上の手続に適用され
   るものだからである。

    最高裁判所大法廷は、1972(昭和47)年11月22日判決
 =川崎民商事件において、本肢のように述べて、「強制の性格の調
 査について憲法35条2項の令状主義の要請の及ぶ余地を認めた・・」

  妥当である。

  なお、当該判決は、よく引用される重要なものである。
   

  ○ 肢エについて。 

   これは、最高裁判所昭和55年9月22日決定からの出題である。

   当該判決によると、自動車の一斉検問は、警察法2条1項が「交通
 の取締」を警察の職務としていることを根拠にしているが、「任意」
 であって、強制力を伴わなければ、「一般的に許容されるべき」とし
 ている。

  この一斉検問は、犯罪にかかわる職務質問に付随する所持品検査に
 対して、犯罪とは関係なく無差別に行われる検問であるあるから、か
 りに任意であっても、この自動車検問自体が「法律の留保の原則」(注)
 に違反して違法ではないかという問題がある。

  注 「行政の行為のうち一定の範囲のものについては、行為の着手
     自体が行政の自由ではなく、その着手について法律の承認が必
     要であると考えられている。この一定の行為について法律の承
     認(つまり授権)が必要である、という原則を『法律の留保の
     原則』と呼ぶ。」

    これについては、前述したとおり、最高裁判所は、警察法の規定
  する「交通の取締」を根拠にしているが、学者はそれにはかなり無
  理があるとして「『法律の留保の原則』の見地からは、一斉検問を
  正面から授権する規定を法律(道路交通法になろう)の中に設ける
  ことがあるべき解決策といえる。」としている。

   (以上、読本58頁を参照した)

    以上の記述に従えば、本肢の見解は、最高裁判所の判決に反する
  ものといえる。

  妥当でない。


 ○ 肢オについて

  本問肢ウの川崎民商事件では、「所得税法の質問検査権については、
 それが『直接物理的な強制を認めるものでなく、検査を拒んだものに
 対する罰則による間接的強制をおこなうものであることにすぎないこ
 と』」(入門187頁)を理由に、令状主義による強制調査の適用外
 とした。
 
  したがって、肢オの罰則を伴う間接的強制を最高裁判所は、容認して
 いる。

  肢オは誤りである。


  換言すると、この場合、裁判所の令状がなくても違憲・違法とはいえ
 ないのは、直接物理的な強制ではなく、罰則による間接的強制をおこな
 うものだからである、というものである。

 ----------------------------------------------------------------

   本問においては、ア・イ・エ・オが妥当でないので、4が正解である。
  

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   ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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