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            ★ オリジナル問題解答 《第19回 》 ★

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                     PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第105号に掲載してある。

 
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           ↓
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 ★ 参考文献
   
  会社法 弘文堂 / 会社法入門 岩波新書 ・ 神田秀樹著

 
 
 
 ▲  問題 1

   1について

    327条1項1号が公開会社における、取締役会設置会社の設
  置強制をしているが、非公開会社も、326条2項に基づき、任
  意に取締役会設置会社になることができる。後段が妥当でない。
   
   2 について
 
     株主総会の権限は、会社の意思決定に限られ、執行行為をするこ
  とはできない(執行は取締役または執行役)が、その意思決定の権
  限は、取締役会設置会社では、原則として法律上定められた事項に
  限られる(295条2項・ 3項)。
  
  それ以外の事項に関する業務執行の決定は取締役会にゆだねられる。
  
  しかし、取締役会設置会社でも、定款で定めれば、法定事項以外の
 事項を株主総会の権限とすることもできる(295条2項)。
 
  以上の記述を総合すると、法令・定款で株主総会の権限であると定
 められた事項は、取締役会の権限とすることはできないので、本肢は
 妥当でない。
 
   なお、「以上に対して、取締役会設置会社でない会社では、株主総
  会は一切の事項について決議できる万能の機関である(295条1項)。」
 (前掲会社法)ことに注意せよ。

 
  3について

  362条4項6号によれば、大会社以外においても、「内部統制シス
  テム」の整備については、代表取締役が決定することは許されないが、
  ただ、大会社においては、当該事項の決定が、取締役会の義務づけられ
  ることになるのである(362条5項)。

  以上の記述に反する本肢は、妥当でない。

   4について

    法定事項や重要な業務執行につぃての決定権限は、362条4項に
  規定があり、そのとおりである。
  特別取締役の制度については、373条に規定があるが、その概略は
  以下のとおりである。

  取締役のメンバーの一部を特別取締役としてあらかじめ選定してお
  き、取締役会で決定すべき事項のうちで迅速な意思決定が必要と考え
  られる重要な財産の処分・譲受けと多額の借財(362条 4項1号・
  2号)について特別取締役により決議し、それを取締役会決議とする
  ことを認める制度である(前掲 会社法)。

  本来、取締役会は全員の取締役で組織し、その会議により業務執行
  の意思決定を行う(362条1項・2項1号)のであるから、法定事
  項の 一部について、特別取締役による決議を取締役会決議とするのは、
  その 例外に属する(前掲書)。)。
 
  本肢は、妥当である。

   5について

    取締役会は、業務執行に関する意思決定を行う(362条2項1号)。
  そして、362条4項各号の法定事項は必ず取締役会で決定しなけれ
   ばならない。この決定権限のなかには、本肢が指摘するように、「具
   体的な法定事項のほか『重要な業務執行』を含む」(前掲会社法)こ
   とに注意する必要がある。
 「362条4項以外にも、会社法が取締役会の決議事項と定めている事
  項は多数ある。以上のような法定事項以外の事項についても取締役会で
  決定することはできるが(決定すれば代表取締役を拘束する)、取締役
  は招集によって会合する機関にすぎないため、それらの事項(日常的事
  項)の決定は代表取締役等に委譲されていると考えられる」(前掲書)。
    また、定款によって、法定事項以外を代表取締役にゆだねることもで
  きる。
 
 以上に反する本肢は、妥当でない。

------------------------------------------------------
 
 妥当であるのは、肢4であるから、本問の正解は4である。

---------------------------------------------------------

 


 ▲  問題 2


 
 (1)356条1項2号に該当する利益相反行為

     取締役みずから当事者として(=自己のため)または他人の代理
  人・ 代表者として(=第三者のため)会社と取引をする場合には
  (会社から財産を譲り受け、金銭の貸付を受け、会社に財産を譲渡
  する等)その取締役がみずから会社を代表するときはもちろん、他
  の取締役が会社を代表するときであっても、会社の利益を害するお
  それがある。
   ここでいう利益相反行為は、会社・取締役の直接取引である。

  (2)356条1項3号に該当する利益相反行為

     会社が取締役の債務につき取締役の債権者に対して保証や債務引
  受をする場合等の場合にも、会社の利益が害されるおそれがある。
  ここでいう利益相反行為は、間接取引である。

  (3)取締役会の承認

     取締役会設置会社では、(1)(2)のような利益相反行為をする
  場合には、その取引について重要な事実を開示して取締役会の事前の
  承認を得なければならない(356条1項2号・3号 365条)。
   その承認を受けた場合には、民法108条は適用せず、その取締役
  が同時に会社を代表することも認められる(356条2項)。


 (4) 本問の検討

 
    アについて

    (1)によれば、(代表)取締役が他人の代理人として(=第三者の
   ため)会社と取引をする場合には(会社に財産を譲渡する)その(代表)
   取締役がみずから会社を代表するときに相当する。自己ためでなく、第
   三者のためであっても、利益相反行為に該当する。取締役会の承認を要
   するので、本肢は妥当でない。


   イについて

    これは、(2)の間接取引に該当し、取締役会の承認を要するので、
   本肢は妥当である。

    
     ウ について

    (1)によれば、取締役がみずから当事者として(=自己のため)(金
  銭の貸付を受け)他の取締役が会社を代表するときも、利益相反行為にな
  るので、 取締役会の承認を要する。本肢は妥当でない。この場合は、自
  己契約にはならないが、会社の利益を害するのである。


    エについて

    これは、(1)の直接取引のうちの自己契約に該当するが、(3)で記
 述したとおり、取締役会の承認を受けた場合には、民法108条は適用せ
 ず、当事者であるAが、会社を代表し得る。妥当である。


   オについて  

    これは、(1)に当てはめると、(代表)取締役が他の会社の代表者
   として(=第三者のため)会社と取引をする場合(会社から財産を譲り
  受ける)、その(代表)取締役がみずから会社を代表するときに相当す
   る。
   したがって、(3)の取締役会の承認を要する。なお、この場合も、
  直接取引であって、ただ、第三者のための取引に該当する。

    本肢は、妥当でない。

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  以上妥当であるのは、イ・エの二つであるから、3が正解である。

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              ★ オリジナル問題解答 《第11回 》 ★

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  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第97号に掲載してある。

 
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 ▲ 問題1

  
  ☆  参照文献

   民法 2  勁草書房


  ◆ 各肢の検討

  
  ○  アについて

     受任者は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、
       事務を処理すべきである(644条)。

    対価の有無もしくは多少を問わずにこの義務が認められると
      ころに信任関係に基づく委任の本質が現れる(大判大正10・
      4・23・・)。

    したがって、無償の受任者も善管注意義務を負うので、本肢
      は妥当でない。

    ★ 参考事項

     善良な管理者の注意とは、社会人の一般人として取引上要
        求さされる程度の注意。

     自己の財産に対するのと同一の注意とは、その人の注意能
        力を標準としてその人が普通に用いる注意の程度を示す。
                ↓
     
     注意の程度を軽減し責任を軽くするのを妥当とする特殊な
        場合にだけこの程度の注意を標準とする(659条・無償の
        受寄者827条・親権者)。
   
    (前掲書)
 
  ○ イについて

    委任者は、受任者に対して、委任によって損害を被らせない
      ようにする義務がある。そのような委任者の義務として費用前
      払いの義務(649条)がある。

    本肢は妥当である。

  ○ ウについて

    原則→委任は信任関係に立つものであるから、受任者はみずか
              ら事務を処理すべきである。

    例外→任意代理人の復人権の規定を類推して、同一の条件と責
              任のもとに復委任を許すのが至当(104条・105条)。
       判例・通説もこのように解する(前掲書)。

     本肢では、104条の類推により、やむを得ない事由があるとき
    は、第三者をして代わって事務を処理させることができるので、妥
    当でない。

  ○ エについて

    委任契約において、報酬の特約があるときは(648条1項)、
   履行の中途で終了したときでも、本肢の場合には、報酬請求がで
   きる(648条3項)。なお、この点が請負と異なるところであ
     る。

   本肢は妥当である。

  
    ○ オについて

   650条3項が規定する委任者の損害賠償義務は、委任者の責に
  帰すべものかどうかを問わない無過失賠償責任である。
  
   本肢は妥当でない。

------------------------------------------------------------------

   妥当であるのは、イとエであるから、正解は3である

-----------------------------------------------------------------  

  ◆ 付 言

  委任契約に関しては、委任の特質を念頭において、本試験直前に
  条文を読み込んでおくとよい。

 


  ▲ 問題2


  ☆ 参考書籍

   民法2  勁草書房 ・ 民法二 内田貴著  東京大学出版会

 
  ◆ 各肢の検討

   ア・イは、請負の目的物の所有権の帰属に関して、請負人帰属説に
  立つ判例の見解の成否が問われているである。

   
  ◎ アについて
  
   判例は、請負人帰属説に立ちながらも、注文者が材料を提供した
    場合には、注文者に帰属するとする(大判昭7・5・9・・・)。
   この場合には、加工(246条1項ただし書き)の適用はない、

   したがって、本肢は前段は正しいが、後段は誤りであり、全体と
    して、誤りである。

   ☆ 過去問の検討

    建物新築の請負契約に当たり、注文者が材料の全部を供給した
      場合には、特約の有無にかかわらず、注文者に所有権が帰属する。
    (1998年問31・肢1)

    上記判例は「特約がない限り、原始的に注文者に所有権が帰属
      する」としているので、「特約の有無にかかわらず」ではない。

    ×

  ◎ イについて

    建築請負では、注文者の土地の上に請負人が材料を提供して建物
   を建築するのが通常である。
   
    この場合には、請負人が所有権を取得し、引渡によって注文者
   に移転することになる(大判大正3年・12・26・・)。

    以上が、請負人帰属説の骨子である。

    しかし、請負人の材料提供の場合でも、特約があれば、竣工と
   同時に注文者の所有となるというのが、判例である(大判大正
   5・12・3・・)。

    したがって、本肢は正しい。
   
   ☆ 参考事項

    請負人の材料提供の場合のおける、特約について、以下の判例
      が注目される。

    注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、特
     約の存在が推認され、特段の事情のない限り、建物所有権は完成と
     同時原始的に注文者に帰属する(大判昭和18・7.20・・最判
     昭和44・9・12・・)。

    以上の判例を基準に出題された2002年問29 肢5。

   最高裁判例によれば、仕事完成までの間に注文者が請負代金の大部
  分を支払っていた場合でも、請負人が材料全部を供給したときは、完
    成した仕事の目的物である建物の所有権は請負人に帰属する。

   本肢は、上記判例に照らし、×


   学説の多数は、以下のとおり、注文者帰属説に立つ。

   目的物の所有権に関しては、むしろ当事者の通常の意識を尊重して、
    完成と同時または工事の進捗に応じて注文者に帰属すると考えるべき
    である。


  (以上、前掲書 内田 貴著 参照)

 
  ◎ ウについて

    請負人の担保責任として、瑕疵修補請求権および損害賠償請求権が
    ある。両者の関係は以下のとおりである。

   瑕疵修補請求権→相当の期間を定めて修補できるのを原則とするが、
   瑕疵が重要でなく、しかもその修補に過分の費用を要するときは、
   損害賠償請求権があるだけである(634条1項)

   損害賠償請求権→瑕疵の修補とともにまた修補に代えて、常に請求
   できる(634条2項)。

   (前掲書 民法 2)


      当該瑕疵修補に代わる損害賠償請求権については、本肢のとおり
  の判例がある(最判平9・7・15・・)ので、本肢は正しい。

   
   ☆  関連する過去問について

     請負契約の履行に当たり生じた瑕疵の修補に代わる注文者の
    損害賠償請求権と請負人の報酬請求権は相殺することができる。
   (1998年問31・肢3)

     前記判例は、両者は同時履行の関係にあり、相互に現実の履行
    をなすべき特別の利益はないとして、相殺を認めた。(533条
    ・505条)

     ○


     完成した仕事の目的物である建物に瑕疵があった場合、注文者
    は修補か、損害賠償のいずれかを選択して請負人に請求すること
    ができるが、両方同時に請求することはできない(2002年
    問29・肢5)。

     前記記述に照らし、注文者の選択によるのでもなく、両方同時
    に請求できる。

     ×


  ◎ エについて

    判例によれば、本事例において、「注文者が期日に報酬を提供
   しないときでも、請負人は当然遅滞の責めに任ずべきものである。」
    (大判大正13・6・6・・)とする。

    したがって、本肢は誤りである。


     ☆ 関連する過去問

    請負人が約定期日までに仕事を完成できず、そのために目的物
   の引渡しができない場合でも、報酬の提供がなければ、履行遅滞
   とならない(1998年問31・肢5)。

     前記判例によれば、履行遅滞になるので、×

   ◎ オについて

   本肢は、ウで掲げた請負人の担保責任である瑕疵修補請求権・
  損害賠償請求権と並ぶ契約の解除権に関する問題である。

  契約の解除権→瑕疵が重要なもので、これがため契約の目的を達す
  ることができないときにだけ解除できる。ただし、修補の可能なと
  きはまずこれを請求すべきものと解さねばならない。のみならず、
  建物その他の土地の工作物の請負においては、解除は許されないこ
  とに注意 すべきである(635条)。
 
    (前掲書 民法2 )
  
   
     本肢は、請負の目的物が建物であるから、注文者は解除できない。
  したがって、誤りである。


-----------------------------------------------------------------

  正しいのは、イとウであるから、正解は4である。
   
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 ◆ 付 言

   請負については、見過ごされがちであるが、重要論点満載であるので、
  注意されたい。

 

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            ★ オリジナル問題解答 《第10回 》 ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  行政法・民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法・行政法・オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第96号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第96回はこちら↓
  
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
  ▲  問題 1
  
    本問は、メルマガ第96回・◎ 平成22年度 問題 18を
 参照することによって、正解を導くことができるが、ここでは、
 各肢の要点を示すことにする

 
  ○ 肢アについて

    取消判決には形成力がある。すなわち、本肢におけるように「不
  利益処分の取消訴訟において原告勝訴判決(取消判決)が確定した
  場合に]は「行政処分はその効力を失う。つまり、行政庁の手によ
  る取消を必要としない。」(後掲書 読本 312頁参照)

   不利益処分の取消訴訟にあっては、拘束力の積極的効果は働かず、
    その形成力により、行政処分はその効力を失い、行政庁の手による
    取消を必要としないのであるから、処分庁が、判決確定の後、当該
  不利益処分を職権で取り消す必要がない。
   
   本肢は正しい。

 ○ 肢イについて

  本肢における拒否処分については、以下のようになる。

     1 まず、取消判決があると、取消判決の形成力により拒否処分は
        過去に遡って消滅する。

   2 そうすると、申請人(原告)が行った申請が残っている状態に
        なる。

   3 そこで行政庁は、取消判決の拘束力により、この申請について
        改めて審査し、処分をしなければならない。

     以上のとおり、拘束力の積極的効果により、行政庁はもう一
        度申請を審査して処分をやり直さなければならない(行訴法33
        条2項)。

   (後掲書 読本 316頁参照)

    以上の記述に反する本肢は誤りである。

 ○ 肢ウについて

   前記肢イ3によれば、「行政庁はもう一度申請を審査して処分をや
    り直さなければならない」のであって、「申請を認容する処分を義務
    づけられる。」のではない。

   本肢は誤りである。

 
 ○ 肢エについて

   メルマガ第96回・◎ 平成22年度 問題 18 肢イ を言い
    換えただけであるから、当該解説欄を再読されたい。
   
     (なお、本肢は、後掲書 読本 319頁から一部引用した)

   本肢は正しい。
   

    以上によれば、ア・エが正しいので、正解は、2 である。    
 


   ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行

 


  ▲  問題 2


    本問は、メルマガ第93回「余禄」欄において、主題になった「民法
 96条3項の第三者として保護されるためには、登記を要するか」に基
 づき出題したものである。

  当該「余禄」欄を再読されたい。

  解答例として、以下に二例を提示しておく。

    仮登記により保全される売買契約 
      上の権利確保のため、仮登記移転 
      の付記登記を行う 。  
  
    
        知事の許可を条件とする所有権移
       転の権利確保のため、仮登記移転 
      の付記登記を行う 。  


               以上 いずれも39字

  
  なお、「仮登記」「付記登記」の説明ないしは仮登記の登記事項とし
 て、条件付所有権移転仮登記・(条件 農地法の許可)と記録されるこ
 となどについては、不動産登記に立ち入ることになるので、省略する。

 

 


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              ★ オリジナル問題解答 《第9回 》 ★

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  【テーマ】  民法
   
    
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 ■ 民法 オリジナル問題 解説
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    問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第95号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第95回はこちら↓
  
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  ▲  問題 1
 

  ★ 総説
                                


 (1)

                  連帯保証→保証人が主たる債務者
                 と連帯することを保証契において
                 約束した場合
   1,000万円
 B---------------→A      
         主たる債務者
                  共同保証→数人の保証人が同一
          C・D     の主たる債務を保証する関係
         連帯保証人
         共同保証人


 (2) 

   C・Dの共同保証人が、連帯保証人でない場合

 

    ◎(1)は、連帯保証と共同保証をからめた問題である。
   これを(2)と比較した場合の検討が本問である。


 ★ 各肢の検討


  ○ 肢アについて

    民法457条は、普通の保証にも連帯保証にも適用されるので
  債務の承認による時効中断の効力(147条3号)は、いずれの
  場合も、保証人C・Dに及ぶ。
 
   主たる債務者に生じた事由は、保証人に及ぶのが原則。
 しかし、時効は各別に進むのが原則。

   そこで、民法は、債権者の立場を考慮して、時効中断の効力は保証
 人に及ぶとして、立法的に解決。
   以上の思考過程は、大切である。
 
    誤り。


 ○ 肢イについて

   保証人に生じた事由は、主たる債務者に影響を及ぼさないのが原則。
 しかし、連帯保証に関しては、458条・434条により、主たる
 債務者に及ぶ。
 
   したがって、普通の保証では、Aに対して、請求による時効中断の
 効力が生じないが、連帯保証では、その効力が及ぶ(民法147条
 1号)。
 
   誤り。
 

 
  ○  肢ウについて

  この問題は、普通の保証、連帯保証を問わず、「保証」の特質から
  論じられる問題。
 
  主たる債務者について生じた事由は、保証人についても効力を生じる
 という付従性の原則からすれば、Aの時効の利益の放棄(146条)の
  効果はC・Dに対しても及ぶようにも思える。

  しかし、時効は各当事者について別々に進行すべきだという原則に照
  らせば、Aが時効の利益を放棄しても、C・Dの債権消滅時効の進行は、
 各別に進行することになる。
  
  判例もまた、以下のとおり判示する。

  主債務者が時効利益を放棄しても、保証人に効力を及ぼさない
    (大判大5・12・25)。

  また、民法448条の法意からすれば、従来の保証人の負担が、
  主債務者の時効利益の放棄により加重されるべきでないといえる。

  したがって、本肢は正しい。

  
 ○ 肢エについて

   その前提として、共同保証人が主たる債務者に対して求償することは
  当然であるので、CがAに求償することは問題ない。

   問題は、連帯保証人間の求償であるが、465条1項(各保証人が
   全額を弁済すべき特約とは共同保証人が連帯保証人でである場合も
   含む取扱である) の適用により、共同保証人間の求償も認めら
  れている。
  
    なお、普通の保証でも、適用条文が異なるだけで、共同保証人
   間の求償が認められている(465条2項・462条)。

   いずれの場合も求償できるので、本肢は正しい。


 ○  肢オについて
 
   普通の共同保証では、各保証人は債務額を全保証人間に平分して
   その一部を保証することになっている(456条)。これを保証人の
   分別の利益という。

   しかし、連帯保証は、この分別の利益を持 たないことを特徴に
   している。

     保証人間に連帯の特約があるとき、主たる債務の目的が不可分な
   ときは分別の利益はない。
   この場合と同様、判例は、連帯保証人が数人あるときも、保証人
   間において、分別の利益を有しないものとした(大判大6・4・28)。

   従って、連帯保証では、Cは1,000万円を返済する義務があるが、
    普通の保証では、分別の利益があるので、平分した額500万円を支払
    えば足りる。

   本肢は誤りである。

 
 《参考事項》

   問題が複雑になるので、ここは飛ばしてもらってもよいが、以下の
   記述に注目せよ!

  連帯保証人が数人ある場合は、各保証人は分別の利益を有しないが、
  保証人間に連帯の特約があるか、商法511条2項の適用がある場合
  でなければ、連帯債務ないしこれに準ずる法律関係は生じない。
  したがって、債権者が保証人の一人の債務を免除しても、他の連帯
  保証人の債務には何の効果も及ぼさないとされる(最判昭和43・11
  15)(勁草書房 2)。(民法437条)


   以上、妥当であるのは、ウ・エであるから、正解は4である。
 

 

 ▲  問題 2
 
  
   ◆ それぞれ長文になっているが、ポイントを押さえれば、正解を導く
   くのは、困難なことではない。各肢について、要点を解説する。


  ◆ 各肢の検討

 
  ○ Aの相談

   時効を援用することのできる者は、時効によって債務を免れた者
  である。これが、本来、民法145条の「当事者」の意味である。

   この当事者について、判例はかつて一般的に狭く解していたが、
  「これらの義務に基づいて義務を免れる者を広く包含する」。
 (勁草書房)
  
  この見地からすれば、物上保証人も、自分の負担する抵当権の
  基礎としての債務の消滅時効を援用して、抵当権を消滅させる
  ことができる(最判昭和42・10・27 最判昭和43・9・26)。

  以上の理解さえがあれば、この問題は正解しうる。

    「できます」に該当する。


 注 関連事項


 (1) 民法166条1項・167条1項により、債権は、権利を
      行使することができる時から10年間行使しないときに時効
   消滅するから、本肢においては、当該債務は、弁済期から
   12年経過になっている。

(2) 民法147条の時効の中断事由があれば、時効は成立しない
    ので、本肢において、その該当事実がないことが記されている。
 

 ○ Bの相談

   民法167条2項によれば、所有権は消滅時効にかからない。
  以上を前提とした下記判決がある

  不動産の譲渡による所有権移転登記請求権は、右譲渡によって生
 じた所有権移転に付随するものであるから、所有権移転の事実が
  存する限り独立して消滅時効にかかるものではないと解すべきで
 ある(最判昭和51・5・25)。

  したがって、私は、知人を相続した乙氏に対して、移転登記を
 求めることはできる。

 関連事項

  同旨判決として、以下のものがある。

  遺留分権利者が減殺請求によって取得した不動産の所有権に基づく
  登記手続請求権は時効によって消滅することはない(最判H7・6・9)。

  これを主題に出題されたのが、平成21年度問題28の「Cの相談」
  である。

  ここで、この判例と「Cの相談」をよく対照されれば、最近の
  本試験の特徴を把握できるであろう。

 
 ○ Cの相談

    本肢は、民法第158条第1項の条文適用問題である。
 
 平成21年11月20日が時効の期間の満了日であるが、その前の
  6箇月以内の間に父に成年後見人がいない。後見人である母が同年
  7月10日死亡したため、後見が終了しているからである。
  この場合には、娘である私が後見人に就任した時から6箇月を
  経過するまでの間は、時効が停止する。私は、同年11月25日
  後見人に就任し、今年の1月20日に返済を求めているから、
 時効停止期間中の返還請求であるから、本肢は「できます」に
  該当する。

 ○ Dの相談

   「Aの相談」と連動する。

  抵当不動産の第3取得者も、自分の負担する抵当権の基礎としての
 債務の消滅時効を援用して、抵当権を消滅させることができる(最
  判昭和48・12・14)
 
 「できます」に該当する。

 その他の解説は、「Aの相談」に譲る。

 ○ Eの相談
 
   本肢は、民法162条1項の取得時効の援用の問題である(民法
145条)。
 
  なお、本肢では、2点に注意すべきである。一つは、土地の時効
 取得者が私に地上権を設定させていたのであるから、162条に
 いう「占有」は、代理占有である(民法181条)
 
  もうひとつは、本肢の中の、これまで紛争になることもなかった
 という記載により、162条の「平穏・公然」が示されている。

   しかし、以上の点は、本肢の前提になっているのであるから、
 実際の本試験では、こだわる必要はない。
 
  本題に移る。

   民法145条の援用の当事者を広く包含するという立場からは、
 以下のように論述される。

 「この見地からは、取得時効につてみると、たとえばAの所有地を
 時効によって取得するBから地上権等の設定を受けたCにはBの
 取得時効の援用権がある。つまり、この場合Bが援用しなければ、
 Cは独自にBの取得時効を援用して、Aに対し、当該の土地の上
 に地上権等を有することを主張できることになる。」(勁草書房)

 
  本肢は、この論述と同じ事案であるから、私は独自に甲氏の取得
 時効を援用して、乙氏の相続人である丙氏に対し、当該土地の上
 に地上権を有することを主張できることになる

 私は土地の明け渡しを拒否「できます」となる。

 関連事項

  この地上権が、賃借権であっても、おそらくは結論は変わらない
 だろう。しかし、平成21年度問題28「Bの相談」のように、
 アパートの賃借となると、時効取得の主張は認められないことに
 なる。

   つまり、当該土地に建物に家を建てた者と当該土地の上に建って
 いる家を借りた者との違いだ!!

   以上のとおり、本問は、いずれも「できます」に該当するので、
 正解は5である。

 ◆ 付言

  いずれについても、素早く事実関係を把握し、論点の抽出・
 ないし適格な条文の適用にに到達しうるよう、日々訓練を行う
 ことが 望まれる。


  ◎ 以上参考書籍 
  
  民法 ・内田 貴 著・東京大学出版会
   
   民法  ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房

 


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       ★ 過去問の詳細な解説  第90回  ★

           =90回達成記念号=

       皆様に励まされて、ここまで到達いたしました。

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  【テーマ】 民法
   
     ー過去問に関して、登記にまつわる諸問題・その1ー
     
     平成10年度以降の登記のからむ肢を順次とりあげ、解説を行い
   ます。本試験準備の有力な武器になることを祈念します。

    みなさま各人が工夫を凝らした勉学を進めるための一助となる当
   サイトもまた、独自性が求められることは当然であると思料されま
   す。 
 

  【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】      

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■  問題集(過去問の出典は省略)・○×を付すること

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 1 権利能力なき社団Aが不動産を買い受けた場合において、Aは、法人
  に準じて扱われるので、登記実務上、A名義の登記が認められる。(  )

 2 AがBに対しAの所有する不動産を売却した後に、同不動産を重ねて
  Cにも売却した場合において、B、Cのうち、同不動産の引渡しまたは
  登記の移転を先に受けた方がその所有権を取得する。(  )  
  
 3 AがB所有の土地をCに売却した場合、
  
     所有権者Bが自らA名義で登記をして虚偽の外形を積極的に作出し、
  そのまま放置していた場合には、Bは、Aを所有者だと信頼して買っ
  たCに対抗できない。(  )

 4 A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、Aが甲地をCに
   譲渡した場合、Bは登記なくしてCに対抗できる。(  )
 
 5 A所有の甲地がBに譲渡され、さらにAB間の譲渡の事実を知って
  いるCに譲渡されてCに所有権移転登記がされた場合、Bは登記な
  くしてCに対抗することができる。(  )

 

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■  解説集(判例に関しては、三省堂発行の平成22年度 模範六法
       から引用≪模 、、条1、2、3・・・で表す≫)

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 1 最判昭47・6・2・・権利能力なき社団の資産たる不動産について
  は、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個
  人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者と
  する登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個
  人名義の登記をすることは、許されないものと解すべきである(摸33
  条5)。  ×
  
   なお、前記判例は、次のように判示していることにも注意せよ!

   権利能力なき社団の資産たる不動産につき、登記簿上所有名義人
  となった代表者がその地位を失い、これに代わる新代表者が選任さ
  れたときは、新代表者は、旧代表者に対して、当該不動産につき自
  己の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求めることができ
  る(同じく摸33条5)。


  2 民法177条によれば、不動産に関する物権の変動の対抗要件は、
  登記である。引渡しは、対抗要件にならない。 ×

  3 民法94条の虚偽表示に該当するには、相手方と通謀することを要
  するが、不動産の真実の所有者がBであるにもかかわらずBの意思に
  基づいてA名義の登記がなされている場合、この不実の登記につきA
  の承諾がなくても本条が類推適用されるというのが、判例(最判昭
  45・7・24 同旨最判昭50・4・25)である。
   したがって、同条2項の適用により、Bは、Aを所有者だと信頼し
  た善意の第三者Cに対抗できない(摸94条23)。  ○

   なお、前記判例は、以下のように判示していることに注意。

   Aから当該不動産を悪意で譲り受けた丙は保護されないが、丙から
  さらに当該不動産を譲り受けた丁は当該不実の登記につき善意である
  限り本条2項の第三者として保護される。

   これは、権利外観法理の現れとして、登記に限らず、権利の外形を
  信頼した第三者の保護一般について問題となること注目すべきである。

 4 CがBの時効完成前に譲渡を受けた場合には、BとCは当事者の関
  係 に立ち、CがBの時効完成後に譲渡を受けた場合には、両者は、
  対抗関係に立つというのが、判例の考え方である(最判昭41・11・
  22 最判昭42・7・21 摸177条 12・14)。

   本肢では、BとCは後者における、対抗関係に立つので、民法177
  条により、Bは登記がなければCに甲地の所有権を対抗できない。

   ×
  
   末尾において、本肢に関連する○×問題を掲げておく。

  5  判例は古くから、177条の第三者は悪意者でもよいとしている
   から、登記がなくては対抗できない者に悪意の第三者を含むとして
   いる。したがって、Bは登記なくしてCに対抗できない。×

    なお、背信的悪意者については、末尾エ 参照。


  
  ◎ 末尾


  ア A所有の甲地につきBの取得時効完成前において、CがAから甲地を
        譲受けて移転登記を経由した場合、Bは時効完成後において、登記なく
        してCに対抗できない。(  )

    イ A所有の甲土地につきBの取得時効が完成し、その間にAの側に何ら
       変動がなければ、Bは登記なくしてAに対抗できる。(  )

    ウ A所有の甲地につきBの取得時効完成前において、CがAから甲地を
        譲受けて所有権を取得し、Bの時効完成後に移転登記を経由した場合、
        Bは登記なくしてCに対抗できない。(  )

    エ A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、CがAから甲地を
        譲受けて移転登記を経由した場合、Cが背信的悪意者にあたる場合は、
        Bは登記なくしてCに対抗できる。(  )

  
  《解答》


   ★  アについて

   前記判例理論によれば、B・Cは当事者の関係に立つので、Bは
  登記なくして、Cに対抗できる。  ×

  ★ イについて。
 
   土地の占有者Bの側に、たとえば162条の1項の要件が備わり、その
  間、所有者Aの側に何らの変動がなければ、Aは第三者ではないから、B
  は登記がなくてもAに対して所有権の取得を主張し、移転登記の請求がで
  きる。

  A・Bは当事者の関係に立つので、当然だともいえる。

   ○
 
  ★ ウについて。
 
    アの肢では、時効完成前に所有権を取得し、移転登記も経由した場合
  であるが、この肢では、時効完成後に移転登記を経由した場合である
 
  どのように考えるべきであろうか。

  この場合には、CがBの時効完成前に所有権を取得した時点において、
  BとCは当事者の関係に立つのであり、時効完成後にCが登記をした
 からといって、BとCが対抗関係に立つと考えるべきではない。

  不動産の時効取得者は、時効完成後に登記を経由した当該譲受人に登記
 なくして、所有権を対抗しうるとする判例がある(最判昭和42・7・21
 摸177条 13) 
 
  したがって、BはCに対し、登記なくして所有権を対抗できるのであり、
  
  ×

  ★ エについて。

  所有権の移転を受けたと同視される時効取得者と所有権の移転を受けて
 登記を備えた者が対抗する場合であるから、177条の適用により「背信的
 悪意者」論がもちだされて、当然と言えるのかもしれない。

  Cが 背信的悪意者であれば、Bは登記なくしてCに対抗できる。
 
  これについても判例があり、判例は、背信的悪意者を以下のように
  捉えている。

 (最判平成18・1・17摸177条 35 162条 38)

  BとCを登場させる。

  Cが、当該不動産の譲渡を受けた時に、Bが多年にわたり当該不動産
 を占有している事実を認識しており、Bの登記の欠缺を主張すること
 が信義に反するものと認められる事情が存在するときは、Cは背信的
 悪意者にあたる。

  したがって、本肢は、Bは登記なくしてCに対抗できる場合に
 あたる。

   ○

 

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         ★ 過去問の詳細な解説  第88回  ★

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  【テーマ】 会社法=株式会社の取締役
  
     

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
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  この問題集は、長年の本試験研究の成果を踏まえ、私が渾身の力をふ
  りしぼって作成したものであり、その作成意図を列記いたしますと、下
  記のとおりであります。
  
 1、本試験と同じ形式を採用し、実際にも、来る本試験との重なりを期
    待しました。

 2、特に、【解説欄】に勢力を注ぎ、関連する事項に極力言及し、応用
    力が養成されるようにこころがけました。

 3、88回にもわたる当該「サイト」欄と連動させることにより、体系
    的理解を助けることを目的にしました。

  
  本試験直前のこの時期に、以上の特徴を有するこの問題集を活用され
  ることにより、みなさまの一人でも多くの方々が、合格の栄冠に輝かれ
  ることを期待してやみません。

 

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■ 平成15年度 問題34(一部改変)

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   株式会社の取締役に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつ
 あるか。


 1 定款をもってしても取締役の資格を株主に限定することはできない。

 2 株主総会は、正当の事由がなければ、任期満了前に取締役を解任す
  ることはできない。

  3 取締役の解任によって欠員が生じた場合、必要があるときは、利害
    関係人の請求により、裁判所は一時取締役の職務を行うべき者を選任
  することができる。

 4 取締役が取締役会の承認を得ないで自己のために会社の営業の部類
  に属する取引を行った場合、取引の時から1年を経過するまでは、取
  取締役会は、その取引を会社のためにしたものとみなすことができる。

 5 取締役が、取締役会の承認を受けて会社を代表して他の取締役に金
  銭を貸し付けた場合であっても、その取締役はまだ弁済のない額につ
  いて弁済する責任を負う。

  
  1 一つ

 2 二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ 


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 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参考書籍

   会社法  神田 秀樹  ・ 弘文堂

 ☆ 問題文一部改変について

   本問題出題当時においては、旧商法が適用されていたが、これに
    会社法を適用すると、複数の誤りが生じるため、「誤っているもの
  はどれか」とする問題文について、該当部分を改変した。

   なお、各肢の記述は原文のままである。


 ◆ 各肢の検討

  ○ 1について。

   
   取締役など役員は株主総会の決議によって選任される(会社法329
  1項)。


   旧商法適用時においては、定款で、取締役を株主に限定することは、
    許されなかった(旧商法254条2項)。


   会社法のもとでも、定款で、取締役の資格を株主に限定することは許さ
  れないが、公開会社以外の会社は別である(331条2項)。

      以上のとおり、公開会社以外の会社は限定が許されるので、誤りで
    ある。

   なお、公開会社においても、株主を取締役に選任することはもちろん
    認められ、実際にもそのような場合が多いことに注意。
  (前掲書 170頁)

 
  ○ 2について。

   株主総会は、その決議で、いつでも、理由をとわず、取締役など役員
  《329条1項( )内》を解任することができる(339条1項)。

  正当な理由なく解任した場合は、会社は損害賠償しなければならない。
   (339条2項)。

   以上により、株主総会は、正当な理由がなくても、任期満了前に取締
   役を解任できるので、本肢は誤りである。


  ○  3について。

   終任により法定のまたは定款所定の役員の員数が欠ける結果になった
    場合には、後任の役員を選任しなければならないが(976条22号参
  照)、任期満了または辞任により退任した役員は、後任者が就任するま
  で引き続き役員としての権利義務を有する(346条1項)。

   しかし、それが不適当な場合とその他の事由(解任等)による場合は、
    裁判所に請求して一時役員としての職務を行う者(「仮」取締役等と呼
  ぶが、権限は普通の取締役等と同じ)を選任してもらうことができる
  (346条2項・3項)。
  《前掲書》
   
   以上からすれば、取締役の解任の場合、仮取締役を選任することがで
    きるので、正しい。

  ○ 4について。

  本肢は、旧商法における、取締役の競業避止規制違反があった場合の
 介入権の規定である(旧商法264条3項).

  会社法では、当該介入権の規定は廃止されている。

  会社法のもとでは、次のようになっている。

  取締役会設置会社では、競業取引について、取締役会の承認を得なかっ
  た場合(356条1項1号・365条1項)、その取締役は会社に対して
  損害賠償を負い(423条1項・2項)、また取締役解任の正当事由にな
  りうる(339条)。

  以上に対して、取締役会設置会社以外では株主総会で承認する(356
 条1項1号)。
 
  《前掲書参照》

  以上からすれば、本肢は誤りとなる。


 ○ 5について。

  本肢については、サイト48回を参照されたい。

 ★サイト48回はこちら↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/919396.html

  会社から金銭の貸付を受けた取締役の行為は、、356条1項2号の
 利益相反行為に該当する。取締役会設置会社にあっては、取締役会の承
 認を要する(365条)が、当該承認を得た金銭の貸付けであっても、
  会社に損害を生じた場合は、その取締役・代表取締役は会社に対して
  損害賠償責任を負う(423条1項・3項)。
   
  金銭の貸付を受けたことによって、直接取引をした取締役が無過失
  責任を負うのは当然としても(356条第1項2号・423条3項1号・
 428条)、本肢における代表取締役も過失責任を負う(423条3項
 2号・3号)。

  以上により、会社を代表した取締役も、まだ弁済のない額についての
  弁済をする責任を負うので、本肢は正しい。

  注・細かくなるが、旧商法では、直接取引をした取締役以外の取締役
       の責任も無過失責任であったが、会社法では、過失責任化された。
     したがって、本肢において、出題当時、当該取締役の弁済責任
      は無過失責任であったが、現在では過失責任となっていることに
      注意せよ!!
  
---------------------------------------------------------------- 

  以上誤っているのは、1・2・4であるから、正解は3である。 
  
---------------------------------------------------------------- 
   
   

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
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