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       ★  【過去問・解説 第112回】  ★

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 【テーマ】 会社法
        
 【目 次】 過去問・解説
              
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 ■ 平成25年度 過去問 問題 40
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  会社法上の公開会社における資金調達に関する次の記述のうち、
  会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

  1 特定の者を引受人として募集株式を発行する場合には、払込金
  額の多寡を問わず、募集事項の決定は、株主総会の決議によらな
  ければならない。
 2 株主に株式の割当てを受ける権利を与えて募集株式を発行する
  場合には、募集事項の通知は、公告をもってこれに代えることが
  できる。
 3 募集株式一株と引換えに払い込む金額については、募集事項の
  決定時に、確定した額を決定しなければならない。
 4 会社が委員会設置会社である場合には、取締役会決議により、
  多額の借入れの決定権限を執行役に委任することができる。
 5 募集社債の払込金額が募集社債を引き受ける者に特に有利な金
  額である場合には、株主総会の決議によらなければならない。


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 ■ 解説
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  ◆ 論点 

    本問は、会社法上の公開会社における資金調達が主題になっ
   ているが、各肢の記述に照らして、論点を抽出する。

     ★ その1

     株式会社における外部資金調達手段の主流は、(1)株
    式発行(2)借入れ (3)社債発行 であるが、本問では
    これらのすべてがとりあげられている。

   (1)に該当するのが、肢1・2・3であり、(2)に該当
   するのが、肢4であり、(3)に該当するのが肢5である。

    本問に関しては、以上の三つの分類に従って、考察を進める
   のが至当である。

   ★ その2

    本問では、公開会社が対象になっているが、これが問題にな
   る主たるものは、前記(1)における新株発行の場合において、
   募集事項の決定を株主総会の決議によるべきか、取締役会決議
   で足りるかが検討される場合である。

 ◆ 各肢の検討

   肢1・2・3では、通常の新株発行が対象になっているが、そ
  の概念ないし条文上の構造については、条文や教科書をみただけ
  では正確に把握し難いので、私なりに整理して提示したい。

  (1)通常の新株発行は、実務上、株主割当て・公募・第三者
    割当ての三つに分類される。

     公募⇒新株を不特定多数の者に発行する場合
     
     第三者割当て⇒特定の者(通常は一人)に発行する場合
     (株主以外の者の者への発行という意味で「第三者」割当
      てと呼ばれてきたようであるが、実際には割当てを受け
      る者は株主である場合が多い)。

          (以上は、後掲書参照)

  (2)会社法上において、当該通常の株式発行をどのように規定
    しているだろうか。その条文上の構造が重要な視点になる。
    
     一言でいえば、本肢で主題になっている募集事項の決定に
    関しては、会社法は、199条〜202条の間に、「株主割
    当て」・「公募」・「第三者割当て」が詰め込まれているた
    め、会社法に接するわれわれは、混乱を生ずるのである(混
    乱を生ずる者が悪いのか、混乱を生じさせた者がわるいのか
    という問題である。特定秘密保護法の制定にも繋がるが・・)。

     まず、非公開会社においては、原則である「株主割当て」
    を規定した202条を切り離して独自に考察するべきである。

     株主割当てとは、202条1項・2項が規定するように、
    株主に割当てを受ける権利を与えて、既存株主に平等に割当
    てる方法である。

     この場合には、202条5項によれば、199条1項・5
    項が適用されるだけであって、そのほかはすべて自前の20
    2条で処理されるのである。ここが、重要なポイントになる。

     これに対して、公募・第三者割当てに関しては、199条
    〜201条が全面的に適用される。

    以上の前提知識を前提にして、以下1〜3の各肢を検討する。

   
     ◎ 考察の順序からすれば、最初に肢2を考察する。

     ここでは、「株主に株式の割当てを受ける権利を与えて募
    集株式を発行する場合」が問題になっているので、「株主割
    当て」に関する202条が適用される。
     ≪もっとも、本問では、公開会社が対象になっているが、非
    公開会社において、原則とされている「株主割当て」を公開
    会社においても採用できることに留意すべきである(202
    条1項・202条3項3号等参照≫

     本肢における「募集事項の通知」は、当然「株主割当て」に
    関する202条が適用されることになるので、同条4項の通知
    の規定が適用される。この場合には、公開会社に適用される2
    01条4項は適用されないので、募集事項の通知は、公告をも
    ってこれに代えることができない(202条5項参照)。

     本肢は、正しくない。
  

    ◎ 次に、肢1を考察する

     もう一度、前記(1)(2)を読み返してほしい。
     
     (1)では、特定の者を引受人として募集株式を発行する場合
        には、第三者割当てに該当すると記述されている。

     (2)では、第三者割当てに関しては、199条〜201条が
        全面的に適用されると記述されている。

     本肢では「特定の者を引受人として募集株式を発行する場合」
    であるから、第三者割当てに該当し、公開会社が対象となる本
    問においては、201条1項が適用される。したがって、募集
    事項の決定は、取締役会の決議によることになる(199条1
    項・2項参照)。
     
     したがって、第三者割り当ての場合、募集事項の決定は、株
    主総会の決議によらなければならないとする本肢は正しくない。

     
    ※ 参考事項

         (a)本肢の会社が取締役会設置会社でない場合には、取締役
       会の決議によることができないという疑問については、
       公開会社は、取締役会が必要という規定(327条1項1
              号)によって、一蹴できる。
    
     (b) 非公開会社の募集事項の決定は、株主総会の特別決議に
       による(199条1項・2項 309条2項5号・前記
       ◆ 論点 ★ その2 参照)。ことにも留意をされたい。

    (c)本肢では「払込金額の多寡を問わず」と記述されている
      ことが気になるが、199条1項2号は、払込金額の多寡
      によって区別を設けていない。したがって、非公開会社で
      は、株主総会の決議によりまた公開会社では、取締役会の
      決議により、それぞれ「募集事項」の一つである払込金額
      をその金額の多寡を問わず、決定することになる(なお、
      200条による募集事項の決定の委任の場合には、株主総
      会では払込金額の下限だけ定めればよい)。

    (d)201条1項では、199条3項に規定する場合を除き
      となっているが、それは、第三者割当てにせよ、公募にせ
      よ新株を「特に有利な払込金額」で発行する場合には、公
      開会社においても、取締役会の決議では足りず、株主総会
      の特別決議を要することを意味する(既存株主に株式を平
      等に割り当てる「株主割当て」に関しては、既述したとお
      り、202条が適用されるのであって、ここでは、除外さ
      れるのは当然である)。
       また、当該有利発行の場合には、株主総会で有利発行を
      必要を必要する理由を説明することを要する(199条
      3項)。

    ◎ 最後に肢3を検討する。

      たとえば、公開会社において公募で株式発行する場合、19
    9条1項2号の募集株式一株と引換えに払い込む金額について、
    既存の株主の利益を害しないため、公正でなければならず、株式
    の時価を基準としなければならない。このように、市場価格のあ
    る株式を公正な価格で発行する場合は取締役会決議では「公正な
    価格による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法
    を定めることができる」(201条2項)。
     以上のとおり、公開会社では、発行価格について、募集事項の
    決定時に、確定した額を決定しなくてもよい場合もあるので、本
    肢は正しくない。

   
   ◎ 4の検討

      本肢は、取締役会設置会社が委員会設置会社である場合とそうで
  ない会社である場合における取締役会の権限の委任については、両
  者で明確な違いがある。条文を対比すると、362条4項と416
  条4条本文の各条である。当該論点が把握されていれば、本肢は、
  正解に達する。

   すなわち、

  (1)取締役会は業務執行を決定する(362条2項1項)。その
    業務執行のうち、一定の法定事項のほか重要な業務執行は、必
    ず取締役会で決定しなければならず、定款によってもその決定
    を代表取締役にゆだねることができないという趣旨を明確にし
    たのが、362条4項である。本肢では、その法定事項である
    多額の借財(362条4項2号)がとりあげられている。

  (2)これに対して、委員会設置会社の取締役会に適用される41
    6条4項本文によれば、同条ただし書に列挙されている事項を
    除いて、業務執行の決定の権限を執行役に委任することができ
    る。416条4項ただし書には、362条4項は列挙されてい
    ないので、委員会設置会社は、取締役会決議により、362条
    4項2号の多額の借財の決定権限を執行役に委任することがで
    きる。

        以上(2)に照らせば、本肢は、正しい。

     ※ 参考事項

    委員会設置会社では、業務執行決定の権限を執行役に委任する
   ことができるが、取締役に委任することはできない。実際には、
   募集株式発行や社債の募集などを含めて業務決定のほとんどすべ
   が執行役に委任されることになると思われる。
    委員会設置会社では、執行役は、取締役会決議により委任され
   た業務執行の決定をし《その範囲は前記のとおり広汎である》、
   業務執行をする(418条)。また、取締役会決議で代表執行役
   が選定されるが、その者が対外的代表権を有する(420条)。
    これに対して、委員会設置会社の取締役会はの機能は、監督が
   中心となるため、その権限も原則として基本事項の決定・執行役
   の選任監督等に限定される(以上は後掲書参照)。

    
   ◎ 5の検討  

    新株を「特に有利な払込金額」で発行する場合には、公開会社
   においても、取締役会の決議では足りず、株主総会の特別決議を
   要する(◎肢1※参考事項(d)参照)。
    しかし、募集社債ではそのような規定はないため、取締役会が
   決定する(会社法第362条4項5号・676条1項)。

=================================

    以上によれば、正しいのは肢4であるから、4が正解である。

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 ◆ 付 言


  本問については、各肢に深入りすればするほど、混乱を生じる。
 難問だ!と思う。

   ◎ 4の検討 ※ 参考事項に記述してある委員会設置会社の
 機関の特質について、その一端でも頭にあれば、肢4が正しいら
 しいと渡りをつけて、ゴチャゴチャした他の肢を無視して、4を
 選択すれば、それでよいのだ ともいえる。

  ただし、本問の解説に際しては、過去問を素材とした体系的知
 識の習得いう本講座の趣旨に沿って、詳しい説明を行った。厖大
 な時間を要した。筆者としては、みなさまの熟読を望む。


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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
  ▽本文に記載されている内容の無断での転載は禁じます。
 
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             ★ オリジナル問題解答 《第62回》★

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  【テーマ】 会社法

  【目次】   解説
                 
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第162号掲載してある。
   
  ☆ メルマガ第162号はこちら
             ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.html
 

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 ■  解説
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 ★ 参照書籍

  
  会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
 
 【問題1】  株主名簿

 
  ◆  各肢の検討

   
   ○ ア・イについて

 ------------------------------------------------------------------ 
  株式の譲渡

  1 株券発行会社

  (1) 株券の引き渡しは、権利移転の要件であり、第三者に対する
         対抗要件である(128条1項本文・130条2項)。

     (2) 株主名簿の名簿書換えが会社に対する対抗要件である(130
         条1項・2項)。

  2 株券不発行会社

    権利移転の要件は、意思表示であるが、会社その他の第三者に対す
     る 対抗要件は、株主名簿の名簿書換えである(130条1項)。

       
    注 130条の条文の仕組み

     会社は原則として株券を発行しないものとし、株券の発行を
        定款で定めた場合に限って株券を発行することにしたため
   (214条1項)、130条1項は、株券不発行会社に適用さ
       れる。権利移転の要件が意思表示であるというのは、私法の一般
    原則に従う( 2 参照)。


     130条2項は、株券発行会社に適用される。
     会社に対する対抗要件が、株主名簿の書換えであることを規定
    したものであるが、その前提として、株券の引き渡しが(権利
        移転要件であると同時に)第三者対抗要件であることを読み取る
    必要がある
        ( 1 (1)(2) 参照)

     しかし、いずれにせよ、まどろっこしい規定の仕方である。
   -------------------------------------------------------------------
   
     
          以上の記述からすると、株券発行会社についての ア の肢は
       妥当である。
         
     しかし、株券不発行会社に関する イ の肢については、第三者
    に対する対抗要件は、株主名簿の名簿書換えであるので、妥当でない。

   ○ ウについて

  
     基準日とは

  議決権行使等の権利を有する株主は、その時点における株主名簿上の
  株主である。しかし、株主が多数いる会社では誰がその時点における名
  簿上の株主か把握することが容易でないので、会社法は、一時点におけ
  る株主に権利行使を認めるために基準日を設けることを認めている
  (124条1項)。
   なお、基準日後に新たに株主となった者について、会社のほうの判断
  で、総会の議決などを認めることはさしつかえない(124条4項)。
 
 

  したがって、なお書きの記述に反するするウは妥当でない。
 

  ★ 過去問との比較

   平成21年度過去問38肢イについて

    基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主として記載
   または記録されていない者について、会社は、その者を株主とし
   て扱い、権利の行使を容認することができる。

    これは、本肢と異なり、基準日以前に株式を取得した者が対象に
   なっているが、妥当である。

    基準日以前であっても、会社が自己のリスクで、当該株主を株主
     として取り扱うことができるのであろう。これは、本問の オ と
     も照応する。

  ○ エ・オについて

    原則

    (株主名簿の)名義書換えがなされると、以後、株式譲受人は
       会社に対して株主であることを主張することができ、会社もその
       者を株主として取り扱う義務がある(ただし、無権利者が名義書
       換えを受けたときは、会社はその者を株主として取り扱う義務は
       ない)。


    例外に関する判例
 
     エについて

      例外的に名義書換未了の者が会社に対して自己が株主であることを
       主張できる場合には、過失の場合を含むとするのが、判例である
    (最判昭和41・7・28民集20−6−1251)。

         本肢は、前段は妥当であるが、後段が妥当でないので、全体として
       妥当でない。

       
      オについて

     判例は、会社のこの例外的な取り扱いを認める(最判昭和30・
    10・20民集9−11―1657.)

       したがって、本肢は妥当である。

   
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

     以上のとおり、妥当であるのは、ア・オであるから、正解は
    2である。
   
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
     
 
  
 【問題2】 取締役の選任および解任 

   
   
  ◆  各肢の検討

   
  ○ アについて

    会社法854条が規定する役員の解任の訴は、本肢の通りである。
    妥当である。

  参考事項

 (1) 当該解任の訴えは、株主総会で多数が得られず解任決議が成立
       しなかったときに、少数株主にその修正を求める制度であること
    に注意!。
    この点、平成21年度問題40・肢5では、「株主は直ちに」
    取締役の解任の訴えを提起できるとしているとしているのは、正
       しくない。
       
   (2) 役員=取締役のほか、会計参与及び監査役(329条1項)。

   (3) 少数株主に株主総会の招集権あることに注意!(297条)

     通常、少数株主は、総会の招集を求め、総会で解任決議が成功
       しなかったときに、解任の訴えを提起する。
   
  
  ○ イについて

      前段は、会社法339条1項により妥当である。しかし、同条2
    項により、会社が取締役を正当な理由なく解任した場合には、会社
    は損害賠償しなければならない。

   したがって、後段は妥当でない。

  ○ ウについて

   定款で、取締役の資格を株主に限定することは許されないが、
  公開会社以外の会社は別である(331条2項)。

    妥当である。

  関連事項

 (1)公開会社の定義は、2条5号にある。要するに、全部株式譲渡
    制限会社以外の会社である。

  (2)公開会社においても、株主を取締役に選任することはもちろん
       認められ、実際にもそのような場合が多い。


   ○ エについて

       取締役の欠員の場合の処置として、前段は、妥当である(346条
     1項)。しかし、その間退任の登記はできない(最判昭和43・12
   ・24民集22−13−3334)。

   本肢は妥当でない。

  
  ○ オについて

   会社法331条4項により、妥当である。

   なお、定款で最低数を高め、最高数を定めることもできる。

      次に、非取締役会設置会社では、取締役は1人でもよい(326条
  1項参照)。

   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   
    以上妥当でないのは、イとエであるから、正解は3である。

     −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−    

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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                 ★ オリジナル問題解答《第59回》★

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  【テーマ】 会社法(事業譲渡)

   
  【目次】   解説

 
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第158号掲載してある。
 
   ☆ メルマガ第158号はこちら
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   http://archive.mag2.com/0000279296/index.html
 


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■ 解説
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  ◆ 参考文献

  会社法   神田 秀樹著   弘文堂


  ◆本問については、メルマガ64号を参照されたい。

   
   ★【行政書士試験独学合格を助ける講座】第 64 号 ★   
         ↓ ↓
 http://archive.mag2.com/0000279296/20100604200000000.html

  ◆ 各肢の検討

 
  ○ アについて

   会社法21条〜24条は、事業譲渡に関する取引法的側面について
    規整を設けているが、組織法的側面[株式会社]については467条〜
  470条に規整が置かれている(前掲書)。

   会社法467条にいう株主総会の特別決議を要する(309条2項
  11号)事業譲渡については、会社法上、定義がないのはその通りで
  ある。

     判例(最大判昭和40・9・22民集19−6−1600)は、旧
  法において、営業の譲渡と呼ばれていたときに、商法245条1項1
  号によって、株主総会の特別決議を要する営業譲渡 (会社法では、
  467条1項1号に該当する)について、 商法25条(会社法では
   21条に該当する)に定める「競業避止義務を負う結果を伴うものを
   いう」としている。

   ≪つまり、会社法でいえば、会社法467条にいう事業譲渡は、
   同法21条以下にいう事業譲渡と同一意義である≫

     (以上、前掲書 参照)

   会社法のもとでは、営業譲渡を事業譲渡と言い換えることができる
    ので、本肢の記述は妥当である。

  ☆ 参考事項

     競業避止義務を負う結果を伴うものとしての定めとしての以下の内容
  の規定(21条)は、そのまま、平成21年度問題39・肢ウにおいて、
   妥当な肢として、採用されている。

    譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区
  域内およびこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡
 した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。


   ○ 肢イについて

   会社法22条1項・同3項により妥当。
  
   譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会社
  が債務を弁済することになるが、この場合、譲渡会社も責任がある。
  →原則 しかし、譲渡会社は、一定期間後には責任を消滅。

   ☆ 参考事項

   譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合には、23条
    参照。

     1項の広告をしなければ、譲受会社は債務を弁済する責任なし。
   
   2項 広告をした場合における、譲渡会社の一定期間後の責任消滅。


  ○ 肢ウについて

   会社法22条4項により妥当でない。

   債権者が善意でありかつ重大な過失がないときは、弁済の効力を生
    じる。

 
 ○ 肢エについて

   会社法467条1項1号・2号により妥当である。

   なお、467条1項2号( )内により、事業の重要な一部の譲渡に
    ついて、譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の五分の一を超え
    ないときは、株主総会の承認は不要であることに注意せよ。

  ☆ 参考事項

   取締役会設置会社では、重要な財産の処分には取締役会決議が必要で
  ある(362条4項1号)。


 ○ 肢オについて

   会社法467条1項3号により、事業の重要な一部の譲受けの場合には、
   株主総会の承認は不要であるので、妥当でない。

  ☆ 参考事項

   取締役会設置会社では、重要な財産の譲受けには取締役会決議が必要で
  ある(362条4項1号)。
 
   会社法467条1項3号により、他の会社の事業の全部の譲受けの場合
    には、株主総会の承認を要するが、この場合でも、譲受会社が支払または
    交付する譲受けの対価の額(簿価)が譲受会社の純資産額の20%以下[
  定款で厳格化可]の場合は、株主総会の承認は不要である(468条2項)


 -------------------------------------------------------------------

  以上により、ウとオが妥当でないので、5が正解である。
 
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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             ★ オリジナル問題解答 《第34回》 ★

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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第120号掲載してある。

 
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   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
   
 ★ 参考書籍 
  
  会社法(第十四版) 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法(第9版) 弥永真生 著 ・ 有斐閣


 ● 序 説

   メルマガ120号・● 株式における新株予約権に関するQ&Aに
 おいて、募集株式と対比しながら説明が行われている。これを読めば、
 ア・ウ・オは、正解に達する。イとエについては、Q&Aでは、直接
 触れていない。


 ● 各肢の検討

 
   ○ アについて
   
  募集株式の引受人については、本肢のとおりである(208条1
 項・2項)。なお、募集引受人が、出資の履行をしないときは、法
 津上当然失権する(株主となる権利を失う)ことも、208条3項
 に規定がある。
  新株予約予約権についても、本肢のとおりである。割当日に新株
 予約権を取得した新株予約権者は、払込期日または行使期間の前日
 までに払込みをしなければ、新株予約権を行使することができなく
 なる(246条3項)。なお、この場合に当該新株予約権は、消滅
 する(287条)。
 
  
  ※ 参考事項

    募集株式の場合場合には、払込期日を定めることのほか、払
   込期間を定めることが可能であるが(199条1項4号)、新
   株予約権の場合は、払込期日を定めないことも可能である(2
   381項5号)。しかし、新株予約権の行使期間は定めなけれ
   ばならない(236条1項4号)。

   本肢は正しい。 


  ○ イについて

    募集株式にあっては、新株発行の際に資本金額に相当する財産が
 会社に現実に拠出されなければならないとする資本充実の原則に従
 い株主からの相殺の禁止が規定されたのである(208条3項)。
 《前掲書 リーガルマインド22頁)。これに対して、新株予約権
 の払込金額では、相殺は禁じられていない(246条3項)。
  445条1項によれば、募集株式の発行に際して、出資される財
 産の額が資本金に計上されるが、新株予約権の払込金額は、資本金
 に計上されないのである(肢オ参照)。

  本肢は正しい。


 ○ ウについて

    通常の新株発行も新株予約権の有利発行も、公開会社・非公開会
 社を問わず、募集事項の決定は、株主総会の特別決議を要する。

  以上の点については、

  メルマガ120号・● 株式における新株予約権に関するQ&A
 3において、説明したが、その概略を再説すると、以下のとおりで
 ある。

  募集株式の発行について。

      株主割当て以外の方法で新株を「特に有利な払込金額」で発行
    する場合は、既存株主保護ののため、株主総会の特別決議が必要
    になる。
   非公開会社一般においては、募集事項の決定は、株主総会の特
  別決議を要する(199条2項・309条2項5号)。
   したがって、この場合には、有利発行を含めて、株主総会の特
  別決議を要する。
   公開会社においては、有利発行を除く募集事項の決定は、取締
  役会の決定となる(201条1項・199条3項=有利発行)。
   ということは、公開会社についても、有利発行に関する募集事
  項の決定については、常に株主総会の特別決議によることになる。

   以上の流れを公開会社に照らして、眺めてみるとと、公開会社
  では、取締役会で払込金額を定めることになるが(199条1項
  2号・199条2項・201条1項)、その額が募集株式を引き
  受ける者に「特に有利な」金額である場合には、募集事項の決定
  は、株主総会の特別決議が必要になる(201条1項・199条
  3項)。 
 
  
  新株予約権の発行について。 

      非公開会社一般について、みてみると、「有利発行」を含む募
  集事項の決定は、株主総会の特別決議を要する(238条2項・
  309条2項6号)。
   以上が原則であるが、公開会社においては、有利発行を除く募
  集事項の決定は、取締役会の決定となる。
   ということは、公開会社についても、有利発行に関する募集事項
  の決定については、常に株主総会の特別決議によることになる。

   
  以上の記述によれば、本肢の前段は正しい。しかし、後段におい
 ても、募集事項の決定は、株主総会の特別決議によることになる。

  本肢は、誤っている。

 
 ○ エについて

  208条2項によれば、株式引受人は、出資の履行において、現
 物出資財産を給付する者は、募集株式の払込金額に相当する現物出
 資財産を給付しなければならない旨規定しているので、前段は正し
 い。これに対して、新株予約権の払込みについては、金銭以外(現
 物)を対価として給付するような形での新株予約権の発行は、条文
 上一般的な規定はないが(246条1項)、「禁止する趣旨ではな
 い」(前掲書 神田 151頁)。また。246条2項ではは、払
 込金額に相当する金銭以外の財産を給付し得る旨規定している。し
 たがって、後段の記述は誤りである。

  本肢は誤っている。
  

 ○ オについて

    445条1項によれば、株式会社の資本金の額は、募集株式では、
 株主となる者が出資した財産の額である。新株予約権にあっては、
 新株予約権者が、新株予約権を行使するすることにより株主となる
 に際し、出資した全額が、資本金として計上されることになる。
  条文としては、281条・236条1項2号。282条がこれに
 該当する。
   
  以上の記述に従えば、本肢は正しい。

 
 --------------------------------------------------------------
  
   以上、誤っているのは、ウとエであるから、誤っているものの組合せ
 として正しいのは、4である。 
       
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  ● 付 言

  Q&Aによって、予備知識を得たために、アが○、ウが×、オが○と
 分かったとして、イとエが不明だとしたら、どうなるだろう。
  ×であるウの相棒探しになる。本問では、3と4に絞られる。イとエ
 が依然として、不明なら、確率は5分と5分だ!ただし、会社法の基本
 原則である資本充実の原則に従って、どうもイが○らしいと気づけば、
 ウの相棒は、エだろうとして、4で、正解になるだろう。
  あるいは、現物出資は、募集株式にも、新株予約権にも認められるだ
 ろうと思いつけば、エは×で、ウの相棒に相応しいことになり、やはり
 4で、正解だ。
  あるいは、その両方に気がつけば、イは○、エは×だと分かるという
 ことだから、迷わず4で、パーフェクトだ。
        

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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               ★ オリジナル問題解答 《第32回 》 ★

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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第118号掲載してある。

 
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 ★ 参考書籍 
  
   会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣

 
   
 ● 序 説

    メルマガ第118回
 
  ■ 過去問・解説欄 ● 株式会社における剰余金の配当に関す
    るQ&A(上記過去問を通じて)を通読していただければ、各肢
    の解答が得られるはずであるが、以下の各肢の検討において、要
    点を示すことにする。
 
  
 ● 各肢の検討

   
  ○ アについて

      取締役会設置会社は、1事業年度の途中で1回に限り取締役会
    の決議によって剰余金の配当(金銭配当に限る)をすることがで
    きる旨を定款で定めることができる(454条5項)。
   これが、「中間配当」と言われるものであって、株主総会の承
    認に代えて、その都度、取締役会で剰余金の配当を決定すること
    ができる旨の定款の定めを置くことができる会社の場合(459
    条1項4号)とは異なって、本肢では、事業年度の途中で1回に
    限り配当できることに注意せよ!

     
     本肢は妥当でない。


  ○ イについて

    本肢は、委員会設置会社が、株主総会の承認に代えて、その都
    度、取締役会で剰余金を配当を決定することができる旨の定款の
    定めを置くことができる場合(459条1項4号)であって、こ
    の場合には、事業年度の途中で1回の配当という制限はない。

    
          本肢は、妥当でない。

      ※ 注
    
   (1)459条には、委員会設置会社の文言はないが、会計監査
         人設置会社とは、会計監査人の設置を強制される委員会設置
         会社を含んでいる(2条11号後段・327条5項)
      そして、委員会設置会社は、取締役会を強制され(32
          7条1項3号)、監査役(監査役会)を置いてはならないの
          で、委員会設置会社機関設計は、取締役会+3委員会等(2
          条12号)+会計監査人に限られる(神田・会社法169頁)。
   
   (2) 現物配当で株主に金銭分配請求権を与えない場合には、剰
          余金配当を株主総会ではなく、取締役会の権限とすることが
          認められないことに注意(459条1項4号ただし書き)。
     


  ○ ウについて

    309条2項10号によれば、この場合の剰余金分配の株主総会の
   決議は、特別決議になる(株主保護のため)。

    
        本肢は妥当である。

    なお、この場合には、459条1項4号の適用上、取締役会
  の権限とすることもできないことに注意(肢イ・エと関連する)。
 


  ○ エについて

      459条に該当する会社は、会計監査人設置会社かつ監査役会設
    置会社であることを要するので、会計監査人設置会社かつ監査役設
    置会社は、取締役の任期を1年と定めても、459条1項4項が適
    用されない。

    本肢は妥当でない。

   
      なお、機関設計については、一部再説になるが、以下のとおり
  である。

    この場合は、任意に会計監査人を置いた会計監査人設置会社であっ
    て(2条11号前段)、会計監査人設置会社は監査役(監査役会)設
  置を強制され、当該会社は、取締役会設置会社であるから、機関設計
  としては、取締役会+監査役会+会計監査人となる。機関設計として、
  取締役会+監査役+会計監査人も考えられるが、この会社は、459
  条の要件を充足しないのである。
  (機関設計については、神田・会社法169頁参照)
 

  ○ オについて

   453条括弧内および454条1項1号括弧内によれば、剰余金の配
   当を受けることも、株主総会の決議により、当該会社の株式を配当財産
   とすることもできない。


     本肢は妥当でない。 


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   本問では、妥当であるのは、ウのみであるから、1が正解である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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             ★ オリジナル問題解答 《第23回》 ★

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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第109号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第109回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
   
  ★ 参考図書
 
     会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣

 
 ◆ はじめに

  本問は、メルマガ第109号の解説欄を読んでいれば、正解が
 得られるように意図されているが、ここでは、重複を回避せず、
 要点を再説することにしたい。


  ◆  各肢の検討

  
 ○ アについて

   無限責任社員は、労務出資や信用出資の方法が認められている。
  無限責任社員のみからなる合名会社の社員(576条2項)、一
  部が無限責任社員からなる合資会社の社員(576条3項)は、  
   労務出資や信用出資の方法が認められているが、有限社員のみか
  らなる合同会社の社員(576条4項)には、このような出資方
  法は認められない。

   したがって、その点について、本肢は妥当でない。

   ただし、株式会社の株主は、労務出資等は認められないので、
  その点については、本肢は妥当である。

   その根拠を再説すると、以下のとおりである。

      持分会社の社員にあたる株主は、「株式についての払込みまた
    は給付という形で会社に出資する義務を負うだけで(労務や信用
    の出資は許されないと解されているが、明文の規定はない)、会
    社債権者に対して何ら責任を負わない有限責任)(104)。」
   (前掲神田)。

  ○ イについて

      持分会社では、定款の変更には原則として、総社員の同意が必要
   ある。(会社法637条)。ただし、持分会社では、定款の変更は、
     定款で定めれば多数決にしてもよいとされている(神田・会社法)。
   
       これに対して、株式会社では、定款の変更には、原則として、株
   主総会の特別決議が必要とされる(会社法466条・同法309条
     2項11号)が、例外として、取締役会決議等でできる場合がある
   (会社法184条2項・同法195条2項等)。
    
    したがって、本肢は、後段が妥当でない。


   参考事項

   ※ 株式会社に関して例外事項を定めた184条2項に言及すると、
      以下のとおりである(神田・会社法)。
    
    株式の分割の場合には、株主総会決議によらないで、分割に応
   じて授権株式数を比例的増加させる定款変更をすることができる
   (184条2項)。たとえば授権株式数5万株、発行済株式総数
   2万株の会社が1株を2株に分割する場合、取締役会決議で、分
   割後の授権株式数を10万株とすることができる。1株を3株に
   分割する場合には、これを15万株とすることができる。

   ※ 本肢は細かいと言われるかもしれないが、本試験でも、細部
    にわたって出題されているので、注意されたい。

 ○ ウについて

   持分会社においては、社員は入社前に生じた会社の債務について
  も責任を負うが(605条)、株主おいては、そのようなことはな
  い。

   本肢は妥当である。

 
 ○ エについて

    
   持分会社においては、各社員が業務執行の権利を有し義務を負う
    のが原則である。(会社法590条1項)。また、業務執行社員は
  原則として代表権を有する(会社法599条1項)。

   会社法331条2項本文によれば、公開会社である株式会社は、
  取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができな
  いとされているが、公開会社である株式会社でも、株主総会の決
  議(会社法329条1項)によって、「株主を取締役に選任する
  ことはもちろん認められ、実際にもそのような場合が多い。」
  (神田・会社法)

   したがって、会社法上の公開会社において、株主が当該会社の
  取締役として、業務を執行し、当該会社を代表することは当然認
  められている。

   本肢は、後段が妥当でない。
 

 ○ オについて

   持分会社の社員が退社すると、原則として持分の払戻しを受け
  ることになるので(611条)、本肢前段は妥当である。
   これに対し、株式会社に退社の制度はないため、株式を譲渡す
  ることにより投下資本の回収をすることになるが、それ以外にも
  解散の場合には、残余財産があれば、株主に原則として持株数に
  比例して分配される(504条〜506条)。
   さらに、株主は、剰余金の配当を受けることもできる(453
  条以下)。したがって、株式会社の株主は、株式を譲渡する以外
  にも投下資本を回収する方法がある。

   したがって、本肢は後段が妥当でない。
  
---------------------------------------------------------------
  
  以上のとおり、本問は、ウのみが妥当であるので、1が正解である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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             ★ オリジナル問題解答 《第18回 》 ★

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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第104号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第104回はこちら
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 ★ 参考文献
   
  会社法 弘文堂 / 会社法入門 岩波新書 ・ 神田秀樹著

 
 
 ▲  問題 1

 
 ○ 1について

  本肢は、取締役等の第三者に対する損害賠償責任を規定した会
 社法429条からの出題である。

   本条の趣旨

  取締役等がその任務に違反した場合には、本来は会社に対する
  関係で責任を負うにすぎないが、その結果、株主や会社債権者が
  損害を受ける場合を想定し、会社法は、取締役等に会社以外の第
  三者に対する特別の責任を認めたものである(前掲書 会社法)。

  429条1項の前身である改正前商法266条ノ3第1項につ
  いて、最高裁の大法廷判決(最大判昭和44・11・26民集
  23−11−2150)は、取締役の任務懈怠と第三者の損害の
  因果関係について、本肢のように判示しているので、本肢は正し
  い。

  なお、当該判決は、重要判例であるので、その他の判示事項に
  も目を通しておくべきである。

    ちなみに、当該取締役の責任は、第三者に対する責任であるか
   ら、総株主の同意があっても免除できないのは当然である
  (424条参照)。

 
 ○ 2について

    本肢は、847条が規定する株主代表訴訟からの出題である。

   本条の趣旨

  株主代表訴訟とは、
  
  「取締役等の責任は本来会社自身が追及すべきものであるが、
    取締役間の同僚意識などからその責任追及が行われない可能
    性があり、その結果会社すなわち株主の利益が害されるおそ
    れがある。そこで、会社法は、個々の株主に、みずから会社
    のために取締役等に対する会社の権利を行使し訴えを提起す
    ることを認め、この訴訟は『株主代表訴訟』と呼ばれる」

   代表訴訟の対象になるのは、

   取締役等の責任追及(423条1項)・「違法な利益供与が
    なされた場合の利益供与がなされた場合の利益供与を受けた者
    からの利益の返還(120条3項参照)・不公正価格での株式
   ・新株予約権引受の場合の出資者からの差額支払い(212条
   1項・285条1項)である(847条1項)。」
  
  (以上は前掲書)

    本肢では、その対象になっているのは、取締役等の責任追及
  (423条1項)である。

   原告適格として、公開会社以外の会社では6箇月の要件はなく、
  単独株主でよい(847条1項・3項)が、委員会設置会社以外
    の監査役の設置されていない会社が、非公開会社に該当すること
    については、メルマガ104号《   ■  過去問 ・解説 
    ● 総説  B 》 に譲る。

   ただし、その手続として、原則は、会社にその訴えを提起する
    ことを請求することを要するが、その待機期間である60日の期
    間の経過により株式会社に回復することができない損害を生ずる
    おそれがある場合には、株主は代表訴訟を提起できる。

   以上のとおり、直ちに訴えを提起することができる場合がある
    ので、本肢は誤りである。本肢が正解である。


 ○ 3について

   本肢は、株主の権利としての株主の監督是正権・単独株主権に
    該当する取締役等の違法行為差止権が問われている(360条)。

   論点は二つある。

   その一つは、監査役又は委員会が設置されている株式会社は、
    公開会社である場合と非公開会社があるが、本肢の会社は非公
    開会社であるとされているので、行使前6か月の保有期間の要
    件のない単独株主が当該違法行為差止権を行使できる(360
    条2項)。

   その二つは、360条1項によれば、「著しい損害」が生ず
    るおそれがあれば、当該請求ができるが、同条3項によれば、
    監査役設置会社又は委員会設置会社は、「回復することができ
    ない損害」がおそれがある場合にしか、株主は当該請求ができ
    ない。
   その理由は、監査役設置会社又は委員会設置会社では、「著
    しい損 害」が生じるおそれがある場合には、監査役または監査
    委員が差止請求をする権限を有するからである。

   以上により、本肢は正しい。

 
 ○ 4について

   取締役等の責任は、423条1項の任務懈怠が原則であるが、
   特別のルールとして、同条2項において、本肢を内容とする規
   定が規定されているので、本肢は正しい。

 
 ○ 5について

  本肢もまた、423条の任務懈怠の原則に対して、特別ルール
  として規定されたものを列挙したものである。条文を掲げると、
  428条1項・120条4項(  )書き・462条第1項 
  第2項となる。
  
  本肢は正しい。

  その他の特別ルールとしては、利益相反取引をした場合は、取締
  役等について任務懈怠が推定される(423条3項)

 -----------------------------------------------------------------

  以上、誤っている肢は、2であるから、正解は2である。


-------------------------------------------------------------------
   

  ▲  問題 2


  ○ 肢アについて

  328条1項によれば、委員会設置会社以外の大会社で公開会社
 は監査役会を置かなければならないことになっているので、本肢の
 前段は、設置強制であって、「できる」ということではない。
  なお、327条4項参照。ここでいう「監査役」には当然「監査
 役会」も含む。

  また、326条2項によれば、株式会社は、定款の定めによって、
 任意に監査役・監査役会を設置できるので、それ以外の会社では、
「監査役会を置くことはできない」とする本肢は、この点でも正しく
 ない。

  本肢は、正しくない。

  なお、本肢では、以下の重要論点が伏在していることに注意せよ!

   これ(『大会社かつ公開会社』は監査役会設置が義務づけられ
    るの)は、改正前商法で認められていたことでもあり、上場会社
    などの大規模会社ではこのパターンに属することになる。問題は、
   『大会社かつ非公開会社』について、会社法では監査役会をを設
    置 しない道が開かれたことに意義が ある。改正前商法では、大
    会社は必ず監査役会を置かなければならなかったのを改めたので
    ある。例えば、100パーセント子会社などで規模が大きいため
    に大会社に該当するような会社は結構存在するが、そのような会
    社の場合は、 定款で全部株式譲渡制限を定めれば、つまり、非
    公開会社になれば、監査役会を置かなくてもよくなったのである。
    335条3項・390条3項によれば、監査役設置会社では、
    監査役3名以上、半数以上は社外監査役 1名以上は、常勤監査
    役であることが要求されるが、 非公開会社になれば、そのよう
    な負担から解放されるのである (メルマガ104号・余禄欄)。

 ○ 肢イについて

  327条2項により正しい。
   
     本肢では、以下の「余禄欄」参照

 
 美里「はい。327条2項本文では、取締役会設置会社は、(委員
       会設置会社を除いて)監査役を置かなくてはならないことに
       なっていますが、これは監査役会 が設置さ れていても監査
       役が置かれていること相違ありませんから、監査役会設置会
       社を含む 趣旨ですね。しかし、同条ただ し書きでは、公開
       会社でない、会計参与設置会社では監査役を置かなくてもよ
       いのですね」

 先生「すべての会社では、会計参与の設置は任意に可能であるから、
       取締役会+会計参与というパターンはある。しかし、このパ
       ターンが許されるのは、公開会社ではないことのほかに大会
       社でない ことが要求される。大会社の定義は、2条6号に
       規定されているから、これをみておくとよい。それでは、こ
       の大会社でないことはどこから導かれるか?」

 美里「ううん!・・328条2項によれば、公開会社でない大会社
       は、会計監査人設置会社でなくてはなりません。そして、3
       27条3項によれば、会計監査人設置会社は監査役設置会社
       でなくて はなりません。だから、監査役の設置をしなくて
       もよいのは、大会社以外になります」
 
 先生「つまり、取締役会+監査役(監査役会を含む)の例外として、
       取締役会+ 会計参与のパターンが許されるのは、非公開会社
       であって 非大会社である場合にしか許されないことになる。
       改正前商法では、株式会社においては、常に、取締役会+監
       査役が要求されていたが、 会社法が認めるその例外措置に
       ついては、このように限定したものになっていることに注意
       する必要がある・・・・・・・・・」

 ○ 肢ウについて

  監査役の権限

   原則・監査役は、取締役(会計参与設置会社では会計参与を
            含む)の職務の執行を監査する機関である(381条
             1項)。したがって、その職務と権限は、会計の監査
            をを含む業務全般の監査に及ぶ(会計監査を除いた部
            分を「業務監査」と呼ぶこともある)。(前掲会社法)

   例外・公開会社以外の会社(監査役設置会社または会計監査
            人設置会社を除く)では、定款で、監査役の監査権限
            の範囲を会計監査に限定することが認められる
            (389条1項)。

       本肢は、例外の389条1項(  )がきに反する
      ので、正しくない。

 ○ 肢エについて

  本肢は、335条3項の規定どおりであり、正しい。
  「その半数以上」とあるのは、過半数でないことに注意!

  なお、監査役会は、少なくても一人は常勤の監査役を選定しな
  けれ ばならない(390条3項)ことにも注意。

 ○ 肢オについて

  取締役会を置かない場合には、監査役会設置会社にも委員会設置
  会社になることもできない(327条1項2号・3号)ので、本肢
  は正しくない。

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    以上により、正しいのは、イとエであるから、正解は3である。
    
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 ▲  問題 3

 
 1について

   公開会社の定義(2条5号)はすこし、ややこしいが、要するに、
 全部株式譲渡制限会社以外の会社である。このような公開会社は、
 327条1項1号によって取締役会設置会社であることが義務づけ
 られている。ちなみに、 この場合、取締役は3名以上であることを
 要する(331条4項)。正しい。

 2について

   327条1項3号により、取締役会設置会社は、委員会設置会社を
 選択できる。ただし、委員会設置会社は、監査役を置くことができ
 ない(327条4項)ので、監査役を置いた取締役会設置会社は、
 委員会設置会社を選択できない。本肢は正しい。
 
 3について

   327条2項によると、委員会設置会社を除いて、取締役会設置
 会社は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でなく
 て、会計参与を置いている取締役会設置会社は、監査役を置く必要
 はない。なお、当該会社は、大会社以外であることを要する。
  
  その論拠については、前記 ▲  問題 2 ○ 肢イ について
 参照

 本肢は正しい。

 
 4について

    3のとおり、取締役会設置会社は、委員会設置会社を除いて、原
  則として、監査役を置かなくてはならないが、 監査役を置いたた
  め、取締役会設置が義務づけられることはない。
 
   本肢が誤りであり、正解である。

  ただし、監査役会設置会社の場合には、取締役会設置が義務づけ
 られる(327条1項2号)ことに注意。


 5について

  すべての株式会社は、株主総会と取締役が最少限度必要である
(295条以下・236条)が、取締役会または監査役を設置して
  いなくても設立できる。

  本肢は正しい。

 
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  本問では、誤っているのは4であるから、正解は4である。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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