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                 ★  【過去問解説第107回 】  ★

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                                  PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法=行政手続

        
  【目 次】 過去問・解説
              

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 ■  平成24年度・行政手続3題
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 ◆ 問題 11

   廃棄物処理法*に基づく産業廃棄物処理業の許可は、都道府県知
 事の権限とされているが、それに関する行政手続についての次の
 記述のうち、妥当なものはどれか。ただし、廃棄物処理法には、
 行政手続に関する特別の定めはない。

 1 申請に対する処分の手続に関し、当該都道府県の行政手続条例
  に行政手続法と異なる定めがあったとしても、この処理業許可の
   申請の知事による処理については、行政手続法が適用される。

 2 国の法律である廃棄物処理法の適用は、全国一律になされるべ
  きであるから、同法に基づく知事による処理業許可に関する審査
   基準は、当該都道府県の知事ではなく、主務大臣が設定すること
   となる。

 3 申請に対する処分の審査基準は、行政手続法によって設定が義
  務付けられた法規命令であるから、廃棄物処理法に基づき知事が
   する処理業の許可についても、その申請を審査基準に違反して拒
   否すれば、その拒否処分は違法となる。

 4 一度なされた処理業の許可を知事が取り消す場合には、相手方
  に対して聴聞を実施しなければならないが、処理業の許可申請を
  拒否する処分をする場合には、申請者に弁明の機会を付与すべき
  こととされる。

 5 提出された処理業の許可申請書の記載に形式上の不備があった
  場合については、知事は、期限を定めて申請者に補正を求めなけ
   ればならず、直ちに申請を拒否する処分をすることは許されない。

   (注)* 廃棄物の処理及び清掃に関する法律


  ◆ 問題 12

   行政手続法における意見公募手続に関する定めについての次の記述
 のうち、妥当なものはどれか。

 1 意見公募手続の対象となる命令等は、外部に対して法的拘束力を
  有するものに限られるから、行政処分の基準は含まれるが、行政指
   導の指針は含まれない。

 2 意見公募手続における意見提出期間について、やむを得ない理由
  により、同法が定める期間を下回ることとされる場合には、その理
   由を明らかにしなければならない。

 3 意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、その公布と同
  時期に、その題名や公示日とともに、提出された意見のうち、同一
   の意見が法定された数を超えたものについて、その意見を考慮した
   結果を公示しなければならない。

 4 意見公募手続を実施して一般の意見を公募した以上、命令等を制定
   しないことは許されず、命令等を制定して、提出された意見等を公
   示しなければならない。

 5 意見公募手続を実施した結果、提出された意見が法定された数に
  満たない場合には、緊急に命令等を定める必要がある場合を除き、
   再度の意見公募手続を実施しなければならない。


  ◆ 問題 13

   行政手続に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤
 っているものはどれか。

 1 行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があるこ
  とから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の
  機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものでは
  ない。

 2 公害健康被害補償法*に基づく水俣病患者認定申請を受けた処分庁
  は、早期の処分を期待していた申請者が手続の遅延による不安感や
  焦燥感によって内心の静穏な感情を害されるとしても、このような
  結果を回避すべき条理上の作為義務を負うものではない。

 3 一般旅客自動車運送事業の免許拒否処分につき、公聴会審理にお
  いて申請者に主張立証の機会が十分に与えられなかったとしても、
  運輸審議会(当時)の認定判断を左右するに足る資料等が追加提出さ
  れる可能性がなかった場合には、当該拒否処分の取消事由とはなら
  ない。

 4 国税犯則取締法上、収税官吏が犯則嫌疑者に対し質問する際に
  拒否権の告知は義務付けられていないが、供述拒否権を保障する
  憲法の規定はその告知を義務付けるものではないから、国税犯則
  取締法上の質問手続は憲法に違反しない。

 5 教育委員会の秘密会で為された免職処分議決について、免職処分
  の審議を秘密会で行う旨の議決に公開原則違反の瑕疵があるとして
  も、当該瑕疵は実質的に軽微なものであるから、免職処分の議決を
  取り消すべき事由には当たらない。

   (注)* 公害健康被害の補償に関する法律

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 ■  解説 
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  ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行

 
 ● 本問行政手続3題の解答指針と今後の課題

  
  ▲ 問題11

   行政手続法に関する基本的事項の理解と重要条文の把握によ
  って正解に達するので、今後もその観点に従って、準備すれば、
  本試験において、その効果を発揮すると思われる。

  ▼ 問題12

   普段はふれたことのない意見公募手続に関する細かい条文が
  出題されているので、今後とも、とくに本試験直前には、行政
  手続法の規定を隈なく読み込んでおくことが望まれる。

  
    △ 問題13

       本問では、主要判例の出題は一つだけであって、その他に
      ついては、一般の教科書では、十分に論じられているとは言
      い難い。行政手続に関して現存する厖大な量の判例について、
      本試験前に触れると同時に本試験当日その判決の要旨を記憶
      に留めることは大体において、無理である。この種の問題に
      ついては、法常識に照らし、未見の判例についての各肢の記
      述を比較衡量することにより、妥当であると思われる肢を選
      択するという、腹を据えた割り切りが必要だ。


  ● 各問の検討

  
  ▲ 問題11

  (1) 本問のポイント
         
        本講座でも度々ふれた次の重要条文に基づく基本的事項が
   把握されていれば、即座に1が妥当であること分かり、正解
   が得られる。

    行手法3条3項の適用除外の規定によれば、本問における
    地方公共団体の機関がする「廃棄物処理法に基づく産業廃
    棄物処理業の許可」は、その根拠となる規定が条例又は規
       則に置かれているものではなく、法律が根拠になっている
       ので、行手法の適用除外にならない。したがって、この処
       理業許可の申請の知事による処理については、行政手続法
       が適用される。 

    (2) 各肢の検討

    ○ 肢1について

    (1)本問のポイントの記述で足りるが、これに付加する
    と、本問には、「ただし、廃棄物処理法には、行政手続に
    関する特別の定めはない。 」とあるが、ここに、特別の定
       めがあれば、行手法1条2項により、廃棄物処理法が行手
    法に対して、一般法・特別法の関係に立つので、廃棄物処
    理法が優先適用になることに注意(※参考事項・サイト25
    回でも説明あり)。

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    ※  参考事項

     ・メルマガ147回
     ・サイトオリジナル問題解答《50回》参照。
                       ↓ ↓
    http://archive.mag2.com/0000279296/20130611180000000.html

    http://examination-support.livedoor.biz/archives/2063249.html

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       ○ 肢2について

     行手法5条1項によれば、審査基準は、行政庁が定める
    ことになているが、文理解釈をすれば、ここでいう行政庁
    は、処分庁であるべきである。したがって、本肢では、審
    査基準を認定するのは、当該都道府県の知事であって、主
    務大臣ではない。本肢は妥当でない。

     ※  参考事項

     本肢と類似の過去問としては、以下の平成19年問題1
    2肢オがある。

     国の法律に基づいて地方公共団体の行政庁がする処分に
        ついては、その法律を所管する主務大臣が審査基準を設定
        することとなる。

          勿論、本肢は妥当でない。

   
   ○ 肢3について

    審査基準は、行政立法からする区別に従えば、「法規命令」
   ではなく、「行政規則」に属するので、審査基準に違反して
   も違法とはならない。本肢は妥当でない。

    ※ 参考事項

   (1)「法規命令」と「行政規則」の区別
      
            「従来、行政法学では、ある行政立法が私人の権利・
       義務に対してどのような法的効果を持つかという
       見地から、『法規命令』と『行政規則』(行政命令)
       という2種類のものを、理論的に区別してきました。
       このばあい、『法規命令』というのは、私人の権利・
       義務に直接に変動をもたらす効果を持った行政立法
       のことで、これに対して『行政規則』というのは、
       それ以外の行政立法のことであるとされています。」
       (入門139頁以下)
    
   (2) 過去問との対照

     (a)平成19年度問題12
        肢ア

       審査基準の設定は、行政手続法の委任に基づくもの
          であり、申請者の権利にかかわるものであるから、審
          査基準も法規命令の一種である。

           勿論、本肢は妥当でない。

     (b)平成19年度問題12
        肢ウ

      審査基準に違反して申請を拒否する処分をしても、そ
     の理由だけで処分が違法となることはないが、他の申請
     者と異なる取扱いをすることとなるため、比例原則違反
     として、違法となることがある。

      前段は妥当であるが、後段は、「平等原則」違反とし
     て違法であるとするべきである。


    ○ 肢4について

          行手法が相手方に対して、意見陳述手続をを付与している
    のは、不利益処分であって、申請に対する処分については、
    それを拒否する処分であっても、不利益処分ではないので、
    申請の相手方に、弁明の機会は付与されない。本肢は妥当
    でない。
     
     ※ 参考事項
    
     不利益処分は、特定不利益処分とその他の不利益処分に
    分かれ、前者では、聴聞が行われ、後者では、弁明の機会
    の付与が行われる(行手法13条1項1号が特定不利益処
    分であり、同条1項2号がその他の不利益処分に該当する。
    なお、2条4号ロ参照)。
     したがって、一度なされた処理業の許可を知事が取り消
    す場合には、相手方に対して聴聞を実施しなければならな
    いとしている本肢の記述は、13条1項1号イの特定不利
    益処分の規定に照らし、妥当である。

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    肢2・3・4全体に関連するものとして、
   ・メルマガ151回
   ・サイト・オリジナル問題解答《53回》参照。  
              ↓ ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/20130708200000000.html
   http://examination-support.livedoor.biz/archives/2071096.html

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  ○ 肢5について

     本肢は、行手法7条が適用されるが、同条によると、補正
    を求めずに直ちに申請を拒否する処分をすることも許される
    ので、本肢は妥当でない。

     ※ 参考事項
    
      行政不服審査法第21条との対比。

      この場合には、審査庁は、補正可能の場合は、補正を
     命じることが義務に なっていることに注意。

  
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     以上によれば、本問の正解は、1である。

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  ▼ 問題12


   本問と同種の問題については、たとえば、試験の直前ないし前日
  に丁寧に条文を読み込んでおくことに尽きるであろう。

   以下では、各肢について、条文を列記して、要点を示す
   
   ○ 肢1

    2条8号ニにより、意見公募手続の対象となる命令等には、行
   政指導の指針は含まれる(39条1項参照)。 妥当でない。
         
   
   ○ 肢2

    40条1項により妥当。

   
   ○ 肢3

    43条1項には、「提出された意見のうち、同一の意見が法定さ
   れた数を超えたものについて、その意見を考慮した結果を公示しな
   ければならない」という規定は存在しない。妥当でない。


   ○ 肢4

    43条4項により、命令等を制定しないことは許される。妥当で
   ない。

   
   ○ 肢5

    このような規定は、行手法に存在しない。43条1項2号によれ
      ば、提出意見がなかった場合でも、その旨公示して命令等を制定
      きるのであるから、本肢は妥当でない。

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      以上により、正解は肢2である。

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  ※ 過去問との対比 


   類似問題として、以下の過去問平成18年問題13がある。

     
   行政手続法に定める意見公募手続に関する次の記述のうち、誤って
    いるものはどれか。

    1 命令等を定めようとする場合において、やむを得ない理由がある
      ときは、その理由を公示した上で、30日を下回る意見提出期間を
      定めることができる。

  2 他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に
      同一の命令等を定めようとする場合に、意見公募手続を省略するこ
      とができる。

  3 意見公募手続を実施したが、当該命令等に対して提出された意見
      (提出意見)が全く存在しなかった場合に、結果を公示するのみで再
       度の意見公募手続を実施することなく命令等を公布することがで
       きる。

  4 意見公募手続を実施したにもかかわらず命令等を定めないことに
      した場合に、結果等を公示せずに手続を終了させることができる。

  5 委員会等の議を経て命令を定めようとする場合に、当該委員会等
       が意見公募手続に準じた手続を実施していることのみを理由として、
       自ら意見公募手続を実施せずに命令等を公布することができる。


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   本問についても、各肢について、条文と対照しながら検討しておく
    ことを勧める。  誤っているのは、4であって、4が正解である。

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 △ 問題13

    本問については、肢1は、最判平4・7・1民集46巻5号437頁
 成田新法事件判決であって、このとおりである。
  しかし、その他の判決については、なかなか決め手がない。

  ただし、肢2については、水俣病患者認定申請において、処分庁に本
 肢のような条理上の作為義務違反を認めた画期的判決であるようである
 (最判平3・4・26民集45−4−653)。 
  もし、頭の隅にそのような認識があれば、ないしはそのような推定が
 働けば、本肢は妥当でないと判断されるので、本問を正解とすることが
 できることになる。なお、当該判決は、国家賠償法に基づく損害賠償事
 件であって、行訴法に基づく不作為の違法確認の訴え(3条5号)でな
 いことに留意する必要がある。

  肢3〜5はこのとおり判示する判決があるので正しい。
  
  肢3は、最判昭50・5・29民集29巻5号662頁(群馬中央バス
 事件上告審判決)関連条文は行手法10条。

  肢4は、最判昭59・3・27刑集38巻5号2037頁。関連条文は
 憲法38条1項。

  
    肢5は、最判49・12・10判決

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   本問の正解は、2である。

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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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