━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

              ★ オリジナル問題解答 《第12回 》 ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

-------------------------------------------------------------
                        PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------

 
  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 民法オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第98号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第98回はこちら↓
  
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 


 ▲ 問題1

  
  ★ 参照書籍

  民法 2   勁草書房

 
 
   ● 総 説

     ○ 賃借権の譲渡

   賃借人が賃貸人の承諾を得て賃借権を譲渡したときは、賃借人は
    契約関係を脱退し、賃貸人と譲受人との間に賃貸借が継続する。

   ○ 転貸

   賃借人が賃貸人の承諾を得て転貸したときは、賃貸人と賃借人と
    の間には従前の関係が継続し、賃借人と転借人との間には新たに賃
    貸借関係が生ずる。

  
   ○ 無断譲渡・転貸の効果

   全然無効なのではなく、賃借人と譲受人または転借人との間では
  有効であって、ただ賃貸人に対抗できない。

   これらについては、賃貸人は賃貸借を解除できる。


  以上、民法612条参照。前掲書 参照。


   ○ 各肢の検討

   はじめに
     
      アとエにおいては、転貸が問題になっており、ウとオでは、賃借権
  の譲渡が問題になっている。

   

   △ アについて

    賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した
   場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に
   対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の
   履行不能により終了すると解するのが相当である(最判平成9年2月
   25日・・)。

     妥当である。

   ちなみに、本判決は、平成21年度問題33において、引用された。

   △ イについて

    参照条文 608条2項。
   
       賃借人が賃借建物に付加した増・新築部分が、賃貸人に返還さ
   れる以前に、賃貸人、賃借人いずれの責めにも帰すべきでない事
   由により滅失したときは、特段の事情のない限り、右部分に関す
   る有益費償還請求権は消滅する(最判昭和48・7・17・・・)。
 
        以上の判例に反する本肢は妥当でない。

   ちなみに、本判決は、平成21年度問題32肢エで主題にされた。

   
   △ ウについて


    本肢のポイントとして、

    AとBが夫婦関係にあり、協働して経営していた店舗をAが相続し、
   併せて土地の賃借権も相続した場合には、AはCに対して当該賃借権
   を当然対抗できる。

    本件の場合、Aが内縁の妻であるというだけで、Cが賃借権の無断
   譲渡を理由に土地の賃貸借の解除をすることは、Aにとり酷である。

    判例は、当該「借地権譲渡は、これについて賃貸人の承諾がなくて
   も、賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事情がある場
   合にあたり」賃貸人による当該土地の賃借権の解除は許されないと判
      示した(最判昭和39・6・30・・)。

    したがって、この判決の趣旨に沿う本肢は、妥当である。 

     △ エについて

    肢アとの対比によれば、A・B間の賃貸借契約の解除が賃借人A
      の債務不履行ではなく、合意解除であるという違いがある。

    この場合については、賃貸借契約が合意解除されても、転貸借に
      は影響はなく、転借人の権利は消滅しないとする判決がある(大判
   昭和9・3・7・・)。

    したがって、この判決に従えば、Bは当該賃貸借契約の解除をC
   に対抗できないとになるので、本肢は妥当でない。

    なお、本肢との対比からすれば、Aが賃借権を放棄した場合には、
   BはそれをCに対抗することはできないことになる(398条・
   538条類推)。


  △ オについて

       賃借権の譲渡または転貸を承諾しない賃貸人は、賃貸契約を解除
     しなくても、譲受人または転借人に対して明渡しを求めることがで
   きる(最判昭和26・5・31・・・)。

   無断譲渡・無断転貸の場合には、賃貸人は原賃借との間の賃貸借
    を解除して、賃借人・譲受人・転借人のすべてに対して明渡しを請
  求できるできるだけではなく、原賃借人との間の賃貸契約をそのま
  まにして、譲受人・転借人に対して明渡請求をすることもできるの 
  である(前掲書 参照)

   本肢は妥当である。
   

-----------------------------------------------------------------
      
   以上、妥当でないのは、イとエであるから、正解は3である。

-----------------------------------------------------------------
  
 ▲ 問題2

  判例は、Xが土地の賃借権について対効要件を備えていれば、 
 不法占有者に対して、「土地賃借権」に基づいて妨害請求権を
 行使することを認める(最判昭和30・4.5・・)。

  また、Xが土地の引渡しを受けていれば、占有回収の訴えに
  より、不法占有者に対して、土地明渡請求ができる(200条)。

  しかし、本問では、Xは、土地の引渡しを受けず、対抗要件
 も備えていない。

  この場合においては、423条の債権者代位権の行使の可否
 が問題になる。判例は、債務者の無資力を要件としない、「債
 権者代位権の転用」を肯定している。

  以上の記述に従って、解答例として、以下のとおり提示し得
 る。
 
  

  XはYに対して、当該土地賃借権を保全するため、


    債権者代位権に基づき、AがYに
    対して有する所有権に基づく妨害
    排除請求権を行使し得る。

      42字

   
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 13:10コメント(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

              ★ オリジナル問題解答 《第9回 》 ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

-------------------------------------------------------------
                          PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------

 
  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 民法 オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
    問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第95号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第95回はこちら↓
  
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
  ▲  問題 1
 

  ★ 総説
                                


 (1)

                  連帯保証→保証人が主たる債務者
                 と連帯することを保証契において
                 約束した場合
   1,000万円
 B---------------→A      
         主たる債務者
                  共同保証→数人の保証人が同一
          C・D     の主たる債務を保証する関係
         連帯保証人
         共同保証人


 (2) 

   C・Dの共同保証人が、連帯保証人でない場合

 

    ◎(1)は、連帯保証と共同保証をからめた問題である。
   これを(2)と比較した場合の検討が本問である。


 ★ 各肢の検討


  ○ 肢アについて

    民法457条は、普通の保証にも連帯保証にも適用されるので
  債務の承認による時効中断の効力(147条3号)は、いずれの
  場合も、保証人C・Dに及ぶ。
 
   主たる債務者に生じた事由は、保証人に及ぶのが原則。
 しかし、時効は各別に進むのが原則。

   そこで、民法は、債権者の立場を考慮して、時効中断の効力は保証
 人に及ぶとして、立法的に解決。
   以上の思考過程は、大切である。
 
    誤り。


 ○ 肢イについて

   保証人に生じた事由は、主たる債務者に影響を及ぼさないのが原則。
 しかし、連帯保証に関しては、458条・434条により、主たる
 債務者に及ぶ。
 
   したがって、普通の保証では、Aに対して、請求による時効中断の
 効力が生じないが、連帯保証では、その効力が及ぶ(民法147条
 1号)。
 
   誤り。
 

 
  ○  肢ウについて

  この問題は、普通の保証、連帯保証を問わず、「保証」の特質から
  論じられる問題。
 
  主たる債務者について生じた事由は、保証人についても効力を生じる
 という付従性の原則からすれば、Aの時効の利益の放棄(146条)の
  効果はC・Dに対しても及ぶようにも思える。

  しかし、時効は各当事者について別々に進行すべきだという原則に照
  らせば、Aが時効の利益を放棄しても、C・Dの債権消滅時効の進行は、
 各別に進行することになる。
  
  判例もまた、以下のとおり判示する。

  主債務者が時効利益を放棄しても、保証人に効力を及ぼさない
    (大判大5・12・25)。

  また、民法448条の法意からすれば、従来の保証人の負担が、
  主債務者の時効利益の放棄により加重されるべきでないといえる。

  したがって、本肢は正しい。

  
 ○ 肢エについて

   その前提として、共同保証人が主たる債務者に対して求償することは
  当然であるので、CがAに求償することは問題ない。

   問題は、連帯保証人間の求償であるが、465条1項(各保証人が
   全額を弁済すべき特約とは共同保証人が連帯保証人でである場合も
   含む取扱である) の適用により、共同保証人間の求償も認めら
  れている。
  
    なお、普通の保証でも、適用条文が異なるだけで、共同保証人
   間の求償が認められている(465条2項・462条)。

   いずれの場合も求償できるので、本肢は正しい。


 ○  肢オについて
 
   普通の共同保証では、各保証人は債務額を全保証人間に平分して
   その一部を保証することになっている(456条)。これを保証人の
   分別の利益という。

   しかし、連帯保証は、この分別の利益を持 たないことを特徴に
   している。

     保証人間に連帯の特約があるとき、主たる債務の目的が不可分な
   ときは分別の利益はない。
   この場合と同様、判例は、連帯保証人が数人あるときも、保証人
   間において、分別の利益を有しないものとした(大判大6・4・28)。

   従って、連帯保証では、Cは1,000万円を返済する義務があるが、
    普通の保証では、分別の利益があるので、平分した額500万円を支払
    えば足りる。

   本肢は誤りである。

 
 《参考事項》

   問題が複雑になるので、ここは飛ばしてもらってもよいが、以下の
   記述に注目せよ!

  連帯保証人が数人ある場合は、各保証人は分別の利益を有しないが、
  保証人間に連帯の特約があるか、商法511条2項の適用がある場合
  でなければ、連帯債務ないしこれに準ずる法律関係は生じない。
  したがって、債権者が保証人の一人の債務を免除しても、他の連帯
  保証人の債務には何の効果も及ぼさないとされる(最判昭和43・11
  15)(勁草書房 2)。(民法437条)


   以上、妥当であるのは、ウ・エであるから、正解は4である。
 

 

 ▲  問題 2
 
  
   ◆ それぞれ長文になっているが、ポイントを押さえれば、正解を導く
   くのは、困難なことではない。各肢について、要点を解説する。


  ◆ 各肢の検討

 
  ○ Aの相談

   時効を援用することのできる者は、時効によって債務を免れた者
  である。これが、本来、民法145条の「当事者」の意味である。

   この当事者について、判例はかつて一般的に狭く解していたが、
  「これらの義務に基づいて義務を免れる者を広く包含する」。
 (勁草書房)
  
  この見地からすれば、物上保証人も、自分の負担する抵当権の
  基礎としての債務の消滅時効を援用して、抵当権を消滅させる
  ことができる(最判昭和42・10・27 最判昭和43・9・26)。

  以上の理解さえがあれば、この問題は正解しうる。

    「できます」に該当する。


 注 関連事項


 (1) 民法166条1項・167条1項により、債権は、権利を
      行使することができる時から10年間行使しないときに時効
   消滅するから、本肢においては、当該債務は、弁済期から
   12年経過になっている。

(2) 民法147条の時効の中断事由があれば、時効は成立しない
    ので、本肢において、その該当事実がないことが記されている。
 

 ○ Bの相談

   民法167条2項によれば、所有権は消滅時効にかからない。
  以上を前提とした下記判決がある

  不動産の譲渡による所有権移転登記請求権は、右譲渡によって生
 じた所有権移転に付随するものであるから、所有権移転の事実が
  存する限り独立して消滅時効にかかるものではないと解すべきで
 ある(最判昭和51・5・25)。

  したがって、私は、知人を相続した乙氏に対して、移転登記を
 求めることはできる。

 関連事項

  同旨判決として、以下のものがある。

  遺留分権利者が減殺請求によって取得した不動産の所有権に基づく
  登記手続請求権は時効によって消滅することはない(最判H7・6・9)。

  これを主題に出題されたのが、平成21年度問題28の「Cの相談」
  である。

  ここで、この判例と「Cの相談」をよく対照されれば、最近の
  本試験の特徴を把握できるであろう。

 
 ○ Cの相談

    本肢は、民法第158条第1項の条文適用問題である。
 
 平成21年11月20日が時効の期間の満了日であるが、その前の
  6箇月以内の間に父に成年後見人がいない。後見人である母が同年
  7月10日死亡したため、後見が終了しているからである。
  この場合には、娘である私が後見人に就任した時から6箇月を
  経過するまでの間は、時効が停止する。私は、同年11月25日
  後見人に就任し、今年の1月20日に返済を求めているから、
 時効停止期間中の返還請求であるから、本肢は「できます」に
  該当する。

 ○ Dの相談

   「Aの相談」と連動する。

  抵当不動産の第3取得者も、自分の負担する抵当権の基礎としての
 債務の消滅時効を援用して、抵当権を消滅させることができる(最
  判昭和48・12・14)
 
 「できます」に該当する。

 その他の解説は、「Aの相談」に譲る。

 ○ Eの相談
 
   本肢は、民法162条1項の取得時効の援用の問題である(民法
145条)。
 
  なお、本肢では、2点に注意すべきである。一つは、土地の時効
 取得者が私に地上権を設定させていたのであるから、162条に
 いう「占有」は、代理占有である(民法181条)
 
  もうひとつは、本肢の中の、これまで紛争になることもなかった
 という記載により、162条の「平穏・公然」が示されている。

   しかし、以上の点は、本肢の前提になっているのであるから、
 実際の本試験では、こだわる必要はない。
 
  本題に移る。

   民法145条の援用の当事者を広く包含するという立場からは、
 以下のように論述される。

 「この見地からは、取得時効につてみると、たとえばAの所有地を
 時効によって取得するBから地上権等の設定を受けたCにはBの
 取得時効の援用権がある。つまり、この場合Bが援用しなければ、
 Cは独自にBの取得時効を援用して、Aに対し、当該の土地の上
 に地上権等を有することを主張できることになる。」(勁草書房)

 
  本肢は、この論述と同じ事案であるから、私は独自に甲氏の取得
 時効を援用して、乙氏の相続人である丙氏に対し、当該土地の上
 に地上権を有することを主張できることになる

 私は土地の明け渡しを拒否「できます」となる。

 関連事項

  この地上権が、賃借権であっても、おそらくは結論は変わらない
 だろう。しかし、平成21年度問題28「Bの相談」のように、
 アパートの賃借となると、時効取得の主張は認められないことに
 なる。

   つまり、当該土地に建物に家を建てた者と当該土地の上に建って
 いる家を借りた者との違いだ!!

   以上のとおり、本問は、いずれも「できます」に該当するので、
 正解は5である。

 ◆ 付言

  いずれについても、素早く事実関係を把握し、論点の抽出・
 ないし適格な条文の適用にに到達しうるよう、日々訓練を行う
 ことが 望まれる。


  ◎ 以上参考書籍 
  
  民法 ・内田 貴 著・東京大学出版会
   
   民法  ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房

 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 15:46コメント(0) 
記事検索
  • ライブドアブログ