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★ 過去問の詳細な解説 第 96 回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政法
【目次】 問題・解説
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■行政法・ 平成22年度・問題8
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A市は、風俗営業のための建築物について、条例で独自の規制基準を
設けることとし、当該基準に違反する建築物の建築工事については市長が
中止命令を発しうることとした。この命令の実効性を担保するための手段
を条例で定める場合、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできる
ものは、次の記述のうちどれか。
1 当該建築物の除去について、法律よりも簡易な手続で代執行を実施
する旨の定め。
2 中止命令の対象となった建築物が条例違反の建築物であることを公
表する旨の定め。
3 中止命令を受けたにもかかわらず建築工事を続行する事業者に対し
て、工事を中止するまでの間、1日について5万円の過料を科す旨の
定め。
4 市の職員が当該建築物の敷地を封鎖して、建築資材の搬入を中止さ
せる旨の定め。
5 当該建築物により営業を行う事業者に対して1千万円以下の罰金を
科す旨の定め。
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■ 解説
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○ 序説
本問は、全体として、論点が把握し難いが、単純化すれば、その基準
になるのは、主に行政代執行法第1条・同法2条および地方自治法14
条3項である。各肢について検討する。
◎ 各肢の検討
● 肢 1
条例に基づき、行政庁命じられた義務については代執行ができる(行政
代執行法第2条第1項カッコ書きにおいて、条例を明示している)。
したがって、市長の中止命令に反する当該建築物の除去義務は、代替
作為義務であるから、代執行できる。
しかし、法律よりも簡易な手続で代執行を実施する旨の規定を条例で
設けることは、二重の意味で許されない。
第一には、「法律の範囲内で条例を制定することができる」とする憲
法の規定に反する(憲法94条なお地方自治法14条1項)。
第二には、行政代執行法第1条に反する。当該規定の趣旨は以下のと
おりである。
地方公共団体に関して言えば、その「行政庁は、行政代執行法の規
定により代執行ができるし、さらに、個別の法律の規定があれば、そ
の法律で定められている強制執行を行うことができる。しかし、その
反面、条例によって強制手段を創設することはできない。」(読本
139頁)
つまり、条例によって、簡易な手続による代執行を定めることは、条
例による強制手段の創設に連なる。
疑義の余地なく設けることはできない。
● 肢 3・4について(説明の便宜上、肢2を後に回す)
★ 強制執行制度
原則→ 「行政代執行」(行政代執行法2条)
別の法律の定め→「直接強制」・「執行罰」・「滞納処分」
(同法1条)
執行罰というのは、「義務を履行しない義務者に対して心理的
強制を加えるために、金銭的な罰を科する方法である」(読本
132頁))から、肢3がこれに該当する。
行政上の直接強制とは、「義務者の身体や財産に直接に実力を
行使して義務を履行させるという方法である」(読本132頁)
から、4がこれに該当する。
肢1第二で明らかにしたように、条例によって、強制手段を
創設できないのであるから、執行罰(肢3)、直接強制(肢4)
という強制手段の創設を条例で設けることはできない。
いずれも、疑義の余地なく設けることのできるには該当しな
い。
● 肢2
公表とは、行政が持っている情報を公表することがである。
本肢では、行政処分に従わない者に対する制裁(間接的強制
手段)としての公表が対象になっているが、この公表というの
は、刑罰とは異なり、比較的軽い措置である。
ここにいう公表は、強制執行ではないので、条例で定めても
前記肢3・4のように、「条例によって、強制手段を創設した」
ことにはならない。
また、行政手続条例において、その実効性を確保するために、
公表の規定を置くことは望ましい(行政手続法46条参照)。
(以上、前掲書参照)
以上の記述に従えば、本肢は、「疑義の余地なく設けること
のできるもの」に該当するので、本肢が正解である。
● 肢5
地方自治法第14条第3項によれば、、条例違反の行為に対
し、その条例中に百万円以下の罰金の規定しか設けられない。
したがって、本肢の定め疑義の余地なく設けることはでき
ない。
▲ 付言
各肢を素早く比較して、直感的に肢2の「公表」を正解とし、
あと、時間が余れば、前述した論拠を考察するのも一方法かも
しれない。
肢1~4の論拠の考察は、結構高度で、それなりに時間がか
かると思料するから。
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★ 過去問の詳細な解説 第95回 ★
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【テーマ】 民法
【目次】 問題・解説
余禄
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■ 平成22年度・問題46(記述式)
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以下の【相談】に対して、[ ]の中に適切な文章を40字程度で
記述して補い、最高裁判所の判例を踏まえた【回答】を完成させなさい。
【相談】
私は、X氏から200万円を借りていますが、先日自宅でその返済に関
してX氏と話し合いをしているうちに口論になり、激昂したX氏が投げた
灰皿が、居間にあったシャンデリア(時価相当150万円相当)に当たり、
シャンデリアが全損してしまいました。X氏はこの件については謝罪し、
きちんと弁償するとはいっていますが、貸したお金についてはいますぐに
でも現金で返してくれないと困るといっています。私としては、損害賠償
額を差し引いて50万円のみ支払えばよいと思っているのですが、このよ
うなことはできるでしょか。
【回答】
民法509条は「債務不法行為によって生じたときは、その債務者は、
相殺をもって債権者に対抗することができない。」としています。その
趣旨は、判例によれば[ ]ことにあるとされています。ですか
ら今回の場合のように、不法行為の被害者であるあなた自身が自ら不法
行為にもとづく損害賠償債権を自動債権として、不法行為による損害賠
償債権以外の債権を受動債権として相殺することは、禁止されていませ
ん。
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■ 解説
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● 序論
1 本問においては、全体として考察すれば、【相談】内容に目を通す
必要がない。
【回答】欄において、「今回の場合ように 不法行為の被害者・・
が自ら不法行為にも とづく損害賠償債権を自動債権として、不法行為
による損害賠償債権以外の債権を受動債権として相殺することは、禁止
されていません」として、相談内容を要約したものが呈示されているか
らである。
したがって、わざわざ、時間を費やして、以下のように図示して、
【相談】内容を解明する必要性に乏しい。
・
X
200万円 150万円
↓ 貸金債権 ↑ 損害賠償債権
(受動債権) (自動債権)
私
・
2 ここでいう判例とは、「本条≪民法509条》は、不法行為に基
づく損害賠償債権を自動債権とする相殺までも禁止する趣旨ではな
い。(最判昭42・11・30民集28-9-2477)」
模範六法 1059頁 509条 1 ▽ 参照
一般的知識としては、通常このあたりまでの認識はあるであろう。
しかし、
このことを本問の解答として、記載しても、蛇足であるから、点数
にはならない。
◎ ズバリ回答としては、
前記最高裁判所の要旨を要約したものとなるであろう。
その要旨
民法第509条は、不法行為の被害者をして現実の弁済により損害の填補
をうけしめるとともに、不法行為の誘発を防止することを目的とするもの
であり、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為による
損害賠償債権請求権以外の債権を受働債権として相殺をすることまでも
禁止するものではないと解するのが相当である
その要約としての本問の回答
--------------------------------------------
不法行為の被害者に現実の弁済に
よる損害の填補をうけさせるとと
もに不法行為の誘発を防止する。
45字
---------------------------------------------
○ 付言
1 ズバリ回答をゲットしようとすれば、この問題を予想し、予め、最高裁判所
図書館もしくは国立国会図書館所蔵の「最高裁判所民事判例集第21巻9号2
477頁」を見て、暗記した希有な者に限られるであろう。
2 それでは、判例の暗記という観点を離れて、標準的な法律書を基に本問を
考察してみてみよう。
民法509条によって、不法行為債権を受動債権として相殺が禁じられる
のは、「不法行為の債務は必ず現実に弁済させようとする趣旨である」から
である。
もう一つは、仕返しを回避するためである。分かりやすく言えば、頭をぼこ
にした相手に対し、自分も相手のかしらを同程度にボコボコにして帳消しにし
ようとすることが許されないのである。
あるいは、「任意に履行履行しない債務者に対して債権者が自力救済その他の
不法行為をしたうえで、それによって相手方が取得する損害賠償債権を受動債
権として相殺をもって対抗するようなことを許さないというねらいも含んでいる。」
・
したがって、受験者の頭の隅に「現実弁済」とか「自力救済の禁止」という
言葉が浮かべば、さきの最高裁の判例の要旨を知らなくても、何とか正解に達
する可能性が開けてくるのである。
以下は、【余禄】欄に譲る。
▲ 参考事項
以下の判例あるので、参考までに掲げておく。
双方の過失に基づく同一交通事故による物的損害の賠償債権相互間でも、
相殺は許されない。(最判昭49・6・28 民集28-5-666)
《22年度模範六法・民法509条 2 ▽ 》
当該判決の判旨によれば、「民法509条の趣旨は、不法行為の被害者に
・
現実の弁済によって損害の填補を受けさせること等にあるから、およそ不
法行為による損害賠償債務を負担している者は、被害者に対する不法行為に
よる損害賠償債権を有している場合であっても、被害者に対しその債権をも
って対等額につき相殺により右債務を免れることは許されないものと解する
のが相当である」。
★ 参考文献
民法 2 ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房
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■ 余禄・先生と美里さんの会話(メルマガ配信から抜粋)
《平成22年度問題 46 を巡って》
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永宗美里さんの紹介
花の独身・28歳・瞳がきらきら輝き、活発・行政書士受験歴2回・
3回目に挑戦中。
先生の事務所に勤務・先生の姪にあたるが、事務所内では、伯父を
先生と呼ぶ。
--------------------------------------------------------------
どちらが先生?
ーーーーーーーー
先生「平成22年度・問題46については、当日どう回答した?」
美里「あまり答えたくありませんが、・・・【相談】の事例を読めば、
受動債権が 貸金債権であって、不法行為による債権ではありま
せんので、民法509条に照らして、相殺が可能だと考えまし
た。」
先生「それは、当然だ。例の最高裁の判決要旨は知らなかったんだね」
美里「今では、その存在は分かっていますが、試験日には、その要旨に
ついて、全然頭にありませんでした」
先生「それも当然だ。その点、君は悪くない。それを知っていろという
のは要求過多だ。それでは、なにを書いた?」
美里「はい、509の立法趣旨として、不法行為の被害者に実際に弁済
する必要があるから、相殺が禁止されていることは知っていまし
たので、この場合は、自動債権が損害賠償債権ですから、相殺可
と思い、そのことを書きました」
先生「それはそれで、正しい」
美里「でもね、先生。『不法行為の被害者に現実に弁済する必要がある』
と書くと、空欄が半分なんです。仕方がないから、これに続けて、
『・・・から、不法行為による債権を自動債権とするのは可』と
かなんとか、書いたと思います。」
先生「後半が蛇足だ」
美里「分かってます。これは、まずいと思って、書いたんですから・・
蛇足だと思って、空欄を埋めただけですから」
先生「『自力救済の禁止』という文言は浮かばなかったんだな」
美里「ちらりと、頭をかすめましたが、事例をみれば、受動債権が不法
行為ではないわけですから、自力救済は関係ないと思ったんです」
先生「なるほど。しかし、いまは、そのからくりはわかっているね」
美里「先生。わたしが説明いたしますわ。まかせてください」
先生「君が先生だ!どうぞ」
美里「つまりですね。【相談]の事例によっても、受動債権が不法行為
でなくて、貸金債権であることがポイントですね。【回答】でも、
『不法行為による・・債権以外の債権を受動債権として』相殺可
となっていますよね」
先生「裏から言えば・・・・」
美里「(みなまで言うなと制するように・・)受動債権が不法行為で
ある場合には、自力救済禁止、判例によれば、「不法行為誘発
防止」のため、相殺不可であるから、そのことも[ ]欄に
記載しておく必要があるということですね」
先生「Exactly! 最後に一言。じっくりこの問題をながめて
ほしい。【回答】欄の記載だけで回答できる。かえって、【相談】
の事例にひっぱられると、現実弁済しか念頭にうかばないことに
なる。もうひとつ・・・・」
↓ 続き( 一週間後・・)
二丁拳銃と二刀流
ーーーーーーーーー
美里「先生、もうひとつとはなんですの。1週間も待たされたんです
もの。先生あんまり勿体ぶらないで!」
先生「そんなつもりはない。ただ誌面の都合でそうなっただけだ。
つまり、私の言いたかったことは、この問題の採点基準につい
てだ。前に掲げた最高裁判所の判例(最判昭42・11・30)
の判旨を機械的に当てはめて、そのとおりかどうかを基準にし
てほしくないということだ」
美里「そうですね。『現実弁済』のほか、『自力救済の禁止』『仕返し
の禁止』でもいいわけですよね。現実の弁済による損害の填補
とか、不法行為の誘発防止でなければ、減点というのは、お笑
・
い草ですよね!}
先生「君も八つ当たり気味だね。そんな草は見たこともないが・・。
いずれにしても、採点者が、この事案を咀嚼し、柔軟に対処
できるかどうかが鍵だと思うな」
美里「例えば、『不法行為の被害者に現実の弁済をさせるとともに、
自力救済を禁止する』(33字)でもいいわけですよね」
先生「私には、減点の対象が見当たらない。自力救済・・が仕返し
の禁止であっても、一向にかまわないじゃないか」
美里「わたし、古い西部劇で、二丁拳銃で、一度に同時に二人を殺す
場面見ていて、この問題を連想しましたわ」
先生「なるほど、正面の敵は、現実弁済の自動債権だ」
美里「横には、自力救済禁止という敵ですね」
先生「面白いね。敵は、不法行為の衣を被っている。・・それでは、
チャンバラ映画の二刀流は、どうだ」
美里「先生、同じことですわ。蛇足です」
先生「(むっとして・・)もう止めておこう」
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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★ 過去問の詳細な解説 第 94 回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 民法
【目次】 問題・解説
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■ 平成22年度問題45(記述式)
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Aは、Bから金銭を借り受けたが、その際、A所有の甲土地に抵当権が
設定されて、その旨の登記が経由され、また、Cが連帯保証人となった。
その後、CはBに対してAの債務の全部の全部を弁済し、Cの同弁済後に、
甲土地はAからDに譲渡された。この場合において、Cは、Dを相手に
して、どのような権利の確保のために、どのような手続を経た上で、ど
のような権利を行使することができるか。40字程度で記述しなさい。
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■ 解説
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● 図示
B 債権者兼抵当権者
↓ ↓
C 連帯保証人 A 債務者兼抵当権設定者
甲土地 → 第三取得者 D
○ ポイント
1 連帯保証人Cの債務者Aに対する求償権
「CはBに対してAの債務の全部を弁済し」たのだから、Cは、
Aに対して求償権を有する(459条以下・ただし、連帯は問題
にしなくてよい))。
2 弁済者CによるBの有する抵当権の行使(500条 ただし、
Cは≪連帯≫保証人であるから、法定代位になることに注意!
・501条本文)
弁済による代位または代位弁済により、弁済者Cの求償権を
確実にするため、弁済を受けた債権者Bの有する抵当権を代位
できるのである。
3 代位の付記登記
ア 「保証人の弁済後に第三取得者が生じたときは第三取得者の
出現前に代位の付記登記をしておかなければ、保証人は第三
取得者に対して代位できない(501条但書1号・「あらか
じめ」とはこのような趣旨と解されている)。保証人が弁済
したから抵当権は実行されないと思って買った第三取得者を
保護するためである」【後掲 内田民法 参照】。
イ 弁済の後、付記登記前に、第三取得者を生じたときは、もは
や代位の付記登記はできない(昭和11・5・19)
ウ 第三取得者の出現後に保証人が弁済したときは、付記登記は
不要とされる(昭和41年11月18日)。抵当権付で不動産
を取得した第三取得者は、もともと抵当権の負担を覚悟してい
るべきだからである。【後掲 内田民法 参照】。
B Cの代位 時の順序
ア 弁済→付記登記→Dの出現
↓
イ 弁済→Dの出現→付記登記不可
ウ Dの出現→弁済→付記登記不要
C A → D
弁済
◎ 本問の解答
本問の事例は、前記 ○ ポイント 3 イ によれば、付記登記
不可に該当する。
・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・
本問において、「求償権の確保のため、代位の付記登記手続を経た
・・ ・・・・・・・・・・・・・・
上で、抵当権を行使することができる」という解答を求めるならば、
事例自体を 前記 ○ ポイント 3 ア に変更しなくてはならな
い。
つまり、付記登記に関していえば、
Cの弁済後に、甲土地がAからDに譲渡される前に、Cはどのよう
な手続きを経る必要があるかということが問われなくてはならない。
もし、
弁済後、第三取得者Dが出現すれば、この後、付記登記はできないの
だから、付記登記は、Dの出現前に行うことは当然の前提であるという
のであれば、正解は前述した、・・・・・・・ということになる。
しかし、
前述したように、時の順序は本問では重要な論点であるのに、これを
無視した出題には疑問が残る。また、本問では連帯保証となっているの
にこれが利いておらず、連帯に特有な論点がないことにも疑問が残る。
★ 参考文献
民法三 内田 貴 著・東京大学出版会
民法 2 ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房
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★ 過去問の詳細な解説 第93回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政法
【目次】 問題・解説
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■ 平成22年度 問題44(記述式)
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Y組合の施行する土地区画整理事業の事業地内に土地を所有していたX
は、Yの換地処分によって、従前の土地に換えて新たな土地を指定された。
しかし、Xは、新たに指定された土地が従前の土地に比べて狭すぎるた
め、換地処分は土地区画整理法に違反すると主張して、Yを被告として、
換地処分の取消訴訟を提起した。審理の結果、裁判所は、Xの主張のとお
り、換地処分は違法であるとの結論に達した。しかし、審理中に、問題の
土地区画整理事業による造成工事は既に完了し、新たな土地所有者らによ
る建物の建設も終了するなど、Xに従前の土地を返還するのは極めて困難
な状況となっている。この場合、裁判所による判決は、どのような内容の
主文となり、また、このような判決は何と呼ばれるか。40字程度で記述
しなさい。
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■ 解説
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○ 参考文献
「行政法入門」 藤田 宙靖著 ・「行政法読本」 芝池 義一著
いずれも有斐閣発行
◆ 行政事件訴訟法・条文
(特別の事情による請求の棄却)
第31条 取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、
これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合に
おいて、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程
度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取
り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、
請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文に
おいて、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならな
い。
2項以下省略
★ ズバリ、本問の解答
1 問題文の事例が、この条文の要件に該当することを素早く見抜く。
2 この条文に基づいて行われる判決のことを「事情判決」という。
3 条文から本問に関連する箇所を抜粋すると、「請求を棄却」・
「当該判決の主文において、処分・・・が違法であることを宣言」
となる。
1・2・3を総合すると、
・
条文の処分を「換地処分」と具体的に言い換えて、設問に答えると、
◎ 主文では、換地処分が違法であることを宣言し、請求を棄却する。
この判決は、事情判決という。
44字。
☆ 「事情判決」の知識を明確にするため、前記○ 参考文献「入門」
から抜粋
(事情判決)とは、裁判所が、行政処分が違法であることを認め
めながら、行政処分を取り消すことが公共の福祉に適合しない場合
に、原告の請求を棄却するという判決である。従って、請求棄却判
・・
決の一種であるが、特殊なものである。行政事件訴訟法31条に規
定がある。 ー中略ー この事情判決は、行政処分が違法
であるけれども公共の福祉のためにそれを取り消さないもので、も
・・・ ・
ともと例外的な制度であるから、事情判決が行われることはそう頻
・・・・・・・・・・
繁にあるわけではない。
《藤本 加入・ ここから著者は、ズバリ、本問の事例説明に相当
する内容を展開されている。》
事情判決が行われる一つのケース土地区画整理事業である。
土地区画整理事業とは、街づくりの一つの方法で、一定の地域にお
いて、土地の区画を整理することを本来の目標とするものである。そ
の過程で換地処分というものが行われる。これにより、例えばAさん
は、それまで持っていた土地とは別のところに土地を取得することに
なる。Aさんがこの換地処分に不服があり、取消訴訟を提起したとす
る。その後、判決までに何年かの時間がかかることがあるが、その間、
土地区画整理事業を終えた土地で新しい街づくりが進んでいることで
あろう。その場合、裁判所が、Aさんに対する換地処分が違法である
と考えても、もしその換地処分を取り消すと、せっかく進んでいる街
づくりをご破算にしなければならない。そのようなことはあまりにも
もったいない、公共の福祉に適合しないと考えると、裁判所は、事情
判決を下すことが許されるのである。
△ 参考事項
憲法問題
最大判昭和51年4月14日判決によれば、衆議院議員定数不均衡事
件において、「・・約5対1の較差は、・・選挙権の平等の要求に違反
すると判断し、配分規定は全体として違憲の瑕疵を帯びる、と判示した。
しかし、選挙の効力については、選挙を全体として無効にすることによ
って生じる不当な結果を回避するため、行政事件訴訟法31条の定める
事情判決の法理を『一般的な法の基本原則に基づくもの』と解して適用
し、選挙を無効とせず違法の宣言にとどめる判決を下した」(芦部信喜
著・岩波書店 参照)。
▲ 付 言
1 本問は、前記抜粋の文章にもあるように、特殊・例外的・頻繁でな
いこと等からすれば、普段の勉強では軽視しがちな分野かもしれない。
抗告訴訟を正面から問う出題からみれば、支流に属するのかもしれ
ない。
2 「事情判決」に焦点を合わせた準備をしていれば、容易に正解が導
きだされたとは思うが、この論点を外せば、お手上げという向きも
あるかもしれない。
3 しかし、参考事項にもあるように、憲法問題としても、重要なテー
マであるから、お手上げではすまされないかもしれない。
4 市販の「直前模試」の類をみると、ズバリこの問題が、記述式とし
て呈示されているところからすれば、試験委員の手の内が読まれてい
た可能性もあろう。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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★ 過去問の詳細な解説 第92回 ★
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【テーマ】 民法
ー過去問に関して、登記にまつわる諸問題・その3(終)−
平成10年度以降の登記のからむ肢を順次とりあげ、解説を行い
ます。本試験準備の有力な武器になることを祈念します。
試験日直前になりましたので、今回は過去問の抜粋をして、締め
とさせていただきます。
【目次】 問題・解説
【直前予想問題】
現在販売中の行政書士試験直前予想問題【平成22年度版】につきまし
ては、多数の読者に恵まれ、深謝しております。
◆藤本式直前行政書士試験予想問題【平成22年度版】はこちら!
↓↓↓
http://www.examination-support.com/2010/
この問題・解説集は、本試験直前対策として、現時点における最適・最
良を目差して、わたしが作成したものであり、残部に限りはありませんの
で、まだ購入されていない方はぜひお買い上げいただき、この期間中、本
誌を伴侶としていただき、本試験合格の栄誉に輝かれることを祈念いたし
ます。
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■ 問題集(過去問の出典は省略)・○×を付すること
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1 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Aが重ねて
甲土地を背信的悪意者Cに売却し、さらにCが甲土地を悪意者Dに売
却した場合に、第一買主Bは、背信的悪意者Cからの転得者であるD
に対して登記をしていなくても所有権の取得を対抗できる。( )
2 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却したが、同売買契約
が解除され、その後に、甲土地がBからCに売却された場合に、Aは、
Cに対して、Cの善意悪意を問わず、登記をしなくしては所有権の復
帰を対抗することはできない。( )
3 Aの所有する甲土地につきAがBに対して遺贈する旨の遺言を死亡
した後、Aの唯一の相続人Cの債権者DがCに代位してC名義の所有
権取得登記を行い、甲土地を差し押さえた場合に、Bは、Dに対して
登記をしていなくても遺贈による所有権の取得を対抗できる。( )
4 遺産分割前に共同相続人の一人Dから相続財産に属する不動産につ
いて共有持分を譲り受けた第三者Hは、登記がなくても他の共同相続
人B・C・Eに共有持分の取得を対抗することができる。( )
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■ 解説集(判例に関しては、三省堂発行の平成22年度 模範六法
から引用≪模 、、条1、2、3・・・で表す≫)
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1 不動産二重売買における背信的悪意者からの転得者は、その者自身
が第一買主との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該
不動産の所有権取得をもって第一買主に対抗することができる(最判
平8・10・29 摸 177条 33)。×
末尾 オリジナル問題 1 参照
2 解除をした売主と解除後の第三者である買主から当該不動産を取
得した者は、対抗関係に立ち、第三者の善意悪意にかかわらず、登
記の先後により優劣を決する(最判昭35・11・29 摸
177条 4) ○
末尾 オリジナル問題 2 参照
3 甲から乙への不動産の遺贈による所有権移転登記未了の間に、甲
の共同相続人の一人の債権者が当該不動産の相続分の差押えの申立
をし、その旨の登記がされた場合、当該債権者は、本条(177条)
の第三者にあたる(受遺者は登記なしに遺贈を当該債権者に対抗で
きない)。(最判昭39・3・6 摸 177条 25)×
なお、本肢は、判例とは異なり、単独相続の事例であるが、結論
は同一であることに注意せよ。
4 不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受
人以外の他の共有者は本条(177条)にいう第三者に該当する。
( 最判昭46・6・18 摸 177条 26)
したがって、共有持分を譲受けた者は、登記なくして、共有相続人
に対抗できない。 ×
◆ 末尾
《問題1》
最高裁判所は、「不動産二重売買における背信的悪意者からの
転得者は、その者自身 が第一買主との関係で背信的悪意者と評
価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって第一
買主に対抗することができる。」という見解に立っている。
上記の最高裁判所の見解は、いかなる考えを前提としたものと
いえるか。 40字程度で記述しなさい。
なお、具体的事例としては、Aの所有する土地につきAがBに
対して売却した後、Aが重ねてその土地を背信的悪意者Cに売
却し、さらにCがその土地を背信的悪意者でないDに売却し、
Dが登記を得た場合を想定し、記述にあたっては、ABCDを
使用すること。
《問題2》
売買契約の解除と登記に関する次の記述のうち、判例の趣旨
に照らして、妥当でないものはどれか。
1 AからBに不動産の売却が行われたが、Bに代金不払いが生じ
たため、AはBに対し相当に期間を定めて履行を催告したうえで、
その売買契約を解除した。解除後にBからその不動産を買い受け
たCに対し、Aは、登記 なくしては所有権の復帰を対抗できない。
2 AからBに不動産の売却が行われたが、その後A・Bの売買契
約が合意解除された。解除後にBからその不動産を買い受けたC
に対し、Aは、登記なくしては所有権の復帰を対抗できない。
3 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売
したところ、A・Bの売買契約がA・Bにより合意解除された場
合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。
4 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売
したところ、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の
期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場
合に、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。
5 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売し
たところ、A・Bの売買契約が解除され、BからAに所有権移転登
記が復帰した場合には、Cが善意であっても保護されない。
《解説》
◎ 問題 1
■ ポイントは、背信的悪意者Cの所有権取得が無効であれば、
Dも所有権を取得しないため、Dに登記があっても、Bに所
有権の取得を対抗できないということ(逆に言うなら、Bは、
登記なくしても、無権利者Dには所有権を対抗できる=無効
はだれでも主張可。登記なくしても可)。
しかし、最高裁判所は、DはBに対抗できるとしているのだ
から、その考えの前提として、AからCに有効に所有権が移転
し、CからDへの所有権移転も有効であるということが是認さ
れなくてはならない。
■ そこで、最高裁判所の考えの前提について、その解答例を
示すと以下のようになる。
Cが背信的悪意者であっても、AからCに所有権が移転して
いるため、Dも所有権を有している。 44字
◎ 問題 2
法定解除=合意解除
解除前の転売 ・ 解除後の転売
A−−−C A−−−−C
↓
保護されるには
登記要 対抗関係
●結局、先に登記 ●先に登記した
した方が優先 方が優先
1について。
法定解除であり、解除後の転売であるから、AとCは対抗関係。
Aは、登記なくして対抗できない。
妥当。
2について。
合意解除であり、解除後の転売であるから、AとCは対抗関係。
Aは、登記なくして対抗できない。
妥当。
3について。
合意解除であり、解除前の転売であるから、Cが保護されるには
Cに登記必要。
妥当でない。正解。
4について。
法定解除であり、解除前の転売であるから、Cが保護されるには
Cに登記必要。
妥当。
5について。
法定解除か合意解除か不明。どちらでも同じであるから、詮索する
要なし。解除前の転売であるから、Cに登記必要。Aがさきに登記
したのだから、Aが優先。
妥当。
なお、以前に、詐欺による取り消し前の善意の第三者(96条3項)は、
登記を要しないという判例があるといいましたね。この5との対比で
いいますと、AがBの詐欺を理由に取り消し、登記もAに復帰して
いても、取り消し前の善意の第三者が優先するということなんですね。
解除前の第三者と同様、保護されるには、登記が必要とした方がよい
のではないかとも思いますが、皆さんはどう考えられますか。
以上 3 が正解
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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★ 過去問の詳細な解説 第 91 回 ★
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【テーマ】 民法
ー過去問に関して、登記にまつわる諸問題・その2−
平成10年度以降の登記のからむ肢を順次とりあげ、解説を行い
ます。本試験準備の有力な武器になることを祈念します。
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■ 問題集(過去問の出典は省略)・○×を付すること
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1 A所有の甲地がBに売却され、さらに善意のCに売却された後、AB
間の売買契約が詐欺を理由に取り消された場合、Aは登記なくしてCに
取消しを対抗することができる。( )
2 A所有の甲地がBに譲渡されたが甲地には賃借人Cがいた場合、Bは
登記なくしてCに対抗することができる。( )
3 A所有の甲地がBに譲渡されたが甲に不法占拠者Cがいた場合、Bは
登記なくしてCに対抗することができる。( )
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■ 解説集(判例に関しては、三省堂発行の平成22年度 模範六法
から引用≪模 、、条1、2、3・・・で表す≫)
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◎ 1について
民法96条3項によれば、詐欺による意思表示の取消しは善意の第
三者に対抗できないのであるから、Aは登記の有無にかかわらず、C
に対抗できない。 ×
◆ 発展問題
a 詐欺による取消しに際して、Cが第三者として保護されるためには
登記を要するか。ここで問題になるのは、対抗要件としての登記では
なく、資格要件としての登記であることに注意する必要がある。
もし、この資格要件としての登記を要するということになればどう
なるか、皆様、よく考えて欲しい。Aが詐欺による取消しを理由にB
の登記を抹消して自己に回復すれば、もはや、Cは自己に登記を移転
できないのだから、善意の第三者であるCは保護されない。
したがって、この場合、AはCに登記がないことを理由にCに対し
取消しを対抗できることになる。
「登記必要説の根拠は、96条3項は詐欺にあった被害者の犠牲に
において、取引安全のため善意の第三者を保護しようというのである
から、保護される第三者は、権利の確保のためになしうることを全て
して、ほぼ確定的に権利を取得したといえる程度まで達している必要
があるのではないか、特に、第三者より先に表意者が登記を回復して
(注)
しまったような場合、いくら善意・無過失の第三者でも、その登記の
抹消まで要求することを認めるのは行き過ぎではないか、という判断
である。」(内田 民法一)
なお、一般には、判例(最判昭和49年9月26日)は、登記不要
説に立っているいるとされるが、内田氏は、登記を不要とする当該判
決の説示には、事案の関係から、先例としての価値に疑問を呈してお
られる(前掲書)。
最後に、当該説に立っても、本肢において、「 Aは登記なくして
Cに取消しを対抗することができる。」とするのは、×である。
注 内田説によると、96条3項の「規定も権利外観法理の一環で
あるから、94条2項の解釈論と同様、無過失を要求すべきだろ
う。」とされる。
★ 参考事項
民法545条1項によれば、解除にも第三者保護規定が設けられて
いるが、判例によれば、第三者が保護されるには登記を要するとされ
ていることに注意!!(最判昭33・6・14 摸545条 13)。
b AB間の売買契約が詐欺を理由に取り消された後に、Bが善意のCに
売却した場合には、Bを起点とする二重譲渡があったのと同じであるか
ら、対抗問題となり、登記の先後で優劣を決するのが通説判例である
(大判昭17・9・30 96条 3・177条 3)。
しかし、現在では、94条2項類推説が有力に主張されているため、
むしろ、この説の方が通説とも言えることに注意する必要がある。
当該論点に立脚したオリジナル問題を末尾に掲げておく。
◎ 2について
他人に賃貸している土地を譲り受けた者は、その所有権の取得に
つき登記を経ない限り、賃料不払いによる解除を賃借人に主張する
ことはできない。(最判昭49・3・19 摸六 605条 9)
土地の賃借人として賃借上に登記ある建物を有する者は、その
土地の所有権の得喪につき、本条の第三者にあたる。(大判昭8・
5・9 前記判例 177条 22)
いずれの判例に照らしても、本肢において、Bは登記なくして
賃借人Cに対抗できないという結論になる。 ×
★ 参考事項
後の判例における「土地の賃借人として賃借上に登記ある建物
を有する者」に注目されたい。
民法605条によれば、不動産賃貸借の対抗力として登記を要
する。したがって、旧所有者から賃借した者が新所有者に当該賃
借権を対抗するためには、登記を要する。
しかし、
建物保護法によると、土地の上に登記した建物を有するときは、
土地の賃貸借はその登記がなくても、これをもって第三者に対抗
することができる(このあたりまでは、本試験の射程距離だ!!)。
以上のとおり、賃借人側から新所有者に対抗できるのかという
視点から捉えると、賃借人に土地の賃借権の登記もなく、賃借上
の建物の登記もない場合は、新所有者に賃借権を対抗できない。
この場合、本肢3でいえば、対抗力としての登記を有しない賃
借人Cは、民法177条の第三者にあたらないことになるので、
Aは登記なくしてCに対抗できることになる。本肢では、Cが
対抗力を有していることが前提になっているのだろう。
◎ 3について
何らの権原なく不動産を占有する不法占有者は、本条にいう
「第三者」に該当せず、これに対しては登記がなくても所有権
の取得を対抗しうる。(最判昭25・12・19 摸六 177
条 21)
当該判例に照らせば、本肢は○
★ 関連事項
平成21年度記述式問題 46から。
XはA所有の甲建物を購入したが未だ移転登記は行ってはいない。
現住甲建物にはAからこの建物を借り受けたYが居住しているが、
A・Y間の賃貸借契約は既に解除されている。XはYに対して建物
の明け渡しを求めることができるか。
【解説】
本問におけるYは、本肢3における不法占拠者Cとは異なるが、
賃貸借契約が解除された後も建物を占有する者であるから、前記
判例に照らせば、何らの権原なく不動産を占有する不法占有者に
該当するため、、民法177条にいう「第三者」に該当せず、こ
れに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗しうることにな
る。
従って、XはYに対して建物の明け渡しを求めることができる。
本問は、記述式の解答として、判例によれば、「第三者」の
範囲をどのように定義しているかを40字程度にまとめる作業を
求めるものであった。
判例(大連判明41・12・15 摸177条 20)は、
以下のように判示する。
本条(民法177条)の第三者とは、当事者もしくはその包括
承継人ではないすべての者を指すのではなく、不動産物権の得喪
および変更の登記欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者を
いう。
従って、正解は、以上の文言を40字程度で表現して、呈示
することなのであった。必ずしも容易な作業ではない。
「不動産物権の得喪および変更の登記欠缺」という言葉が、手
元に資料のない状態においては、すっとはでてこないであろう。
一例を示せば、以下のような表現では、どうであろうか。
第三者とは、不動産物権変動の登記を欠いていることを主張
するのに正当な利益を有する者
41字
★ 末尾
《問題》
AからBに不動産の売却が行われた後に、AがBの詐欺を
理由に売買契約を取り消したにもかかわらず、Bがこの不動
産を善意のCに転売してしまった場合において、第三者 (C)
の取り扱いについては、二つの立場がある。
甲説(判例の考え方)
「民法177条の対抗問題の視点を導入する立場」
乙説(判例に反対する考え方)
「民法94条2項の類推適用という手段を導入する立場」
次の記述のうち、乙説の考え方に立つものの組み合わせ
はどれか。
ア Cがさきに登記をすれば、Aに優先する。
イ Cが保護されるためには、登記は不要である。
ウ 第三者(C)の善意・悪意や過失の有無を考慮した
きめこまやかな調整ができる。
エ Aの取り消しの時点で、BからAに所有権の復帰
があったかのように扱うことができる。
オ 取り消しによる復帰的変動というのは擬制であって、
取り消しの効果である遡及効に適合しない。
1 ア・イ・ウ
2 イ・ウ・エ
3 イ・ウ・オ
4 ア・オ
5 イ・エ
《解説》
この事例は、取り消し後の転売ですから、AとCは対抗関係に
立つというのが、甲説です。
しかし、近時の有力説(乙説)は、94条2項の類推適用説を
採用します。
売却 登記 転売
A−−−−−−B−−−−−−C
取り消し 94条2項
121条 登記の外観を信頼した
初めから無効 第三者保護
AとBに通謀があったとは言えないため、虚偽表示が適用される
事例とは言えませんが、「取消後に放置された実体関係に合わない
登記の外観を信頼した第三者保護」という「権利外観法理」に従っ
て、94条を類推適用をしようというのが、その主張の骨子です。
以上のとおり、甲説が前者の対抗関係説ともいうべきものであり、
後者が乙説の94条2項の類推適用説であることが明らかになりま
した。
アについて。
AとCと先に登記した方が優先するというのは、
「対抗問題」の甲説です。
イについて
94条2項の善意の第三者として保護されるには、登記
を要しないというのが通説です。これは、乙説です。
ウについて。
94条2項には無過失は要求されていませんが、権利外観法理
に従えば、無過失であることを要する、などの議論があります。
これは、乙説です。
エについて。
このように、所有権の復帰(移転)があったと扱うことに
を前提にした場合に初めて対抗問題とすることができる。
甲説の立場です。
オについて。
取り消しの効果である遡及効(始めから無効)を前提にする
のは、94条類推適用の乙説です。
したっがて、乙説は、イ・ウ・オであり、正解は3です。
★ 参考文献
民法 一 内田 貴著 東京大学出版会 発行
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近時の民法の問題は、難化傾向にありまた事例問題としての出題である
ため複雑化しているので、本講座においても、過去問の各肢を素材に応用
力を養成するようにこころがけた。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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■ 問題集(過去問の出典は省略)・○×を付すること
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1 権利能力なき社団Aが不動産を買い受けた場合において、Aは、法人
に準じて扱われるので、登記実務上、A名義の登記が認められる。( )
2 AがBに対しAの所有する不動産を売却した後に、同不動産を重ねて
Cにも売却した場合において、B、Cのうち、同不動産の引渡しまたは
登記の移転を先に受けた方がその所有権を取得する。( )
3 AがB所有の土地をCに売却した場合、
所有権者Bが自らA名義で登記をして虚偽の外形を積極的に作出し、
そのまま放置していた場合には、Bは、Aを所有者だと信頼して買っ
たCに対抗できない。( )
4 A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、Aが甲地をCに
譲渡した場合、Bは登記なくしてCに対抗できる。( )
5 A所有の甲地がBに譲渡され、さらにAB間の譲渡の事実を知って
いるCに譲渡されてCに所有権移転登記がされた場合、Bは登記な
くしてCに対抗することができる。( )
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■ 解説集(判例に関しては、三省堂発行の平成22年度 模範六法
から引用≪模 、、条1、2、3・・・で表す≫)
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1 最判昭47・6・2・・権利能力なき社団の資産たる不動産について
は、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個
人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者と
する登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個
人名義の登記をすることは、許されないものと解すべきである(摸33
条5)。 ×
なお、前記判例は、次のように判示していることにも注意せよ!
権利能力なき社団の資産たる不動産につき、登記簿上所有名義人
となった代表者がその地位を失い、これに代わる新代表者が選任さ
れたときは、新代表者は、旧代表者に対して、当該不動産につき自
己の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求めることができ
る(同じく摸33条5)。
2 民法177条によれば、不動産に関する物権の変動の対抗要件は、
登記である。引渡しは、対抗要件にならない。 ×
3 民法94条の虚偽表示に該当するには、相手方と通謀することを要
するが、不動産の真実の所有者がBであるにもかかわらずBの意思に
基づいてA名義の登記がなされている場合、この不実の登記につきA
の承諾がなくても本条が類推適用されるというのが、判例(最判昭
45・7・24 同旨最判昭50・4・25)である。
したがって、同条2項の適用により、Bは、Aを所有者だと信頼し
た善意の第三者Cに対抗できない(摸94条23)。 ○
なお、前記判例は、以下のように判示していることに注意。
Aから当該不動産を悪意で譲り受けた丙は保護されないが、丙から
さらに当該不動産を譲り受けた丁は当該不実の登記につき善意である
限り本条2項の第三者として保護される。
これは、権利外観法理の現れとして、登記に限らず、権利の外形を
信頼した第三者の保護一般について問題となること注目すべきである。
4 CがBの時効完成前に譲渡を受けた場合には、BとCは当事者の関
係 に立ち、CがBの時効完成後に譲渡を受けた場合には、両者は、
対抗関係に立つというのが、判例の考え方である(最判昭41・11・
22 最判昭42・7・21 摸177条 12・14)。
本肢では、BとCは後者における、対抗関係に立つので、民法177
条により、Bは登記がなければCに甲地の所有権を対抗できない。
×
末尾において、本肢に関連する○×問題を掲げておく。
5 判例は古くから、177条の第三者は悪意者でもよいとしている
から、登記がなくては対抗できない者に悪意の第三者を含むとして
いる。したがって、Bは登記なくしてCに対抗できない。×
なお、背信的悪意者については、末尾エ 参照。
◎ 末尾
ア A所有の甲地につきBの取得時効完成前において、CがAから甲地を
譲受けて移転登記を経由した場合、Bは時効完成後において、登記なく
してCに対抗できない。( )
イ A所有の甲土地につきBの取得時効が完成し、その間にAの側に何ら
変動がなければ、Bは登記なくしてAに対抗できる。( )
ウ A所有の甲地につきBの取得時効完成前において、CがAから甲地を
譲受けて所有権を取得し、Bの時効完成後に移転登記を経由した場合、
Bは登記なくしてCに対抗できない。( )
エ A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、CがAから甲地を
譲受けて移転登記を経由した場合、Cが背信的悪意者にあたる場合は、
Bは登記なくしてCに対抗できる。( )
《解答》
★ アについて
前記判例理論によれば、B・Cは当事者の関係に立つので、Bは
登記なくして、Cに対抗できる。 ×
★ イについて。
土地の占有者Bの側に、たとえば162条の1項の要件が備わり、その
間、所有者Aの側に何らの変動がなければ、Aは第三者ではないから、B
は登記がなくてもAに対して所有権の取得を主張し、移転登記の請求がで
きる。
A・Bは当事者の関係に立つので、当然だともいえる。
○
★ ウについて。
アの肢では、時効完成前に所有権を取得し、移転登記も経由した場合
であるが、この肢では、時効完成後に移転登記を経由した場合である
どのように考えるべきであろうか。
この場合には、CがBの時効完成前に所有権を取得した時点において、
BとCは当事者の関係に立つのであり、時効完成後にCが登記をした
からといって、BとCが対抗関係に立つと考えるべきではない。
不動産の時効取得者は、時効完成後に登記を経由した当該譲受人に登記
なくして、所有権を対抗しうるとする判例がある(最判昭和42・7・21
摸177条 13)
したがって、BはCに対し、登記なくして所有権を対抗できるのであり、
×
★ エについて。
所有権の移転を受けたと同視される時効取得者と所有権の移転を受けて
登記を備えた者が対抗する場合であるから、177条の適用により「背信的
悪意者」論がもちだされて、当然と言えるのかもしれない。
Cが 背信的悪意者であれば、Bは登記なくしてCに対抗できる。
これについても判例があり、判例は、背信的悪意者を以下のように
捉えている。
(最判平成18・1・17摸177条 35 162条 38)
BとCを登場させる。
Cが、当該不動産の譲渡を受けた時に、Bが多年にわたり当該不動産
を占有している事実を認識しており、Bの登記の欠缺を主張すること
が信義に反するものと認められる事情が存在するときは、Cは背信的
悪意者にあたる。
したがって、本肢は、Bは登記なくしてCに対抗できる場合に
あたる。
○
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
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▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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一切責任を負いかねますことをご了承ください。
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★ 過去問の詳細な解説 第89回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】
憲法=内閣と独立行政委員会
すでに、サイト憲法問題(統治機構)第4回において、掲載済
みですが、常にその解説が不適切であったことが気になっていま
した。この機会にその点も改め、改めて解説を行うことにします。
なお、本試験では、近時、憲法に関しては、「考えさせる問題」
の出題が顕著ですが、この問題もその傾向に沿うものであって、
今回は、じっくりと取り組んでほしいと思います。
【目次】 問題・解説
【ピックアップ】
現在、販売されている 行政書士試験直前予想問題【平成22年度版】
は、時宜にかなった企画だったせいでしょうか、たくさんの方々に購入
頂きつつあり、深謝いたしております。
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この問題集は、長年の本試験研究の成果を踏まえ、私が渾身の力をふ
りしぼり、以下の意図をもって作成したものですが、そのことが公にな
り多くの購入者を今もなお、いただいていますことは、光栄であります。
1、本試験と同じ形式を採用し、実際にも、来る本試験との重なりを期
待しました。
2、特に、【解説欄】に勢力を注ぎ、関連する事項に極力言及し、応用
力が養成されるようにこころがけました。
3、89回にもわたる当該「サイト」欄と連動させることにより、体系
的理解を助けることを目的にしました。
最後にわたしの目下の最大の望みは、1人でも多くの方が、本誌を活用
され、直前に迫りつつある本試験で合格の栄誉に輝かれることであります。
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■ 平成19年度・問題4
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国家公務員法102条1項が、その禁止対象とする「政治的行為」の
範囲の確定を、独立行政委員会である人事院にゆだねていることの是非
をめぐっては、次のようにさまざまな意見があり得る。それらのうち、
内閣が行う高度に政治的な統治の作用と、一般の国家公務員による行政
の作用とは質的に異なるという見地に基づく意見は、どれか。
1 憲法が「行政権はすべて内閣に属する」と規定しているにもかかわ
らず、公務員の人事管理を内閣のコントロールが及ばない独立行政委
員会にゆだねるのは、違憲である。
2 公務員の政治的中立性を担保するためには、「政治的行為」の確定
それ自体を政治問題にしないことが重要で、これを議会でなく人事院
にゆだねるのは適切な立法政策である。
3 人事院の定める「政治的行為」の範囲は、同時に国家公務員法に
よる処罰の範囲を定める構成要件にもなるため、憲法の予定する立
法の委任の範囲を超えており、違憲である。
4 国家公務員で人事官の弾劾訴追が国会の権限とされていることから、
国会のコントロールが及んでおり、人事院規則は法律の忠実な具体化
であるといえる。
5 行政各部の政治的中立性と内閣の議会に対する政治的責任の問題は
別であり、内閣の所轄する人事院に対して国会による民主的統制が
及ばなくても、合憲である。
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■ 解説
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◆ 参考文献
憲法 芦部 信喜 著 岩波書店
◆ 総 説
サイト4号における解説は、初期のものであったこともあり、
肩に力が入りすぎていると同時に、適切でないところも散見さ
れる。
☆サイト4回はこちら↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/70949.html
また、本問自体、殊更に難問にする意図も見え隠れしていて、
必ずしもし題意が明確とはいえないところもあるので、正解を
導けなくても、他の基本に忠実な問題で、点数を稼げばよいと
いえる。
しかし、この問題文の中には、重要な論点が提示されている
ので、ここで、本問を検討することは、本試験に向け、意味のあ
ることと思う。
◆ 論点の提示
1 「行政権は、内閣に属する」(憲法65条)のである。
そこで、行政権を行使する人事院は、内閣から多かれ少
なかれ独立して活動している行政委員会に属するので、そ
の合憲性が問題になる。
2 人事院の行使する行政権に基づく任務をみた場合、その
中立性を要求される人事行政と、内閣が行う高度に政治的
な統治作用とに分かれる。
3 前者は、本問でいう「一般の国家公務員による行政作用」
に属するのに対して、後者は、本問でいう人事院に委ねられ
た国家公務員に対する「その禁止対象とする『政治的行為』
の範囲の確定」に属する。
◆ 各肢の検討
○ 1について。
本肢は、人事院の行う人事行政のみに焦点を置いて、これが
違憲であるするのであるから、二つの作用が質的に異なってい
るという見地に基づいていない。
○ 2について。
本肢は、「政治的行為の確定」という「高度の統治作用」
のみに焦点を合わせて、合憲であるというのであるから、
二つの作用が質的に異なるという見地に基づいていない。
○ 3について。
本肢は、「政治的行為」の範囲の確定のみを問題とし、違憲
とするので、同様に二つの作用が質的に異なるという見地に基
づいていない。
注 本肢の内容の説明
ここでは、具体的に何を言っているのか(学者の論争としては、
ポピユラーな題)を説明すると、以下のとおりである。
特に「国家公務員による処罰の範囲を定める構成要件」という
ことが分かり難いところであるが、たとえば、刑法の殺人罪を例
にとると、処罰の範囲を定める犯罪の内容である「人を殺す」と
いうことが構成要件である。。
人事院の定める「政治的行為」の中味もまた、禁止事項であって、
違反すれば処罰されることになるので、、「処罰の範囲を定める
構成要件」ということになる。
そして、憲法第73条6項但し書きによると、法律の委任がなけ
れば、人を罰することができないのに、法律の委任なしに、人事院が、
人事院規則で勝手に国家公務員を処罰することは、違憲である。
以上が本肢の趣旨である。
○ 4について。
本肢は、人事院規則で、人事院が「政治的行為」の範囲を確定
することのみを問題にし、合憲説をとるものであるから、同様に
二つの作用が質的に異なるという見地に基づいていない。
○ 5について。
本肢では、国会による民主的統制がポイントになる。
行政権が内閣に属するということは、内閣における、行政権
の行使についての国会に対する連帯責任(66条3項)を通じ
て、人事院に対して、国会による民主的統制が及んでいる必要
がある。
したがって、行政各部の政治的中立性の要請を根拠に内閣
から独立した人事院が人事行政を行うことは違憲である疑いが
ある。
これに対して、「政治的行為の確定」という内閣が行う高度
に政治的な統治の作用は、そもそも国会の民主的な統制になじま
ないから、内閣から独立した人事院に委ねても合憲である。
以上の見地は、内閣が行う高度に政治的な作用(「政治的行為」
の確定)と、一般の公務員による行政作用(行政各部の政治的中立
性の要請される人事行政)とは質的に異なるということに基づくも
のである。
しかし、本肢の記述はいかにも舌足らずであるとともに、不明確
であり、本肢から前述した趣旨を読み取れというのは無理である。
そのことが、殊更、本問を難問にしているように思えてならない。
いずれにせよ、結論としては、1〜4と5との比較検討により、
本肢を正解にせざるを得ない。
◆ 付 言
本問に関しては、1ないし4の肢は、人事院ないし 行政独立
委員会の合憲性に関する重要な見解であるので、本問の検討を通
じて、むしろ、これらを正確に把握することの方が肝要であると
思う。
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■ 平成21年度・問題7
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衆議院と参議院の議決に一致がみられない状況において、クローズ
アップされてくるのが両院協議会の存在である。日本国憲法の定めに
よると、両院協議会を必ずしも開くかなくてもよいとされている場合
は、次のうちどれか。
1 衆議院が先議した予算について参議院が異なった議決を行った場合
2 内閣総理大臣の指名について衆参両院が異なった議決を行った場合
3 衆議院で可決された法律案を参議院が否決した場合
4 衆議院が承認した条約を参議院が承認しない場合
5 参議院が承認した条約を衆議院が承認しない場合
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■ 解説
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◆ 総説
衆議院の議決が優先される事項
1 予算の議決(60条2項)
2 条約の承認(61条)
3 内閣総理大臣の指名(67条2項)
◎ いずれも参議院が異なった議決をした場合は、両院協議会
を開催。それでも意見が一致しない場合は、衆議院の議決が
国会の議決に。
1・2は30日間 3は10日間 参議院が議決しない
ときも衆議院の議決が国会の議決に。
4 法律案の議決(59条2項・同条4項)
◎ 衆議院が可決し、参議院がそれと異なった議決をするか、
60日以内に議決しなかった場合、衆議院の3分の2以上
の多数で再可決すると成立。
★ 参考事項
衆議院だけが持つ権限
1 予算を先に審議する(60条1項)
2 内閣不信任案決議ができる(69条)
◆ 各肢の検討
● 総説1・2・3◎によれば、肢1・2・4・5においては、両院
協議会を必ず開かなくてはならない。
これは、憲法上開く必要があり、これを必要的両院協議会という
(憲法1 清宮四郎 有斐閣)。
● 総説4◎によれば、肢3では、両院協議会を必ず開かなくても
よい。
しかし、法律案の議決にあたり、衆議院が開くことを要求した
場合、または参議院が要求し、衆議院がそれに同意した場合も開
かれる(憲法59条3項・国会法84条)。これを任意的両院協
議会という(前掲書)。
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以上によれば、両院協議会を必ずしも開かなくてもよいとされている
場合(任意的両院協議会)は、肢3であるので、3が正解である。
-------------------------------------------------------------
◆ 付 言
さきに提示した過去問との比較でいえば、同じ点数なのであるから、
本問で着実に加点するこが大切である。さきの過去問が当たれば、
もっけの幸いといえるのかもしれない。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
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★ 過去問の詳細な解説 第88回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 会社法=株式会社の取締役
【目次】 問題・解説
【ピックアップ】
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この問題集は、長年の本試験研究の成果を踏まえ、私が渾身の力をふ
りしぼって作成したものであり、その作成意図を列記いたしますと、下
記のとおりであります。
1、本試験と同じ形式を採用し、実際にも、来る本試験との重なりを期
待しました。
2、特に、【解説欄】に勢力を注ぎ、関連する事項に極力言及し、応用
力が養成されるようにこころがけました。
3、88回にもわたる当該「サイト」欄と連動させることにより、体系
的理解を助けることを目的にしました。
本試験直前のこの時期に、以上の特徴を有するこの問題集を活用され
ることにより、みなさまの一人でも多くの方々が、合格の栄冠に輝かれ
ることを期待してやみません。
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■ 平成15年度 問題34(一部改変)
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株式会社の取締役に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつ
あるか。
1 定款をもってしても取締役の資格を株主に限定することはできない。
2 株主総会は、正当の事由がなければ、任期満了前に取締役を解任す
ることはできない。
3 取締役の解任によって欠員が生じた場合、必要があるときは、利害
関係人の請求により、裁判所は一時取締役の職務を行うべき者を選任
することができる。
4 取締役が取締役会の承認を得ないで自己のために会社の営業の部類
に属する取引を行った場合、取引の時から1年を経過するまでは、取
取締役会は、その取引を会社のためにしたものとみなすことができる。
5 取締役が、取締役会の承認を受けて会社を代表して他の取締役に金
銭を貸し付けた場合であっても、その取締役はまだ弁済のない額につ
いて弁済する責任を負う。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ
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■ 解説
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☆ 参考書籍
会社法 神田 秀樹 ・ 弘文堂
☆ 問題文一部改変について
本問題出題当時においては、旧商法が適用されていたが、これに
会社法を適用すると、複数の誤りが生じるため、「誤っているもの
はどれか」とする問題文について、該当部分を改変した。
なお、各肢の記述は原文のままである。
◆ 各肢の検討
○ 1について。
取締役など役員は株主総会の決議によって選任される(会社法329
1項)。
旧商法適用時においては、定款で、取締役を株主に限定することは、
許されなかった(旧商法254条2項)。
会社法のもとでも、定款で、取締役の資格を株主に限定することは許さ
れないが、公開会社以外の会社は別である(331条2項)。
以上のとおり、公開会社以外の会社は限定が許されるので、誤りで
ある。
なお、公開会社においても、株主を取締役に選任することはもちろん
認められ、実際にもそのような場合が多いことに注意。
(前掲書 170頁)
○ 2について。
株主総会は、その決議で、いつでも、理由をとわず、取締役など役員
《329条1項( )内》を解任することができる(339条1項)。
正当な理由なく解任した場合は、会社は損害賠償しなければならない。
(339条2項)。
以上により、株主総会は、正当な理由がなくても、任期満了前に取締
役を解任できるので、本肢は誤りである。
○ 3について。
終任により法定のまたは定款所定の役員の員数が欠ける結果になった
場合には、後任の役員を選任しなければならないが(976条22号参
照)、任期満了または辞任により退任した役員は、後任者が就任するま
で引き続き役員としての権利義務を有する(346条1項)。
しかし、それが不適当な場合とその他の事由(解任等)による場合は、
裁判所に請求して一時役員としての職務を行う者(「仮」取締役等と呼
ぶが、権限は普通の取締役等と同じ)を選任してもらうことができる
(346条2項・3項)。
《前掲書》
以上からすれば、取締役の解任の場合、仮取締役を選任することがで
きるので、正しい。
○ 4について。
本肢は、旧商法における、取締役の競業避止規制違反があった場合の
介入権の規定である(旧商法264条3項).
会社法では、当該介入権の規定は廃止されている。
会社法のもとでは、次のようになっている。
取締役会設置会社では、競業取引について、取締役会の承認を得なかっ
た場合(356条1項1号・365条1項)、その取締役は会社に対して
損害賠償を負い(423条1項・2項)、また取締役解任の正当事由にな
りうる(339条)。
以上に対して、取締役会設置会社以外では株主総会で承認する(356
条1項1号)。
《前掲書参照》
以上からすれば、本肢は誤りとなる。
○ 5について。
本肢については、サイト48回を参照されたい。
★サイト48回はこちら↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/919396.html
会社から金銭の貸付を受けた取締役の行為は、、356条1項2号の
利益相反行為に該当する。取締役会設置会社にあっては、取締役会の承
認を要する(365条)が、当該承認を得た金銭の貸付けであっても、
会社に損害を生じた場合は、その取締役・代表取締役は会社に対して
損害賠償責任を負う(423条1項・3項)。
金銭の貸付を受けたことによって、直接取引をした取締役が無過失
責任を負うのは当然としても(356条第1項2号・423条3項1号・
428条)、本肢における代表取締役も過失責任を負う(423条3項
2号・3号)。
以上により、会社を代表した取締役も、まだ弁済のない額についての
弁済をする責任を負うので、本肢は正しい。
注・細かくなるが、旧商法では、直接取引をした取締役以外の取締役
の責任も無過失責任であったが、会社法では、過失責任化された。
したがって、本肢において、出題当時、当該取締役の弁済責任
は無過失責任であったが、現在では過失責任となっていることに
注意せよ!!
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以上誤っているのは、1・2・4であるから、正解は3である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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★ 過去問の詳細な解説 第87回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 民法・催告
【目次】 問題・解説
【ピックアップ】
私が渾身の力をふりしぼって作成しました「行政書士試験直前予想
問題」【平成22年度版】《有料》が、もう間もなく、発行されます
ので、みなさま、よろしくお願いします。
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■ 平成21年度 問題30
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催告に関する次のア〜オの各事例のうち、民法の規定および判例に
照らし、正しいものの組合わせはどれか。
ア Aは成年被保佐人であるBとの間で、Bの所有する不動産を購入す
る契約を締結したが、後日Bが制限行為能力者であることを知った。
Aは1ケ月以上の期間を定めて、Bに対し保佐人の追認を得るべき
旨を催告したが、所定の期間を過ぎても追認を得た旨の通知がない。
この場合、その行為は追認されたものとみなされる。
イ CはDとの間で、C所有の自動車を、代金後払い、代金額150万
円の約定でDに売却する契約を締結した。Cは自動車の引き渡しを完
了したが、代金支払期日を経過してもDからの代金の支払いがない。
そこでCはDに対して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、
期日までに代金の支払いがない。この場合、C・D間の売買契約は法
律上当然に効力を失う。
ウ Eは知人FがGより100万円の融資を受けるにあたり、保証(単純
保証)する旨を約した。弁済期後、GはいきなりEに対して保証債務の
履行を求めてきたので、Eはまずは主たる債務者に催告するよう請求し
した。ところがGがFに催告したときにはFの資産状況が悪化しており、
GはFから全額の弁済を受けることができなかった。この場合、EはG
が直ちにFに催告していれば弁済を受けられた限度で保証債務の履行を
免れることができる。
エ Hは甲建物を抵当権の実行による競売により買い受けたが、甲建物に
は、抵当権設定後に従前の所有者より賃借したIが居住している。Hは
Iに対し、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ケ分分以上の支払いを催告
したが、期間経過後もIが賃料を支払わない場合には、Hは買受け後6
ケ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。
オ Jは、自己の所有する乙土地を、その死後、世話になった友人Kに無
償で与える旨の内容を含む遺言書を作成した。Jの死後、遺言の内容が
明らかになり、Jの相続人らはKに対して相当の期間を定めてこの遺贈
を承認するか放棄するかを知らせて欲しいと催告したが、Kからは期間
内に返答がない。この場合、Kは遺贈を承認したものとみなされる。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・オ
5 エ・オ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
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☆ 参照書籍
民法 2・3 勁草書房
◆ 各肢の検討
○ 肢アについて
本肢は、20条の制限行為能力者の相手方の催告権に関する条文
の適用問題である。
この場合は、被保佐人であるBに対する催告であるから、20条
4項が適用適用される。
すなわち、被被保佐人がその期間内に保佐人の追認を得た旨の通
知を発しないときは、当該不動産の売買契約を取り消したものとみ
なすことになる。したがって、これに反する本肢は誤りである。
★ 参考事項
制限行為能力者とは、未成年者・成年被後見人・被保佐人・
被補助人をいう(20条1項)。
これら制限無能力者に対する催告権の効果に一定のルールがあ
るので、把握しておきたい。
1 制限行為能力者が行為能力者となった後に、その者に対する
催告に確答なし→ 追認 (20条1項)
2 ただし、だれかの同意を得るなどの特別の方式を要する場合
その方式を具備した通知を発しない→取り消し(20条3項)
3 法定代理人・保佐人・補助人に対しては、1・2と同様で
ある(20条2項)。
4 被保佐人・被補助人に対する催告に通知なし→取り消し(20
条4項)=本肢の事例
≪成年被後見人は含まれないことに注意・9条によれば、成年被
後見人に関しては、日常生活に関する行為は有効であると同時
にその他の行為は、常に取り消すことができるので、追認の余
地はなく、催告は想定し難いからである。≫
○ 肢イについて
本肢は、541条の契約解除の要件を満たすので、Cは、Dに対
して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに
代金の支払いがない場合には、Cは、Dに対して、C・D間の売買
契約を解除できる。
したがって、この場合、C・D間の売買契約は法律上当然に効力
を失うのではなく、契約の有効を前提として、売買契約を解除でき
ることになるので、本肢は誤りである。
★ 参考事項
1 同時履行の抗弁との関係について
この場合、DがCに対して、自動車の引き渡しについて、533
条の同時履行の抗弁権を有すると、Cは自動車の引き渡しという債
務の履行を提供しなくては、契約の解除をできないことになる。
しかし、本事例では、代金後払いの約定でCは自動車の引き渡し
を完了しているので、同時履行の抗弁は考慮しなくてもよい。
2 応用問題について
履行遅滞による解除権と同時履行の抗弁の関係について、メルマ
ガ有料版第7号において、オリジナル問題を出題したので、末尾に
正誤を問う当該肢と解説を転載しておく。
○ 肢ウについて
本肢は、催告の抗弁に関する452条・455条の条文適用問題で
ある。そのまま条文を適用すればよいが、ただし、454条で連帯保
証に適用されないことになっていることに注意する必要がある。
本肢では、(単純保証)であるとされているので、条文どおりであ
り、正しい。
★ 参考事項
保証債務はその従たる性質から、債権者に対して第二次的の地位に
あり、主たる債務者の履行しないときに、はじめて履行すればよいの
が常である(446条1項参照)。
これを保証債務の補充性というが、その法律的な現れの一つとして、
催告の抗弁権があることになる。
もう一つが、検索の抗弁権である(453条・455条)。これも
また、連帯保証には適用されない(454条)
以上により、連帯保証には、補充性はないことになる。
(以上、前掲書2参照)
なお、検索の抗弁について、以下の判例に注目
「検索の抗弁のためには、主債務者の執行容易な若干の財産の存在の
証明があれば足り、これによって得られる弁済が債権全額に及ぶこ
との証明を要しない。」(大判昭8・6・13・・・)
○ 肢エについて
本肢は、抵当権設定後における抵当権者に対抗できない賃借権者
(競売の手続開始前から使用又は収益する者)の引き渡しの猶予に関
する395条の適用事例である。
本件では、同条2項の適用により、同条1項の6ケ月の猶予がない
場合に相当する。
以上に反する本肢の記述は誤りである。
○ 肢オについて
受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告について規定する987条
の条文適用問題である。
本事例では、987条の適用により、「承認したものとみなされる」
ので、本肢は正しい。
★ 参考事項
遺贈とは、遺言による財産の無償贈与である。
遺贈には包括遺贈と特定遺贈がある(964条)。
前者は、積極・消極の財産を包括する相続財産の全部またはその分数的
部分ないし割合による遺贈であり(たとえば相続財産の2分の1、または
4割がその例)、後者は、特定の具体的な財産的利益の遺贈である。
両者はその効力において全く異なることを注意すべきである。
(以上、前掲書3参照)
本件では、特定の土地を無償贈与するというのであるから、以上の記述
に関しては、「特定贈与」であることを、この際、はっきり認識する必要
がある。
したがって、
包括遺贈は、相続人と同一の権利義務を有する(990条)ので、遺贈
の承認・放棄についても、相続に関する915条ないし940の適用があ
・・・
り、本件の「特定遺贈」の承認・放棄に適用される986条および987条
は適用されないことに注意せよ!
------------------------------------------------------------
以上のとおり、ウとオが正しいので、正解は4である。
------------------------------------------------------------
◎ 末尾記載の応用問題
【肢】
AはBとの間で、A所有の自動車を代金額120万円の約定でB
に売却する契約を締結した。Aは、引き渡し期日を過ぎても、約束
の引き渡し場所に、自動車を引き取りに来ないBに対して、自動車
の引き渡しの準備を完了したことを通知するとともに、相当の期間
を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに 代金の支払い
がない。この場合、AはA・B間の売買契約を解除できる。
【解説】
関係する条文数は、6つである。主題は、履行遅滞による解除権と
同時履行の抗弁である。
それでは、順次検討する。
1 民法573条によれば、自動車の引き渡し期日を定めたときは、
代金の支払いについても同一の期限を付したものと推定される。
この場合における代金の支払い場所は、その引き渡し場所で
である(民法574条)。
したがって、Bは、引き渡し場所において代金を支払う義務が
ある。
2 以上に従えば、代金の支払いを遅滞する(民法412条1項)
Bに対して、Aは民法541条1項に基づき、相当の期間を定
めて履行の催告をしたうえで、契約の解除をすることができる。
しかし、本肢の場合、Bの代金支払いは、自動車の引き渡し
と同時履行であるから、Bには民法533条の同時履行の抗弁
権がある。
このように、相手方が同時履行の抗弁権を有する場合には、
解除しようとする者は、自分の債務を提供しておかなければ
解除できない。「厳格な理論からいえば、解除しようとする者
は、催告後の相当期間の間中この提供をしつづけなければなら
ないことになる。」(勁草書房 2)
3 しかし、この場合には、民法493条の規定に従えば、その
提供の方法は、本肢のように、自動車の引き渡しの準備を完了
したことを通知することで足りるので、相当の期間を定めて
代金を支払うように催告した後に行う本件の解除は有効である。
(大判大14・12・3が同旨)
したがって、本肢は正しい。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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