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            ★ オリジナル問題解答 《第31回 》 ★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  民法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第117号掲載してある。

 
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 ★ 参考書籍 
  
  民法一 内田 貴 著・東京大学出版会
   
   民法 1 ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房

   
 
  
 ● 各肢の検討

   
 ○ アについて

   CがBの時効完成前に譲渡を受けた場合には、BとCは当事者の
 関係に立ち、CがBの時効完成後に譲渡を受けた場合には、両者は、
 対抗関係に立つというのが、判例の考え方である。

    判例は、そこを基軸 にして、前者ではBは、登記なくして取得
  時効 による所有権取得をCに対抗できるとし、後者では、Bは登
  記なくして所有権をCに対抗できないとした。

    本肢の事例は、後者に該当するため、本来は、Bは登記なくして
  所有権をCに対抗できない。

  しかし、判例は、177条の適用に当たり、背信的悪意者には、登
 記なくしても、所有権を対抗できるとするが、本肢の事例について、
 判例 (最判平18・1・17民集601−1−27)は、Cを背信的
 悪意者と認めた。

  したがって、Bは登記なくして所有権をCに対抗できるので、本肢
 は妥当である。

 

 ○ イについて

  これは、物上保証人が担保する債権が時効中断によって時効消滅し
 ない場合、担保物権たる抵当権はどうなるかという問題である。

  この場合、担保物権における付従性の原則(消滅における付従性)
 により、その担保する債権が時効消滅しない間は独立に消滅時効に
 かからない。

    本肢では、以下のとおり、時効中断が生じているので、Bが債務
  者になっている債権の消滅時効は完成していない。したがって、A
  は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できないので、本肢は
  妥当である。 
 
 
  時効中断

     消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する
   (166条1項)から、債務の弁済期から進行する。本件では、
       弁済期から12年経過しているので、時効消滅する(167条)
    はずであるが、3年前の債務の承認による時効中断のため、
    その時から10年間は時効消滅しない(147条3号、157
    条1項)。
   
    なお、148条によると、時効の中断は、当事者及びその承継
   人の間においてのみ、その効力を有するとあり、物上保証人に中
   断の効果が生じないのではないかという疑問もあるが、当事者で
   あるBに時効中断の効果が及ぶため、Bの債務が消滅しない以上、
   担保権の付従性により、Aが時効の完成を主張することは許され
    ない。判例(最判平7・3・10判時1525―59)も同旨で
   ある。しかし、本肢は、判例を知らなくても、理論的に解ける問
   題である。
   
    ※ 参考事項

   396条との関係

     これは、その担保する債権が時効消滅しない間であっても、
      抵当権が独立に消滅することを定めているので、消滅における付
      従性の原則の例外である。

    しかし、債務者及び抵当権設定者には、本条の例外規定の適用
   はないので、本件における物上保証にあっては、その担保する債
   権が時効消滅しない間は独立に消滅にかからないという原則に従
   うのである。

    それでは、本条はどのような場合に適用されるか。これについ
   ては、以下のとおりである。

   「たとえば第三取得者または他の債権者に対する関係においては、
    債権が消滅時効にかからない場合においても、(抵当権は)独
    立に消滅時効にかかるものとされる(396条)。その時効期
    間は20年である(167条2項)。債権は一般に10年で消
    滅時効にかかるから(167条1項)、右の事例は債権につい
    て時効の中断の行われた場合に生ずるわけである。」(前掲・
    民法 1)


 ○ ウについて

   145条の時効の援用権者については、判例は、広く包含する立場
 に立って、時効によって取得した所有権に基づいて権利を取得した者
 も援用権者として認める。この見地からすれば、本肢事例にみるよう
 に、C所有の甲地を時効によって取得するBから地上権の設定を受け
 たAには、Bの取得時効の援用権があることになる。つまり、この場
 合Bが援用しなければ、Aは独自にBの取得時効を援用して、Cに対
 し、甲地の上に地上権を有することを主張できることになる(前掲
 民法 1 参照)。

  したがって、以上の記述に反する本肢は妥当でない。

  ※ 参考事項

   (1) 本肢事案に相当する判例があるのか、どうかは、参考文
      献の記述では明らかではない。
       なお、過去問(平成21年度問題28 Bの相談 )で
      も問われた次の判旨に基づく判例(最判昭44・7・15
      民集23−8−1520)があることに注意せよ。

       土地の所有権を時効取得すべき者から、その土地上に同
                      ・・・・・
      人の所有する建物を賃借しているにすぎない者は、右土地
                  ・・・・・・・・・・・・・
      の取得時効の完成によって直接利益を受ける者ではないか
      ら、右土地の取得時効を援用することはできない(・・・
      ・・は筆者が付した)。

   (2) 本肢では、甲地の時効取得者であるBが、Aに地上権を
      設定させているのであるから、162条にいう占有は代理
      占有であることに注意(181条)。
 

 ○ エについて

    167条2項によれば、所有権は消滅時効にかからない。以上を
  前提にした下記判決がある。

   不動産の譲渡による所有権移転請求権は、右譲渡によって生じ
  た所有権移転に付随するものであるから、所有権移転の事実が存
  する限り独立して消滅時効にかかるものではないと解すべきであ
  る(最判昭51・5・25民集30−4−554)。

   したがって、Aは、Bを相続したCに対して、所有権移転登記
  を求めることができるので(896条参照)、本肢は妥当でない。

   なお、過去問(平成21年度問題28 Cの相談 )でも問わ
  れた次の判旨に基づく判例(最判平7・6・9判時1539−6
  8)があることに注意せよ。

   遺留分権利者が減殺請求によって取得した不動産の所有権に基
  づく登記手続請求権は時効によって消滅することはない。


  ○ オについて

   Aが、抵当不動産について、162条1項の要件を満たす占有をし
 たことにより、所有権を時効取得した場合には、Aが債務者でもなく、
 抵当権の設定者でもなければ、抵当権はこれによって消滅する(39
 7条)。取得時効は原始取得として完全な所有権を取得させるものだ
 からである(前掲 民法 1)。

  なお、本肢では、Aは、債務者でもなく、また、Bが抵当権設定者
  であって、Aは、抵当権設定者でないことが前提になっているので、
 397条の適用を受ける適格がある。

   以上の記述に照らし、本肢は妥当である。

 ※ 参考事項

  過去問(平成21年度 問題29 肢エ)において、以下の出題が
 されている。

  Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵
 当権を設定した場合において、

  第三者がCが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、A
 の抵当権は、確定的に消滅する。

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   本肢では、Cは、債務者でもなく、抵当権設定者でもないため、
  397条が適用される。本肢は妥当である。
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 ● 本問では、ウとエが妥当でないので、2が正解である。  
 

 
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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