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               ★ 【過去問解説第105回】 ★

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                              PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法=行政不服審査法
    
  【目 次】 過去問・解説
              
    
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 ■ 平成24年度・問題15
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  行政不服審査法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 1 審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不
 適法であるときは、審査庁は、棄却裁決を行う。

 2 処分についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該処
  分の取消しのみならず、処分庁に代わって一定の処分を行うことが
  できる。

 3 不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該
  不作為庁に対しすみやかに申請に対するなんらかの行為をすべきこ
  とを命ずるとともに、裁決でその旨を宣言する。

 4 不作為について異議申立てがなされた場合、不作為庁は、当該異
 議申立てが不適法でない限り、不作為の違法を確認する決定を行う
 かうか、 異議申立てを棄却する決定を行う。

 5 事情裁決は、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様、処分が違
  法であるときに一定の要件の下で行われるものであって、処分が違
  法ではなく、不当であるにとどまる場合において行われることはな
  い。


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 ■  解説 
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 ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 
 
 ◆ 本問のポイント

   各肢いずれにおいても、条文知識が試されているので、特に
 行審法においては、条文を丁寧に読むことが求められている。

 ◆  各肢の検討

 
 ○ 肢1について。

  行審法40条1項では、本肢の場合には、審査庁は、裁決で
 却下する。

  行政上の不服申立ての場合にも、行政訴訟の場合の訴訟要件
 に対応する不服申立要件を満たしていない不服申立ては、本案
 の審理をしてもらうことができず、いわゆる門前払い(却下)
 をされてしまうのであるが(前掲入門237頁)、本肢はこれ
 に該当する。

  これに対し、棄却裁決とは、本案に理由がないときに行われ
 るものである(40条2項)。

  したがって、本肢は正しくない。

  なお、これらに対応する決定については、47条1項・2項
 を参照すること。


 ○ 肢2について。

  処分についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該
 処分を取消す(40条3項)。この場合には、裁決の拘束力に基
 づき、、処分庁は、裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分
 をしなければならない(43条1項・2項)のであって、審査庁
 が、処分庁に代わって一定の処分を行うことができるのではない。

  したがって、本肢は正しくない。

  なお、審査庁が処分庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、
 裁決で当該処分を変更できることに注意(40条5項)。

  さらに、事実行為については、審査庁は処分庁に対し撤廃を命
 じ、その旨を宣言し、また同様に変更を命じ、その旨宣言するこ
 とにも注目(40条4項・5項)。

  ※ 決定における処分の取消し・変更は、47条3項をみよ。
   また事実行為の撤廃・変更については、47条4項をみよ。

 
  ○ 肢3について。

  51条3項の条文どおりであり、本肢は正しい。

  なお、51条1項・2項の審査請求の却下・同請求の棄却に
 ついても、注意。

 
  ※ 51条3項については、次の記述を参考にされたい(前掲
   書入門237頁参照)
 
    不服申立てについては、裁判所でなく行政機関が裁断を行
   うものであるということから、私人がもらえる(主張できる)
   決定や裁決の内容が、訴訟の場合に裁判所からもらえる判決
   の内容より少し広いものになることが、注目されてよいでし
   ょう。たとえば、不作為の違法確認訴訟(行訴法3条5項)
   の場合には、裁判所の司法機関としての性格から、行政庁
   の不作為に対しては、はなはだ消極的なコトロールしかで
   きなかったわけですが、不作為の審査請求の場合には、審
   査庁は、訴訟の場合のようにただ不作為が違法であること
   を確認するにとどまるのではなく、さらに積極的に、不作
   為庁に対して「すみやかに申請に対するなんらかの行為を
   すべきこと命ずる」ことができる、とされています(行政
   不服審査法51条3項)。


 ○ 肢4について。

    50条2項によれば、不作為庁は、当該異議申立てが不適法で
  ない限り、一定期間内に申請に対するなんらかの行為をするか、
 または書面で不作為の理由を示さなければならないことになって
 いるので、これに反する肢4の記述は正しくない。

  なお、不作為の異議申立がなされた場合には、認容するにも
 棄却するにも、「なんらかの行為をする」(認容)・「書面
 で不作為の理由を示」す(棄却)のであって、決定を行わない
 ことに注意せよ。

  決定をするのは、同条1項に基づく不適法による却下のみで
 ある。

  
  ※ 過去問平成22年度問題15肢4において、行政不服審
   査法における手続の終了に関する記述として、正しいもの
   として、次の分章がある。 
   
   不作為に関する異議申立てが適法になされた場合、不作為庁は、
  一定の期間内に、申請に対する何らかの行為をするかまたは書面
  で不作為の理由を示さなければならない。


  ○ 肢5について。

  事情裁決は、40条6項に規定があり、事情判決は、行訴法3
 1条1項に規定がある。
  
    事情判決は、裁判所が、行政処分が違法であることを認めなが
 ら、行政処分を取り消すことが公共の福祉に適合しない場合に、
 原告の請求を棄却するという判決であるのに対して、事情裁決と
 は、審査庁が行政処分が違法または不当であることを認めながら、
 行政処分を取り消しまたは撤廃することが公共の福祉に適合しな
 い場合に、審査請求人の請求を棄却するするという裁決である。

  以上の記述に従えば、事情裁決は、事情判決とは異なって、処
 分が違法ではなく、不当である場合にも行われることになるので、
 本肢は正しくない。

  
  ※ 参考事項

  (1)事情裁決と事情判決の以上の差異は、裁判所が審理で
    きるのは、行政処分の違法性であるのに対し、行政上の
    不服申立ての場合には、行政不服審査法1条1項に規定
    されるように、その適用対象が「行政庁の違法又は不当
    な処分」であることに起因することに注意せよ。

  (2)事情判決においては、裁判所は、判決主文において、
    処分が違法であることを宣言しなければしなければなら
    ない(行訴法31条)のに対して、事情裁決では、審査
    庁は、裁決で処分が違法または不当であることを宣言し
    なければならない(行審法40条6項)。

  (3) 事情裁決の規定は、処分についての異議申立ての決定
    ・再審査請求にも準用されていることに注意せよ(48
    条・56条)。


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   本問では、正しいのは肢3であるから、正解は3である。

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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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