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           ★ オリジナル問題解答 《第39回 》 ★

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                 PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法

    
  【目次】  解説

                 
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第126号掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第126回はこちら 
                ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm

 
 
  ★ 参考書籍 
  
     行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行


   ● 総説

  公定力と収用裁決の関係(図示も含めて、前掲入門114頁以下
 参照)

  
     
      
          裁判所 C 
   
 
(2)Aを被告とした
    返還請求
   (民事訴訟)
    
     ↑              ↓ 判決(2)


           甲土地


          所有権移転
    X --------------------------→A
 (旧所有者)           (現所有者)


    ↓      行政行為    ↓ 取消判決(1)
  
           ↑
(1)Y県を被告
   とした取消
   訴訟       Y県
  (抗告訴訟) (地方公共団体)
    
           ↑
 
         裁判所 B

 

  公定力とは、

   特定の機関が特定の手続によって取り消すばあいを除き、いっ
  さいの者は、一度なされた行政行為に拘束されるという効力

   上図で言えば、C裁判所は、(2)のAを被告とした返還請求
 (民事訴訟)において、収用裁決の違法を理由に所有権移転の無効
  を主張し、甲土地の返還請求を行うXに対して、公定力が働くた
  め、一度なされた行政行為(収用裁決)に拘束されるから、甲土
  地の返還請求には応じられないということになる。ただし、「特
  定の機関が特定の手続によって取り消すばあいを除く」から、
  (1)のY県を被告とした取消訴訟(抗告訴訟)で収用裁決の取消
  判決(1)をもってきたら、返還請求を認める判決(2)をだして
  やろう、ということになる。
   以上は、最高裁が一貫して、採用する見解である(最判昭30
  年12月26日民集9−14−2070・最判昭31年7月18
   日民集10−7−890など)。
  
   ※ 参考事項(これもまた本試験対策として、重要論点である)

   「公定力」がはたらく範囲を必要以上に大きくさせないように
   しようという理論的な試み《学説・判例》

   (1「無効の行政行為}には、公定力は及ばない。

       (2)刑事訴訟の先決問題として行政行為の適法性・違法性
     が問題になる場合については、一般に行政行為の公定力
     はおよばない(藤本 註釈 刑法95条の職務行為≪行
     政行為≫の適法性が問題になる場合、当該刑事裁判所が、
     刑事裁判の先決として、その適法性を判断できる」
   (3)一般に判例・学説上、行政行為の違法を理由として国
      家賠償請求をおこなうばあいには、あらかじめこの行政
      行為の取消しがなされていなければならないということ
      はない・・(最判昭36年4月21日民集15−4−8
     50)。

         (以上は、基本的には、前掲書 入門から転載)


   ● 本問の検討

    本問は、最高裁判所判決1997(平成9)年10月28日
   訟月44−9−1578が基礎になっている。

    本問は、明渡しの代執行が完了したことによって、訴えの利
   益が消滅したという行訴法9条1項に焦点が当てられているこ
   とは容易に把握できるであろう。

    本問は、もう一歩進んで、訴えの利益が消滅する理由として、
   取消訴訟の目的を違法に課された義務の除去に限るかという論
   点が潜んでいるのである。どういうことかいえば、明渡しの代
   執行が完了していなければ、収用裁決によって、XからAに権
   利移転が生じるとされていても、当該裁決が違法であることに
   起因する、違法に課された明渡し義務の除去のために、収用裁
   決の取消訴訟を提起することになるのである。つまり、取消訴
   訟の目的を違法に課された義務の除去に限るとすれば、本問の
   事例のように、代執行の完了によって、XがAに対し、甲の現
   実的支配を移転する義務がなくなった場合には、違法に課され
   た義務の除去をするという取消訴訟の目的が喪失することによ
   り、訴えの利益が消滅することになるのである。

    したがって、解答例としては、以下のようになる。


    XがAに対し、

  甲の現実的支配を移転する義務がなくなったため、訴えの利益が
 消滅したので、却下判決をする。(44字)

 

  
  ※ 註 

   (1)「現実的支配を移転する義務がなくなった」ことが思い
      浮かばず(この判決を知らないときは、それが普通)辻
      褄合わせをし、例えば、「甲の返還を求めるため、取消
      訴訟を提起した場合、訴えの利益が消滅するので、却下
      判決をする。」(44字)とした場合には、点数は半減さ
      れるかもしれない。

   (2) 最高裁の見解どおり、この訴訟提起が却下されると、こ
          のあと、Aを被告とした返還請求(民事訴訟)が許されなく
     なって、Xは、甲土地を取り戻す余地はなくなる。
      結局、この収用裁決が違法である場合には、Xは、Y県を  
     被告として、損害賠償を請求することになるであろう(国家
     賠償法1条参照)。この場合には、前述したとおり(総説・
     参考事項 (3))この訴訟において、当該収用裁決の違法
     を争うことができる。

   (3)前掲書 読本は、、取消訴訟の目的を違法に課された義務
     の除去に限るとする当該最高裁判決に疑問を呈している。


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   私は、既述したとおり、本試験対策として、考えられるかぎり、
  重要論点を摘出して、できるだけ、平易に説明したつもりであるが、その
  基本的姿勢は、【平成24年版】藤本式行政書士試験直前予想問題集
  の解説でも貫徹されています。

   私としては、ひとりでも多くの方が、本書を活用され本年度の
  行政書士試験合格の栄冠に輝かれるるよう祈念しています。
 


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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      ★ 過去問の詳細な解説  第92回 ★

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                                  PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 民法
   
     ー過去問に関して、登記にまつわる諸問題・その3(終)−
     
     平成10年度以降の登記のからむ肢を順次とりあげ、解説を行い
   ます。本試験準備の有力な武器になることを祈念します。
    
    試験日直前になりましたので、今回は過去問の抜粋をして、締め
   とさせていただきます。
    
 
  【目次】   問題・解説


    【直前予想問題】

   現在販売中の行政書士試験直前予想問題【平成22年度版】につきまし
  ては、多数の読者に恵まれ、深謝しております。

 

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   この問題・解説集は、本試験直前対策として、現時点における最適・最
  良を目差して、わたしが作成したものであり、残部に限りはありませんの
  で、まだ購入されていない方はぜひお買い上げいただき、この期間中、本
  誌を伴侶としていただき、本試験合格の栄誉に輝かれることを祈念いたし
  ます。 

           
   
 
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■  問題集(過去問の出典は省略)・○×を付すること

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 1 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Aが重ねて
  甲土地を背信的悪意者Cに売却し、さらにCが甲土地を悪意者Dに売
  却した場合に、第一買主Bは、背信的悪意者Cからの転得者であるD
  に対して登記をしていなくても所有権の取得を対抗できる。(  )

 2 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却したが、同売買契約
  が解除され、その後に、甲土地がBからCに売却された場合に、Aは、
  Cに対して、Cの善意悪意を問わず、登記をしなくしては所有権の復
   帰を対抗することはできない。(    )

 3 Aの所有する甲土地につきAがBに対して遺贈する旨の遺言を死亡
  した後、Aの唯一の相続人Cの債権者DがCに代位してC名義の所有
  権取得登記を行い、甲土地を差し押さえた場合に、Bは、Dに対して
  登記をしていなくても遺贈による所有権の取得を対抗できる。(   )

 4 遺産分割前に共同相続人の一人Dから相続財産に属する不動産につ
  いて共有持分を譲り受けた第三者Hは、登記がなくても他の共同相続
  人B・C・Eに共有持分の取得を対抗することができる。(   )
 


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■  解説集(判例に関しては、三省堂発行の平成22年度 模範六法
       から引用≪模 、、条1、2、3・・・で表す≫)

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 1 不動産二重売買における背信的悪意者からの転得者は、その者自身
  が第一買主との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該
  不動産の所有権取得をもって第一買主に対抗することができる(最判
  平8・10・29 摸 177条 33)。×

    末尾 オリジナル問題 1 参照

 2  解除をした売主と解除後の第三者である買主から当該不動産を取
  得した者は、対抗関係に立ち、第三者の善意悪意にかかわらず、登
  記の先後により優劣を決する(最判昭35・11・29 摸
  177条  4) ○ 
  

   末尾 オリジナル問題 2 参照

 3  甲から乙への不動産の遺贈による所有権移転登記未了の間に、甲
  の共同相続人の一人の債権者が当該不動産の相続分の差押えの申立
  をし、その旨の登記がされた場合、当該債権者は、本条(177条)
  の第三者にあたる(受遺者は登記なしに遺贈を当該債権者に対抗で
  きない)。(最判昭39・3・6 摸 177条 25)×

   なお、本肢は、判例とは異なり、単独相続の事例であるが、結論
  は同一であることに注意せよ。

 4 不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受 
  人以外の他の共有者は本条(177条)にいう第三者に該当する。
  ( 最判昭46・6・18 摸 177条 26)

   したがって、共有持分を譲受けた者は、登記なくして、共有相続人
  に対抗できない。  ×

 

 ◆ 末尾

  
 《問題1》

  最高裁判所は、「不動産二重売買における背信的悪意者からの
 転得者は、その者自身 が第一買主との関係で背信的悪意者と評
 価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって第一
 買主に対抗することができる。」という見解に立っている。
 
  上記の最高裁判所の見解は、いかなる考えを前提としたものと
 いえるか。 40字程度で記述しなさい。
 
  なお、具体的事例としては、Aの所有する土地につきAがBに
 対して売却した後、Aが重ねてその土地を背信的悪意者Cに売
 却し、さらにCがその土地を背信的悪意者でないDに売却し、
 Dが登記を得た場合を想定し、記述にあたっては、ABCDを
 使用すること。

 
 
 《問題2》


  売買契約の解除と登記に関する次の記述のうち、判例の趣旨
  に照らして、妥当でないものはどれか。


 1 AからBに不動産の売却が行われたが、Bに代金不払いが生じ
   たため、AはBに対し相当に期間を定めて履行を催告したうえで、
   その売買契約を解除した。解除後にBからその不動産を買い受け
   たCに対し、Aは、登記 なくしては所有権の復帰を対抗できない。

  2  AからBに不動産の売却が行われたが、その後A・Bの売買契
    約が合意解除された。解除後にBからその不動産を買い受けたC
    に対し、Aは、登記なくしては所有権の復帰を対抗できない。

  3 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売
    したところ、A・Bの売買契約がA・Bにより合意解除された場
    合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。

  4 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売
    したところ、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の
    期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場
    合に、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。

  5 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売し
    たところ、A・Bの売買契約が解除され、BからAに所有権移転登
    記が復帰した場合には、Cが善意であっても保護されない。


 
 《解説》

  
 ◎ 問題 1


  ■ ポイントは、背信的悪意者Cの所有権取得が無効であれば、
     Dも所有権を取得しないため、Dに登記があっても、Bに所
     有権の取得を対抗できないということ(逆に言うなら、Bは、
     登記なくしても、無権利者Dには所有権を対抗できる=無効
     はだれでも主張可。登記なくしても可)。
 
      しかし、最高裁判所は、DはBに対抗できるとしているのだ
    から、その考えの前提として、AからCに有効に所有権が移転
    し、CからDへの所有権移転も有効であるということが是認さ
    れなくてはならない。

   ■ そこで、最高裁判所の考えの前提について、その解答例を
      示すと以下のようになる。


      Cが背信的悪意者であっても、AからCに所有権が移転して
    いるため、Dも所有権を有している。 44字

 


 ◎ 問題 2

 

  法定解除=合意解除

 
       解除前の転売      ・   解除後の転売

    A−−−C        A−−−−C
           ↓
          保護されるには
      登記要         対抗関係
        
    ●結局、先に登記           ●先に登記した
    した方が優先           方が優先

 

 1について。

   法定解除であり、解除後の転売であるから、AとCは対抗関係。
 Aは、登記なくして対抗できない。

 妥当。

 2について。

   合意解除であり、解除後の転売であるから、AとCは対抗関係。
 Aは、登記なくして対抗できない。

 妥当。

 3について。

   合意解除であり、解除前の転売であるから、Cが保護されるには
 Cに登記必要。
 
 妥当でない。正解。

 4について。

   法定解除であり、解除前の転売であるから、Cが保護されるには
 Cに登記必要。

 妥当。

 5について。

   法定解除か合意解除か不明。どちらでも同じであるから、詮索する
 要なし。解除前の転売であるから、Cに登記必要。Aがさきに登記
 したのだから、Aが優先。

 妥当。

   なお、以前に、詐欺による取り消し前の善意の第三者(96条3項)は、
 登記を要しないという判例があるといいましたね。この5との対比で
 いいますと、AがBの詐欺を理由に取り消し、登記もAに復帰して
 いても、取り消し前の善意の第三者が優先するということなんですね。
 解除前の第三者と同様、保護されるには、登記が必要とした方がよい
 のではないかとも思いますが、皆さんはどう考えられますか。


  以上 3 が正解

 

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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         ★ 過去問の詳細な解説  第88回  ★

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                            PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 会社法=株式会社の取締役
  
     

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     この度、行政書士試験直前予想問題【平成22年度版】が発行され、
   現在、販売中ですので、みなさま、よろしくお願いします。


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  この問題集は、長年の本試験研究の成果を踏まえ、私が渾身の力をふ
  りしぼって作成したものであり、その作成意図を列記いたしますと、下
  記のとおりであります。
  
 1、本試験と同じ形式を採用し、実際にも、来る本試験との重なりを期
    待しました。

 2、特に、【解説欄】に勢力を注ぎ、関連する事項に極力言及し、応用
    力が養成されるようにこころがけました。

 3、88回にもわたる当該「サイト」欄と連動させることにより、体系
    的理解を助けることを目的にしました。

  
  本試験直前のこの時期に、以上の特徴を有するこの問題集を活用され
  ることにより、みなさまの一人でも多くの方々が、合格の栄冠に輝かれ
  ることを期待してやみません。

 

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■ 平成15年度 問題34(一部改変)

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   株式会社の取締役に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつ
 あるか。


 1 定款をもってしても取締役の資格を株主に限定することはできない。

 2 株主総会は、正当の事由がなければ、任期満了前に取締役を解任す
  ることはできない。

  3 取締役の解任によって欠員が生じた場合、必要があるときは、利害
    関係人の請求により、裁判所は一時取締役の職務を行うべき者を選任
  することができる。

 4 取締役が取締役会の承認を得ないで自己のために会社の営業の部類
  に属する取引を行った場合、取引の時から1年を経過するまでは、取
  取締役会は、その取引を会社のためにしたものとみなすことができる。

 5 取締役が、取締役会の承認を受けて会社を代表して他の取締役に金
  銭を貸し付けた場合であっても、その取締役はまだ弁済のない額につ
  いて弁済する責任を負う。

  
  1 一つ

 2 二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ 


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 ■ 解説
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 ☆ 参考書籍

   会社法  神田 秀樹  ・ 弘文堂

 ☆ 問題文一部改変について

   本問題出題当時においては、旧商法が適用されていたが、これに
    会社法を適用すると、複数の誤りが生じるため、「誤っているもの
  はどれか」とする問題文について、該当部分を改変した。

   なお、各肢の記述は原文のままである。


 ◆ 各肢の検討

  ○ 1について。

   
   取締役など役員は株主総会の決議によって選任される(会社法329
  1項)。


   旧商法適用時においては、定款で、取締役を株主に限定することは、
    許されなかった(旧商法254条2項)。


   会社法のもとでも、定款で、取締役の資格を株主に限定することは許さ
  れないが、公開会社以外の会社は別である(331条2項)。

      以上のとおり、公開会社以外の会社は限定が許されるので、誤りで
    ある。

   なお、公開会社においても、株主を取締役に選任することはもちろん
    認められ、実際にもそのような場合が多いことに注意。
  (前掲書 170頁)

 
  ○ 2について。

   株主総会は、その決議で、いつでも、理由をとわず、取締役など役員
  《329条1項( )内》を解任することができる(339条1項)。

  正当な理由なく解任した場合は、会社は損害賠償しなければならない。
   (339条2項)。

   以上により、株主総会は、正当な理由がなくても、任期満了前に取締
   役を解任できるので、本肢は誤りである。


  ○  3について。

   終任により法定のまたは定款所定の役員の員数が欠ける結果になった
    場合には、後任の役員を選任しなければならないが(976条22号参
  照)、任期満了または辞任により退任した役員は、後任者が就任するま
  で引き続き役員としての権利義務を有する(346条1項)。

   しかし、それが不適当な場合とその他の事由(解任等)による場合は、
    裁判所に請求して一時役員としての職務を行う者(「仮」取締役等と呼
  ぶが、権限は普通の取締役等と同じ)を選任してもらうことができる
  (346条2項・3項)。
  《前掲書》
   
   以上からすれば、取締役の解任の場合、仮取締役を選任することがで
    きるので、正しい。

  ○ 4について。

  本肢は、旧商法における、取締役の競業避止規制違反があった場合の
 介入権の規定である(旧商法264条3項).

  会社法では、当該介入権の規定は廃止されている。

  会社法のもとでは、次のようになっている。

  取締役会設置会社では、競業取引について、取締役会の承認を得なかっ
  た場合(356条1項1号・365条1項)、その取締役は会社に対して
  損害賠償を負い(423条1項・2項)、また取締役解任の正当事由にな
  りうる(339条)。

  以上に対して、取締役会設置会社以外では株主総会で承認する(356
 条1項1号)。
 
  《前掲書参照》

  以上からすれば、本肢は誤りとなる。


 ○ 5について。

  本肢については、サイト48回を参照されたい。

 ★サイト48回はこちら↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/919396.html

  会社から金銭の貸付を受けた取締役の行為は、、356条1項2号の
 利益相反行為に該当する。取締役会設置会社にあっては、取締役会の承
 認を要する(365条)が、当該承認を得た金銭の貸付けであっても、
  会社に損害を生じた場合は、その取締役・代表取締役は会社に対して
  損害賠償責任を負う(423条1項・3項)。
   
  金銭の貸付を受けたことによって、直接取引をした取締役が無過失
  責任を負うのは当然としても(356条第1項2号・423条3項1号・
 428条)、本肢における代表取締役も過失責任を負う(423条3項
 2号・3号)。

  以上により、会社を代表した取締役も、まだ弁済のない額についての
  弁済をする責任を負うので、本肢は正しい。

  注・細かくなるが、旧商法では、直接取引をした取締役以外の取締役
       の責任も無過失責任であったが、会社法では、過失責任化された。
     したがって、本肢において、出題当時、当該取締役の弁済責任
      は無過失責任であったが、現在では過失責任となっていることに
      注意せよ!!
  
---------------------------------------------------------------- 

  以上誤っているのは、1・2・4であるから、正解は3である。 
  
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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         ★ 過去問の詳細な解説  第86回  ★

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  【テーマ】 会社法

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。

  《以上の予告につきまして、やむなく10月にずれ込みましたが、
 もう間もなく、発行いたしますので、よろしくお願いいたします。》

 

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 ■ 平成18年度・問題39
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   会社の合併に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せは
 どれか。


  ア 会社が合併するには、各当事会社の株主総会の特別決議による承認
    を要するが、存続会社に比べて消滅会社の規模が著しく小さい場合に
    は、各当事会社は株主総会を省略することができる。

  イ 合併の各当事会社は、会社債権者に対して、合併承認に異議があれ
  ば一定の期間内に述べるように官報に公告し、かつ電子公告した場合
  であっても、知れたる債権者には個別催告する必要がある。

  ウ 合併決議前に反対の意思表示をし、かつ合併決議に反対した株主は、
  合併承認決議が成立した場合には、株式買取請求権を行使することが
    できる。

  エ 会社の合併が違法である場合に、各当事会社の株主、取締役等、また
    は合併を承認しなかった債権者は、その無効を合併無効の訴えによって
  のみ主張することができ、合併無効の判決が確定した場合には、将来に
    向かってのみその合併は無効となる。

  オ 会社の合併により、消滅会社の全財産が包括的に存続会社に移転する
    ため、財産の一部を除外することは許されないが、消滅会社の債務につ
    いては、消滅会社の債権者の承諾が得られれば、存続会社は消滅会社の
    債務を引き継がないとすることも可能である。

 
  1 ア・エ

   2 ア・オ

  3  イ・ウ

  4  イ・エ

  5  ウ・エ
   

 
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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

     会社法  神田 秀樹 著   株式会社 弘文堂

 
 ◆  各肢の検討

 
  ○ 肢アについて

    会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に
     合体することである(会社法748条参照)

    その2つの場合

    ★  吸収合併(2条27号)
   
     当事会社の一つが存続して他の消滅する会社を吸収する場合

    ★ 新設合併(2条28号)

        当事会社のすべてが消滅して新しい会社を設立する場合

   
   本肢では、存続会社と消滅会社が対比されているのであるから、
    吸収合併が問題にされていいる。

     この場合、消滅会社・存続会社いずれにおいても、合併契約で
   定めた効力発生日の前日までに、各当事会社において、株主総会
   の特別決議を得ることを要する(消滅会社は783条・存続会社
   は795条・特別決議は309条2項12号)。

   しかし、略式合併・簡易合併の場合には、当事会社の一方におい
  て、総会決議は不要であるが、

     本肢に記載してある「存続会社に比 べて消滅会社の規模が著しく
   小さい場合には」、各当事会社において、総会決議不要とする規定
   は、会社法上存在しない。

   したがって、本肢は正しくない。


--------------------------------------------------------------
 
      吸収合併については、存続会社ないしは消滅会社の株主総会が
  ・・
  省略されることがあることが知るに止め、以下の細かい仕組みは、
  ・・
  省略してもよいのかもしれぬ。

   なお、新設合併においては、株主総会の決議省略はない(804
    条1項)。
 

 ◎ 参考事項

   略式合併とは?

    存続会社が特別支配会社である場合には、吸収合併の消滅
   会社において、株主総会決議不要(784条1項本文)


    消滅会社が特別支配会社である場合には、吸収合併の存続
      会社において、株主総会決議不要(796条1項本文)

     
     なお、いずれにおいても、その例外があって、総会決議を
        省略できない場合があるが、その場合には言及しない(784
    条1項ただし書・796条1項ただし書)。

      注 特別支配会社とは90%の親会社等を意味する(468条
    1項 参照)


      簡易合併とは?

    吸収合併の存続会社において総会決議不要
 
    すなわち、合併対価の額(簿価)が存続会社の純資産額の20
   パーセント以下の割合の場合において、存続会社の総会決議不要
   とされている(796条3項・これにも総会決議を省略できない
   例外がある796条3項ただし書)。

 -------------------------------------------------------------------

  
  ○ イについて
         

   合併の各当事会社は、会社債権者異議手続を行う(吸収合併の消滅
  会社は789条・存続会社は799条・新設合併の消滅会社は810
  条)。

   その手続において、各当事会社は、異議のある債権者は一定の期間
  内に述べるように官報に公告し、「知れている債権者」には格別に催
  告しなければならない(789条1項、2項・799条1項、2項・
  810条1項、2項)。

   ただし、官報に加えて日刊新聞による公告または電子公告をも行っ
  た場合には知れている債権者に対する個別催告は不要である(789
  条3項・799条3項・810条3項《平成16年改正≫)。

   本肢は、最後尾の記述に反するので、正しくない。
   
      しかし、私は、本肢に関しては、他の重要論点を外し、細かいこと
  を問うているという印象を有する。
  

   ○ ウについて

   反対株主には株式買取請求権が認められる。その要件は、本肢記載の
  とおりである(吸収合併の消滅会社785条2項1号イ、存続会社は
  797条2項1号イ、新設会社の消滅会社は806条2項1号)。

   本肢は正しい。


  ○ エについて

   「・・合併手続に瑕疵があれば、本来であれば無効であるが、その
    解決を一般原則にゆだねると法的安定性を害するので、会社法は、
       合併無効の訴えを用意し、合併無効の主張を制限する一方、無効
       の効果を画一的に確定し、その遡及効を否定する」(前掲書)。

     828条は無効事由を明記していないが、重大な手続違反が
        無効事由になると解されている(前掲書参照)。

     本肢は、単に「会社の合併が違法である場合」としていて、
        この点、疑問であるが、とくにこだわらないことにする。

         原告適格は、一定の者に限られるが(828条2項7号・8号)、
    各当事会社の株主等、本肢に掲げられた者はすべて含まれる。

    無効判決の効果として、第三者にも効力が及ぶ(対世効)と同時
      に遡及効が否定される(838条・839条)。 したがって、
   その効果としては、将来に向かってのみ生じる。

    以上の記述に照らすと、本肢は正しい。

  
  ○ オについて

    本問は、消滅会社の財産が存続会社に移転するとしているので、
      吸収合併の問題である。

    合併により存続会社は消滅会社の権利義務を包括的に承継する
       (750条1項)。したがって、消滅会社の権利義務はすべて一括
   して法律上当然に移転し、個々の権利義務について個別の移転行為
   は不要である。契約によりその一部について移転を留保することは
      できない(前掲書)。

    したがって、存続会社は消滅会社の債務を引き継がないとする
   ことはできないので、本肢は正しくない。


   ◎  参考事項

    新設合併においても、新設会社は消滅会社の権利義務を包括的に
      承継する(754条1項)ので、同様に、新設会社が消滅会社の債務
      を引き継がないとすることはできない。

      
    この債務引き継ぎについて、事業譲渡ではどうなるかを考察してみよ
   う。サイト81回の復習となる。

    事業譲渡の場合には、事業に属する個々の資産については個別に
   移転手続をする必要があり、債務を移転する場合、免責的債務引受
   けとするためには、一般原則に従って債権者の承諾が必要である。
    存続会社が、包括的に消滅会社の債務を承継するのとは、根本的
      に異なる。

    また、以上のような債務引受けがなされなかった場合でも、譲渡
      会社の商号を使用した場合、その譲受会社も債務を引き継ぐが、この
      場合であっても、当然に譲受会社の責任が消滅するのではない(22
      条1項・3項なお、23条1項・2項)。

   《以上のように、各事項に連動性を持たせ、体系的理解に努めよう
        とするのが、本講座の目的でもある≫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   
 
  以上によれば、ウとエが正しいので、正解は5である。

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 ◆ 付 言

  会社の合併には、吸収合併と新設合併があり、各肢において、いずれ
 の場合を問題にしているのか、ないしは、いずれかを問わず、共通の問
  題としているのかという観点も大切である。

  アとオは、吸収合併 ・ イとウとエは、共通。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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