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        ★  【過去問/応用問題・解説 第110回 】  ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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 【テーマ】 民法 無権代理人の責任/取消し

        
 【目 次】 過去問/総則・応用問題 解説
              

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 ■ 平成25年度 過去問 問題 45 《記述式 》
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 問題

  Aは、Bに対し、Cの代理人であると偽り、Bとの間でCを売主と
 する売買契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。ところが、
 CはAの存在を知らなかったが、このたびBがA・B間で締結された
 本件契約に基づいてCに対して履行を求めてきたので、Cは、Bから
 その経緯を聞き、はじめてAの存在を知るに至った。他方、Bは、本
 件契約の締結時に、AをCの代理人であると信じ、また、そのように
 信じたことについて過失はなかった。Bは、本件契約を取り消さずに、
 本件契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えている。
 このような状況で、AがCの代理人であることを証明することができ
 ないときに、Bは、Aに対して、どのような要件の下で(どのような
 ことがなかったときにおいて)、どのような請求をすることができる
 か。「Bは、Aに対して、」に続けて、下線部について、 40 字程
 度で記述しなさい(「 Bは、Aに対して、」は、40字程度の字数
 には入らない)。

 Bは、Aに対して、


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■ 解説
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 ●  条文

  (無権代理人の責任)
   
  第117条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を
   証明することができず、かつ、本人の承認を得ることができなか
   ったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害
      賠償の責任を負う。
  2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有
   しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知
   らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能
   力を有しなかったときは、適用しない。
  
    ● 問題文の事例の図示


  以下の「本人」「相手方」は条文の用法による。
  
  同条2項の「他人の代理人として契約をした者が代理人を有しない
  ことを相手方をが知っていたとき、若しくは過失によって知らなか
  ったとき」に該当しない場合を以下において《善意・無過失》とし
  て、表示した。
  
 
   「本人」      無権代理人       「相手方」
                                            《善意・無過失》                                                    
   C=========A==============B
    ←--------------------------------------------→
   売主    売買契約(本件契約)          買主

 
  ●  本問の検討

  1 本問は、無権代理人の責任を規定する117条の規定を熟知し
   ていることを前提に、問題文の事例を117条に当てはめる作
   業(117条の解釈)を要求している。最初に、問題文の内容
   を順次、検討する。

   第1に、問題文をみると、本件契約がAの無権代理行為である
  ことは「Aは、Bに対し、Cの代理人であると偽り、Bとの間で
  Cを売主とする売買契約(以下、「本件契約」という。)を締結
  した。ところが、CはAの存在を知らなかった・・」という文言
  によって、明瞭に示されている。

   第2に、問題文によると、「Bは、本件契約を取り消さずに、
   本件契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えて
    いる」とあるが、この文言によって、Bは、115条による無権
  代理の相手方の取消を利用しないで、Aに対して、117条の無
  権代理人の責任を追求しようとしていることが明らかになる。

      第3に、117条は、Aが無権代理人の責任を負う要件として
  以下のとおり、定めている。

   その(1)は、Aが自己の代理権を証明できるときないときであ
  るが(117条1項)、問題文では、「AがCの代理人であること
  を証明できない」とあるので、これに該当する。

   その(2)としては、117条2項によれば、は、Bが善意・無
  過失でなかったときは、同条1項を適用せず、Aは責任を負わない
  ことになるが、、問題文では「Bは、本件契約の締結時に、AをC
  の代理人であると信じ、また、そのように信じたことについて過失
  はなかった」とあるので、Bが善意・無過失であったことにより、
  Aは無権代理人の責任の責任を負う。

  2 以上の問題文を前提として、本問の設問に応じて、前記以外の
   Aが無権代理人の責任を負う要件を検討すると、条文上二つ存在
   することが分かる。
    第1は、「本人の追認を得ることができなかったとき」(11
   7条1項)である。
    第2は、117条2項によれば、無権代理人が「行為能力を有
   しなかったときは」同条1項を適用しないことにより、責任を負
   わないことになるので、無権代理人が行為能力を有していること
   が、無権代理人が責任を負う要件になる。

 ● 本問の解答

   既述したことの理解があれば、本問を正解に導くことができるが、
  文言の修正など整理すべきことがある。ポイントは、二つある。

    第1は、設問では、要件として、(どのようなことがなかったとき
 において)という文言がわざわざ提示されていることからすると、本
 人の追認がないという要件は、いわば積極的要件であるから、そのま
 ま記載しても差し支えない。しかし、無権代理人が行為能力を有して
 いることは、いわば消極的要件であって、解答としては、「なかった
 とき」という否定形に改めなくはならない。ここが、本問の一番難し
 いところだ!行為能力を有しているということは、制限行為能力者で
 ないということである(20条参照・私に誤解がなければ、民法上、
 制限行為能力者の定義があるのは、当該条文のみだと思う)。従っ
 て、解答欄では、この表現を用いるのが適切であると思う。

  第2は、117条1項の無権代理人の責任は、履行又は損害賠償の
 責任であるが、設問では、相手方から無権代理人に対する請求という
 表現にしなくてはならない。


  したがって、解答例としては、つぎのようになる。
   

  Cの追認がなく、Aが制限行為能力者でなかったときは、履行
  または損害賠償の請求をできる。

     
     43字


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■ 総則・応用問題 解説
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  BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、B
 がAの詐欺を理由としてAとの売買契約を取り消すことができないのは、
 どのような場合であって、これは何と呼ばれるかについて、40字程度
 で記述しなさい。
 
 
  ● 該当条文の摘出

  (追認の要件)

  124条1項 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した
   後にしなければ、その効力を生じない。

  (法定追認)
 
  125条 前条の規定により追認することができる時以後に、取り
      消すことができる行為について次に掲げる事実があったと
      きは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめた
      ときは、この限りでない。  
   
   5号 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又
     一部の譲渡

 ● 図示

    騙されて絵画の購入   絵画の転売
   A------------------B-------------------C

 ● 本問の検討

  (1)BはAに騙されて絵画を購入したのであるから、96条の適
    用により、Bは、詐欺による意思表示を取り消すことできるの
    で、当該売買契約を取り消すことができる。

  (2)しかし、125条5号によって、絵画を転売した後は、追認
    したものとみなされるので、以後取り消すことができない(1
    22条参照)。しかし、ここでは、125条柱書は、考慮しな
    いことにする。

  (3)ただし、125条は、124条の規定により追認することが
    できる時以後に、取り消すことができる行為によって取得した
    権利の譲渡であったときは、追認をしたものとみなすとしてい
    る。本問は、詐欺の事例であるから、124条に関しては、同
    条1項の適用を受けることになる。

  ● 本問の解答

   本問では、BがCに転売した行為が125条の規定する法定追認
  に該当することを前提にして、「BがAの詐欺を理由としてAとの
  売買契約を取り消すことができないのは、どのような場合」かが問
  われているのだから、転売の時に焦点を合わせる必要がある。すな
  わち、124条1項の規定を表現することが重要になる。
   併せて、「これは何と呼ばれるか」という設問については、「法
  定追認」を明記する必要がある。     

   以上の考察にしたがって、解答例を示すと、

   ◆ Bが、Aの詐欺の状況が消滅した後、絵画をCに転売した
     場合であって、法定追認と呼ばれる。

   なお、124条1項の「詐欺の状況が消滅した後」というのは、
  具体的には、詐欺による意思表示した者が詐欺を知った後を意味
  するので(後掲書 民法 一 参照)、これを表すと、以下の解
  答例になるであろう。


     ■ Bが、Aの詐欺を知った後に絵画をCに転売した場合であ
     って、これは、法定追認と呼ばれる。

    
    ※ ちなみに、字数はともに43である。


 ● 参考事項

  本問は、平成23年度問題27肢イを基に作成したものであるが、
 本肢を解説した書物などでは、、私のみる範囲においては、論点を
 適確に把握して解説を行っているものに、遭遇しなかった。私の以
 上の個人的体験が、当該オリジナル問題の作成動機になっている。

 
 ★ 参考書籍 
  
  民法一・二・三 内田 貴 著・東京大学出版会
   
   民法1・2・3 我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房 


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              ★ オリジナル問題解答 《第61回》★

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                 PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 民法(債権)
   
  【目次】   解説              
   
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第161号掲載してある。
  
  ☆ メルマガ第161号はこちら
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■ 解説
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 ★ 参照書籍

  民法 2 勁草書房 / 民法二 内田貴著  東京大学出版会
 
 
 【問題1】  賃貸借


 ● 総 説

    ○ 賃借権の譲渡

   賃借人が賃貸人の承諾を得て賃借権を譲渡したときは、賃借人は
    契約関係を脱退し、賃貸人と譲受人との間に賃貸借が継続する。

  ○ 転貸

   賃借人が賃貸人の承諾を得て転貸したときは、賃貸人と賃借人と
    の間には従前の関係が継続し、賃借人と転借人との間には新たに賃
    貸借関係が生ずる。

  
  ○ 無断譲渡・転貸の効果

   全然無効なのではなく、賃借人と譲受人または転借人との間では
  有効であって、ただ賃貸人に対抗できない。

   これらについては、賃貸人は賃貸借を解除できる。


  以上、民法612条参照。前掲書 参照。


  ○ 各肢の検討

   はじめに
     
      アとエにおいては、転貸が問題になっており、ウとオでは、賃借権
  の譲渡が問題になっている。

   

   ▲ アについて

    賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した
   場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に
   対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の
   履行不能により終了すると解するのが相当である(最判平成9年2月
   25日民集51−2―398)・)。

     妥当である。

   ちなみに、本判決は、平成21年度問題33において、引用された。

   △ イについて

    参照条文 608条2項。
   
       賃借人が賃借建物に付加した増・新築部分が、賃貸人に返還さ
   れる以前に、賃貸人、賃借人いずれの責めにも帰すべきでない事
   由により滅失したときは、特段の事情のない限り、右部分に関す
   る有益費償還請求権は消滅する(最判昭和48・7・17民集27
   7―798)。

        以上の判例に反する本肢は妥当でない。

   ちなみに、本判決は、平成21年度問題32肢エで主題にされた。

   
   ▼ ウについて


    本肢のポイントとして、

    AとBが夫婦関係にあり、協働して経営していた店舗をAが相続し、
   併せて土地の賃借権も相続した場合には、AはCに対して当該賃借権
   を当然対抗できる。

    本件の場合、Aが内縁の妻であるというだけで、Cが賃借権の無断
   譲渡を理由に土地の賃貸借の解除をすることは、Aにとり酷である。

    判例は、当該「借地権譲渡は、これについて賃貸人の承諾がなくて
   も、賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事情がある場
   合にあたり」賃貸人による当該土地の賃借権の解除は許されないと判
      示した(最判昭和39・6・30民集18−5―991))。

    したがって、この判決の趣旨に沿う本肢は、妥当である。 

     ● エについて

    肢アとの対比によれば、A・B間の賃貸借契約の解除が賃借人A
      の債務不履行ではなく、合意解除であるという違いがある。

    この場合については、賃貸借契約が合意解除されても、転貸借に
      は影響はなく、転借人の権利は消滅しないとする判決がある(大判
   昭和9・3・7民集13−278)。

    したがって、この判決に従えば、Bは当該賃貸借契約の解除をC
   に対抗できないとになるので、本肢は妥当でない。

    なお、本肢との対比からすれば、Aが賃借権を放棄した場合には、
   BはそれをCに対抗することはできないことになる(398条・
   538条類推)。


  ◎ オについて

       賃借権の譲渡または転貸を承諾しない賃貸人は、賃貸契約を解除
     しなくても、譲受人または転借人に対して明渡しを求めることがで
   きる(最判昭和26・5・31民集5−6−359)。

   無断譲渡・無断転貸の場合には、賃貸人は原賃借との間の賃貸借
    を解除して、賃借人・譲受人・転借人のすべてに対して明渡しを請
  求できるできるだけではなく、原賃借人との間の賃貸契約をそのま
  まにして、譲受人・転借人に対して明渡請求をすることもできるの 
  である(前掲書 参照)

   本肢は妥当である。
   

-----------------------------------------------------------------
      
   以上、妥当でないのは、イとエであるから、正解は3である。

-----------------------------------------------------------------

 
 【問題2】  請負


  ◆ 各肢の検討

   ア・イは、請負の目的物の所有権の帰属に関して、請負人帰属説に
  立つ判例の見解の成否が問われているである。

   
  ◎ アについて
  
   判例は、請負人帰属説に立ちながらも、注文者が材料を提供した
    場合には、注文者に帰属するとする(大判昭7・5・9民集11−
  824)。
   この場合には、加工(246条1項ただし書き)の適用はない、

   したがって、本肢は前段は正しいが、後段は誤りであり、全体と
    して、誤りである。

   ☆ 過去問の検討

    建物新築の請負契約に当たり、注文者が材料の全部を供給した
      場合には、特約の有無にかかわらず、注文者に所有権が帰属する。
    (1998年問31・肢1)

    上記判例は「特約がない限り、原始的に注文者に所有権が帰属
      する」としているので、「特約の有無にかかわらず」ではない。

    本肢は、誤りである。

  ◎ イについて

    建築請負では、注文者の土地の上に請負人が材料を提供して建物
   を建築するのが通常である。
   
    この場合には、請負人が所有権を取得し、引渡によって注文者
   に移転することになる(大判大正3年・12・26民録20・1
   208)。

    以上が、請負人帰属説の骨子である。

    しかし、請負人の材料提供の場合でも、特約があれば、竣工と
   同時に注文者の所有となるというのが、判例である(大判大正
   5・12・13民録22−2417)。

    したがって、本肢は正しい。
   
   ☆ 参考事項

    ○ 請負人の材料提供の場合のおける、特約について、以下の判
     例が注目される。

     注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、特
       約の存在が推認され、特段の事情のない限り、建物所有権は完成と
        同時原始的に注文者に帰属する(大判昭和18・7.20民集22
       ―660、最判昭和44・9・12判時572−25)。

      以上の判例を基準に出題された2002年問29 肢5。

       最高裁判例によれば、仕事完成までの間に注文者が請負代金の大
    部分を支払っていた場合でも、請負人が材料全部を供給したときは、
    完成した仕事の目的物である建物の所有権は請負人に帰属する。

   
          本肢は、上記判例に照らし、妥当でない。

       ○  その他の判例においても、以下のとおり、所有権が注文者に帰
     属すると解するものがある。

      建物建築の注文者が工事の進行に応じて請負代金を分割払いし
          た場合には、引渡しをまつまでもなく完成と同時に原始的に注文
          者に帰属すると解している(最判昭和44・9・12判時572
          号25頁)。

      契約が中途で解約された場合には出来形部分は注文者の所有と
          する条項があるときは、請負人が材料を提供したとしても注文者
          に出来形部分の所有権が帰属する(最判平成5・10・19民集
          47巻8号5061頁)。
   

   ○ 学説の多数は、以下のとおり、注文者帰属説に立つ。

    目的物の所有権に関しては、むしろ当事者の通常の意識を尊重して、
     完成と同時または工事の進捗に応じて注文者に帰属すると考えるべき
     である。


     ◎ ウについて
 
    請負人の担保責任として、瑕疵修補請求権および損害賠償請求権が
    ある。両者の関係は以下のとおりである。

   瑕疵修補請求権→相当の期間を定めて修補できるのを原則とするが、
   瑕疵が重要でなく、しかもその修補に過分の費用を要するときは、
   損害賠償請求権があるだけである(634条1項)

   損害賠償請求権→瑕疵の修補とともにまた修補に代えて、常に請求
   できる(634条2項)。

   (前掲書 民法 2)


      当該瑕疵修補に代わる損害賠償請求権については、本肢のとおり
  の判例がある(最判平9・7・15・・)ので、本肢は正しい。

   なお、634条2項・533条参照。
  

    ☆  関連する過去問について

     請負契約の履行に当たり生じた瑕疵の修補に代わる注文者の
    損害賠償請求権と請負人の報酬請求権は相殺することができる。
   (1998年問31・肢3)

     前記判例は、両者は同時履行の関係にあり、相互に現実の履行
    をなすべき特別の利益はないとして、相殺を認めた。(634条
    2項・533条・505条)

      本肢は、妥当である。


     完成した仕事の目的物である建物に瑕疵があった場合、注文者
    は修補か、損害賠償のいずれかを選択して請負人に請求すること
    ができるが、両方同時に請求することはできない(2002年
    問29・肢5)。

     前記記述に照らし、注文者の選択によるのでもなく、両方同時
    に請求できる。

     本肢は、妥当でない。


  ◎ エについて

    判例によれば、本事例において、「注文者が期日に報酬を提供
   しないときでも、請負人は当然遅滞の責めに任ずべきものである。」
    (大判大正13・6・6民集3−265)とする。

    したがって、本肢は誤りである。


     ☆ 関連する過去問

    請負人が約定期日までに仕事を完成できず、そのために目的物
   の引渡しができない場合でも、報酬の提供がなければ、履行遅滞
   とならない(1998年問31・肢5)。

     前記判例によれば、履行遅滞になるので、本肢は妥当でない。

   ◎ オについて

   本肢は、ウで掲げた請負人の担保責任である瑕疵修補請求権・
  損害賠償請求権と並ぶ契約の解除権に関する問題である。

  契約請求権→瑕疵が重要なもので、これがため契約の目的を達する
 ことができないときにだけ解除できる。ただし、修補の可能なときは
 まずこれを請求すべきものと解さねばならない。のみならず、建物そ
 の他の土地の工作物の請負においては、解除は許されないことに注意
  すべきである(635条)。
  (前掲書 民法2 )
  
   
    本肢は、請負の目的物が建物であるから、注文者は解除できない。
 したがって、誤りである。


-----------------------------------------------------------------

  正しいのは、イとウであるから、正解は4である。
   
-----------------------------------------------------------------

 
 【問題3】

 
  ◆ 各肢の検討

  ○  アについて

     受任者は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、事務
      を処理すべきである(644条)。

    対価の有無もしくは多少を問わずにこの義務が認められるとこ
   ろに信任関係に基づく委任の本質が現れる(大判大正10・4・
   23・・)。

    したがって、無償の受任者も善管注意義務を負うので、本肢は妥
   当でない。

    ★ 参考事項

     善良な管理者の注意とは、社会人の一般人として取引上要求さ
        される程度の注意。

     自己の財産に対するのと同一の注意とは、その人の注意能力を
    標準としてその人が普通に用いる注意の程度を示す。
                ↓
     
     注意の程度を軽減し責任を軽くするのを妥当とする特殊な場合
    にだけこの程度の注意を標準とする(659条・無償の受寄者
    827条・親権者)。
   
    (前掲書)
 
  ○ イについて

    委任者は、受任者に対して、委任によって損害を被らせないよう
      にする義務がある。そのような委任者の義務として費用前払いの義
      務(649条)がある。

    本肢は妥当である。

  ○ ウについて

    原則→委任は信任関係に立つものであるから、受任者はみずから
              事務を処理すべきである。

    例外→任意代理人の復代理人の規定を類推して、同一の条件と責任
       のもとに復委任を許すのが至当(104条・105条)。
       判例・通説もこのように解する(前掲書)。

    本肢では、104条の類推により、やむを得ない事由があるとき
   は、第三者をして代わって事務を処理させることができるので、妥
   当でない。

  ○ エについて

   委任契約において、報酬の特約があるときは(648条1項)、
  履行の中途で終了したときでも、本肢の場合には、報酬請求がで
  きる(648条3項)。なお、この点が請負と異なるところである。

   本肢は妥当である。

  ○ オについて

   650条3項が規定する委任者の損害賠償義務は、委任者の責に
  帰すべものかどうかを問わない無過失賠償責任である。
  
   本肢は妥当でない。

---------------------------------------------------------------

   妥当であるのは、イとエであるから、正解は3である

---------------------------------------------------------------  

 

 【問題4】   債権者代位権の転用

  判例は、Xが土地の賃借権について対抗要件を備えていれば、 
 不法占有者に対して、土地の明渡を請求できることを認める
 (最判昭28・12・18民集7−12−1515)。)

  また、Xが土地の引渡しを受けていれば、占有回収の訴えに
  より、不法占有者に対して、土地明渡請求ができる(200条
 1項)。

  しかし、本問では、Xは、土地の引渡しを受けず、対抗要件
 も備えていないので、423条の債権者代位権の行使の可否
 が問題になる。判例は、債務者の無資力を要件としない、「債
 権者代位権の転用」を肯定している。

  また、本問では、賃借権を保全するための代位の目的である
 権利を明確にしなくてはならないが、ここでは、所有物を奪わ
 れた場合の所有物返還請求権を挙げることができる、

  以上の記述に従って、解答例として、以下のとおり提示し得
 る。
 
  
   XはYに対して、当該土地賃借権を保全するため、


    Aに代位してAの有する所有物返還請求権
    を行使し、土地の明け渡しを請求できる。

      38字
 
   本問では、「代位」「所有物返還請求権」「明け渡し請求」
  が明確に呈示されることがポイントになるであろう。


    ※ 

 (1)土地の賃借権に関する対抗要件については、本問では、
   賃借権の登記が挙げられているが(民法605条)、そ
   のほかに借地権者が登記されている建物を所有する場合
   にも当該土地の賃借権の対抗力が認められる(借地借家
   法10条1項)ことに注意する必要がある。

 (2)423条の債権者代位権の行使に関し、判例は、債務
   者の無資力を要件としない、「債権者代位権の転用」を
   肯定している旨前述したが、当該判例の要旨を以下に掲
   げる。

   その1 特定物に関する債権を保全するために代位権を
   行使するためには、債務者が無資力である必要はない
  (大判明43.7・6民録16−537)。

   その2 建物賃借人は、賃貸人に代位して、建物の不法
   占拠者に対して、直接自己に明渡しをなすべきことを請
   求しうる(最判昭29.9・24民集8−9−1658)。
    この判例の重要ポイントは「直接自己に明渡し」が可
   能ということである。
 
 (3)代位の目的である権利について、さきに、所有物返還
   請求権を挙げたが、本問では、所有物の支配状態を妨害
   された場合の所有物妨害除去請求権を掲げることもでき
   るであろう。

 (4)本問は、過去問の5肢択一式を参考に問題を組み立て
   たが、実際にも、択一式を解くばあいに、各肢について
   論拠を考察しておけば、記述式に対して、応用が効くで
   あろう。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/ 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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           ★ オリジナル問題解答 《第37回 》 ★

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                   PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 民法・請負 /行政法・原告適格


   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第123号掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第123回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
 ◆ 民法

 

 【 問題 1 】
 


 ★ 参考書籍

   民法2  勁草書房 ・ 民法二 内田貴著  東京大学出版会

 
 ● 各肢の検討

   ア・イは、請負の目的物の所有権の帰属に関して、請負人帰属説に
  立つ判例の見解の成否が問われているである。

   
  ◎ アについて
  
   判例は、請負人帰属説に立ちながらも、注文者が材料を提供した
    場合には、注文者に帰属するとする(大判昭7・5・9民集11−
  824)。
   この場合には、加工(246条1項ただし書き)の適用はない、

   したがって、本肢は前段は正しいが、後段は誤りであり、全体と
    して、誤りである。

   ☆ 過去問の検討

    建物新築の請負契約に当たり、注文者が材料の全部を供給した
      場合には、特約の有無にかかわらず、注文者に所有権が帰属する。
    (1998年問31・肢1)

    上記判例は「特約がない限り、原始的に注文者に所有権が帰属
      する」としているので、「特約の有無にかかわらず」ではない。

    ×

  ◎ イについて

    建築請負では、注文者の土地の上に請負人が材料を提供して建物
   を建築するのが通常である。
   
    この場合には、請負人が所有権を取得し、引渡によって注文者
   に移転することになる(大判大正3年・12・26民録20−1
   208)。

    以上が、請負人帰属説の骨子である。

    しかし、請負人の材料提供の場合でも、特約があれば、竣工と
   同時に注文者の所有となるというのが、判例である(大判大正
   5・12・3・・)。

    したがって、本肢は正しい。
   
   ☆ 参考事項

    請負人の材料提供の場合のおける、特約について、以下の判例
      が注目される。

    注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、特
     約の存在が推認され、特段の事情のない限り、建物所有権は完成と
     同時原始的に注文者に帰属する(大判昭和18・7.20・・最判
     昭和44・9・12判時572−25)。

    以上の判例を基準に出題された2002年問29 肢5。

   最高裁判例によれば、仕事完成までの間に注文者が請負代金の大部
  分を支払っていた場合でも、請負人が材料全部を供給したときは、完
    成した仕事の目的物である建物の所有権は請負人に帰属する。

   本肢は、上記判例に照らし、×


   学説の多数は、以下のとおり、注文者帰属説に立つ。

   目的物の所有権に関しては、むしろ当事者の通常の意識を尊重して、
    完成と同時または工事の進捗に応じて注文者に帰属すると考えるべき
    である。


  (以上、前掲書 内田 貴著 参照)

 
  ◎ ウについて

   請負人の担保責任として、瑕疵修補請求権および損害賠償請求権が
    ある。両者の関係は以下のとおりである。

   瑕疵修補請求権→相当の期間を定めて修補できるのを原則とするが、
   瑕疵が重要でなく、しかもその修補に過分の費用を要するときは、
   損害賠償請求権があるだけである(634条1項)

   損害賠償請求権→瑕疵の修補とともにまた修補に代えて、常に請求
   できる(634条2項)。

   (前掲書 民法 2)


      当該瑕疵修補に代わる損害賠償請求権については、本肢のとおり
  の判例がある(最判平9・2・14民集51−2−337)ので、
  本肢は正しい。

   
   ☆  関連する過去問について

     請負契約の履行に当たり生じた瑕疵の修補に代わる注文者の
    損害賠償請求権と請負人の報酬請求権は相殺することができる。
   (1998年問31・肢3)

     前記判例は、両者は同時履行の関係にあり、相互に現実の履行
    をなすべき特別の利益はないとして、相殺を認めた。(533条
    ・505条)

     ○


     完成した仕事の目的物である建物に瑕疵があった場合、注文者
    は修補か、損害賠償のいずれかを選択して請負人に請求すること
    ができるが、両方同時に請求することはできない(2002年
    問29・肢5)。

     前記記述に照らし、注文者の選択によるのでもなく、両方同時
    に請求できる。

     ×


  ◎ エについて

    判例によれば、本事例において、「注文者が期日に報酬を提供
   しないときでも、請負人は当然遅滞の責めに任ずべきものである。」
    (大判大正13・6・6民集3−265)とする。

    したがって、本肢は誤りである。


     ☆ 関連する過去問

    請負人が約定期日までに仕事を完成できず、そのために目的物
   の引渡しができない場合でも、報酬の提供がなければ、履行遅滞
   とならない(1998年問31・肢5)。

     前記判例によれば、履行遅滞になるので、×

   ◎ オについて

   本肢は、ウで掲げた請負人の担保責任である瑕疵修補請求権・
  損害賠償請求権と並ぶ契約の解除権に関する問題である。

  契約請求権→瑕疵が重要なもので、これがため契約の目的を達する
 ことができないときにだけ解除できる。ただし、修補の可能なときは
 まずこれを請求すべきものと解さねばならない。のみならず、建物そ
 の他の土地の工作物の請負においては、解除は許されないことに注意
  すべきである(635条)。
  (前掲書 民法2 )
  
   
    本肢は、請負の目的物が建物であるから、注文者は解除できない。
 したがって、誤りである。


-----------------------------------------------------------------

  正しいのは、イとウであるから、正解は4である。
   
-----------------------------------------------------------------

 

 ◆ 行政法

 


 【 問題 2 】
 

  ★ 参考書籍 
  
     行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行

 

 ●  本肢は、メルマガ123号 余禄において、詳細に説明されてい
  るので、そちらを参照されたいと思うが、以下に要点を記しておく。

  (1)当該最高裁判所判決は、行政上の不服申立資格(以後行訴法
    9条1項の原告適格に適用)について「当該処分について不服
    申立をする[法律上の利益]がある者、すなわち、当該処分に
    より自己の権利若しくは[法律上保護された利益]を侵害され
    又は必然的に侵害されるおそれののある者をいう、と解すべき
    である。」旨判示した。

     したがって、アには[法律上の利益]が入り、イには[法律
    上保護された利益]が入る。

  (2)この[法律上保護された利益]説と対立するのが、[法的な
    保護に値する利益]説であり、この説は、平成16年改正によ
    り新た加えられた行訴法9条2項に取り入れられた。

     したがって、ウには[法的な保護に値する利益]が入る。

  (3)さきの最高裁判決によって確立した[法律上保護された利益]
    説は、[法律上の利益]の有無を[法律]の規定からつまり
    [法律]の解釈によって決定しようとする説である。

    したがって、エには[法律]が入る。

     なお、[法律上保護された利益]説に対立する「法的な保護に  
    値する利益」説は、「法律上の利益」の範囲を「法律」によって
     判断するのではなく、利害の実態に着眼し理論によって決定しよ
        うとすることにある点に注意する必要がある。 

     

  ------------------------------------------------------------

      以上の記述に従えば、1が正解である。

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            ★ オリジナル問題解答 《第35回 》 ★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  民法(債権法)

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第121号掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第121回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
  ★ 参考書籍 
  
  民法二 内田 貴 著・東京大学出版会
   
   民法 2 ・ 我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房 
   

 

   ○ アについて
  

 (1)問題意識

   判例を通じて、贈与について、どのような場合に契約を
  撤回することができるかが問われている。

 (2)民法の規定・判例

   書面によらない贈与は、履行しない部分を各当事者において
  撤回することができる(550条)。
   
   本肢においては、履行が終わったのかどうかが問題になる。
  判例は、「該不動産の所有権移転登記が経由されたときは、該
  不動産の引渡しの有無を問わず、贈与の履行を終わったものと  
  解すべきである。」としている(最判昭40・3・26民集1
  9ー2ー526)。

   ◎ 本肢は、上記判例に反するので妥当でない。

 
 (3)参考事項

   未登記建物については、引渡しによって、履行を終わったも
  のとされる(最判昭31・1・27民集10−1−1)。


 ○ イについて

  (1)売買の予約とはどのような概念であり、どのような場合に
    用いられるか。仮登記との関係。   

     図示

            556条1項・売買の一方の予約
            売買予約完結権=所有権移転請求権保全
           (完結権の行使によって、売買は成立する)
     
     売主   ←  買主

          ←  第2の買主

   
   売買予約は、売買ではないので、買主は、所有権移転の本登
  記はできないが、所有権移転請求権保全の仮登記ができる。
   この仮登記をしておけば、その後にその不動産につき物権を
  取得した者(図示の第2の買主)に対抗することができる。
  
   ※ 仮登記は仮登記のままでは登記の本体的効力を有しないが、
    後に本登記された場合に、その順位は仮登記の順位による。
     電磁的記録としては、仮登記のさいに事項欄に残しておい
    た余白に本登記がなされるので、仮登記のさいに記録された
    ものがそのまま本登記の番号になるのであるから、順位番号
    欄には記録すべきことはないことになる。

  (2)以上の仮登記をした場合に、売買予約完結権の譲渡は、所
    有権移転請求権を移転することになるが、判例は、以下のよ
    うに述べる。
     
     この完結権の譲渡を予約義務者その他の第3者に対抗する
    ためには、仮登記に権利移転の付記登記をすればは足り、債
    権譲渡の対抗要件を具備する必要はない(最判昭35・11
    ・24民集14−13−2853)。

     ◎ 本肢は、上記判例に反するので、妥当でない。
    

     ※

     a 所有権移転請求権の移転は、所有権の移転ではないの
      で主登記(独立登記)ではなく、その仮登記の付記登記
      による。
     b 所有移転請求権は、債権であるので、467条の規定
      する対抗要件を要するのではないかという問題意識が、
      本肢・判例にあることに注意!

     c(1)(2)を通じて、登記制度として、仮登記と本登
      記・付記登記と主登記(独立登記)について、分類が行
      われているが、この際、これら概念を把握することも民
      法学習の一環だと思う。

  ○ ウについて

  (1)問題意識

     賃借権の譲渡や賃貸物の転貸がなされた場合の法律関係につ
    いて、賃貸人の賃借人に対する解除が判例によって制限される
    場合について問われている。

     (2)賃借人が賃借権の譲渡・または賃借物の転貸をするには、賃
    貸人の承諾を要する(612条1項)。
     賃借人が無断譲渡・転貸を行うことにより、賃貸人の承諾を
    得ずに賃借物を第3者に使用・収益させたときは、賃貸人は賃
    貸借契約を解除できる(612条2項)。
  (3)しかし、判例は、本肢のとおり述べて、賃貸人の解除を制限
    した(最判昭28.9・25民集7−9−979)。
     換言すると「民法がこの解除権を認めるのは無断転貸等が個
    人的信頼を基礎とする賃貸借関係では『背信的行為』に当たる
    からであると解し、形式的には無断転貸等に当たる場合でも背
    信的行と認めるに足らない特段の事情がるときは、賃貸人の解
    除権は発生しない」(前掲民法2323頁)。

   
     ◎ 以上により、本肢は、妥当である。

  
   ※ 当該判例を主題にした過去問(平成20年問題45・記述式)
    は、下記のとおりである。

       不動産の賃貸借において、賃料の不払い(延滞)があれば、賃貸人
   は、賃借人に対して相当の期間を定めてその履行を催告し、もし
   その期 間内に履行がないときには、賃貸借契約を解除することが
   できる。また、賃借人が、賃貸人に無断で、賃借権を譲渡、また
   は賃借物を転貸し、その譲受人や転借人に当該不動産を使用また
   は収益させたときには、賃貸人は、賃貸借契約を解除することが
   できる。ただ、上記の、賃料支払いの催告がなされた場合や、譲
   渡・転貸についての賃貸人による承諾が得られていない場合でも、
   賃貸人による解除が認められない場合がある。それはどのような
   場合かについて、40字程度で記述しなさい。


    回答例

    賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足らな
      い特段の事情がある場合。     (40字)

    《出題を見越して、確り暗記をしておかないと、すらすらと回
        答できないであろう。『背信行為』と言う文言が決め手になる
    のかもしれない。なお、本題は、今後とも、形をかえて、出題
    される可能性はある。》


  ○ エについて

   
  
   ◎ 判例は、本肢のとおり、述べているので、本肢は妥当である
   (最判昭53・7・10民集32−5−868)。
   
    登記義務者からのその書類の返還の求めに応じれば、登記権利
      者への登記手続が不能になるから、これに応じた司法書士には、
      善管注意義務違反があり、債務不履行責任を負うことになるとい
      うのが当該判決の帰結である(644条・415条)
    なお、この場合には、651条1項の規定は働かないであろう。

  ○ オについて


  (1) 問題意識

         建物建築請負契約(632条)において、完成した建物の所有
    権の帰属に関する判例の考え方とこれに関する学説の主要な見
        解について本肢・解説を通じて、把握することが重要である。

  (2)請負人が全部の材料の全部をを提供する通常の場合については、
    判例は、完成した物も請負人の所有権に属し、普通には引渡しに
    よって注文者に移転するとして、請負人帰属説に立っている(大
    判大3・12・26民録20−1208)。
     通説もこの立場にたっている。
     しかし、判例は、注文者が全部の材料を提供した場合には、完
    成した物は最初から注文物に属するとする(大判昭7・5・9
    民集11−824)。したがって、本肢は、前段は妥当である。
     しかし、246条1項ただし書の加工の適用はないと解すべ
    きである(前掲民法2 359頁)というのが通説であるから、
    後段は妥当でない。

     ◎ 本肢は全体として妥当でない。

    ※ 参考事項

         ア 上記大正3年判決・昭和7年判決とも、特約を許すことに
      注意せよ。
      大正3年判決は「当事者間に別段の意思表示がない限り、建
     物の所有権は、引き渡しの時に、注文者に移転する」としてい
     る。昭和7年判決もまた、「特約がない限り、原始的に注文者
     に所有権が移転する」としている。
      後者に関して、以下の過去問があることに注意。
     
      建物新築の請負契約に当たり、注文者が材料の全部を供給し
     た場合には、特約の有無にかかわらず、注文者に所有権が帰属
     する(平成10年問題31肢1)。

      本肢は「特約の有無にかかわらず」という点が誤っている。

    イ 特約に関連する判決・過去問を以下に列記しておくので、参
     照されたい。

    (ア)注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、
      特約の存在が推認され、特段の事情のない限り、建物所有権
      は完成と同時に原始的に注文者に帰属する(最判昭44・9
      ・12判時572−25)

       以上の判例を基準に出題された過去問

      最高裁判例によれば、仕事完成までの間に注文者が請負代金の
          大部分を支払っていた場合でも、請負人が材料全部を供給したと
          きは、完成した仕事の目的物である建物の所有権は請負人に帰属
          する(平成14年問題29肢5)

       本肢は、上記判例に反し、妥当でない。
 
    (イ)契約が中途で解約された場合には出来高部分は注文者の所有と
      するとの条項があるときは、請負人が材料を提供したとしても
      注文者に出来形部分の所有権が帰属する(最判平成5・10・
      19民集47−8−5061)。
 

    ウ 以下の記述も把握されておきたい。

    (ア)請負人帰属説に対して、「しかし、近年、学説では、完成し
      たときから所有権は引渡しをまつことなく直ちに注文者に帰属
      するという注文者帰属説が有力になりつつある」(民法2 3
      58頁)。
    (イ)両当事者が材料の一部ずつを供するときは加工の規定によっ
      て所有権の帰属を定めるのを原則とする(246条2項参照)。
      《民法2・359頁》

-------------------------------------------------------------------
      
  本問は、ア・イ・オが妥当でないので、3が正解である

--------------------------------------------------------------------

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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           ★ オリジナル問題解答 《第4回 》 ★

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  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法・オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第90号に掲載してある。

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 ★ 参考書籍 
  
  民法一 内田 貴 著・東京大学出版会
   
   民法 1 ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房


 ▲  問題 1


  ◎ 総説

   共有の性質については、一個の所有権を数人が量的に分有する
  状態だという説と、各共有者が一つずつの所有権を有し、各所有
  権が目的物が一固であるために互いに制限しあっている状態だと
  いう説とがある。
   後の説は、いささか技巧的にすぎるようだが、民法の共有の性
  質に適するであろう。

   共有者が目的物の上にもつ権利すなわち共有持分権は目的物を
  全面的に支配するという点では両説の間に差異がない。

  (以上、前掲 勁草書房・参照条文は民法249条)) 


  ◎ 各肢の検討

   
   ○ アについて

    Aの使用方法は、共有物の管理に関する合意(民法252条
   参照)に基づくものではないから、他の共有者の持分権を侵害
   している。
    
    しかし、個々の共有者は、元来共有物全体を使用する権利を
   有するから、BCは、持分権を侵害されたからといって、Aに
   対して当然には共有物の引渡を求めることはできない(最判
   昭和41年5月19日・摸六 249条 3・請求者側の持分
   の割合が12の11であっても、明渡請求はできないとされた)
   《以上 前掲 内田著》
    

    本肢は、以上の判例に反するので、妥当でない。

    ★ 参考事項

    なお、以下の判例に注目!

     他の共有者は、単独で共有不動産を占有する共有者に対して、
    その持分割合に応じて、占有部分に係る地代相当額の不当利得
    金ないし損害賠償金を請求することができる(摸六 703条 
    23・最判平12・4・7・・)。
  
     占有している共有者から共有物の占有を承認された第三者は、
    その占有が承認した共有者の持分の基づくものと認められる限
    りは、他の共有者は、その第三者に対して当然には共有物の明
    渡しを請求することはできない(摸六 249条 12・
    最判昭和63・5・20・・)。
     つまり、本肢において、Aが第三者に対して使用を承認した
    場合、B・Cは当然にその第三者対し、共有物の明渡しを請求
    することはできないのである。

   ○ イについて

    当該登記の抹消を求めることは、妨害排除請求だから保存行為
   に当たり、共有者の一人は、単独で所有権移転登記の全部抹消を
   求めうる(摸六 249条 6・最判昭和31・5・
   10・・)

     本肢は、以上の判例に反するので、妥当でない。

    ★ 参考事項

     当該判例は、共有物の管理に関する民法252条ただし書きの
    保存行為を根拠としているが、共有持分権は目的物を全面的に支
    配することから妨害排除請求を導くこともできるであろう。

  
   ○ ウについて

    第三者に対して、A・B・Cの共有であるということの確認を求
   める共有物の所有権確認の訴えを提起するには、全員で行うことを
   要するので、本肢は妥当である。
  
     
   ○ エについて

    共同相続の場合、相続人の一人が単独所有権取得の登記をなし、
   これを第三者に譲渡し、所有権移転の登記をしても、他の相続人は
   自己の持分を登記なくして、これに対抗できる。
    この場合、Aが請求できるのは、本肢のような全部抹消ではなく、
   Aの持分に限っての一部抹消である(摸六 民法177条 9・
   249条 7 最判昭38・2・22・・)。

    本肢は、以上の判例に反するので、妥当でない。

   ○ オについて

    この場合は、イの妨害排除請求とは異なり、他人の持分に対して
   は何ら請求権を持たないから、本肢のとおりとする判例がある(摸
   六 249条 9 最判昭和41・3・3・・最判昭和51・9・7
   ・・)

    本肢は妥当である。

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    本問は、ウとオが妥当であるので、5が正解である。

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 ▲  問題 2


  ◎ 本問の解説は、便宜上、基礎の基礎に立ち返って、説明してある
  ので、不要と思われる箇所は、適当に読み飛ばしていただきたい。


  ○ アについて

   これは、民法177条が適用される典型的な例である。
  
      この条文解釈における要点を示す(勁草書房参照)。

    ★ 甲土地の所有権移転が「不動産の物権の得喪」に該当する
      ことには問題がない。

       ★ 次に、条文における「第三者」には、ア 登記なしでは
      対抗できない「第三者」と、イ 登記なしでも対抗できる
       「第三者」がある。

          これは、大審院判決(大連判明治41・12・15・・)に
        よって認められた理論であり、今日では通説になっている。

          その区別する基準として、さきの大審院判決は、「登記の欠缺
        ヲ主張スル正当ナ利益ヲ有スル」第三者という理論構成をした。

          本事例の「Bは登記なくしてCに対抗することができる」かどう
    かという設問に則してみてゆくと、Cにおいて、Bが登記を欠くこ
        とを主張し得る正当な利益を有する第三者に該当するかどうかとい
        うことが問題になる。。

         これに該当するときは、アの場合に 当たり、Bは 登記なくして
        Cに対抗できない。 逆に、Cがこれに該当しないときは、イの場
        合にあたり、Bは登記なくしてCに対抗することができる。
 
         この両者の関係について、[一言でいえば、同一不動産について、
       結局において互いに相容れない権利を有する者である」(前掲勁草
       書房)。

       設問では、A・B間とA・C間とどちらも有効な売買契約であり
     (どちらも債権であり、先に成立したものに優先的効力なし)、Bと
      Cは、 同一不動産に相容れない権利を有するものであって、Bは登
      記なくしてCに対抗できないことになる。

   ★  最後に、Cが悪意である点が問題になる。つまり、悪意の第三者で
        あるC対しては、Bは登記なくして、対抗できるのではないかという
        ことである。この点については、悪意の第三者に対しても、登記なく
        しては、対抗できないというのが通説である。

         その論拠としては、次のように、言われている。

        「・・登記がない限り、その不動産に関してに関して取引関係に
          たった第三者に対しては、原則としてその善意悪意を問題とせず
          に対抗できないとすることが、不動産取引の整一簡明を期する
          ゆえんである。」(前掲勁草書房)
      要するに、行為者の内心を問題にせず、登記の有無によって決
          着しようというのが、通説の立場だということになる。
 

      以上述べたところにより、Bは登記なくしてCに対抗することはで
     きない。結局、さきに登記をしたCが、Bに優先することになる。

       以上により、本肢は妥当でない。

   ○ イについて

     本事例は、前の設問と比べると、Cが悪意者だったのが、背信的悪意
    者になったのみで、その他の点には変わりない。

    ★ 前には、悪意の第三者に対しては登記なくして対抗できなかったが、
     背信的悪意者には、登記なくして対抗できるかというのが、ポイント
     になる。
      さきの大審院判決の基準に照らすと、 背信的悪意者とは「登記ノ
     欠缺ヲ主張スル正当ノ利益ヲ有スル」 第三者ではないということに
     なる。平たく言えば、単に「知っている」という度合を超えて、より
     背信の要素が強いため、この者に対しては、登記なくしても対抗でき
     るということになる。

    ★ この「背信的悪意者」という概念は、大審院の基準に当てはめ
     をした最高裁判所によって確立されたものである。判旨は、以下の
     とおりである。

      実体上物権変動があった事実を知る者において右物権変動に
     ついて
     登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が
     ある場合には、このような背信的悪意者は、登記の欠缺を主張する
          について正当な利益を有しない(最判昭和31・4・24・・・)
      
            要するに、繰り返しになるが、単なる悪意を超え、背信の度合
     が、 強度のものである。
      具体例としては、「ABの不動産の売買に立ち会ったCがBの
     未登記に乗じてAよりこの不動産を買い受け移転登記を得たよう
     な場合」が相当する(前掲勁草書房)。

      以上述べたところにより、本肢では、Bは登記なくしてCに所有
     権の取得を対抗できることになる。

     本肢は妥当である。

   ○ ウについて


    ★ まず、肢イの回答からして、Bは登記なくして、背信的悪意者C
     に対し、所有権の取得を対抗できる。

          ここで、その理屈を考えてみると、

        (a)もともと、AB間の売買契約も、AC間の売買契約も有効である。
    (b)ただ、C個人が背信的悪意者であるために、Bは登記なくしてC
      に対抗できるということである。

     そのポイントが押さえられていれば、Cから売却を受けたDの立場
    は明確である。もともと、AC間の売買は有効であるから、CDの売買
    も有効である。Cが背信的悪意者であるというのは、Cの個人的事情
    であって、Cを離れた以上、もう関係ない。ただし、今度は、D個人が、
    AB間の売買について、背信的悪意者であれば、BはDに対して、登記
    なくして、対抗できるが、本例のように、DがAB間の売買の存在を
    知っている(悪意)だけでは、Bは登記なくしてDに対抗できない。

    ★ 本事例には、判例がある(最判平成8・10・29・・・・)。

 
     本肢は、妥当でない。


  ○  エについて

      ★ 前例は、登記なくして対抗できる第三者として、背信的悪意者
    について、 勉強したが、これも同列に論じることができる。

     不法占有者は、登記しなければ、所有権を対抗することができない
    第三者に該当せず、177条の「第三者」ではない。

     したがって、Bは登記なくして、Cに対抗できる。そのため、
    Bは、登記がなくてもCに対し、土地の明渡しを請求し、損害賠償
    を請求することができる(709条)。

    これには判例がある(最判昭和25・12・19・・)。

    本肢は妥当である。

  ○ オについて

    Aの 取り消し後の転売の場合には、AとCは対抗関係に立ち、先に
   登記をした方が優先することになる。民法177条の適用である。判
   例もある(大判昭和17・9・30)


    本肢は妥当である。

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    妥当でないのは、アとウであるから、正解は1である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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