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            ★  【過去問・解説 第124回】  ★

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                 PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政事件訴訟法 =第123回続編/被告適格/
               義務付け訴訟

 【目 次】 過去問・解説


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■ 平成27年度 記述式問題44
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   Xは、Y県内で開発行為を行うことを計画し、Y県知事に都市計画法
 に基づく開発許可を申請した。しかし、知事は、この開発行為によりが
 け崩れの危険があるなど、同法所定の許可要件を充たさないとして、申
 請を拒否する処分をした。これを不服としたXは、Y県開発審査会に審
 査請求をしたが、同審査会も拒否処分を妥当として審査請求を棄却する
 裁決をした。このため、Xは、申請拒否処分と棄却裁決の両方につき取
 消訴訟を提起した。このうち、裁決取消訴訟の被告はどこか。また、こ
 うした裁決取消訴訟においては、一般に、どのような主張が許され、こ
 うした原則を何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。 
  

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 ■ 解説
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   【過去問・解説 第123回】の続編
 
 前回において、以下について述べることを予告したので、実行する。


 2 その他関連する事項

 (1)前回の説明によると、本件の裁決取消訴訟の被告は、Y県であ
    ると判明した。条文としては、11条1項柱書・同項2号が適用
   された。
 (2)これは、裁決取消訴訟の被告適格に焦点を合わせた問題であっ
   たが、第1に当該被告適格と類似する過去問二題を以下に掲げて、
   検討してみよう。
 
  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
 A 行政事件訴訟法に関する次のア〜オの記述のうち、正しいもの
     はいくつあるか。 

 ア 国の行政庁がした処分に関する取消訴訟の被告は、国である。
 イ 国の行政庁が行うべき処分に関する不作為の違法確認訴訟の被告は、
 当該行政庁である。
 ウ 国の行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は、当該行
 政庁である。
 エ 国の行政庁が行おうとしている処分に関する差止め訴訟の被告は、
 当該 行政庁である。
 オ 国又は地方公共団体に所属しない行政庁がした処分に関する取消
 訴訟の被告は、当該行政庁である。
  
 1 一つ 
 2 二つ 
 3 三つ 
 4 四つ 
 5 五つ  
  (2009年問題16)  

 B  Xは、Y県内に産業廃棄物処理施設の設置を計画し、「廃棄物の処理
  及び清掃に関する法律」に基づき、Y県知事に対して設置許可を申請し
  た。しかし、Y県知事は、同法所定の要件を満たさないとして、申請に
  対し拒否処分をした。これを不服としたXは、施設の設置を可能とする
  ため、これに対する訴訟の提起を検討している。Xは、誰を被告として
  いかなる種類の訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。 
  (2008年問題44・記述式)

 Ж 前回において、検討した冒頭に記載の平成27年度 記述式問題44
  については、A・Bと対比して、「本件」と称する。



  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
  ● Aについて

  a 
    ポイント1 本件と同様にAについても、行訴法11条の被告適
   格等に関する規定が適用される。
    
    ポイント2 この11条の規定は、取消し訴訟以外の抗告訴訟に
   も適用される(同法38条1項)

  b 各肢の検討
  
   ○ アについて。
     
     本件の裁決取消訴訟の被告については、11条1項柱書・同項
    2号が適用されたのに対して、本肢の処分の取消訴訟では、同条
    同項柱書・同項1号が適用される。=ポイント1
   
    したがって、この場合の被告は、当該処分をした行政庁の所属す
   る国になる。本肢は、正しい。

   ○ イについて。

    本肢は、抗告訴訟の一つである「不作為の違法確認の訴訟」に
   関するものである(同法3条5項)。したがって、11条1項柱
   書・同項1号・同法38条1項の適用によって、この場合の被告
   は、当該行政庁ではなく、国である。本肢は、誤りである。
      = ポイント1・2

  ○ ウについて。  

    本肢は、抗告訴訟の一つである「義務付け訴訟」に関するもの
   である(同法3条6項)。この場合には、イと同様に、被告は国
   になる。本肢は誤りである。= ポイント1・2


  ○ エについて。

    本肢は、抗告訴訟の一つである「差止め訴訟」に関するものであ
   る(同法3条7項)。この場合も、イ・ウと同様に、被告は国にな
   る。本肢も誤りである。 = ポイント1・2

   
  ○ オについて。

    本肢は、11条2項の条文どおりであって、正しい。

   ==============================

    本問では、以上のとおり、ア・オが正しいので、正解は2である。
   
   ==============================

   参考事項

   a 民事訴訟のの原則からいえば、処分をした行政庁の被告が、国
    ・地方公共団体になることは、当然であるが、行訴法では、改正
    前11条では、被告は処分等を行った行政庁であった。しかし、
    それでは、行政庁を間違えて訴提起すると、それだけで、訴えは
    門前払い(却下)になってしまい、国民の権利救済制度の見地か
    ら問題があったので、法改正によって、民事訴訟の原則に戻した
    のである(たとえば、旧法では、課税処分の取消訴訟であれば、
    「国」を相手として訴えを起こすのではなく、その課税処分をし
    た税務署長を相手にしなければならない。運転免許取消処分だっ
    たら、免許を取り消した公安委員会を被告として訴え提起をしな
    ければならない)。

   b 国または公共団体が被告になる場合でも、訴訟において、実質
    的には行政庁が主体となって活動することになっている(11条
       4項〜6項をみておきたい)。

   (以上は、後掲書「入門」参照)

  ● Bについて

  a  総説

   本問に関連するのは、前記A肢ウである。前年に出題された本問Bを
  しっかりと検討していれば、義務付け訴訟の被告は、行政庁でなく、国
  であることは明瞭であることになる。

  b 本問の具体的検討(なお、条文はすべて行訴法である)

  (a)本問では、三つのポイントに焦点が当てられている。その一つは、
     誰を被告とすべきか、その二つは、行訴法で定められているいかな
     る種類の訴訟つまり行訴法に定められているいかなる訴訟形式に基
     づいて訴訟の提起を行うべきか、そして、最後にその要件として、
         いかなる手続を採用すべきか、ということに焦点がある。
  (b) 順序として、二つ目のポイントから説明する。本問では、申請に
     対し拒否処分を受けた「施設の設置を可能とするするため」の訴訟
     提起が問題になっているので、「施設の設置を可能とするする」行
     政処分をすべき旨を行政庁に対して命ずることを求める訴訟である
     義務付け訴訟を提起すべきである(3条6項)。
  (c) 最後のポイントに移る。本問では、設置許可の申請に対する拒否
     処分が先行しているので、前記義務付け訴訟を提起するときは、当
         該義務付け訴訟に併合して、設置許可の拒否処分の取消訴訟を提起
     しなければならない。条文としては、直接は、第37条の3第3項
     柱書第2号であるが、そこに至る過程および関連する事項は、参考
         事項として、後に述べる。
     (d) ポイントの一つである、本問における設置許可を行政庁であるY県
    知事に申請した本件訴訟を提起したXは、「誰を被告と」すべきか
    と言う点については、言うまでもなく、Y県である。11条1項柱
    書・同項2号および38条が適用されることによって、義務付け訴
    訟の被告は、Y県知事の所属する(地方)公共団体であるY県であ
    ることは、いまさら、説明するまでもないことである。
  
   C  前記b(b)(C)(d)を繋ぐと、Xは、「誰を被告として、いか
   なる種類の訴訟を提起すべきか」の解答としては、以下のとおりであ
   る。

    Y県を被告とする設置許可の義務付け訴訟に併合して設置許可の拒
    否処分の取消訴訟を提起する。
       (44字)

  参考事項

   a 行政事件訴訟法は、非申請型(または直接型)義務付け訴訟および
    申請型義務付け訴訟として制度化している(前者が3条6項1号・
    後者が3条6項2号)。本件は、申請型義務付け訴訟に属する。申請
     型義務付け訴訟には、申請不応答《不服申立て不応答も含》)、およ
        び許認可等の申請に対して拒否処分が行われた場合を指す(前者が3
    7条の3第1項1号・後者が37条の3第1項2号)。本件では、申
    請に対し拒否処分をした場合であるので、後者の37条の3第1項2
    号に該当する。拒否処分に不服があって、義務付け訴訟を提起する本
    件にあっては、当該義務付け訴訟に設置許可の拒否処分の取消訴訟を
    提起する(37条の3第3項2号)。前記b(C)において、記述し
    た当該結論を全条文を通じて、その過程を示すと、以上のとおりであ
    る。
     
     再度、その過程を条文によって示すと、3条6項2号⇒37条の3
    第1項2号⇒37条の3第3項2号であって、これをかりに、申請型
    ・拒否処分型義務付け訴訟と名づけよう(なお、無効等確認訴訟を併
    合提起することがあることにも注意!)

     さらに、申請型・申請不応答型義務付け訴訟については、以下のと
    おりである。
         3条6項2号⇒37条の3第1項1号⇒37条の3第3項1号によ
    り、義務付け訴訟に不作為違法確認訴訟を併合提起する。
 
     最後に、非申請型(または直接型)義務付け訴訟については、3条
    6項1項⇒37条の2(この場合は、前二者のように、併合提起を要
    しないが、その提起に関し、強い制限がある。これは、工場から法定
    基準以上のばい煙が出ているのに行政庁がなにもしないから住民が訴
    訟提起しようとするような場合である)
     
     Ж 37条の3第2項に注意。申請型義務付け訴訟では、申請した
      者に限り、義務付け訴訟が提起できるのに対して、非申請型義務
      付け訴訟については、このような制限はない。
     
       Ж 条文に従って、整理すると、以上のとおり、三つのルートがあ
      るのであって、迷路に入らないように、確りと当該ルートを把握
      しておくことが肝要であると思う


   b 市販の問題集の解答例を見ると、判で押したように、以下のとおり、
    解答例が示されている。
       
    「Y県を被告として、拒否処分の取消訴訟と設置許可の義務付け訴訟
     とを併合して提起する。」(41字)
   
    しかし、37条の3第3項に忠実に従えば、本講座の解答例にあるよ
   うに、義務付け訴訟を提起するときは、義務付け訴訟に併合して取消訴
   訟を提起しなければならないことになる。先に示した解答例は、結果と
   しては、正しいのであろうが、取消訴訟と義務付け訴訟が並列的に述べ
   てあるのが私には、気にかかる。主体はあくまで義務付け訴訟であって、
   これに併合して、取消し訴訟を提起しなければならないのである。
     
             
                =次回に続く=
  
  ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著 

    ・有斐閣発行


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 【発行者】 司法書士藤本昌一

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            ★  【過去問・解説 第122回】  ★

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 【テーマ】 民法・取消/解除と登記


 【目 次】 過去問・解説
  
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 ■ 平成26年・問題28 肢1・2
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   Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売
 買契約」という。)が締結された。この場合に関する次の記述のう
 ち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。 

 1 AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もB
  に対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま
   10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を
  理由として本件売買契約を取り消すことができる。(検討済) 

 2 AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土
  地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対
  して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺
  につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、
   対抗要件を備えていなければならない。(今回検討分) 



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 ■ 解説
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 (1) 前回は、前記平成26年問題28肢1に関連する過去問をと
      りあげて、考察した。
  (2) 今回は、前記平成26年問題28肢2に関連する過去問とし
   て、次の平成20年・問題29を採用する。

    A・Bが不動産取引を行ったところ、その後に、Cがこの不動産
  についてBと新たな取引関係に入った。この場合のCの立場に関す
  る次の記述のうち、判例に照らし、妥当でないものはどれか。
 
 1 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売し
 たところ、AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消した場合に、C
  は善意であれば登記を備えなくても保護される。 
 2 AからBに不動産の売却が行われた後に、AがBの詐欺を理由に
  売買契約を取り消したにもかかわらず、Bがこの不動産をCに転売
  してしまった場合に、Cは善意であっても登記を備えなければ保護
  されない。 
 3 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売し
  たところ、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の期間
  を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、
  Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。 
 4 AからBに不動産の売却が行われたが、Bに代金不払いが生じた
  ため、AはBに対し相当の期間を定めて履行を催告したうえで、そ
  の売買契約を解除した場合に、Bから解除後にその不動産を買い受
  けたCは、善意であっても登記を備えなければ保護されない。 
 5 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売し
  たところ、A・Bの取引がA・Bにより合意解除された場合に、C
  は善意であっても登記を備えなければ保護されない。 

  ◎ その考察
  
   前記平成26年問題28肢2を《本題》とし、平成20年問題29
 を《過去問》として、考察することにする。
 
 (1)《本題》は、《過去問》肢1と共通する。

    《本題》については、過去問・解説 第120回において、以
    下のとおり説明した。


             過去問解説・120回はこちら
             ↓ ↓
  
  
    ○ 肢2について。
 
   一部記載省略。
   
   本肢では、甲土地の転得者であるCが、取消をしたAに対して、
  甲土地の所有権を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知ら
  ないことで足り、かつ知らなかったことにつき過失がなかったこ
  とまでは要しない。さらに、判例によれば、対抗要件を得ていな
  いCは、96条3項によって保護される。

   したがって、以上の記述に反する本肢は妥当でない。
  
   参照条文 96条3項

================================

   ここで、《過去問》肢1に言及すると、《本題》と同様の事例に
  おいて「AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消した場合に、Cは
  善意であれば登記を備えなくても保護される」というのであるから、
  前記《本題》の解説に照らし、《過去問》肢1の記述は疑いもなく、
  正しいように思える。この場合において、善意の第三者である転得
    者は善意であれば足り、善意であることに無過失まで要求されない
  ことは、通説であるが、対抗要件を備えていない転得者であっても、
  96条3項によって保護されるというのが、通説・判例といえるか
  どうかは、疑問である。 
   後掲書民法1によれば、《過去問》肢1・《本題》と同様の事例
  において、以下のとおり、述べる。
   Cが転得した不動産について登記をを得ていないときは、AがA
  ・B間の売買契約を取り消した後は、A・Cのうちいずれか早く対
  抗要件を得た者が勝つ。いいかえれば対抗要件を得ていない転得者
  は96条3項によって保護されない。ただし、転得者は登記を必要
  としないという有力な学説がある。判例の態度は不明である。

   これに対して、本試験の立場は、転得者は登記を必要としないと
  いうのが通説・判例であるという立場を貫徹している。
 
   また、後掲書 民法 一によれば、転得者は登記を必要としないと
  すると、AがA・B間の売買契約を取り消した後、AがCより先に
  登記を回復してしまったような場合でも、第三者であるCに対して、
  その登記の抹消まで要求することを認めるのは行き過ぎではないか
  という指摘がされている。
   さらに、対抗要件を備えていない転得者であっても、96条3項に
    よって保護されると判示したとされる判例(最判49・9・26民集
  28−6−1213)は、知事の許可のない農地の売買において、仮
  登記をした転得者を保護したものであるが、同書によれば、現実には
  仮登記があった事案であり、第三者として権利確保のためになすべき
  ことを全て行っていたと評価しうるケースであったのであり、当該判
  例が、一般的に登記不要説に立脚しているとは言い難いとの指摘があ
  る。

   《本題》と《過去問》肢1の背景事情として、以上の議論があるこ
  とを知識として、把握しておくことは、大切であると、私は思料する。 

   こと、本肢に関しては、前述のとおり、本試験の立場が、転得者は
  登記を必要としないというのが通説・判例であるという立場を貫徹し
  ているので、本肢は、妥当であるということになる。
 
 ================================

 (2)次は、《過去問》肢2を検討する。前記肢1が取消前の第三に
   対する96条3項による保護の問題であったのに比すると、本
   肢は、取消後の第三者の関係が問題となっている。
    この点について、後掲書民法1から、該当部分を引用すると、
   下記のとおりである(一部本肢の解説に添うように、修正してあ
   る。

    詐欺による意思表示が取り消された後、詐欺によって生じた事
   実が登記の抹消によって復旧されない間に、新たな利害関係を生
   じた者も96条3項の第三者ではない。BからAとCに二重譲渡
   がなされた場合と同じくA・Cのうち早く登記をした者が勝つ
   (大判昭和17・9・30民集21巻911頁)。
    
    したがって、本肢においては、判例によって、二重譲渡として
   処理される場合に該当するので、Cは、善意・悪意に関わりなく、
   登記を備えなければ保護されないことになる。本肢は妥当である。 

 (3)《過去問》肢3・肢4・肢5を一括して検討する。

       各肢を正解に導くためには、以下の知識( 後掲書民法一から抜粋)
   を要する。
    
       第一に、「545条1項但書は、詐欺による取消の場合の第三者
   に関する96条3項と同様な趣旨であるが、第三者に善意が要求さ
     れていない。」(Ж注1)
    第二に、「判例は、解除の遡及効を前提に、解除前の第三者との
   関係では545条1項が適用されるとしつつ、第三者は登記が必要
   だとする。また解除後の第三者との関係では、あたかも解除によっ
   て復帰的物権変動があったように捉えて(取消しに関する判例と同
   じ)対抗問題とする。したがって、結局、解除の前後を問わず登記
   を先に備えた方が勝つということになる。」
    以上を公式化すると、第三者に善意が要求されておらず、且つ、
   解除の前後を問わず登記を先に備えた方が勝つということになる。

    当該公式を肢3・肢4・肢5に当てはめると、第三者である転
   得者「Cは善意であれば登記を備えなくても保護される」とする
   肢3が妥当でないことになる。
    ちなみに、「Cは、善意であっても登記を備えなければ保護さ
   れない」とする肢4・5は妥当である。
    なお、事例を見ると、肢3と肢5が、解除前の第三者との関
  係が問題とされているのに対し、肢4では解除後の第三者との関
  係が問題とされているのが分かる。このいずれ場合も、第三者は、
  登記を備えなければ保護されないということは、繰り返すまでも
  ないであろう。 Ψ注2

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  以上のとおり、平成20年・問題29に関しては、妥当でない
 のは、肢3であるから、正解は3である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  Ж注1「その理由は、債務不履行があっても契約そのものは完全
      に有効であり(意思表示に瑕疵があるのとは異なる)、必
      ずしも常に解除されるわけではないから、債務不履行の事
      実を知っている(悪意)だけでは、保護に値しないとはい
           えないからである。
    Ж2 《過去問》肢3・肢4・肢5については、もうひとつ論点が
    ある。それは、肢3・肢4が、541条の履行遅滞による法
    定解除権の発生であるに対して、肢5は、合意解除(解除契
    約)である点である。この後者の合意解除は、前者の民法の
    解除とは異なる。合意解除とは、肢5の記述によって明らか
    なように、契約の当事者が新たな契約によって、前の契約の
    効力をはじめからなかったものとすることであって、これは、
    一方の意思表示だけで効力を生ずることを特色とする民法の
    解除とは異なる。ただし、合意解除であっても、第三者の権
    利を害しえないことはいうまでもない(最判昭和38・2・
    21民集17巻1号219頁)《後掲書民法2参照)。そし
    て、この場合にも、第三者が保護されるためには、登記を備
    えなければならないことになるのであろう。 
   
 

★ 参考書籍 
  
  民法1・2 第三版  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房  

   民法 一  総則・物権総論 内田 貴 著


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               ★  【過去問・解説 第121回】  ★

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 【テーマ】 意思表示の取消し

        
 【目 次】 過去問・解説
               
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 ■ 平成26年・問題28 肢1・2
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   Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売
 買契約」という。)が締結された。この場合に関する次の記述のう
 ち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。 

 1 AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もB
  に対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま
   10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を
  理由として本件売買契約を取り消すことができる。 

 2 AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土
  地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対
  して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺
  につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、
   対抗要件を備えていなければならない。 
 

 
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 ■ 解説
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 (1) 前回において、平成26年・問題28全体の解説の末尾で付言
     と題して、「本問の解答に要する要点事項に絞って、解説を行っ
     たが、他に言及したい点、関連する過去問については、次回12
    1回に譲りたい。」と述べた。



(2)その約束を果たすために、今回は、前記平成26年問題28肢1・
  2に関連する過去問をとりあげて、考察をすることにする。


(3)そのうち、26年・問題28 肢1 の関連問題としては、平成23
   年・問題27のうち、以下の肢イを採用する。

      無効または取消しに関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定
  および判例に照らし、妥当でないものはいくつあるか。 

  イ BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、
   その後になってBがAの詐欺に気がついたとしても、 当該絵画を第
   三者に譲渡してしまった以上は、もはやBはAとの売買契約を取り
   消すことはできない。

   ◎ その考察
  
    前記平成26年問題28肢1を《本題》とし、平成23年・問題27
  肢イを関連する過去問を単に《過去問》として、考察することにする。

   まず、《本題》においても《過去問》においても、追認(Ж注1)
  の要件である「追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した
  後にしなければ、その効力を生じない』という条文(124条1項)
  が中心になる。
   すなわち、126条が適用される《本題》では、「追認することが
  できる時から」からの不行使であることが規定されているが、それは、
  とりもなおさず、前記124条1項の追認の要件を意味する。以上の
  記述を《本題》にあてはめると、10年続いている 畏怖の状態が消
  滅してから、5年間は、取消権行使し得ることになる(Ж注2)。
  
  Ж注1 取り消すことができる行為の追認とは、当該行為を取り消さな
     いとするこであって、理論的にいえば取消権の放棄である。

  Ж注2 126条によれば、行為の時から20年経過したときも、取消
     権は消滅するが、《本題》では、行為の時から10年しか経過し
     ていないので、取消権は消滅しない。

   それでは、《過去問》ではどうなるであろうか。《過去問》の事例に
  よれば、BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場
  合においてBがAとの売買契約を取り消すことができるかどうかが問題
  になっている。この場合は、詐欺による意思表示の取り消しであること
  は明瞭である(96条1項)が、次に、BがCに転売した行為が、12
   5条が規定する法定追認(Ж注3)該当し、Bはもはや取り消すことで
  きないのではないかという論点に気づくことが要請されている。Bの転
  売行為は、125条5号が規定する「取り消すことができる行為によっ
  て取得した権利の全部の譲渡」に該当するからである。
   さらに本事例では、BがCに転売後、Aの詐欺に気がついたという事
  実をどのように評価するかということも検討課題として要請されている。
   この場合も、《本題》と同様に最後の決め手になるのは、追認の要件
  を規定した124条1項の解釈次第である。順序を追って説明すること
  にする。
 (1)詐欺によって、瑕疵ある意思表示をしたBは、取り消すことがで
   きるA・B間の売買行為を追認できる(120条2項・122条)。
 (2)125条本文・同条5号によると、124条1項の規定により
   追認することができる時以後にBに転売行為があったときは、法定
   追認となり、Bはもはや、A・B間の売買を取り消すことはできな
   い。
 (3)124条1項の解釈としては、詐欺の場合には、取消しの原因と
   なっていた状況が消滅した後とは、詐欺による意思表示をした者が
   詐欺をされたことをことを知った後を意味する(後掲書民法一参照)。
   したがって、過去問の事例では、Bの転売時には、BはAの詐欺に
   気づいていなかったのであるから、その転売行為は、法定追認にな
   らない。Bは、詐欺の事実を知った時から5年間、行為の時から2
   0年間はAとの売買契約を取り消すことができる(126条)。
    したがって、過去問である本肢は妥当でない。
   
    Ж注3 取り消すこことができる行為について、相手方や一般第三者
          からみて追認と認められるような一定の行為があるときは、こ
          れを追認とみなし、以後取り消すことができないものとする。
          これを法定追認という。取り消すことをできる行為をなるべく
     早く確定して一般法律関係の安定を図ろうとする趣旨である
    (後掲書民法1・207頁以下)。本文に記したように、法定追
     認行為は、125条各号に規定されている。 

  ◎ 総括 

   《本題》が126条の取消権の期間の制限に関するものであり、
  《過去問》が、125条の法定追認に関する問題であるが、いずれ
   も、124条1項の追認の要件に帰着するところに共通性がある。

           =次回に続く=
   

   ★ 参考書籍 
  
  民法1第三版  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房  

   民法 一  総則・物権総論 内田 貴 著



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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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  ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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              ★  【過去問・解説 第120回】  ★

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 【テーマ】 意思表示の取消し

        
 【目 次】 過去問・解説
      
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 ■ 平成26年問題 問題28
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
   Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売
 買契約」という。)が締結された。この場合に関する次の記述のう
 ち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。 

 1 AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もB
  に対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま
   10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を
  理由として本件売買契約を取り消すことができる。 
 2 AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土
  地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対
  して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺
  につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、
   対抗要件を備えていなければならない。 
  3 AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実
  をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったとき
  は、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことがで
  きない。 
 4 AがEの詐欺によって本件売買契約を締結した場合、この事実
  をBが知っていたとき、または知らなかったことにつき過失があ
  ったときは、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消す
  ことができる。 
 5 Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約
  を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあた
  るため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取
  り消すことはできない。 

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 ■ 解説
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 ◎ 意思表示の取消しに関する要点

 1 瑕疵ある意思表示は取消し得る。民法は、強迫による意思表
  示は取り消しうるとした(96条1項)。
   強迫とは害悪を示して他人を畏怖させる違法な行為であって、
  この畏怖によってする意思表示が強迫による意思表示である。
   当該畏怖によってした意思表示をした者すなわち瑕疵ある意
  思表示をした者はその意思表示を取り消すことにより、当該意
   思表示に基づく法律行為を無効にすることができる(120条
  2項・121条)。
   取消権には期間の制限が設けられている。126条によると、
  取消権は追認することができる時から5年、行為の時から20
  年の、どちらか早く経過したほうによって消滅する。この追認
   することができる時というのは、取消しの原因となっていた状
  況が消滅した後を意味する(124条1項)。

 2 詐欺による意思表示は、瑕疵ある意思表示として、取り消し
  得る(96条1項)。詐欺とは欺罔行為をし、よって他人を錯
   誤に陥れる違法な行為であるが、その他人がこの錯誤によって
  意思表示をすれば詐欺による意思表示である。この場合も、詐
  欺による意思表示をした者は、これを取り消すことによって、
  その行為を無効にすることができる(120条2項・121条)。
   しかし、その取り消した結果を善意の第三者に対抗できない
  (96条3項)。ここでいう善意の第三者である転得者は善意
  であれば足り、善意であることに無過失まで要求されない。ま
  た、判例(最判49・9・26民集28−6−1213)よれ
   ば、対抗要件を備えていない転得者であっても、96条3項に
    よって保護される。
    
 3 強迫による意思表示については、96条2項に該当する第三
  者の強迫に関する規定がないので、相手方以外の者が強迫を行
  った場合、、相手方がその事実を知らなかったときでも、96
  条1項に基づき、強迫による意思表示は、取り消すことができ
  る。

 4 前記3に対して、詐欺による意思表示については、96条2
  項が適用されるので、意思表示の相手方以外の者が詐欺を行っ
  た、いわゆる第三者詐欺の場合には、相手方が詐欺の事実を知
  っていたときにだけ取り消しうる。

 5 民法は、未成年者、成年被後見人、被保佐人または被補助者
  は、これを制限行為能力者(20条1項)とするという形式的
  な基準を定め、これらの者が単独でした法律行為は一定の要件
  のもとにこれを取り消すことができるものとした。しかし、制
  限行為能力者が相手方を欺いて行為能力を有すると誤信させた
  場合には、もはやこれを保護する必要はないから、その行為は
  取り消しえないものとされる(21条)。


 ◎ 各肢の検討
  
    ○ 肢1について。

   前記要点1に対応する。もう一度読み返してほしい(この、
  フレーズは繰り返さない)。
  
   本肢では、AのBに対する畏怖の状態が10年続いていたの
  で、この状態が消滅してから、5年間は、Aは取り消し得る。
  また、 本肢では、Bの行為の時20年経過していない。

   したがって、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り
  消すことができるので、本肢は妥当である。

   参照条文 126条・124条1項

  ○ 肢2について。

   前記要点2に対応する。

   本肢では、甲土地の転得者であるCが、取消をしたAに対して、
  甲土地の所有権を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知ら
  ないことで足り、かつ知らなかったことにつき過失がなかったこ
  とまでは要しない。さらに、判例によれば、対抗要件を得ていな
  いCは、96条3項によって保護される。

   したがって、以上の記述に反する本肢は妥当でない。
  
   参照条文 96条3項

    ○ 肢3・肢4について

   前記要点3・4に照らせば、肢3においては、相手方以外のDが
  強迫を行った場合には、相手方であるBがこの事実を知らなくても
  Aは、強迫による意思表示を取り消すことができるし、肢4におい
  ては、第三者であるEが詐欺を行った場合には、相手方であるBが
  その事実を知っていたときに限り、Aは詐欺による意思表示を取り
  消すことができる。

    以上の記述に反する肢3も肢4も妥当でない。

  ○ 肢5について
 
   前記要点5に照らせば、未成年者(4条)は、制限行為能力者に
  該当するので、法定代理人の同意なしにした法律行為はこれを取り
  消すことができる(5条1項・2項)。本肢の本件売買契約は、5
  条1項の「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」に該当しな
  いし同条3項にも該当しないので、例外なく取り消すことができる
  が、前記要点で言及したとおり、21条に該当するときは、取り消
  すことができない。しかし、以下の判例があるので、制限行為能力
  者であることの黙秘は詐術にあたらないため、Aは未成年者である
  ことを理由として本件売買契約を取り消すことができる。

   黙秘も他の言動などと相まって詐術に当たることもあるが、単純
  な黙秘は詐術に当たらない(最判昭35.5.24民集14−7−1
  154)。

    したがって、本肢は妥当でない。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  以上妥当であるのは、肢1であるので、本問の正解は、肢1である。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ◎ 付言

   本稿では、本問の解答に要する要点事項に絞って、解説を行った
 が、他に言及したい点、関連する過去問については、次回121回
 に譲りたい。
 
  
  ★ 参考書籍 
  
  民法 1  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房  


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             ★  【過去問・解説 第119回】  ★

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 【テーマ】 民法・組合

       ※ 前回本サイト 第118回において、「組合」を
        とりあげたので、関連問題として、以下の過去問解
        説を行う。
        
 【目 次】 過去問・解説
              
        
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成25年問題 問題33 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営
 むことを約して組合を設立した場合に関する次の記述のうち、民法
 の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。 

 1 Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の
  過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成
 を得た上で行わなければならない。 
 2 組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合
  の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、A
   とBだけの合意では決することはできない。 
 3 組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得な
   い事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。 
 4 やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約
   がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退する
   ことはできない。 
 5 組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登
   記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求を
   することができる。 



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 ■ 解説
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 ○ 各肢の検討

  ● 肢1・2について。

   各組合員が業務執行の権利義務を有するのを原則とする。
   
  (1)業務執行権
    各組合員が業務執行権を保有する場合には組合員の過半数
   をもって組合の業務執行を決する(670条1項)。
    しかし、組合の常務、すなわち、その組合の目的遂行のた
   めに普通にすべき業務で特別に重要でないものは、各組合員
   が単独にしうる(670条3項)。
  (2)一部の組合員への委任
    組合契約をもって一部の組合員を業務執行員と定めたとき
   は、その業務執行員の過半数をもって業務執行を決する
   (670条2項)。

   ◎ 肢1は、(1)の各組合員が業務執行権を保有する場合
    に該当するが、組合の常務について各組合員が単独にしう
    るのであって、組合員の過半数の賛成を要しない。

        したがって、肢1は正しくない。
  
   ◎ 肢2は、(2)の一部の組合員への委任の場合であるが、
    この場合は、その業務執行員の過半数をもって業務執行を
    決するのであって、全員の合意で決しなくてよい。

        したがって、肢2は正しくない。

   ※ 関連事項

   ア (2)の一部の組合員への委任は総組合員の同意を要する。

   イ 組合の常務について、(1)の場合には、その完了前に他
    の組合員が異議を述べたときは単独で行うことができない。
    (2)の場合には、他の業務執行者が異議を述べたときは単
    独で行うことができない(670条3項)。

  ● 肢3・4について。

   脱退 民法は脱退を認め、これによって組合の同一性を失わな
      いものとしている。

   脱退の二態様 脱退する者の意思に基づく脱退(任意脱退)と
          そうでないもの(非任意脱退)とがある。

   (1)任意脱退 他の組合員全部に対する告知である。

      原則・(ア)もし組合の存続を定めないとき、(イ)または
         ある組合員の終身の間存続すべきものと定められた
         ときは、各組合員は、いつでも脱退できる。

     ただし・脱退が組合にとって不利な場合には、やむを得ない
         事由がなければ脱退できない。

     例外・(ウ)組合の存続期間が定められているときは、やむ
         を得ない事由があるときだけ脱退できる。

     以上は、678条1項・2項適用による論理的帰結である。
  
   (2)非任意脱退 679条・680条

    
        肢3・4では、以上のうち、(1)の任意脱退がとりげられて
   いる。
   
    ◎   肢3は、原則の(ア)の場合であるから、脱退できる。
      ただし書きによっても、Aは、やむを得ない事由があれば、
      組合に不利な時期に脱退することができる。
        
      したがって、肢3は正しくない。
  
    ◎ 肢4については、前記(ア)・(イ)・ただし・(ウ)
     によっても、やむを得ない事由があれば、脱退できるのであ
     るから、本肢は正しくない。
      なお、本肢は、最判平成11・2・23民集53−2−
     193に依拠しているものと思われる。当該判決の要旨は、
      以下のとおりである。
   
           やむを得ない事由がある場合には、組合の存続期間の定め
         の有無にかかわらず常に脱退ができるという678条の定め
     は強行規定であり、これに反する組合契約の約定はその限度
         で効力を有しない。
      
    ※ 関連事項

     非任意脱退である除名について(680条)
     
       除名は最も重大な事由であるから、要件が厳重である。す
     なわち、正当の事由がある場合にだけ、しかも除名しようと
     する一人を除き他の全員の同意を要する。そして、除名はこ
     れを除名される者に通知しなければこれをもってその者に対
     抗できない。   
 
  ● 肢5について

    組合の積極財産は総組合員の共有である(668条)。したが
      って、本肢における組合財産に属する特定の不動産は、総組合員
      の共有であるから、249条以下の共有の規定を受けるので、2
      52条ただし書きが適用される。本肢において、組合員の一人で
      ある共有者Aが、組合財産である当該不動産に不法な保存登記を
      した第三者に対して、抹消登記を請求するのは、252条ただし
      書きの保存行為に該当するので、Aは単独でこれを請求できる。
    なお、判例(最判昭33−7−22民集12−12−1805)
      がある。その要旨は、以下のとおりである。
  
    組合財産が理論上合有であるとしても、本法の規定はこれを共
      有とするたてまえであるから、組合財産については、667条以
      下に特別の規定のない限り、249条以下の共有の規定が適用さ
      れる。

    組合員の一人が持分権に基づき、組合財産につき登記名義を有
      する者に対して登記抹消を求めるのは、(252条ただし書きに
      いう)保存行為である。

    したがって、本肢は正しい。
    
   =============================
    
    以上の検討結果、5が正しいので、正解は肢5である。
   
   =============================

 ○ 総括

   本問では、「民法の規定および判例に照らし」となっているが、
    かりに判例を知らなくても、条文のみで、本問を正解に導くこと
    ができる。民法に関しては、普段から条文に馴染んでおくことが
    肝要である。まずは、条文である。


 ★ 参考書籍 
  
  民法 2  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房  


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              ★  【過去問・解説 第118回】  ★

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 【テーマ】 民法

        
 【目 次】 過去問と判例・解説
 
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 ■ 平成26年度・問題27
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
  A、B、C及びDは、共同で事業を営む目的で「X会」という団
 体を設立した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定およ
 び判例に照らし、誤っているものはどれか。 

 1 X会が権利能力なき社団であり、Aがその代表者である場合、
  X会の資産として不動産があるときは、その不動産の公示方法
  として、Aは、A個人の名義で所有権の登記をすることができ
  る。 
 2 X会が民法上の組合である場合、X会の取引上の債務につい
  ては、X会の組合財産がその債務のための責任財産になるとと
  もに、組合員であるA、B、CおよびDも、各自が損失分担の
  割合に応じて責任を負う。 
 3 X会が権利能力なき社団である場合、X会の取引上の債務に
  ついては、その構成員全員に1個の債務として総有的に帰属し、
  X会の社団財産がその債務のための責任財産になるとともに、
  構成員であるA、B、C及びDも各自が連帯して責任を負う。 
 4 X会が民法上の組合である場合、組合員であるA、B、C及
  びDは、X会の組合財産につき持分権を有するが、X会が解散
  して清算が行われる前に組合財産の分割を求めることはできな
  い。 
 5 X会が権利能力なき社団である場合、構成員であるA、B、
  CおよびDは、全員の同意をもって、総有の廃止その他X会の
  社団財産の処分に関する定めのなされない限り、X会の社団財
  産につき持分権を有さず、また、社団財産の分割を求めること
  ができない。 




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 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▲ 本問のポイント

  本問は、「権利能力なき社団」と「民法上の組合」との本質的差
 異が把握されていれば、一発で、正解に達する。
  まず、後掲書2における「民法上の組合」に関する記述を抜粋す
 ると、以下のとおりである。

  民法の組合は、・・団体個人の個性の強い結合体であって、組合
 員の脱退・加入は全員の同意を要し、代表者の行動は全員の代理人
 としての行動とみられ、ことに財産は全員の共有であり、債務は全
 員の無限責任である。

  次に、「権利能力なき社団」に関する判例(最判昭48・10・
 民集27−9−1129)の要旨を掲げておこう。

    権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務
 は、その社団の構成員全員に、1個の義務として総有的に帰属する
 ものであり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的
 責任を負わないと解すべきである。

    以上の記述に照らせば、肢2に対応するのが、「民法上の組合」
  に関する記述であり、肢3に対応するのが、「権利能力なき社団」
 の判例の要旨である。
  前者の記述によれば、(取引上の)債務について、構成員である
 組合員が責任を負うのに対して、後者の記述によれば、『構成員各
 自は、取引の相手方に対し、直接には個人的責任を負わない』ので
 あるから、肢2は、正しくて、肢3は明らかに誤りであることにな
 り、本問の正解は肢3になる。

  なお、ここでは、知識を明確にするため、「権利能力なき社団」
 を「民法上の組合」と対比したが、「権利能力なき社団」の構成員
 各自は、取引の相手方に対し、個人的責任を負わないということが
 はっきり認識されていれば、肢3の誤りに即座に気付くことになる。

  ※ かつて、学者は一般に、法人でない団体はすべて組合として
   民法の組合の規定の適用を受けるとしたが、たとえば、社交的
   なクラブについてまで、債務が全員の無限責任であるというこ
   となどの民法の組合の規定を受けることは、納得できないため、
   その後の学説および判例は、このような団体を「権利能力のな
   い社団」と呼び、民法の組合とは本質を異にするものと考える
   に至った(後掲書1参照)。
    本問では、肢2・3の背景に以上の沿革を読み取ることがで
   きれば、肢3が誤りであることに納得できるであろう。

 △ 各肢の検討

  ○ 肢1について

   以下の判例(最判昭47・6・2民集26−5−957)に照
  らし、本肢は、正しい。

   権利能力なき社団の資産たる不動産については、社団の代表者
  が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個人の名義で
  所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者とする
  登記をし、または社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個
   人名義の登記をすることは、許されないものと解すべきである。

  ※ なお、判例(最判昭39.10.15民集18−8−1671)
   によれば、「権利能力のない社団」の定義は以下のとおりであ
   る。

    権利能力のない社団というためには、団体としての組織を備
   え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が
   存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管
   理等団体としての主要な点が確定していることを要する。

  ● 肢2について

   まず、民法上の組合である場合、組合の債務は、組合員全員に
  合有的に帰属する。その債務は第一に、金銭債務のように可分で
  あっても、数額的に分割されずに、全額が組合員に帰属し、組合
  財産を引当てとする合有的債務である。つまり組合債務は本来組
  合財産で弁済されるべきものである(大判昭和11・2・25民
  集15巻281頁)。(後掲書2参照)
   したがって、本肢の前段は、以上の前段の趣旨に沿うものであ
  って正しい。

     しかし、第二にさきに述べた「本来組合財産で弁済される、組
  合財産を引当てとする合有的債務」と並んで、各組合員は、個人財
  産を引当てとする個人的責任を負担する。(後掲書2参照)この点
  が、▲ 本問のポイントで述べたとおり、構成員各自が直接には個
   人的責任を負わないとする権利能力なき社団との違いである。この
  個人的責任は、各自が責任分担の割合に応じて負うものである(6
  74条参照)。
   したがって、本肢後段も正しい。

  ※ 

 (1) ▲ 本問のポイントでのべたとおり、当該個人的責任に基
    づく債務は組合員全員の無限責任である。したがって、この
       各組合員がその個人的財産を引当てとして負担する責任は、
    組合財産で弁済されれば、それだけ消滅することはいうまで
    もないが、そうでない限りーその組合員が脱退しても、組合
    が解散しても、免れることはできない。その意味で、組合員
    は組合債務について自己の負担する割合内で出資義務に制限
    されない無限責任を負う(後掲書2参照)。
 (2) 民法は、債権者がその債権を取得するときに組合員の損失
    分担の割合を知らないならば等しい割合でその権利を行うこ
       とができると規定する(675条)。
   (3) 本来組合財産で弁済される債務と個人的責任に基づく債務
    にかかわるこの二つの請求権は理論上は、その間に主従の差
    はなく、債権者はいずれを行使することも自由だといわねば
    いわねばならない(実質的に組合的性質を有する合名会社の
    債務については、この二つの責任の間には法律的にも主従の
    関係がある(会社法580条参照)【後掲書2参照】

  
  ◎ 肢3について

   ▲ 本問のポイントに掲げた「権利能力なき社団」に関する判
    例(最判昭48・10・民集27−9−1129)の要旨を
    以下のとおり、再説しよう。

      権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の
   債務は、その社団の構成員全員に、1個の義務として総有的に
   帰属するものであり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直
   接には個人的責任を負わないと解すべきである。

    したがって、本肢の後段である構成員各自が連帯して責任を
   負うという記述が誤っている。端的にいって、たとえば、社交
   的クラブやある学校の関係者だけの自治会において、構成員が
   連帯責任を負わされるのは、耐えがたいことである。

    
  ○ 肢4について

   組合の積極財産は総組合員の共有である(668条)。しかしこ
   の共有は、普通の共有と異なり組合の共同目的(667条1項参照)
   のために拘束されて団体的性質を加味すりる一種の合有である。そ
    の限りにおいて、組合員の固有の財産と区別された、ある程度まで
    独自性のある組合財産というものができる(後掲書2参照)。

    このような観点から、本肢をみると、組合員は、(組合の共同目
    的のために拘束された)組合財産に対する持分権を有するが、組合
    員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない(676条
    2項・256条参照)。したがって、本肢は全体として正しい。

   ※ なお、組合員は、持分の処分を制限される(676条)。


  ● 肢5について

   「権利能力のない社団の資産は構成員に総有的に帰属するものであ
    って 、その社員は当然共有持分権・分割請求権を有するものではな
  い」と判示する判例(最判昭32・11・14)は、具体的には、
  本肢の記述のように、「全員の同意をもって、総有の廃止その他社団
   財産の処分に関する定めのない限り」という限定つきで、社団財産に
    持分権を有さず、社団財産の分割を求めることができないと述べる。

   したがって、本肢は正しい。権利能力なき社団=総有ということ
  が頭にあれば、当該判例を正確に知らなくても、本肢が正しいとい
  うことを察することはできるであろう。

 ================================

  以上のとおり、本問では、3が誤りであるので、肢3が正解である。

 ================================

 ▽ 参考事項

  本問の解説では、共有・合有・総有という概念が示されたが、民法
 では、これらを共有という概念でくくっている。いわゆる249条以
 下の規定する狭義の共有は、共有者の間に何らの団体的統制がないが、
 組合財産の共同所有の形態である合有においては、組合員は、持分権
 を有するもののそれは、共同目的のためにある程度の制約を受けるこ
 とになる。さらに、総有にあっては、権利能力のない社団の資産にみ
 られるように、原則として、構成員は社団財産につき持分権を有さず、
 社団財産の分割を求めることができないのである。
  本問の解説を通じて、以上の連関を把握しておくことも大切である
 と私は思料する。



 ★ 参考書籍 
  
  
    
   民法 1 ・2  我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房  


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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
  ▽本文に記載されている内容の無断での転載は禁じます。
 
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            ★  【過去問・解説 第117回】  ★

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 【テーマ】 民法

        
 【目 次】 過去問と判例・解説
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■  背信的悪意者を巡る二つの判例と過去問の関係
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   
 1 序説
 
  メルマガ183号において、下記のとおりの掲載をしました。
  なお、一部修正してしております。
  
    ※メルマガ183号はこちらをクリック!
           ↓↓↓


                         記

     背信的悪意者を巡る二つの判例と過去問の関係については、後日、
  サイト欄で検討することにする。

  ★ 判例二つ。

  (1)  背信的悪意者からの転得者は、背信的悪意者でない限り、
     第三者に当たる(最判平成8・10・29民集50巻9号
     2506頁)。
  (2) AからB・Cに二重譲渡があった場合において、A・Cの
     売買がBを害するためのような場合には公序良俗違反により
     それを無効とする(最判昭和36・4・27民集15巻4号
     901頁)。
      
  ★ 過去問・平成15年問題40

   次の記述中の[ア](漢字6字)、[イ](漢字3字)に、適当
  な語句を記入しなさい。 

    最高裁判所は、「A所有の甲土地をAがBに譲渡したが、B名義の
  所有権移転の登記が行われていない状況で、当該甲土地をAがCに譲
   渡しC名義の所有権移転登記を経由していても、Cが[ア]である場
   合には、BはCに所有権者であることを登記なしに対抗することがで
   きる。しかし、当該甲土地をCがDに譲渡しD名義の所有権移転登記
   が行われた場合、Bは、Dが[ア]でない限り、Dに対しては所有権
  者であることを登記なしには対抗できない。」という見解に立ってい
   る。上記の最高裁判所の見解は、転得者であるDとの関係では、[ア]
   であるCにも、Aから[イ]が移転しているとの考えを前提としたも
   のといえる。 

 2 論点・解答  
           
  それでは、ここで何が論点になり、その結論がどうなるかを検討し
 てみましょう

   
  a まず、前記 ★ 過去問・平成15年問題40について、図示を
      したうえで検討してみましょう。

  ----------------------------------------------------------------
    甲土地
    
         第1
      A  →   B
     

     第2 ↓
 

      C  →   D

   背信的悪意者

------------------------------------------------------------------
   
      当該問題文に則して見てみますと、[A所有の甲土地を(第1に)
  AがBに譲渡したが、B名義の所権移転の登記が行われていない状
  況で、当該甲土地を(第2に)AがCに譲渡しC名義の所有権移転
  登記を経由していても、Cが[ア・背信的悪意者]である場合には、
  BはCに所有権者であることを登記なしに対抗することができる」
  というのは、Cが背信的悪意者である場合には、Cは、Bの登記欠
  缺を主張をするにつき正当の利益を有する者ではないため、177
  条の第三者に当たらないとする確立した最高裁判例に照らして、妥
  当です。判例としては、最判昭和31・4・24民集10巻4号4
  17頁、最判昭和43・8・2民集22巻8号1571頁・最判昭
  和43・11・15民集22巻12号2671頁があります。通説
  もこれを支持します。

      引き続き問題文を見てみますと、「しかし、当該甲土地をCがD
  に譲渡しD名義の所有権移転登記が行われた場合、Bは、Dが[ア
  ・背信的悪意者]でない限り、Dに対しては所有権者であることを
  登記なしには対抗できない。」という見解に最高裁判所は立ってい
  るとなっています。これは、前記★判例二つ。(1)に掲げた判例
  (最判平成8・10・29民集50巻9号2506頁)を意味するも
    のと思われます。
   
      その判旨は、前述したとおり、「 背信的悪意者からの転得者は、
     背信的悪意者でない限り、(177条の)第三者に当たる」という
     ことでありました。
       当該判旨をもう少し、具体的に述べますと、以下のとおりです。

   不動産二重売買における背信的悪意者からの転得者は、その者自
    身が第一買主との関係で背信的悪意者と評価されぬのでない限り、
    当該不動産の所有権取得をもって第一買主に対抗することができる。

   この記述は、先に掲げた問題文と符合します。
   
   当該判決に関連して、後掲書民法一によりますと、概ね次のよう
    に説明されています。

   Cが背信的悪意者として「第三者」にあたらないとされる場合も、
    AC間の売買契約そのものは有効であり、したがって、Cが所有権
    を取得するための要件はそろっている。ただ、同様に所有権を取得
    できる地位にいるBの登記の欠缺を主張することが、信義則上許さ
    れないに過ぎない。それは、Cに属人的なものであるから、Cから
    の譲受人DがBとの関係で背信的悪意者とされなければ、Dは有効
    に所有権を取得でき、Bとふたたび対抗関係に立つと解すべきだろ
    う(同旨、最判平成8年10月29日・・・)。

   ここで、もう一度問題文に戻りますと、「上記の最高裁判所の見
    解は、転得者であるDとの関係では、[ア・背信的悪意者]である
    Cにも、Aから[イ・所有権]が移転しているとの考えを前提とし
    たものといえる」という記述は、上記後掲書民法一 の説明と符合し、
    納得し得るものとなります。

   以上のとおり、過去問・平成15年問題40に関しては、アが[背
    信的悪意者]なり、イが[所有権]になることが明らかになりまし
    たが、ここで問題とするのは、その先です。

 b 前記の ★ 判例二つ(2)によりますと、前記の図示に従うと、
    当該判例(最判昭和36・4・27民集15巻4号901頁)におい
    ては、A・Cの売買がBを害するためのような場合には公序良俗違反
    によりそれを無効とするというのですから、当該事例においては、
   「Cにも、Aから所有権が移転しているとの考え」が通用しなくなり
    ます。したがって、この場合において、Dという転得者が、出現した
    とすると、Dが善意であろうと悪意であろうと、はたまた背信的悪意
    者でなかろうと、Dには所有権を取得する余地がなくなります。A・
    C間の糸は切断されたことになりますから、一度切れた糸は、C・D
    間で繋がることはありません。一方、依然として、第一の譲受人であ
    るBの糸は繋がったままですから、Bは無権利者であるDに対して、
    登記なくして、 所有権を主張できることになります。

  c  再論を恐れず、以上を総括しますと、最高裁判所の判例には、一
     つには背信的悪意者理論に立つものがあります(前記★ 判例二つ。
   (1)の最判平成8・10・29のほか前に掲げた最判 昭和31・4
     ・24 /43・8・2/昭和43・11・15)。これらによります
     と、転得者が生じた場合、第1譲受人である背信的悪意者はその者に
    「属人的なもの」として、背信的悪意者でない転得者に所有権の取得
     を認めること になります。
    これに対して、もう一つの判例(前記★ 判例二つ。(2)の最判
   昭和36・4・27)によれば、二重譲渡が第1の譲受人を害するた
   めになされたため、90条違反で無効になりますから、この場合に転
   得者が生じたとしても、転得者が所有権を取得することはありません。
 
   d ここで考えるべきことは、、二つの潮流をもつ最高裁判所の判例に
   どのような違いがあうかということです。具体的には、判例の事案を
   見較べるしかありませんが、本試験の準備としては、そこまで要求さ
     れていません。
   ただ言えることは、公序良俗違反による無効判決の事案も第1譲受
  人が背信的悪意者である一場合であって、その点では、背信的悪意者
  理論に立つ判決と変わりはありません。あるいは、無効判決は背信性
  が強度なのかもしれません。いずれにせよ、将来の本試験に関連づけ
  てみると、平成15年過去問とは異なって、第1の譲渡が無効である
  ために転得者が所有権を取得しない場合を想定した問題が出されるこ
  ともあり得るということを指摘しておきたいと思います。

  e  私見としては、事案によって、結論を異にする弊害を避けるためには、
  背信的悪意者に対する第1の譲渡については、民法90条違反として、
  無効とし、背信的悪意者からの転得者は所有権を取得しないことにすべ
  きだと思います。理由は二つあります。一つは、条文上の根拠があるこ
  とです。もう一つは、結論に具体的妥当性があるということです。
   しかし、最高裁は、一度樹立した「背信的悪意者」理論を放擲しない
  でしょうから、私見に過ぎない「背信的悪意者に対して、全面的に90
  条を適用する考え方」が、最高裁判所によって採用される見込みは、ま
  ずあり得ないでしょう。
  
  
 ★ 参考書籍 
  
  民法一 内田 貴 著・東京大学出版会
    
   民法 1 ・ 我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房  



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           ★  【過去問・解説 第116回】  ★

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 【テーマ】 憲法
  
 【目 次】 過去問・解説
              
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 ■  平成25年度問題6
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 次のア〜オのうち、議院の権能として正しいものはいくつあるか。 

 ア 会期の決定
 イ 議員の資格争訟
 ウ 裁判官の弾劾
 エ 議院規則の制定
 オ 国政に関する調査 

  1 一つ 
  2 二つ 
  3  三つ 
  4  四つ 
  5  五つ 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  ◆ 議院の機能

  (一)議院の自律権
     
    各議院が内閣・裁判所など他の国家機関や他の議院から監督
   や干渉を受けることなく、その内部組織および運営等に関し自
    主的に決定できる機能を言う。

      (1)内部組織に関する自律権

     a 会期前に逮捕された議員の釈放要求権(50条)
     b 議員の資格争訟の裁判権(55条)
     c 役員選任権(58条1項)

    (2)運営に関する自律権

     a 議院規則制定権(58条2項前段)
     b 議員懲罰権(58条2項後段)
  
  (二)国政調査権(62条)
  
     (後掲書 参照)


 ◆ 各肢の検討

    1 ◆ 議院の機能 を参照すれば、イの「議員の資格争訟」・エの
    「議院規則制定]・オの「国政に関する調査」が議院の機能と
         して正しいものに該当する。
  
  2 アの「会期の決定」については、以下のとおり国会法に規定が
   ある。

    常会の会期は、原則として150日間であるが(10条)、臨
   時会及び特別会の会期並びに会期の延長は、両議院一致の議決で
   定めることになっている(11条、12条)。なお、当該議決に
    おいては、議決の不一致又は参議院が議決しないときは、衆議院
      の議決が優先される(13条)。 なお、会期の延長は、常会につ
   いては1回、に限り、臨時会と特別会については2回に限る。

    本問で問われているのは、「他の議院から監督や干渉を受けるこ
   と」のない各議院の機能であるから、、両議院一致の議決を要する
   「会期の決定」は、議院の機能ではない。ただし、個人的には、両
   議院で可決を要する法律の議決(59条)が国会の機能とされてい
   る点からすれば、「会期の決定」もまた、国会法に基づく国会の機
   能といえると解する。


   ※ 国会が憲法上の機能を行使するのは、一定の限られた期間で
    ある。この期間を会期という。会期として、日本国憲法は、常
    会(毎年1回定期に召集される会)、臨時会(臨時の必要に応
    じて召集される会)、特別会(衆議院が解散され総選挙が行わ
    れたのちに、召集される会)の3つを区別している(52条・
    53条・54条1項)。なお、国会の実質的な召集権は内閣に
    ある(7条2号)。
   
    (後掲書 参照)

 
  3 ウの「裁判官の弾劾」とは、憲法78条の「公の弾劾」を指し、
   「訴追すなわち罷免の要求に基づき公権力が公務員を罷免する制
    度」(後掲書)をいうが、具体的には、両議院の議員で組織さ
    れた訴追委員会から罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため
    に、同じく両議院の議員によって構成される弾劾裁判所がその
    裁判を行う(詳しくは、国会法125条ー129条・裁判官弾
    劾法に規定がある)。憲法は、国会に弾劾裁判所の設置権を認
    めている(64条)。

     本肢は、「裁判官の弾劾」とのみ記すが、その機能について、
    行使面から言えば、弾劾裁判所となり、設置面から言えば、国
    会となる。いずれにしても、議院の機能ではない。

 ==============================

    以上の記述に従えば、肢イ・エ・オが議院の機能になるので、
   3が正解である。
 
===============================

 ◆ 類似する過去問

     平成14年度問題4

  日本国憲法によって認められる「議院の権能」として、誤ってい
 るものはどれか。 

 1 国政調査権の行使 
 2 議院規則の制定 
 3 議員に対する懲罰 
 4 議員の資格争訟の裁判 
 5 弾劾裁判所の設置 

  《解説》

  前記の平成25年度問題6と比較すれば、アの『会期の決定』が
 除かれて、3の『議員に対する懲罰』 が加えられている。他の肢
 については、両者は、全て重なる。
   
  『議員に対する懲罰』は、58条2項後段により、「議院の権能」
 であり、5の『弾劾裁判所の設置』は、64条1項により「国会の
 機能」である。 

  以上、1〜4はすべて「議院の機能」であり、5のみが「国会の
 機能」であるので、5が正解となる。
   
  なお、25年問6では、『裁判官の弾劾』とあり、曖昧であった
 のが、本問では、『弾劾裁判所の設置』であって、「国会の機能」
 であることが明確になっている。
    

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 関連する過去問
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  ◆ 今回とりあげた憲法・平成25年度問題6は条文問題である。
  そこで、これからは、順次、過去に遡りながら、過去問・条文
  問題を検討することにする。

 ●  平成24年度問題4

   次の記述のうち、憲法の規定に照らし、正しいものはどれか。 

   1 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、
   訴追されない。 
   2 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期
  中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、開会後直ちにこれ
    を釈放しなければならない。 
   3 両議院の議員は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この
   報酬は、在任中、これを減額することができない。 
   4 国務大臣は、議院で行った演説、討論又は表決について、院
   外で責任を問われない。 
   5 国務大臣は、裁判により、心身の故障のために職務を執るこ
   とができないと決定された場合を除いては、問責決議によらな
     ければ罷免されない。 

    《解説》

   サイト欄第137号において、いまとなっては懐かしい美里さ
  んとの対談で、平成24年度・憲法問題全般について検討してい
  る。その際、本問もとりあげている。

 ================================================================

      サイト137号はこちら。
     ↓ ↓
 

================================================================

   その中から、本問に関する検討内容を以下に掲げておく。これを
  もって、当該問題の解説に代えることにする。

 
 先生「この問題は、肢1が、75条の文言どおりで、正しいのであって、
       やさしいというのが、常識的みかただ。しかし、近年の憲法の問題
       は、条文の暗記を問う問題は影をひそめていたので、虚をつかれた
       ということにならないだろうか」

 美里「わたしも、先生のご指摘どおり、直前の条文の精読をしていません
       でしたので、試験当日、さっと、条文がうかぶ状態になく、1か2
       かで迷い、2を選択したため、不正解でした」

 先生「これからは、憲法に関しては、条文もすくないので、とくに、直前
       の精読も、予定にいれておくべきだ」

 美里「はい。こころしておきます」

 先生「それでは、この問題について、要点を述べる」

 美里「はい」

 先生「この問題は、国会の一員である議員と内閣構成員である国務大臣を
       ごちゃごちゃにしているのが特徴だ」

 美里「そうですね。肢4など、その典型ですね」

 先生「まず、国会議員には、その重要な機能に照らし、憲法上、特権が認め
       られている。そのひとつが、50条の不逮捕特権だ。本問の肢2だ」
 
 美里「(フフ・・)わたしが×だったやつ!・・」

 先生「自虐的になるな!無条件釈放ではなくて、『議院の要求』だ。条文
       の精読の際に、こういったところに焦点をあて、本試験できかれるか
       もしれない と予測するのも大切だ」

 美里「クイズ感覚ですね」

 先生「(無視)次に50条を読むときは、『法律の定める場合』を埋めて読
       むことも大事だ。国会法33条・34条によれば、不当逮捕のおそれ
       がないため院外における現行犯と議院の許諾のある場合は、国会の会
    期中でも逮捕されることになる。これらに関して、2点を指摘してお
                         ※注1
       きたいが、それは、要覧としてまとめておいたので、あとで参照して
       おいてほしい」

 美里「はい。わかりました」

 先生「つぎに、議員の特権として、51条では、発言の免責特権がみとめら
    れているが、肢4では、国務大臣にすりかえられているから、本肢は
       明らかに正しくない。この免責特権については、いくつかの論点があ
                   ※注2
       るが、これも要覧でで示しておく」

 美里「はい。わかりました」

 先生「さらに、49条では、国会議員の歳費について定められているが、7
    9条6項・80条2項と項対比すればわかるが、議員の場合は、裁判
    官のように、減額禁止規定がないから、肢3は正しくない」
 
 美里「はあ〜い」

 先生「そんなことは、先刻、承知だということだな。顔に描いてある」

 美里「そのとおりです」

 先生「それでは、残りの国務大臣に関する肢の説明については、君にまか
       そう」

 美里「そうすると、4の国務大臣・・・は終わったし、1と5ですね。・・
       エツ!先生は意地悪です!わたしの誤った1を説明させるのですか」

 先生「きみのひとり相撲だ。1は、75条の文言どおりで、正しい!もう、
    おわっている。5の説明だけでよい」

 美里「はい。68条によれば、1項で国務大臣を任命した内閣総理大臣が、
       2項で任意に国務大臣を罷免できるのですから、裁判とか議院の問
       責決議によって罷免されることはありません」

 先生「パーフェクトな解答だ!本肢は、裁判官に適用される78条の規定
       をまぜているが、この際、この裁判官の身分保障の規定も頭にいれ
       ておこう」

 美里「問責決議までもちだされていますね」

 先生「『この問責決議は、衆議院の不信任決議と異 なり、 あくまで政治
        的な意味をもつにとどまる』。よく考えてみると、国務臣の責任
    追及といっても、窮極の責任追及は、罷免となるのだろうが、そ
    の罷免権限は、憲法上、内閣総理大臣が有するのだからつまると
    ころ、議院の国務大臣に対する責任追及は『あくまでも政治的な
    意味をもつにとどまる』ことになるのだろう」

 美里「よく、総理大臣の任命責任とかいわれますが・・・」

 先生「たしかに、その間の事情を示しているとおもう。そこで、もう一度、
       肢1にかえると、官憲の国務大臣の訴追にあっても、任命権者であ
       る内閣総理大臣の同意を要することになる。おちのついた、このあ
    たりで、本問を打ち切ろう」
 
 美里「はい」


  
 ※ 要覧 1

 (1)逮捕についての議院の許諾に際して「逮捕は許諾はするがそれを一
     定の期間に制限する期限付許諾が認められる」だろうか。「不逮捕特
     権保障の目的を、不当な逮捕から議員の人権が侵害される危険を防ぐ
     こと」ととらえたばあいは、ふたとおりの考えかたがみちびかれます。
    そのひとつは、「逮捕許諾の請求に対して議院はそれを全面的に拒
      むことができる以上、期限または条件をつけることも必ずしも違法
      ではない」というものです。これが多数説のようです。
    これに対して、その目的からいって、期限付許諾は認められず、
      全面的に拒むことしかできないという有力説もあります(芦部説も
      この立場のようです)。
    つぎに、「特権保障の目的を審議権の確保に重点を置いて考える
      立場は、期限付逮捕許諾は許される、という解釈と結びつく可能性
      が大きい」とされています。

        本試験で出題されるかどうか、わかりませんが、しっておいて、
      損はないとおもいます。

 (2)これは、一般的に論じられていませんが、院内における現行犯の
       ばあ いは、どうなるのでしょか。このばあいには、議院の許諾の
       あるばあい、逮捕されることになるのでしょう。


  ※ 要覧 2

 (1) 免責特権の保障は、厳密な意味の「演説、討論又は表決」に限定さ
       れません。議員の国会における意見の表明とみられる行為や、職務行
       為に付随する行為にもおよびますが、暴力行為は、それに含まれませ
       ん。私は、ここで、さきにあげた院内における現行犯を連想します。

 (2 「責任」とは、民事・刑事の責任のほか、弁護士等の懲戒責任を含み
       ますが、政党が党員たる議員の発言・表決について、除名等の責任を
       問うことはさしつかえありません。

 (3) 「議員が職務と無関係に違法または不当な目的をもって事実を摘示
       し、あるいは、あえて虚偽の事実を摘示して、国民の名誉を棄損した
       と認められる特別の事情ある場合には、国家賠償法1条1項に基づい
       て、国の賠償を求めるできる場合もあると、解され」ています(最判
       平成9・9・9民集51巻8号3850頁)。

 (4) 議員の職務行為に関しておこなわれた犯罪(暴力行為)について、
    その訴追に議院の告発を要するでしようか。議院の自律権を尊重す
    れば、積極に解することになりますが、それは新しい特権を議院に
    認めることになり、妥当でないというのが、芦部説です。     

   《本問については、後掲 参考文献を参照した》


 ●  平成21年度問題7

   衆議院と参議院の議決に一致がみられない状況において、クローズ
 アップされてくるのが両院協議会の存在である。日本国憲法の定めに
 よると、両院協議会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合は、
  次のうちどれか。 

  1 衆議院が先議した予算について参議院が異なった議決を行った場合 
 2 内閣総理大臣の指名について衆参両院が異なった議決を行った場合 
 3 衆議院で可決された法律案を参議院が否決した場合 
 4 衆議院が承認した条約を参議院が承認しない場合 
 5 参議院が承認した条約を衆議院が承認しない場合 


 《解説》

   法律案、予算および条約、内閣総理の指名などについて両議院の意
 見が対立した場合に、妥協案の成立をはかるため、両院協議会が設け
 られる(後掲書)。

  このうち、両議院の意見が対立した場合

  (1)予算については、60条2項および国会法85条1項により
     両院協議会を必ず開かなくはならない。
  (2)内閣総理の指名については、67条2項および国会法86条
    2項により両院協議会を必ず開かなくはならない。
  (3)条約の国会承認については、イ 衆議院が承認した条約を参
    議院が承認しない場合 、ロ 参議院が承認した条約を衆議院が
    承認しない場合 いずれの場合も、両院協議会を必ず開かなくは
    ならない(61条・60条2項・国会法85条)。

   したがって、本問においては、肢1の予算(1)・肢2の内閣総
  理大臣の指名(2)・肢4・5の条約の国会承認いずれについても
  両院協議会を必ず開かなくはならない場合に該当するので、両院協
  議会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合に該当しない。

   残るのは、肢3の法律案の議決である。59条3項によれば、衆
   議院で可決された法律案を参議院が否決した場合、衆議院が、両議
  院の協議会を開くことを求めることができるのであって、両院協議
  会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合に該当する(国会
  法84条1項)。
   なお、参議院が両院協議会を求めることができる場合もあるが、
  この場合、衆議院はこの両院協議会の請求を拒むことができること
  になっている(国会法84条2項)。

   以上の記述に照らせば、肢3が正解である。

  ※ 参考事項

   a 本問解説では、全体の仕組みを理解するために、国会法に言
    及したが、「日本国憲法の定めによると、両院協議会を必ずし
    も開かなくてもよいとされている場合」という設問に答えるた
    めには、憲法59条3項の条文を正確に知っていれば、本問の
    正解が3であると即答できる。

   b 関連事項として、法律案、予算および条約、内閣総理の指名
    について、条文を示して、「衆議院の優越」に言及しておきた
    い。

     法律案⇒衆議院の再可決によって、法律となる(59条2項)。
         参議院が60日以内に議決しないときは、衆議院は、
         参議院が否決したものとみなし、59条2項によっ
         て再可決できる(59条3項)。
     
     予算および条約⇒必要的開催である両院協議会における意見
             の不一致又は参議院が30日以内に議決し
             ないときは、衆議院の議決で足りる(60
             条2項・61条)


     内閣総理の指名⇒必要的開催である両院協議会における意見
             の不一致又は参議院が10日以内に議決し
             ないときは、衆議院の議決で足りる(67
             条2項)


     なお、衆議院の予算先議(60条1項)にも留意されたい。


 ●  平成20年度問題5

   国家機関の権限についての次のア〜エの記述のうち、妥当なもの
  をすべて挙げた組合せはどれか。 
   
   ア 内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがある。
   イ 最高裁判所は、実質的にみて、行政権を行使することがある。
   ウ 衆議院は、実質的にみて、司法権を行使することがある。
   エ 国会は、実質的にみて、司法権を行使することがある。 

   1 ア・ウ 
  2  ア・イ・エ 
   3 ア・ウ・エ 
  4  イ・ウ・エ 
   5 ア・イ・ウ・エ 

 
 《解説》

   ● アについて。

   「立法」には、、形式的意味の立法と実質的意味の立法という二つ
  の意味がある。

     形式的意味の立法とは、規範の中身が何であるかを問わず「法律」
    と いう形式だけを問題にする。
      実質的意味の立法は、規範の形式が法律であると命令であるとを
    問わず中身を問題にする。

     憲法41条が規定するのは、実質的意味の立法であるため、不特定
   多数のの人に対して、不特定多数の事件に適用される法規範は、国会
   が定立することになる(後掲書)。

   しかし、憲法のもとでは、内閣の発する政令によって、法律を執行
    するためのもの(執行命令)ないし法律の具体的は委任に基づくもの
  (委任命令)を定立することができる(73条6号)。

    したがって、「内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがあ
   る」というのは妥当である。

   論理的にえば、以上記述したとおりであるが、本肢をみて、パッと
  73条6号の「政令」が反射的に頭に浮かべば、それが、正解に直結
  するのであろう。

   ● イについて。  
 
  最高裁判所は下記の司法行政事務を行う。
   
  下級裁判所の裁判官指名権(憲法80条第1項)・最高裁判所の職員
 並びに下級裁判所および 裁判所職員を監督する司法行政監督権(裁判
 所法80条1号・裁判官会議の議によって行う。同12条)。

  なお、これらは、明治憲法では司法省(現在の法務省)の所管に属し
 ていた行政事務であって、裁判作用とあわせて行政事務を行使する点で、
 最高裁判所の地位と機能は、戦前の大審院と大きく異なる(後掲書)。

   したがって、肢イが妥当であることは、明らかである。

  ※ 最高裁判所規則の制定権(77条1項)は、最高裁判所が、実質
   的にみて、立法権を行使する場合であることにも注意せよ。

  

 ● ウについて。

   議院の機能の一つである内部組織に関する自律権として、議員の資格
  争訟の裁判権(55条)がある。これが、実質的にみて、司法権の行使
  であることは疑いない。肢ウは、妥当である。
   
   ※  当該裁判権は、議員の資格の有無についての判断をもっぱら議院の
     自律的審査に委ねる趣旨のものであるから、その結論を通常裁判所で
   争うことはできない(後掲書)ことにも注意せよ。

 
 ● エについて。

    これは、弾劾裁判(64条)を問題にしていることは、疑いない。しか
   し、次の指摘には、注意を要する。

     国会の権限に属するのは、弾劾裁判所を設けることだけであって、弾劾
   裁判を行うのは弾劾裁判所の権限であり、弾劾裁判所は、国会の機関では
   ないことは注意を要する(清宮四郎著・憲法1・有斐閣発行)。

     ここに注目すると、実質的にみて、司法権を行使するのは、国会ではな
   くて、国会の設置した弾劾裁判所ということになる。
     しかし、国会において、両議院で組織された訴追委員会が、裁判官の罷
    免を訴追することになっている(国会法126条)。これも司法権の行使
    だとみれば、この肢は妥当ということになるのだろうか。あるいは、弾劾
  裁判所の設置自体も実質的にみて、司法権の行使になるのだろうか。いず
  れにしても、疑問の残る肢である。

    しかし、全体としては、ア・イ・ウが妥当な肢であることは、動かせな
  いので、1〜5の選択肢によれば、5を選択せざるを得ず、出題者として
  は、エが妥当であるとの判断に立脚していることになる。
  
 ================================== 

   以上のとおり、本問は5が正解である。
 
 ==================================

  
 ◆ 今回は、過去問/憲法・条文問題について、平成20年度まで遡ったが、
  それ以前となると、数多くの条文問題が出現している。ただし、条文問題
  は、本来、本試験日より遠くない時期に集中的に行うべきものである。し
  たがって、この続編は、本試験日に合わせて、適切な時期に掲載すること
  にする。

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  ★  参考文献

  憲法 第四版 芦部 信喜 高橋 和之 補訂 岩波書店 

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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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              ★  【過去問・解説 第115回】  ★

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 【テーマ】 行政法
    
 【目 次】 過去問・解説          
 
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 ■  平成25年度問題16
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   いわゆる申請型と非申請型(直接型)の義務付け訴訟について、
 行政事件訴訟法の規定に照らし、妥当な記述はどれか。

 1 申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処
  分がされないことにより「重大な損害を生ずるおそれ」がある場
   合に限り提起できることとされている。
 2 申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分
   をすべき旨を行政庁に命ずることを求めるにつき「法律上の利益を
   有する者」であれば、当該処分の相手方以外でも提起することがで
   きることとされている。
 3 申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、一定の処分
   がされないことによる損害を避けるため「他に適当な方法がないと
   き」に限り提起できることとされている。
 4 申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、「償うことの
  できない損害を避けるため緊急の必要がある」ことなどの要件を満た
  せば、裁判所は、申立てにより、仮の義務付けを命ずることができる
  こととされている。
 5 申請型と非申請型の義務付け訴訟いずれにおいても、それと併合し
  て提起すべきこととされている処分取消訴訟などに係る請求に「理由
  がある」と認められたときにのみ、義務付けの請求も認容されること
  とされている。


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 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  ★ 本問は、前回(114回)のオリジナル/応用問題に対して、
  理解が行き届いていれば、正解が得られるであろう。

 ◎ 総説
 
 (1)本問の解答必要な条文は、行政事件訴訟法第3条6項・3
   7条の2・37条3であって、その連関が把握されていれば
   よい。
  
 (2) 非申請型(直接型)義務付け訴訟は、行訴法第3条第6項
    第1号に該当する場合であり、申請型義務付け訴訟は、同法
    同条同項第2号に掲げる場合である。

 (3)前回のオリジナル問題に照らせば、違法な建築物を建設した
   Aの隣接地に居住するBが、行政庁に対して、当該建築物に対
   して、違法な点を是正するよう是正命令を出すこと求めるとき
   が、非申請型義務付け訴訟であり、建築確認を申請したAが建
    築確認を得られなかった場合において(※)、行政庁に対して、
   建築確認を義務付けるときが、申請型義務付け訴訟となる。

   ※ ここでいう「建築確認を得られなかった場合」とは、「申
    請不応答」と「拒否処分」があることに注意。
    
  

 ○ 各肢の検討

  
  1について。
   〜〜〜〜
   
   行訴法37条の2は、第3条第6項第1号に掲げる場合である
  ので、非申請型義務付け訴訟についての規定であり、37条の3
  は、第3条第6項第2号掲げる場合であるので、申請型義務付け
  訴訟についての規定でる。両者を比較すると、「重大な損害を生
  ずるおそれ」の要件があるのは、37条の2の非申請型義務付け
  訴訟のみである。

   したがって、本肢は妥当でない。

  ※ 本肢に関連する箇所を前回のオリジナル問題から引用すると、
   下記のとおりである。

     非申請型義務付け訴訟については、第三者が義務付けるた
    め(第三者訴訟)、厳格な要件が要求されているのに対して、
    申請型義務付け訴訟については、不作為違法確認訴訟・取消
    訴訟・無効確認訴訟の併合提起が要求されているものの第3
        7条の3第3項)、非申請型のような厳格な要件が要求され
        ていないことに注意せよ。

  
   2について。
   〜〜〜〜〜

     申請型義務付け訴訟の原告適格は、「申請」した者に限ら
    れるので(37条の3第2項)、申請型義務付け訴訟におい
    ても、「当該処分の相手方以外でも提起することができるこ
    ととされている」本肢は、妥当でない。
     なお、第三者訴訟である非申請型義務付け訴訟における原
    告適格については、行訴法9条2項の「法律上の利益」の有
    無の判断が重要であるのは、前回詳述したとおりである。

    
      3について。
   〜〜〜〜〜

    肢1における「重大な損害を生ずるおそれ」と同様に「他に
   適当な方法がないとき」の要件があるのは、37条の2の非申
   請型義務付け訴訟のみであるので、これに反する本肢は妥当で
   ない。

   4について。
   〜〜〜〜〜
    
    仮の義務付けに求められる「償うことのできない損害を避け
   るため緊急の必要がある」いう要件は、申請型・非申請型を問
   わず、義務付け訴訟に共通であるので(行訴法第37条の5第
   1項)、それらの要件を満たせば、裁判所は、義務付け訴訟の
   提起と共に、申立てにより、仮の義務付けを命ずることができ
   る。

    したがって、本肢は妥当である。
  
    
    5について。
    〜〜〜〜〜
    
     行訴法第37条の3第3項によれば、申請型の義務付け訴
    訟においては、それと併合して提起すべきこととされている
    処分取消訴訟などに係る請求に「理由がある」と認められた
    ときにのみ、義務付けの請求も認容されることになっている
    (第37条の3第5項)。しかし、37条の2の義務付け訴
    訟では、処分取消訴訟などを併合して提起すべきであるとさ
    れていないので、非申請型の義務付け訴訟には本肢は妥当し
    ない。つまり、本肢は、申請型の義務付け訴訟にのみに関す
    る記述であることになる。

    したがって、本肢は妥当でない。


    ※  申請型義務付け訴訟は、3条6項2号に掲げる場合であ
     り(第37条の3第2項)、この場合には、「申請不応答」
     と「拒否処分」があることは、前述したとおりであるが
     (第37条の3第1項参照)、申請型の義務付け訴訟にお
     いて、それと併合して提起すべきこととされている訴訟は、
     「申請不応答」の場合には、3条5項の「不作為の違法確
     認の訴え」であり、「拒否処分」の場合には、3条2項の
     「処分の取消しの訴え」または3条4項の「無効確認の訴え」
     である(第37条の3第3項)。

     以上の関係を図示すると、

     国民⇒行政庁に対し許認可の申請⇒行政庁
                      ↓
                     (1)「申請不応答」
                     (2) 「拒否処分」
    
     国民⇒裁判所に対し許認可を行政庁に義務づける訴訟提起
        
    (1)の場合 当該「義務付け訴訟」に「不作為の違法確認
           の訴え」を併合して提起せよ。
   
     (2)の場合 当該「義務付け訴訟」に「処分の取消しの訴
                  え」又は「無効確認の訴え」を併合して提起
           せよ。
     
       以上の図示を見ながら、本肢の記述である「併合して提
     起すべきこととされている処分取消訴訟などに係る請求に
     『理由がある』と認められたときにのみ、義務付けの請求
     も認容されることとされている」を読めば、その意味を把
     握しやすくなるであろう。教科書では、この『理由がある』
     ことが、本案勝訴要件であると説明されるが、平たくいえ
     ば、次のように言えるであろう。

      『理由がある』とは、勝訴できることであるから、ぶら
     さげてきた(併合した)処分取消し訴訟が勝訴できないな
     ら、本体(本案である「義務付け訴訟」)も勝訴(認容)
     できませんよということである。

      法律用語に徒に振り回されることなく、できるだけ具体
     的に考察する訓練を涵養することも、私は、法律学習には
     肝要であると思う。
                 
  ===============================
 
   本問では、妥当であるのは、4であるから、4が正解である。

 ===============================
 
 
 ★  参考文献

   行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

     ・有斐閣発行


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           ★  【過去問・解説 第114回】  ★

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 【テーマ】 行政法
        
 【目 次】 過去問・解説
              
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 ■  平成25年度問題44 《記述式》
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   Aが建築基準法に基づく建築確認を得て自己の所有地に建物を
 建設し始めたところ、隣接地に居住するBは、当該建築確認の取
 消しを求めて取消訴訟を提起すると共に、執行停止を申し立てた。
 執行停止の申立てが却下されたことからAが建設を続けた結果、
 訴訟係属中に建物が完成し、検査済証が交付された。最高裁判所
 の判例によると、この場合、(1)建築確認の法的効果がどのよう
 なものであるため、(2)工事完了がBの訴えの訴訟要件にどのよ
 うな影響を与え、(3)どのような判決が下されることになるか。
 40字程度で記述しなさい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 
  【過去問・解説 第113回】から続く


  4 (1) 末尾

    以下、過去問平成18年度問44《記述式》・平成22年
   度問42《多肢選択式》・平成24年度問17《五肢択一式》
   を取り上げる予定であったが、これらについては、過去問・
   解説 第113回の続編として、次回の同114回に掲載す
   ることにする。 
    
   (2) 過去問平成18年度問44《記述式》  

          保健所長がした食品衛生法に基づく飲食店の営業許可に
    ついて、近隣の飲食店営業者が営業上の利益を害されると
    して取消訴訟を提起した場合、裁判所は、どのような理由
    で、どのような判決をすることとなるか。40字程度で記
    述しなさい。

         正解例としては、以下のようになるであろう。

    「本件業者は、法律上の利益を有せず、原告適格を欠くの
     で、却下の判決をする。」(37字)

   《解説》
   
     本問は、行政処分の相手方ではない第三者が起こす訴訟
    である第三者訴訟が主題になっている。

     この場合においても、「法律上の利益」がキイワードに
    なって、「原告適格の有無」が判断され、行訴法9条2項
    が焦点になるのは、 前回に詳述したとおりである。
       
           9条2項の新設によって、原告適格が拡げられた後も、
     本件 業者にまで「原告適格」が認められないというのは、
         教科書の典型例として、散見されるところであるので、
         さきに示した正 解例が妥当する。

     なお、同種事案の判例としては、以下のものがある。

      既存の質屋は、第三者に対する質屋営業許可処分の取
          消しを求める法律上の利益を有しない(最判昭34・8
          ・18民集13−10−1286)。

     ※ 前回取りあげた、「平成25年度問題44」もまた、
            第三者訴訟であるが、本件では、「原告適格」がある
            ことは、前提とされ、「法律上の利益」というキイワ
            ードは、「訴えの利益」との関係で考察されたのであ
            る。その意味において、前回における以下記述によっ
            て、条文の連関を再認識されたい。

          原告適格は、行訴法9条1項の「法律上の利益」を
            有する者であるが、訴えの利益もまた、この「法律上
            の利益」に含まれる。以上の点からすると、「『法律
            上の利益』の概念は二重の意味を持っていることにな
            る。

  (3) 過去問平成22 年度問42《多肢選択式》  

      取消訴訟の原告適格に関する次の文章の空欄[ア]〜[エ]
          に当て はまる語句を、枠内の選択肢(1〜20)から選び
          なさい。
  
      平成16年(2004年)の行政事件訴訟法(以下、
         「行訴法」 という。)改正のポイントとして、取消訴訟の
          原告適格の拡大がある。
      取消訴訟の原告適格につき、行訴法9条(改正後の9条
         1項)は、「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え
         (以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消
         しを求めるにつき[ア]を有する者……に限り、提起するこ
         とができる。」と定めているが、最高裁判例は、ここでいう
        「当該処分の取消し求めるにつき『[ア]を有する者』とは、
        「当該処分により自己の権利若しくは[イ]を侵害され又は必
         然的に侵害されるおそれのある者をいう」と解してきた。
         しかしながら、裁判実務上の原告適格の判断が狭いとの批
         判があり、平成16年改正により新たに行訴法9条に第2
         項が加えられ、「裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の
         者について前項に 規定する[ア]の有無を判断するに当たっ
         ては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言の
         みによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処
         分において考慮されるべき [ウ]の内容及び性質を考慮する
     ものとする」ことが規定された。そしてこの9条2項は、
         [エ]の原告適格についても準用されている。

     1 差止め訴訟 2 法律上の利益 3、権限 4 憲法上保護さ
        れた利 益 5 事実上の利益 6 住民訴訟 7 実質的当事者
        訴訟 8 損害 9 利益 10 法律上保護された利益 11 訴訟
        上保護された利益 12 立法目的 13 訴訟上の利益 14 公益 
        15 うべかりし利益 16 不作為の違法確認訴訟 17 法的地位 
        18 公共の福祉 19 紛争  20 形式的当事者訴訟

     正解

     ア=2(法律上の利益) イ=10(法律上保護された利益) 
     ウ=9(利益) エ=1(差止め訴訟)

  《解説》

    平成16年(2004年)の行訴法改正としして、9条に第
     2項が追加され、取消訴訟の原告適格の拡大がなされたことに
     ついては、前回、説明をした。
    その箇所を参照すれば、本問は難なく正解に達するであろう。
    ここでは、[ア]〜[エ]につき、補足的な説明に行うことにす
   る。
 
 
   [ア]・ 取消訴訟の原告適格とは、、行訴法9条1項の「法律上
     の利益」を有する者に該当することは、明瞭であるから、
     ア=2(法律上の利益)となる。
  
   [イ]・ 当該「法律上の利益」の解釈としては、「法律上保護さ
     れた利益」説が通説である旨説明したが、最高裁判所もまた、
     1978(昭和53)年3月14日判決=主婦連ジュース不
     当表示事件において、以下のように判示することによって、
     「法律上保護された利益」説をとることを明確にした。 

      当該処分について不服申立てをする法律上の利益がある者、
          すなわち、当該処分により自己の権利若しくは「法律上保護
          された利益」を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのあ
          る者をいう、と解すべきである。

       したがって、イ=10(法律上保護された利益)となる。

     ※ この基準に関する当該判決に関しては、後掲書「読本」
            による以下の記述を参照されたい。

        この基準は、この判決では行政不服申立資格の基準と
              して示されたのであったが、その後、下級裁判所のみな
              らず最高裁判所自身によっても、行政事件訴訟法9条1
              項の「法律上の利益」の解釈の基準を示すものとして適
              用されてきている。この主婦連ジュース不当表示事件の
              最高裁判決により、取消訴訟の原告 適格について、
             「法律上保護された利益」説が確立したと言ってよいで
              あろう。

    [ウ]・9条2項の条文に照らし、 ウ=9(利益)となる。

       ※ 前回、行政事件訴訟法9条2項は「法律上保護され
                た利益」説に立ちつつ、「法的な保護に値する利益」
                説も取り入れていると見ることができる旨記述したが、
                その間の消息については、後掲書「読本」による以下
                の記述を参照されたい。

         「主婦連ジュース不当表示事件の最高裁判決が提示
                 した「法律上保護された利益」説は、訴訟実務の中
                 では、とくに地方裁判所や高等裁判所のレベルおい
                 てであるが、原告適格を否定するために用いられ、
                 猛威を振るってきたと言ってよいほどである。この
                 状況を打破するため、2004年行政事件訴訟法で
                 は、同法9条に」2項の規定が付け加えられたので
                 ある。
       
                  前記の行訴訟9条2項は「法的な保護に値する利益」
                説も取リ入れたという記述も、後掲書「読本」の引用
                であるが、同書の著者は、「法的な保護に値する利益」
                説も取リ入れたことによって、追加された行訴訟法9
                条2項が、原告適格を拡げたという主張をされるので
                あろう。

         [エ]・差止め訴訟については、行訴訟3条7号に規定があり、
              その要件は37条で規定されているが、同条4項におい
              て、「法律上の利益の有無の判断については、第9条第
              2項を準用する」旨規定されている。したがって、エ=
              1(差止め訴訟)となる。

       ※ 「今後は許認可を第三者が差し止めようとする訴訟も
        出てくる可能性がある」(後掲書・読本)とされるが、
        そうなれば、第三者訴訟に適用される9条2項が、差止
        め訴訟に準用される機会が増加すると思われる。
         なお、9条2項は、義務付け訴訟にも準用されている
        (37条の2・4項)ことにも注意せよ。この場合にも、
        差止め訴訟と同様に第三者訴訟として、提起されること
        が多くなるであろう。


      (4) 過去問平成24 年度問17《五肢択一式》  

           行政事件訴訟法9条2項は、平成16年改正において、取消
     訴訟の原告適格に関して新設された次のような規定である。次
     の文章の空欄[ア]〜[エ] に入る語句の組合せとして正しいも
     のはどれか。

     「裁判所は、処分又は裁決の[ア]について前項*に規定する法律
      上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の
           根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の
           [イ] 並びに当該処分において考慮されるべき[ウ]を考慮する
           ものとする。この場合において、当該法令の[イ]を考慮するに
           当たつては、当該法令と[エ]を共通にする関係法令があるとき
           はその[イ]をも参酌するものとし、当該[ウ]を考慮するに当た
           つては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してさ
           れた場合に害されることとなる[ウ]並びにこれが害される態様
           及び程度をも勘案するものとする。」

        ア           イ        ウ      エ
          1 相手方         趣旨及び目的     公共の福祉   目的
          2 相手方以外の者  目的とする公益  利益の内容及び 趣旨
                                              性質   
          3 相手方      目的とする公益  相手方の利益  目的
          4 相手方以外の者  趣旨及び目的   利益の内容及   目的
                                              び性質   
          5 相手方以外の者 目的とする公益  公共の福祉  趣旨

           (注)* 行政事件訴訟法9条1項

         
           正解

         本問は、解説するまでもなく、行訴法9条2項の語句を文
     章の空欄[ア]〜[エ] に入れると、4となる。

       ※ 本問に関しては、行訴法9条2項が、行政処分の相手
         方ではない第三者が起こす訴訟である第三者訴訟の原
        告適格についての規定であるという認識があれば、ア
        が「相手方以外の者」である2・4・5に絞られるの
        で、以後の作業が楽になるであろう。
         いずれにせよ、この9条2項は重要な規定であるの
        で、折りにふれ、何度も熟読しておくべきであろう。
        
        5 前回において、以下のように述べたので、順次考察する。

     なお、本問である平成25年度問題44をもう少し、掘り下げ
    て 、第三者訴訟(後記オリジナル問題とも関連する)・本問の
    記述である「執行停止」のもつ意味についても、次回において考
    察してみたい。   

    (1)第三者訴訟

      本問では、建築確認を得たA以外の隣接地に居住するBが
     当該建築確認の取消訴訟を提起したというのであるから、当
     該取消訴訟は、行政処分の相手方ではない第三者が起こす訴
     訟である第三者訴訟である。本問では、論点になっていない
     ため素通りしたが、行訴法9条2項の適用によって、Bに原
     告適格が認められるということが前提とされていることも認
     識すべきである。

    (2)執行停止

            本問では、原告は、処分の取消しの訴え提起と共に執行停
     止の申し立てを行っている。原告としては、建築確認が違法
     であれば、当該建築物の建築を阻止したり、違法な点を是正
     できることを期待して、執行停止の申し立をしたものと思わ
     れる。もし、原告のこの期待が正当であれば、執行停止の申
     し立てが却下されたとしても、建築工事の完了した後におい
     てもなお、建築確認が違法であることを理由に建築確認を取
     り消すことによって、当該建築物の違法な点を是正できるこ
     となる。ということになれば、建築工事完了後に建築確認を
     取り消す実益があることになり、当該訴訟に「訴えの利益」
     があることになる。実は、本問の執行停止には、そのような
     意味もこめられていて、引いては、そのことが建築工事完了
     後の建築確認取り消しに関する「訴えの利益」の問題を考え
     させる契機にもなっていると推定される。
      しかし、最高裁判所は、前記是正命令を発するかどうか
     は、行政庁の裁量であって、建築確認が存在していても、
     是正命令を発することができるし、建築確認が取り消され
     ても、是正命令を発すべき法的拘束力を生じるものではな
     く、「建築確認は、それを受けなければ建築工事ができな
     いという法的効果をもつにすぎないから、当該工事の完了
     により訴えの利益は失われる」という判断を示したのであ
     る。


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■ オリジナル/応用問題・解説 
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 《問題》
 
  Aが建築基準法に基づく建築確認を得て自己の所有地に建物を建設し
 始めたところ、隣接地に居住するBは、当該建築物に対して、違法な点
 を是正してもらいたいため、当該建築確認の取消しを求めて取消訴訟を
 提起すると共に、執行停止を申し立てた。しかし、裁判所によって、執
 行停止の申立てが却下されると共に当該取消訴訟は、本件建築工事が完
 了したために、訴えの利益が消滅したことを理由に、却下された。この
 場合において、Bの取消訴訟以外の訴訟提起の可能性に言及した次の文
 章について、空欄[ア]〜[エ]に入る語句の組合わせとして正しいものは
 どれか。

   行政庁が、問題の当該建築物を建設したAに対して、違法な点を是正
 するよう是正命令(建築基準法9条1項)を出すこと求めるには、Bは
 [ア]を提起することになるが、この場合の用いられるべき[イ]の[ア]は、
 訴訟要件が厳しく使いにくいものであることにも留意が必要である。そ
 の訴訟要件については、行政事件訴訟法第37条の2第1項に規定があ
 るが、それによると、「一定の処分がされないことにより[ウ]を生ずる
 おそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に[エ]がないとき限り、
 提起することができる」旨定めてある。なお、同条2項には、同条1項
 に規定する [ウ]を生ずるか否かの裁判所の判断基準が定めてある。

 (行政法読本 芝池義一 著 ・有斐閣発行を参照しながら、作成した)
 
     

         ア      イ       ウ     エ

 1 義務付け訴訟  非申請型  償うことので   適当な方法
                 きない損害
 
 2  差止訴訟    非申請型  重大な損害   適当な方法

 3 不作為違法   申請型   相当の損害   相当な方法
   確認訴訟

 4 無効確認訴訟    申請型      償うことので   相当な方法
                 きない損害

 5  義務付け訴訟  非申請型  重大な損害   適当な方法


 《解説》


  ◎  本問は、前記5(2)執行停止 を読んだ後、当該解説に進んで
  ほしい。
   当該最高裁判所判例によって救済されないBが、是正命令を求め
  るために「義務付け訴訟」を提起する場合の記述が、本問の文章で
  ある。

 ○ したがって、ア=義務付け訴訟 になる。

 ● 当該義務付け訴訟は、行訴法第37条の2第1項によれば、第3
  条第6項第1号に掲げる場合であるので、イ=非申請型となる。

  ※ 申請型義務付け訴訟は、行訴法第37条の3によれば、第3条
   第6項第2号に掲げる場合であるので、本問に照らせば、Aが建
    築確認が得られなかった場合において、行政庁に対して、建築確
   認を義務付けるときである。

 ◎ 当該義務付け訴訟は、行訴法第37条の2第1項によれば、その
  要件は、「重大な損害」を生ずるおそれであるから、ウ=重大な損
  害となる。

 △ 同様に、条文上その要件として、「適当な方法」がないときに限
  りが該当するので、エ=適当な方法となる。

  ※ 非申請型義務付け訴訟については、第三者が義務付けるため  
   (第三者訴訟)、厳格な要件が要求されているのに対して、申
    請型義務付け訴訟については、不作為違法確認訴訟・取消訴
    訟・無効等確認訴訟の併合提起が要求されているものの
   (第37条の3第3項)、非申請型のような厳格な要件が要求
    されていないことに注意せよ。

  ※ なお、「償うことのできない損害」は、仮の義務付け等に求
   められる要件である(行訴法第37条の5第1項)。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  以上の記述により、本問は、5が正解である。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
 ▲ 付言

  本問の出題・解説は、行政事件訴訟法の体系的理解という本講座
 の趣意に添ったものである。


 ★  参考文献

   行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

     ・有斐閣発行



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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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