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            ★ オリジナル問題解答 《第21回》 ★

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                           PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  行政法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第107号に掲載してある。

 ☆ メルマガ第107回はこちら
                      ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
   
  ★ 参考図書
 
     行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行 

 
  ※ 本問については、メルマガ第107号 ■ 過去問 解説欄も
  参照されたい。
   
    なお、今回も前回に引き続き、「・・・いくつあるか」方式の
  問題になっているが、最も正確な理解・知識をためすには最適で
  あると思われるこの方式を採用した。
  

 ▲ 各肢の検討 


  ○ 肢ア・イについて

   個別法の中に、損失補償に関する規定がない場合とある場合につ
  いて、考察すると、次のようになる。

   前者である、個別法の中に損失補償に関する規定がない場合には、
  肢アのとおり「憲法に直接基づいて損失補償を請求することが可能
  だと解されている」が、この損失補償の訴訟は実質的当事者訴訟
 (行政事件訴訟法4条後段)に該当する。

   個別法の中に、損失補償に関する規定がある後者の場合には、
    その代表例としての土地収用法が規定する損失補償に関する訴
    訟は、形式的当事者訴訟(行政事件訴訟法4条前段)に該当す
    る。

   その根拠については、メルマガ107号で詳しく説明した。

   以上の記述に従えば、肢アが「実質的当事者訴訟」に該当し、
    肢イが「形式的当事者訴訟」に該当するので、ア・イとも誤り
    である。

 
  ○ 肢ウについて

    免職処分は、行政処分であるから、行政処分については、取
     消訴訟でのみ争うことができるという取消訴訟の排他性の原則
     により、取消訴訟を提起する必要があるし仮の救済をを得るた
   めには、執行停止を求めなければならない(行政事件法44条
     のズバリ適用)。

    換言すれば、本案訴訟が取消訴訟であるときは、仮の救済は
      執行停止であり、公務員としての地位の保全を求める仮処分を
      申請できない。

    以上の記述に従えば、本肢では、処分の取消しの訴えを提起
      なくてはならず(行政事件訴訟法3条2項)、仮処分申請は許
      されず、執行停止を求めなくてはならないので、前段・後段と
      も誤りである。

 

     ○ 肢エについて
 
    免職処分が無効である場合は、取消訴訟の排他性が働かないた
      め、当事者訴訟を提起し、公務員としての身分を求めることがで
      きる(行政事件訴訟法4条後段の実質的当事者訴訟)。

    これに対し、無効確認訴訟(行政事件訴訟法3条第4号)によ
      り免職処分の無効の確認を裁判所に求める方法がある。

     前者である当事者訴訟においては、メルマガ107号で検討
       したように、行政事件訴訟法44条の解釈上、仮処分申請がで
       きるかどうか争いがある。しかし、執行停止制度を利用できる
       のは、後者の無効確認訴訟の場合である(行政事件訴訟法38
    条3項・25条)。

    したがって、本案が実質的当事者訴訟である場合に執行停止の
      申立てができるとする本肢は、誤りである。
         
   
   ○ 肢オについて

        行政事件訴訟法第41条第1項は、取消訴訟の拘束力について
      定めた同法33条1項を準用しているので、実質的当事者訴訟に
   おける原告勝訴の判決は、その事件について、関係行政機関をも
   拘束する。

        本肢は、以上の記述に反するので、誤りである。

        
 -----------------------------------------------------------------
    
   以上のとおり、本問は、各肢全部誤っているので、正解は5である。   

 -----------------------------------------------------------------


  ▲ 付 言

   本問については、答えが合ったかどうかということよりも、メル
    マガ107号解説も参照することにより、、当事者訴訟とその他の
  訴訟形態(仮処分・執行停止も含む)との複雑な関係について、こ
  の機において、充分に納得がゆくように把握されることが肝要だと
  思う。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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              ★ オリジナル問題解答 《第6回 》 ★

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                         PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  行政法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 行政法・オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第92号に掲載してある。

 ★ メルマガ第92回はこちら↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.html
 

 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣


   
  ◆ 論 点

  1 行政審判とは

      これは、公正取引委員会とか中央労働委員会といった、いわゆる
   「行政委員会」またはそれに似たような行政機関が、ふつう「準司
    法手続・・」とよばれる、特殊の手続によっておこなう審査手続の
    ことをいいます。

      行政審判というのは、行政機関がおこなう審理手続であるけれど
   も、じつは、裁判所が裁判をおこなうばあいと似たような、組織上
   または手続上の保障をして・・、審査の中立・公正さを守り、権利
   救済制度として十分に機能させようというものなのです。

  (前掲書 入門243頁)

   次に、平成17年問37の旧記述式問題の一部を抜粋する。
      みごとに、行政審判の定義が記述されている。

   独占禁止法による公正取引委員会の審判・裁決、特許法による
    特許庁の審判・裁決、土地収用法による収用委員会の審理・裁決、
    労働組合法による労働委員会の諮問・命令の手続など、独立性・
    中立性の高い行政委員会が、準司法的手続に従って、争訟の裁定
    などの特定の処分をする手続を総称して  A  と呼ぶ。
 
      もちろん、A=行政審判 である。
  
   本問に照らせば、アに「特許庁」、イには「労働委員会」の記述
    がある。   

  
  2 その分類(前掲 入門による・243頁以下)

  (1) これからある処分をおこなうための手続=行政の事前
      手続としておこなわれるもの=「処分先行型」

       これは、行政手続法に対応するものであり、「行政審判」
      は、行手法1条2項により、他の個別法によって定められ
            る。   

       

  (2) もうすでにおこなわれている行政処分をあとから審査す
            る不服申立手続=「後行型」

       これは、行審法1条2項の規定する「個別的な法律に
            よって定められた特別の不服申立制度」である。

  
  ◆ 各肢の検討

      
     ○ 肢アについて
 
        これは、特許の査定を受けた者とこれを無効とする者の私人間紛争
      の裁定に当たることは容易に察しがつく(特許法123条参照)。
 
        妥当である。
       
   ○ 肢イについて

     労働委員会が、使用者の労働者に対する行為が、不当労働行為に
      あたるかどうかを審査する(労働組合法27条・7条)のは、
      論点2・(1)に該当する。すなわち、論点2・(2)の不服申立
      手続型ではない。

     本肢は、妥当でない。

     ○ 肢ウについて

    当該審査手続は、論点2(1)に該当する。

    本肢は妥当である。

     ○ 肢エについて

   以下の、実質的証拠の法則の記述を参照されたい。 

-------------------------------------------------------------------  

    前記平成17年問題37における旧記述式問題の後半部分の抜粋。


    この手続(筆者注 行政審判)に基づく決定(裁決)に関しては、
  それについての訴訟の局面でも、「委員会の認定した事実は一定の場合
  に裁判所を拘束するという  B  の法則」や審級の省略など、通常
  の行政処分取消訴訟に対する特例が法定されていることがある。

  ≪解説≫  

   B=実質的証拠 である。

   たとえば、独占禁止法77条では、公正取引委員会の審判(行政審判)
  の結果なされた審判に対して、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟を提起
  し得るものとしているのは、通常の処分や裁決と異ならない。
   
   ただし、同法80条1項では、この訴訟については、「公正取引委員会
  の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所
 を拘束する」と定めている。

   その意味は、公正取引委員会の審判が準司法的な性格を有していること
  から、これをいわば、裁判審級の上での事実審(第一審)と見立てて、一
  部、裁判所に代わる役割を与えようということである。

 ( 前掲 入門 244頁参照)

  以上記述したところが、要するに、「実質的証拠法則」と呼ばれるもの
  である。

----------------------------------------------------------------------
  
  本肢の言うように、「 いかなる場合でも」裁判所を拘束するのではなく、
  これを立証する実質的な証拠があるときという限定が付される。

  したがって、本肢は妥当でない。

  
   ○ オについて

  そのとおり。

  たとえば、、公正取引委員会の審決に対する取消訴訟では、地方裁
  判所に起こすのでなくて、もっぱら東京高等裁判所が扱うものとさ
  れている。

  なお、肢エでみた実質的証拠法則を採用している他の行政審判に
 おいても、同様の例がある。

  実質的証拠法則は、審判を裁判審級の上での事実審(第一審)と
  見立ててるのであるから、このように審級の省略が認められのであ
 ろう。


 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 以上のとおり、妥当でないのは、イ・エであるから、3が正解である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

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           ★ オリジナル問題解答 《第4回 》 ★

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  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法・オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第90号に掲載してある。

 ★ メルマガ第90回はこちら↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.html

 
 ★ 参考書籍 
  
  民法一 内田 貴 著・東京大学出版会
   
   民法 1 ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房


 ▲  問題 1


  ◎ 総説

   共有の性質については、一個の所有権を数人が量的に分有する
  状態だという説と、各共有者が一つずつの所有権を有し、各所有
  権が目的物が一固であるために互いに制限しあっている状態だと
  いう説とがある。
   後の説は、いささか技巧的にすぎるようだが、民法の共有の性
  質に適するであろう。

   共有者が目的物の上にもつ権利すなわち共有持分権は目的物を
  全面的に支配するという点では両説の間に差異がない。

  (以上、前掲 勁草書房・参照条文は民法249条)) 


  ◎ 各肢の検討

   
   ○ アについて

    Aの使用方法は、共有物の管理に関する合意(民法252条
   参照)に基づくものではないから、他の共有者の持分権を侵害
   している。
    
    しかし、個々の共有者は、元来共有物全体を使用する権利を
   有するから、BCは、持分権を侵害されたからといって、Aに
   対して当然には共有物の引渡を求めることはできない(最判
   昭和41年5月19日・摸六 249条 3・請求者側の持分
   の割合が12の11であっても、明渡請求はできないとされた)
   《以上 前掲 内田著》
    

    本肢は、以上の判例に反するので、妥当でない。

    ★ 参考事項

    なお、以下の判例に注目!

     他の共有者は、単独で共有不動産を占有する共有者に対して、
    その持分割合に応じて、占有部分に係る地代相当額の不当利得
    金ないし損害賠償金を請求することができる(摸六 703条 
    23・最判平12・4・7・・)。
  
     占有している共有者から共有物の占有を承認された第三者は、
    その占有が承認した共有者の持分の基づくものと認められる限
    りは、他の共有者は、その第三者に対して当然には共有物の明
    渡しを請求することはできない(摸六 249条 12・
    最判昭和63・5・20・・)。
     つまり、本肢において、Aが第三者に対して使用を承認した
    場合、B・Cは当然にその第三者対し、共有物の明渡しを請求
    することはできないのである。

   ○ イについて

    当該登記の抹消を求めることは、妨害排除請求だから保存行為
   に当たり、共有者の一人は、単独で所有権移転登記の全部抹消を
   求めうる(摸六 249条 6・最判昭和31・5・
   10・・)

     本肢は、以上の判例に反するので、妥当でない。

    ★ 参考事項

     当該判例は、共有物の管理に関する民法252条ただし書きの
    保存行為を根拠としているが、共有持分権は目的物を全面的に支
    配することから妨害排除請求を導くこともできるであろう。

  
   ○ ウについて

    第三者に対して、A・B・Cの共有であるということの確認を求
   める共有物の所有権確認の訴えを提起するには、全員で行うことを
   要するので、本肢は妥当である。
  
     
   ○ エについて

    共同相続の場合、相続人の一人が単独所有権取得の登記をなし、
   これを第三者に譲渡し、所有権移転の登記をしても、他の相続人は
   自己の持分を登記なくして、これに対抗できる。
    この場合、Aが請求できるのは、本肢のような全部抹消ではなく、
   Aの持分に限っての一部抹消である(摸六 民法177条 9・
   249条 7 最判昭38・2・22・・)。

    本肢は、以上の判例に反するので、妥当でない。

   ○ オについて

    この場合は、イの妨害排除請求とは異なり、他人の持分に対して
   は何ら請求権を持たないから、本肢のとおりとする判例がある(摸
   六 249条 9 最判昭和41・3・3・・最判昭和51・9・7
   ・・)

    本肢は妥当である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    本問は、ウとオが妥当であるので、5が正解である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  

 
 ▲  問題 2


  ◎ 本問の解説は、便宜上、基礎の基礎に立ち返って、説明してある
  ので、不要と思われる箇所は、適当に読み飛ばしていただきたい。


  ○ アについて

   これは、民法177条が適用される典型的な例である。
  
      この条文解釈における要点を示す(勁草書房参照)。

    ★ 甲土地の所有権移転が「不動産の物権の得喪」に該当する
      ことには問題がない。

       ★ 次に、条文における「第三者」には、ア 登記なしでは
      対抗できない「第三者」と、イ 登記なしでも対抗できる
       「第三者」がある。

          これは、大審院判決(大連判明治41・12・15・・)に
        よって認められた理論であり、今日では通説になっている。

          その区別する基準として、さきの大審院判決は、「登記の欠缺
        ヲ主張スル正当ナ利益ヲ有スル」第三者という理論構成をした。

          本事例の「Bは登記なくしてCに対抗することができる」かどう
    かという設問に則してみてゆくと、Cにおいて、Bが登記を欠くこ
        とを主張し得る正当な利益を有する第三者に該当するかどうかとい
        うことが問題になる。。

         これに該当するときは、アの場合に 当たり、Bは 登記なくして
        Cに対抗できない。 逆に、Cがこれに該当しないときは、イの場
        合にあたり、Bは登記なくしてCに対抗することができる。
 
         この両者の関係について、[一言でいえば、同一不動産について、
       結局において互いに相容れない権利を有する者である」(前掲勁草
       書房)。

       設問では、A・B間とA・C間とどちらも有効な売買契約であり
     (どちらも債権であり、先に成立したものに優先的効力なし)、Bと
      Cは、 同一不動産に相容れない権利を有するものであって、Bは登
      記なくしてCに対抗できないことになる。

   ★  最後に、Cが悪意である点が問題になる。つまり、悪意の第三者で
        あるC対しては、Bは登記なくして、対抗できるのではないかという
        ことである。この点については、悪意の第三者に対しても、登記なく
        しては、対抗できないというのが通説である。

         その論拠としては、次のように、言われている。

        「・・登記がない限り、その不動産に関してに関して取引関係に
          たった第三者に対しては、原則としてその善意悪意を問題とせず
          に対抗できないとすることが、不動産取引の整一簡明を期する
          ゆえんである。」(前掲勁草書房)
      要するに、行為者の内心を問題にせず、登記の有無によって決
          着しようというのが、通説の立場だということになる。
 

      以上述べたところにより、Bは登記なくしてCに対抗することはで
     きない。結局、さきに登記をしたCが、Bに優先することになる。

       以上により、本肢は妥当でない。

   ○ イについて

     本事例は、前の設問と比べると、Cが悪意者だったのが、背信的悪意
    者になったのみで、その他の点には変わりない。

    ★ 前には、悪意の第三者に対しては登記なくして対抗できなかったが、
     背信的悪意者には、登記なくして対抗できるかというのが、ポイント
     になる。
      さきの大審院判決の基準に照らすと、 背信的悪意者とは「登記ノ
     欠缺ヲ主張スル正当ノ利益ヲ有スル」 第三者ではないということに
     なる。平たく言えば、単に「知っている」という度合を超えて、より
     背信の要素が強いため、この者に対しては、登記なくしても対抗でき
     るということになる。

    ★ この「背信的悪意者」という概念は、大審院の基準に当てはめ
     をした最高裁判所によって確立されたものである。判旨は、以下の
     とおりである。

      実体上物権変動があった事実を知る者において右物権変動に
     ついて
     登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が
     ある場合には、このような背信的悪意者は、登記の欠缺を主張する
          について正当な利益を有しない(最判昭和31・4・24・・・)
      
            要するに、繰り返しになるが、単なる悪意を超え、背信の度合
     が、 強度のものである。
      具体例としては、「ABの不動産の売買に立ち会ったCがBの
     未登記に乗じてAよりこの不動産を買い受け移転登記を得たよう
     な場合」が相当する(前掲勁草書房)。

      以上述べたところにより、本肢では、Bは登記なくしてCに所有
     権の取得を対抗できることになる。

     本肢は妥当である。

   ○ ウについて


    ★ まず、肢イの回答からして、Bは登記なくして、背信的悪意者C
     に対し、所有権の取得を対抗できる。

          ここで、その理屈を考えてみると、

        (a)もともと、AB間の売買契約も、AC間の売買契約も有効である。
    (b)ただ、C個人が背信的悪意者であるために、Bは登記なくしてC
      に対抗できるということである。

     そのポイントが押さえられていれば、Cから売却を受けたDの立場
    は明確である。もともと、AC間の売買は有効であるから、CDの売買
    も有効である。Cが背信的悪意者であるというのは、Cの個人的事情
    であって、Cを離れた以上、もう関係ない。ただし、今度は、D個人が、
    AB間の売買について、背信的悪意者であれば、BはDに対して、登記
    なくして、対抗できるが、本例のように、DがAB間の売買の存在を
    知っている(悪意)だけでは、Bは登記なくしてDに対抗できない。

    ★ 本事例には、判例がある(最判平成8・10・29・・・・)。

 
     本肢は、妥当でない。


  ○  エについて

      ★ 前例は、登記なくして対抗できる第三者として、背信的悪意者
    について、 勉強したが、これも同列に論じることができる。

     不法占有者は、登記しなければ、所有権を対抗することができない
    第三者に該当せず、177条の「第三者」ではない。

     したがって、Bは登記なくして、Cに対抗できる。そのため、
    Bは、登記がなくてもCに対し、土地の明渡しを請求し、損害賠償
    を請求することができる(709条)。

    これには判例がある(最判昭和25・12・19・・)。

    本肢は妥当である。

  ○ オについて

    Aの 取り消し後の転売の場合には、AとCは対抗関係に立ち、先に
   登記をした方が優先することになる。民法177条の適用である。判
   例もある(大判昭和17・9・30)


    本肢は妥当である。

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    妥当でないのは、アとウであるから、正解は1である。

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          ★ 過去問の詳細な解説  第80 回  ★

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  【テーマ】 会社法 

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月初頭には、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り入
   れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
  います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいもの
   を目差して、目下準備中です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■  平成21年度・問題38
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   株主名簿に関する次のア〜オの記述のうち、会社法の規定および判例
 に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

 
  ア すべての株式会社は、株主名簿を作成して、株主の氏名または名称
  ならびに当該株主の有する株式の種類および数などを記載または記録
    しなければならない。

  イ  基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主として記載また
    は記録されていない者について、会社は、その者を株主として扱い、
  権利の行使を容認することができる。

 ウ 株券発行会社においては、株式の譲受人は、株主の名簿書換えをし
    なければ、当該会社および第三者に対して株式の取得を対抗できない。

  エ 会社が株主による株主名簿の名義書換え請求を不当に拒絶した場合
    には、当該株主は、会社に対して、損害賠償を請求することができる
    が、株主であることを主張することはできない。

  オ 会社が株主に対してする通知または催告は、株主名簿に記載または
    記録された株主の住所または株主が別に通知した場所もしくは連絡先
    に宛てて発すれば足り、当該通知または催告は、それぞれ通常到達す
    べきだあった時に、到達したものとみなされる。
  

  1 ア・イ

  2  ア・オ

  3  イ・ウ

  4  ウ・エ

  5 エ・オ

 

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 ■ 解説
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  ◆ 参考文献

   会社法  神田 秀樹 著    弘文堂

 
 ◆  各肢の検討

   
   △ 肢アについて
     
      株式会社は、株主名簿を作成し、121条各号に記載する
   事項を記載し記録しなければならない。

   妥当である。

   
   ▽ 肢イについて

 -------------------------------------------------------- 
     基準日とは

   議決権行使等の権利を有する株主は、その時点における株主名簿上の
  株主である。しかし、株主が多数いる会社では誰がその時点における名
  簿上の株主か把握することが容易でないので、会社法は、一時点におけ
  る株主に権利行使を認めるために基準日を設けることを認めている
  (124条1項)。
 ---------------------------------------------------------- 
  
    ただし、判例によれば、株式が譲渡され名義書換がなされるまでの間、
  会社が自己のリスクで名義書換未了の譲受人を株主を株主として取り扱
  うことができる(最判昭和30・10・20・・)。

  したがって、基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主とし
  て記載または記録されていない者について、会社は、その者を株主とし
 て扱い、権利の行使を容認することができる。

  
  以上の記述からして、本肢は妥当である。

    
    ☆ なお、次の点に注意せよ!
      ・
    基準日後に新たに株主となった者についても、会社のほうの判断
   で、総会の議決などを認めることはさしつかえない(124条4項
   [ただし書きに注意])。《 前掲書94頁参照》


  ▲ 肢ウについて


----------------------------------------------------------
  株式の譲渡

  1 株券発行会社

  (1) 株券の引き渡しは、権利移転の要件であり、第三者に対する
         対抗要件である(128条1項本文・130条2項)。

     (2) 株主名簿の名簿書換えが会社に対する対抗要件である(130
         条1項・2項)。

  2 株券不発行会社

    権利移転の要件は、意思表示であるが、会社その他の第三者に対す
     る 対抗要件は、株主名簿の名簿書換えである(130条1項)。

       
    注 130条の条文の仕組み

     会社は原則として株券を発行しないものとし、株券の発行を
        定款で定めた場合に限って株券を発行することにしたため
   (214条1項)、130条1項は、株券不発行会社に適用さ
       れる。権利移転の要件が意思表示であるというのは、私法の一般
    原則に従う( 2 参照)。


     130条2項は、株券発行会社に適用される。
     会社に対する対抗要件が、株主名簿の書換えであることを規定
    したものであるが、その前提として、株券の引き渡しが(権利
        移転要件であると同時に)第三者対抗要件であることを読み取る
    必要がある
        ( 1 (1)(2) 参照)

     しかし、いずれにせよ、まどろっこしい規定の仕方である。
   -------------------------------------------------------
   
     
          以上の記述からすると、株券発行会社については、株式の譲受人
        は、株券の交付を受ければ株式の取得を第三者に対抗できるが、当
    該会社 に対しては、株主名簿の名簿書換えをしなければ、株式の
        譲受けを対抗できないことになる。

     したがって、株主名簿の名簿書換えを第三者対抗要件としている
    本肢は妥当でない。


    ▼ エについて

     判例によれば、会社が不当に名義書換えを拒絶した場合や過失により
  名義書換えを怠った場合のように、例外的に名義書換未了の者が会社に
    対して自己が株主であることを主張できる場合があることを認める(最
    判昭和41・7・28)。《前掲書95頁》

    したがって、株主であることを主張することができるので、本肢は
   妥当でない。

   
    ★ 次の点に注意せよ

   (1) 一般原則により、当該株主は、名義書換え請求を不当拒絶
           した会社に対して、損害賠償請求できるできるであろう。

   (2) 当該判決によれば、過失により名義書換えを怠った場合も
   含む。

   
   △ オについて

    会社の株主に対する通知または催告については、126条1項・
      2項において、本肢の通りの規定がある。

     本肢は妥当である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   本問については、妥当でないのは、ウ・エであるから、正解は4
  である。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー    
         
 ◆ 付 言 

    本問を概観すると、株主名簿に関し、条文と基本的な判例が把握されて
  いれば、正解に達する。   

  しかし、そのことは、後から条文を繰り、判例に当たって言い得るこ
  とであって、広範囲であり、しかも、会社法の準備に充てる時間の少な
  さを考慮すると、すべてに用意万端というのは困難であろう。

  会社法対策としては、時間の許すかぎり、丁寧に問題集をこなし、それ
  でも本番で知らない問題が出れば、普段に培った応用力でもって、失点を
  減らすことに心がけるべきであろう。

  会社法に関しては、以上ごとき、開き直りも肝要と、わたしは思料する。

 

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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               ★ 過去問の詳細な解説  第79回  ★

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                                  PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】   民法 

    【目次】     問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月初頭には、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り入
   れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
  います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいもの
   を目差して、目下準備中です。

 

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 ■ A・平成21年度 問題 27
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  代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当な
 ものはどれか。

 
  1 Aは留守中の財産の管理につき単に妻Bに任せるといって海外へ単
  身赴任したところ、BがAの現金をA名義の定期預金としたときは、
    代理権の範囲外の行為に当たり、その効果はAに帰属しない。

  2  未成年者Aが相続により建物を取得した後に、Aの法定代理人であ
    る母Bが、自分が金融業者Cから金銭を借りる際に、Aを代理して行
    ったCとの間の当該建物への抵当権設定設定契約は、自己契約に該当
    しないので、その効果はAに帰属する。

  3 A所有の建物を売却する代理権をAから与えられたBが、自らその
    買主となった場合に、そのままBが移転登記を済ませてしまったとき
    には、AB間の売買契約について、Aに効果が帰属する。

  4 建物を購入する代理権をAから与えられたBが、Cから建物を買っ
    た場合に、Bが未成年者であったときでも、Aは、Bの未成年者であ
    ることを理由にした売買契約の取消しをCに主張することはできない。

  5 Aの代理人Bが、Cを騙してC所有の建物を安い値で買った場合、
    AがBの欺罔行為につき善意無過失であったときには、B自身の欺罔
    行為なので、CはBの詐欺を理由にした売買契約の取消しをAに主張
    することはできない。


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 ■ B・ 平成11年度 問題 27
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  

   民法上の代理に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。


 1 任意代理人は、本人の許諾又はやむを得ない事由がなければ復代理
  人を選任することはできないが、法定代理人は、本人の許諾を必要と
   せず、その責任において復代理人を選任することができる。

 2 同一の法律行為について、相手方の代理人となり、又は当事者双方
   の代理人となることは、いかなる場合であっても許されない。

 3 代理権は、本人の死亡により消滅するが、代理人の死亡、若しくは
   破産手続開始の決定又は代理人が後見開始の審判を受けたこと、若し
   くは保佐開始の審判を受けたことによっても消滅する。

 4 無権代理人が契約をした場合において、相手方は、代理権のないこ
   とを知らなかったときに限り、相当の期間を定め、当該期間内に追認
   するかどうか確答することを本人に対して催告することができる。

 5 表見代理が成立する場合には、本人は、無権代理人の行為を無効で
   あると主張することができないだけでなく、無権代理人に対して損害
   賠償を請求することもできない。 

  

 
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 ■ 解説
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  ◆  参照書籍

     勁草書房 民法 1
 

  ◆    AとBの問題の対比

   奇しくも、本試験において、10年間をおいて、問題27という同一
  番号で、代理に関して問われている。

   両者を比較して歴然としているのは、前者が、具体的事例に民法の条
   文を適用させるのに対して、後者は主に、単なる条文知識を問うのが主
   力であるということである。

   したがって、正確な条文知識を前提に、実践的な問題の処理能力を鍛
 錬することが、将来の民法に関する対策である。

  以上から、従来型に加えて、新傾向の問題をしっかりと解くことが肝要
  であると結論づけられる。


  ◆ A・平成21年度 問題

 
  ★ 各肢の検討

  
   ○ 肢1について
        
                   
             Aの現金をA名義の定期預金にした
  
   本人A---------妻B

   条文 103条2号

    本条は、代理権が授与されたことは明らかだがその範囲が特に定
      められなかなかった場合についての基準を明らかにしている。本肢
      の場合、財産管理について「単に任せる」となっているので、本条
   に該当する。
    
    この場合、民法103条2号によると「物または権利の性質を変
   じない範囲でそれを利用して収益をはかる行為(利用行為)」は許
      される。

    本肢では、現金を定期預金としたというのであるから、当該利用
      行為に該当するので、代理権の範囲内の行為に当たり、その効果は
      Aに帰属する。

    本肢は、誤りである。

     ☆ 参考事項

      (1)同じ利用行為でも、銀行預金を個人の貸金にするの
        は、危険の度合が大きくなり、性質を変ずるものでこ
        こ含まれない。

      (2)その他権限内の行為として ア 財産の現状を維持
                 する行為(保存行為・103条1号) イ さきの
                 利用行為と同じ範囲で使用価値または交換価値を増
                 加する行為(改良行為)がある。
    
      (以上 前掲書 参照)


   ○  肢2について
         

     A(未成年者)

        ↓代理行為 建物に対する抵当権設定契約    
     
     B(法定代理人)-----------------------C(金融業者)


            条文 民法826条

        親権を行う母(B)とその子(A)との利益が相反する
             行為(Bの借金のために、Aの所有不動産に抵当権を設定
             する行為)については、家庭裁判所で選任された特別代理
             人が代理行為を行うことになっているから、BがAを代理
       するのは、(818条・824条参照)、無権代理になる。

        したがって、Aに効果が帰属しないので、本肢は妥当
              でない。

        なお、本件は、A・B間の法律行為について、BがAを
              代理するという自己契約ではないが、実質的にみて、利益
              が相反するのである。、「自己契約に該当しないので、そ
              の効果はAに帰属する」と言う文言に惑わされないように。

 


    ○ 肢3について
 
                  
        本人A------------代理人兼買主 B

  
    条文 108条

    本肢は、本条の禁止する自己契約に該当し、同条ただし書きに
      も相当しないので、Aに効果が帰属しない。

      同条の禁止する自己契約も双方代理も、「代理の理論からみて
    不可能なわけではない。しかし、このような行為を無条件で許す
   と本人の利益が不当に害されるおそれがある。そこで民法は原則
      としてこれを禁じた。」(前掲・勁草書房)

     本肢は妥当でない。

 

      ○ 肢4について


       未成年者  
  
       本人A--------代理人B----------相手方C

      条文 102条

     本条の意味するところは、未成年者の行った代理行為も相手方C
    との関係では完全に有効であって、民法5条2項に基づ いて、取り
     消しうるものではない、とうことである。

     その理由→「代理人はみずから行為するものであるが、その効果
    はすべて本人が受けるのであるから、代理行為が判断を誤って行わ
   れても代理人自身は少しも損害を被らない。・・・未成年者が代理
   人であっては本人は損失を被ることになるかもしれない。しかし
    それは本人がこの者を代理人に選んだのであるから自業自得である。」
   (前掲 勁草書房)

      したがって、Aは、Bの未成年であることを理由にした売買契
    約の取消しをCに主張することはできないので、本肢は妥当であ
   る。
    
   ☆ 発展問題

    この場合に未成年者が本人との間の委任契約を取り消して
      はじめからなかったことにすると(5条・121条参照)、
   これに伴う授権行為も翻ってその効力を失うことになれば、
      どうなるか。
    そうすると、すでになされた代理行為も無権代理行為にな
      って、相手方が不測の損害を生じ、102条の趣旨が生かさ
      れなくなる。そのため、学者は、委任契約の取消しは過去の
      代理関係に影響しない、すなわち、代理関係は将来に向かっ
      て消滅するが、すでになされた代理行為には影響しないと解
      することによって、その不都合を解消しようとしている。
   (前掲書 参照)

 

   ○ 肢5について


                 詐欺 
   
    本人A-------代理人B---------相手方C

    条文 101条1項

      代理行為は代理人自身の行為である。本人の行為とみな
          されるのではない。詐欺というような、法律効果に影響
     を及ぼす法律行為の瑕疵の有無はことごとく代理人に自
          身について定めるべきであって、本人について定めるべ
          きではない。(前掲書・参照)
    
     したがって、本肢において、本人であるAが善意無過失
    であっても代理人Bから欺罔行為を受けたCは、Bの詐欺
        を理由に当該売買契約を取り消すことができる(民法96
        条1項)。

          以上の記述に反する本肢は、妥当でない。


 
         以上からして、正解は4である。
 


         
   ◆ A・平成11年度 問題
 
  
   ○  肢1について

    民法104条と106条の対比により、正しい。しかも、
   これが、正解である。実に、あっさりとしたものである。


     ○  肢2について

       民法108条のただし書きにより、正しくない。


   ○ 肢3について

        民法111条1項2号には、保佐開始の開始の審判をを受け
      たこと(11条参照)は、掲げられていない。 正しくない。

    ○ 肢4について

      民法114条によれば、悪意の相手方にも催告権が認められる。
   正しくない。

     なお、悪意の相手方には取消権が認められないことに注意
     (115条)。

  ○  肢5について   

      前段については、109条・110条・111条の規定の基づき
      本人は無効を主張できないが、この場合、本人が、無権代理人に対
   して、債務不履行ないし不法行為に基づき損害賠償を請求できるの
      は、当然である(415条・709条)。


      正解は、1である。

 
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